マスクを徹底検証:1日目【実社会で効果があったのか?】
【はじめに】
今回から数回にわたる記事で,統計データや学術論文に基づき,マスクの効果とリスクを徹底検証します.以下が目次(仮)です.
1. マスクは実社会で効果があったのか?
2. マスク社会の根拠
3. エビデンスレベルとランダム化比較試験(RCT)
4. RCTのメタ分析:忘れられた2019年までの常識
5. 一連のYahoo記事を検証:引用論文のエビデンスレベルは?
6. マスクの常時着用が体に与える負の影響
7. まとめ
幅広い方々に読んでいただけるよう,これまでの記事とは趣向を変えて,会話形式としました.「とある中学校で,先生と生徒がマスクについて話し合う」という設定です.「データと端的な説明だけを読みたい」という方は,重要データを詳しくまとめたPDF資料を下記記事にアップロードしていますので,そちらをご覧ください.
これからの一連の記事では,適宜内容を補強しながら,上の資料内のデータを検討していきます.今回は,目次の1, 2の話です.
【1. マスクは実社会で効果があったのか?】
中学3年生のA子、B郎、C美、D介は、マスクの効果について詳しく知りたいと思い、理科の先生と約束して、ある日の放課後に実験室を訪れました。
先生「みんな、よく来たね。約束した通り、今日はマスクについて一緒に考えてみよう。まず、みんなは普段どうしてマスクをつけているのか、教えてもらおうかな。」
A子「どうしても何も、”マスクは感染防止に効果がある”って、テレビでもネット記事でもしょっちゅう言われてるからかな。スパコンの飛沫シミュレーションも見たことあるわ。」
B郎「僕は、効果がどれ位かは難しくてわからないけど、少しでも意味があるならつけようかなって。」
C美「息苦しいし、蒸れるし、正直あんまりしたくないけど、外したら周りの目も怖いし・・・」
D介「店とか電車で、マスクにご協力を~ってアナウンスされるもんな。学校でも注意されるし。ルール?マナーみたいなもの?」
先生「うんうん、なるほど。それじゃあまず、実社会でマスクはどれくらい効果があったかを知るために、アメリカの統計データをいくつか見てみよう。アメリカでは、コロナ政策が州ごとに大きく異なっていて、同一州の中でも郡(County:州より小さい地区単位)によって異なる政策が取られてきた。だから、"コロナ政策の効果"を検証する上で、アメリカの統計データはとても貴重なんだ。まず、フロリダ州のデータを見てみよう。
フロリダは、2020年9月に”州レベルのマスク義務”を解除した。それに伴ってマスク義務を解除した郡と、マスク義務を継続した郡があったんだ。この図は、両者の郡でコロナ陽性率を比較している。」
B郎「あれ・・・解除時点ではほぼ同じ陽性率なのに、解除後は義務郡の方が陽性率は高いんですね。」
先生「そう。このデータは、同一州で比較しているところがポイントなんだ。同じ州なら、気候や住民構成といった条件が類似と見なせるからね。つまり、この比較は、ユニバーサルマスク(=全員がマスクをすること)の効果を検証する、この上ない社会実験と言える。 」
D介「その社会実験の結果、マスクが逆効果だったってこと??」
先生「このデータだけから、逆効果と結論するのは早計だね。確率的変動も考慮しなきゃいけないし、見落としている他の要因があるかもしれない。ただ、少なくともユニバーサルマスクに効果があるとは言えないという結果だ。同じような比較は、カンザス州でも行われている。」
C美「やっぱり、義務郡の方が陽性率が高いのね・・・元々高いことを差し引いても。」
A子「マスクを義務付けられなくても、実際は多くのアメリカ人がマスクをしてたってことはないですか?日本だって義務化されてないけど、みんなマスクしてるし。」
先生「野球の大リーグや総合格闘技のUFCの試合で、観客席を見てごらん。どちらも2021年の写真。欧米では、強制されなければマスクをつける人はごくごく少数なんだ。」
D介「たしかに、今年開かれたサッカーのEURO、テニスのウィンブルドンでも、観客はマスクなしで大盛り上がりだったもんな。」
※左写真のEURO2020は、延期されて2021年に開催された。
C美「うーん、この後に改めて日本の光景を見ると、なんだか異様ね・・・これでもし、”マスクに効果はありませんでした” とか ”むしろ逆効果でした” ってなったら、"私たちは1年半も何をしてたの?" ってなるよね・・・」
先生「さっきのデータは、アメリカの同一州内の比較だったけど、今度は異なる州でも比較してみよう。」
先生「これは、カリフォルニア、フロリダ、テキサス州のコロナ死者数の比較だ。さっきも言った通り、フロリダは2020年9月に”州レベルのマスク義務”を解除してる。ただ、それだけじゃなくて、ロックダウンを含むほぼ全てのコロナ規制を解除してるんだ。テキサス州も2021年3月にそうしてる。外食が禁止されて、自宅待機が命じられていたカリフォルニアと、フロリダを比較してごらん?」
D介「フロリダの方が、冬のコロナ死亡のピークはずっと低い!」
先生「そう。もし、”感染症対策”に効果があるなら、カリフォルニアの方が死亡率が低くならないとおかしいだろう?」
B郎「2つの州で、気候が違うということはないですか?」
先生「いい指摘だね。東海岸と西海岸では、もちろん気候が違う。同一州で比較する場合に比べて、異なる州ではどうしても条件を揃えることは難しいんだ。ただ、気温で見ると、2つの州はほとんど同じなんだよ。
そして何より、制限を解除した2020年9月時点では、フロリダの方が死亡率は高かったんだ。」
C美「”感染症対策”自体が、逆効果になっている可能性があるのね・・・」
D介「ん?待てよ。そもそも、”アメリカはワクチンが進んでマスク義務が解除された”と前にテレビで言ってたけど、実際は去年から解除されてた州があるんだな。」
先生「そう、マスコミの情報は常に疑ってかからないといけない。特に、日本のメディアはニューヨークやカリフォルニアといった民主党州の報道ばかりで、共和党州の情報はほとんど伝えられないんだ。この図を見てごらん。」
B郎「これは・・・?」
先生「赤が共和党州で、青が民主党州。緑丸にチェックが入っているのが、2021年の3月31日時点でマスク義務を解除していた州。何かわかることはない?」
D介「解除した州は、ほとんどが共和党州だ!」
先生「その通り。マスク1つとっても、政治が強く関わっていることがわかる。実はこれは、”感染症対策”全般に言えること。統計データを検証すれば効果のないことが明らかな政策も、政治的理由や大衆心理でダラダラと続けられている。マスクについては、実はこんなデータもあるんだ。」
https://statsiq.co1.qualtrics.com/public-dashboard/v0/dashboard/5f78e5d4de521a001036f78e#/dashboard/5f78e5d4de521a001036f78e?pageId=Page_ffb4dc52-5543-46b2-8126-2b7229fd1b17
https://townhall.com/tipsheet/scottmorefield/2021/05/01/this-data-on-masked-vs-unmasked-schools-will-have-the-mask-cult-seething-n2588826?amp=true&__twitter_impression=true
先生「ブラウン大学のオイスター教授が立ち上げた“Covid Dashboard Project”で、アメリカの49州とコロンビア特別区にある学校と学区から、学生と教職員のコロナ感染に関するデータを集めたんだ。特に学生については, 1200万人分のデータが集まった。マスクが要請されている学校・学区と、要請されてない学校・学区とを比較してみてごらん。」
A子「感染率が低い地域では、そんなに変わらないわね。」
B郎「でも、感染率が高い地域では、マスクを要請した方が感染率は高いのか。学生だと37%増し、教職員だと84%増し!!」
先生「学生・教職員の区別や地域の分類に関わらず、マスクを要請した方が感染率は高く、その傾向は感染が広がっている地域ほど顕著だった、という結果だ。これは、かなり重要なデータ。なぜなら、調査規模が膨大だからね。」
C美「マスクの常時着用は、やっぱり感染防止に逆効果なんじゃ・・・?」
先生「この大規模データを見ると、C美の仮説もかなり現実味を帯びてくるね。ここで一旦、論点を整理しておこう。」
【2. マスク社会の根拠】
先生「仮に僕が、”マスクを禁止すべき” と主張していたとしよう。その場合、C美の仮説を統計学的に証明することが最低限必要になる。でも、僕はそんなことを一切主張していない。単に、”マスクはしたい人がすればいい、人に強制したりするようなものではない” という考えだ。」
D介「俺も同じ考えだな。そもそも、健康状態とか体の事情って一人一人違うのに、一律に強制したりっておかしいよ。しかも、効果がはっきり出てるならまだしも、逆効果の可能性すらあるなんて、論外だよな・・・」
先生「後で述べるように、マスクを常時着用していると、低酸素血症、高二酸化炭素血症、細菌性肺炎といったリスクもある。だから、本来であれば、一人一人がベネフィットとリスクを天秤にかけて判断する問題なんだ。」
B郎「でも、日本の現状を見ると、会社、学校、公共交通機関、商業施設とか至るところで、"お願い" という名の半強制が起きていますね・・・」
先生「そう。当然ながら、マスクの効果を立証しなければならないのは、マスクを(半)強制している人達なんだ。彼らの主張は、”ユニバーサルマスクが感染者数を減らす” という仮説に基づいているのだから、さっきの調査を上回るデータ規模で、この仮説を立証しないといけない。でも、そんなことは世界中で誰一人できていないんだ。この模式図を見てごらん。」
A子「これは何ですか?」
先生「この図は、ある治療法や予防法が、社会で確立するための基本ステップを表している。順序は場合によって前後することがあるけれど、特に①と②は必要最低限のステップだ。具体例を見た方がわかりやすいね。例えばこれは,白血病と心不全の治療法が確立していった経緯だ。」
https://twitter.com/fhljpt/status/1363622681510170624
B郎「なるほど。細かなメカニズムはわからなくても、実社会や臨床試験で効果が確かめられていればOKということか。」
A子「逆に言うと、実験やシミュレーションに基づいて、 ”〇〇のメカニズムで効果があるはず” と主張しても、実社会や臨床試験で効果が出なければ全くダメということね。」
先生「予防法や治療法にリスクが伴う場合は、さらに③のステップも必要になる。治療法は病気を患っている人に対して行うだろう?だから、本人が納得しさえすれば、ある程度のリスクが伴うことは仕方ない。一方、予防法は健康な人が行うので、リスクは極めて小さいことが求められるんだ。」
C美「④の法的根拠の確認っていうのは?」
先生「これは、今のマスクのように、社会的に(半)強制する場合に必須のステップだ。さっきD介が言ったように、健康状態は人によって様々。それにも関わらず一律に(半)強制するなら、”憲法が保証する基本的人権に反しないか” といった法的議論が不可欠になる。」
D介「なるほど。それで、コロナ感染防止という名目で半強制されているマスクは、①~④のステップをクリアしているかと言うと・・・?」
先生「結論から先に言ってしまおう。今行われているマスクの半強制は、これらステップを1つとしてクリアしていない。はっきり言って、根拠のない滅茶苦茶なことが、日本中で1年以上に渡って行われているんだ。
①については、すでに今日確認したね。これから、②~④についても順に確かめて行こうと思うけど・・・外はもうすっかり暗くなってしまった。今日は遅いから、続きは明日にしよう。放課後にまた、みんなで遊びにおいで。」
※続きはこちらです.