褒め言葉のインフレ
心臓が止まるかと思った経験は何度かある。が、本当に止まると思ったことは一度もない。あくまでそのくらい驚いたという誇張表現だ。身も蓋もない言い方をすると嘘にあたる。
大げさに言うのは楽しくて気持ちいい。聞き手もそれをわかっているので額面通りには受け取らない。そういう暗黙の了解がある。ただ、行き過ぎるのは良くないと自戒するようにはなった。
最近、料理の動画やレシピがやたら目につく。自分から探しているつもりはないが、閲覧履歴からオススメされているのかもしれない。で、そのタイトルにいちいちイラッとする。
『家中のキャベツが一瞬で消えた』
いや、わかるよ。美味しすぎて平らげちゃうってことでしょ。作り方を見ても間違いなく美味しいヤツだもの。
だからこそ残念に思う。キャベツは一瞬では消えない。物理的にそのハードルを越えられないことは明白なので結果として内容が安く見える。
引くに引けない状況なのだ。一度、誇張表現に手を染めると普通の表現では物足りなくなってしまう。他の人が使っているなら後れをとるわけにもいかないだろう。
すでに表現は飽和しているように見える。これ以上の表現が出てくるのか、それとも別のベクトルで競い合うようになるのか、将来が楽しみである。
ワクワクして今夜は眠れそうにない。