「#推し短歌」の結果を発表します!俵万智さん・岡本真帆さんによる選評も掲載 #クリエイターフェス
2023年9月12日(火)から約1ヶ月にわたって投稿を募集していた「#推し短歌」投稿企画。期間中には、好きなアニメやアイドル、家族や趣味など、“推し”にまつわる短歌が2,826記事寄せられました。
推しに対する見方や感情がさまざまな視点で切り取られ、31字という限られた文字数の中で多様に表現されていました。愛と想像力があふれている応募作品を、ぜひ記事一覧からご覧ください。
本記事では、選考委員である歌人の俵万智さんと岡本真帆さんが選んだ作品と選評を発表いたします。
「#推し短歌(千切豹馬)33首」(re:さん)より2首
桜桃の傷は甘さの表れだ君の縫い跡も強さの印
選評・俵万智さん
『ブルーロック』というサッカー漫画に登場する赤い髪のストライカー千切豹馬への熱い想いを綴った一連の中の一首です。ケガのために手術した跡が残っているわけですが、それを桜桃の傷と重ねたところが美しく、説得力があるなと思いました。内側から自然に、そして強く溢れ出てくる闘志を感じさせてくれます。全体のストーリーをなぞるだけでなく、作者自身の推しへの気持ちが表現されているところがいいですね。赤い髪ということで、色彩を意識した歌も多数あり、色の対比の中で豹馬の魅力が浮かぶところが素敵な工夫だと思いました。
いつだって君を近くに感じたいネイルは赤の豹柄にした
選評・岡本真帆さん
漫画『ブルーロック』の千切豹馬への想いを33首の短歌にされていたre:さん。「後悔を飲み込みフィールド去る君の背中の4が滲んで揺れる」など、『ブルーロック』未読の私にも魅力や熱い想いが伝わる歌がたくさんある中、私が一番ビビッときたのは、re:さんご自身のときめく“推し心”を詠まれたこの一首でした。赤の豹柄のネイルは、多くの人にとってはただの赤い豹柄として映るでしょう。でもre:さんにとってはそうではないこと。ネイルって見るだけで自分の気持ちが明るくなるおまじないのようなものだなと日頃から思っているのですが、re:さんの綻ぶ顔が浮かび、わくわく感が伝わってくるようでとても嬉しくなりました。
「背中をさすってくれる歌【 #推し短歌 】」(遠山エイコ(こっこ)さん)より1首
アイロンをかけながら聴く二十二時 背中さすってくれる歌あり
選評・俵万智さん
推しであるKing Gnu さんの歌が、ふいに流れてきた時の気持ちを捉えた一首です。「アイロン」というひとことで舞台が日常であること、「二十二時」という具体的な数字で一日の終わりの家事であることが、的確に伝わってきます。そのうえで、推しの歌が「背中をさすってくれる」……この表現にはヤラレタと思いました。さするには、なでるやたたくにはない、独特の優しい励ましのニュアンスがこもります。作者がKing Gnuからもらっている元気というか明日へのエネルギーというか、そういうものがしっかり伝わるいい歌だなと思いました。
「男性ブランコ三十一文字 | #推し短歌 」(あおいさん)より 1首
夢を見るシャンソン人形携えていつかトップに立つ夢を見る
選評・岡本真帆さん
男性ブランコのお二人についての短歌を詠まれたあおいさん。出囃子の『夢見るシャンソン人形』からお笑いと向き合う二人の姿を描いた一首がとても心に刺さりました。人生経験の浅いアイドルが恋愛ソングを歌うことを揶揄して書かれたとされる歌詞。それを出囃子として選択しているお二人のお笑いが、静かな野望に溢れていることに気づかされます。「ひと笑い取るためにある苦しみと痛みを人は芸と呼ぶなり」も、日頃からお二人を応援されているからこそ生まれる歌。ステージに立つ二人の挑戦、その姿を応援する作者の関係が見えてくるようでした。
「らんまん短歌 (全130回 130首) #推し短歌 」(吟遊詩人&さん)より2首
生きている全てのものが持っている 君の名前は 愛の別名
選評・俵万智さんより
NHK朝ドラ「らんまん」の放送回すべてに捧げられた圧巻のオマージュ。私もずっと見ていたので、ドラマの感動をもう一度たどるような楽しさを味わわせていただきました。主人公の夫婦に初めての子どもが生まれたときに、あらゆる草花が咲き乱れる園をイメージして園子と名づけられました。名前にこめられた愛情を詠んだこの一首は、ドラマを離れても普遍性のあるものだと思います。
渡せない櫛と思いを胸に秘め あなたをずっと守ると誓う
花も人も一期一会の世の中で 君に「ズギャン!」と出会えた奇跡
この二首も、恋と出会いを詠んで、胸に響く作品でした。
一生を懸ける仕事と 好きな人 四つ葉の幸運 わしは見つけた!
選評・岡本真帆さんより
「わしは見つけた!」の結句で、神木隆之介さん演じる槙野万太郎の弾ける笑顔が目に浮かびました。時に苦悩しながらも、いつまでも少年のように植物を追い続けた万太郎。一生を懸ける仕事と、いつでもそばにいてくれる寿恵子さんの存在をどちらも大切なものとして「四つ葉の幸運」に掛けているところが素敵でした。屈託のない笑顔で発見した植物を見せてくれる万太郎のキャラクターらしさが込められていて大好きな一首です。
発表した4名のクリエイターには、noteのオリジナルグッズをお贈りします。
noteでは、短歌にまつわるハッシュタグが引き続き盛り上がっています。この機会にはじめて短歌を詠んだひとも、これまで詠み続けてきたひとも、また作品をnoteに投稿いただけたらうれしいです。