■補足:スパイダーバースの誕生と関連作品
▼「スパイダーバース」前夜:
『スパイダーマン』という作品の歴史において、「異なる世界のスパイダーマンらが一堂に会し、未知の脅威に立ち向かう」という、『スパイダーバース』的な物語が初めて試みられたのは、実のところはコミックブックではなく、カートゥーン(アニメ)作品である。
具体的には、1998年にフォックス・キッズ・ネットワーク系列局で放映されたカートゥーン『スパイダーマン:ジ・アニメイテッド・シリーズ』シーズン5の第12-13話(1994年から4年に渡り続いた同番組の最終エピソード)、「スパイダー・ウォーズ」だとされる。
この話は、寄生生命体シンビオートに体を乗っ取られ、最悪のヴィラン「スパイダー・カーネイジ」と化してしまった並行世界のスパイダーマンによる宇宙滅亡の危機を防ぐため、スパイダーマン(ピーター・パーカー)が、並行世界のスパイダーマンらと共闘して戦う、という内容だった。
なお、同話に登場する並行世界のスパイダーマンは、6本腕のマン・スパイダー、ドクター・オクトパスのメカニカル・アームを装備したオクト・スパイダー、金属製のボディアーマーを身に着けたアーマード・スパイダーマン、スパイダー・カーネイジと同じ世界出身のスカーレット・スパイダー……と、当時、玩具会社のトイビズからアクション・フィギュアがリリースされていた面子であった(敵役のスパイダー・カーネイジにしても、フィギュア化されてたデザインをヴィランに起用)。
元々は「スパイダーマンの異なるコスチューム」としてリリースされていたそれらのフィギュアに、「並行世界のスパイダーマン」という個性を与えたのは慧眼だと思う(子どもさんも、複数のスパイダーマンフィギュアを「別人」として遊ぶことができるし)。
ただまあ、カートゥーン版『スパイダーマン』がこのエピソードで終わってしまったためか、この画期的な販促アイデアが以降のアニメ作品に継承されることはなかった。
他方、本家であるコミック版スパイダーマンは、1995年に刊行された特別号『スパイダーマン2099・ミーツ・スパイダーマン』にて、本家スパイダーマン(アース-616 ピーター・パーカー)が2099年の未来で活躍するスパイダーマン2099(ミゲル・オハラ)と、2211年出身のスパイダーマン(マックス・ボーン)と共演したのが、「別世界のスパイダーマンと共闘」シチュエーションの初出になる。
……まあ、これは「別世界のスパイダーマン」と言うよりは、「別時間のスパイダーマン」を意図して書かれた作品なので、「厳密には違うんじゃね?」と問われれば、「そうですね」と言うしかないが。
こちらがワンショット『スパイダーマン2099・ミーツ・スパイダーマン』の電子書籍版。ヴィランは『2099』版ヴァルチャーとヴェノム(エディ・ブロック)。ライターは『スパイダーマン2099』のライターのピーター・ディヴィッドが担当。
なので、まあ、「並行世界のスパイダーマンの共演」というシチュエーションに厳密にこだわると、アース-616のスパイダーマン(ピーター・パーカー)が、アース-1610のスパイダーマン(マイルス・モラレス)と初対面した2012年のリミテッド・シリーズ『スパイダーメン』がコミックでは初、ということになる。実に、21世紀になるまで、こうしたコミックは登場してなかったのだった。
こちらが『スパイダーメン』。リミテッド・シリーズ全5話を収録(この本の成り立ちに関しては、後ほど少し触れる)。
▼ゲームでのスパイダーマンの共演とダン・スロット:
ちなみに、ゲームの「並行世界のスパイダーマンが共演する」シチュエーションの初出は、2010年にアクティビジョン社からリリースされた家庭用ビデオゲーム『スパイダーマン:シャッタード・ディメンションズ』が初になる(これもコミック版よりも早い)。
同作はおなじみのスパイダーマンに加え、アルティメット・スパイダーマン(ヴェノム・シンビオートを着用して他と差別化)、スパイダーマン・ノワール(1930年代の大恐慌時代が舞台の、ノワール調の物語の主人公)、それにスパイダーマン2099が、次元の壁を越えて共闘するというアイデアが盛り込まれていた(無論、ゲーム内では各々をプレイヤー・キャラクターとして使用できる)。
こちらが『シャッタード・ディメンション』のパッケージ。4人のスパイダーマンが共演するゲームということが一目で分かるようになっている。なお残念ながら日本版は未発売。
開発を指揮したビーノックス社のトーマス・ウィルソンによれば、ゲームの開発当初、依頼主のアクティビジョン社から「これまでの『スパイダーマン』のゲームにはない、ユニークでエキサイティングな要素」を盛り込むよう要請された開発チームは、「これまでの『スパイダーマン』のゲームに登場したキャラクターが集合する」といったアイデアを考えてたらしい。
で、会議の席上でウィルソンが、「逆にこれまでのゲームに登場してない(コミックの)スパイダーマンのキャラクター」について、担当ディレクターに尋ねたところ、スパイダーマンの熱心なファンだった彼は、スパイダーマン2099やスパイダーマン・ノワールなどの、ウィルソンが聞いたこともないスパイダーマンのバリエーションを挙げていったという。
やがてスタッフの一人が「それらのスパイダーマンが全員登場するゲームにしてはどうか?」と提案。ウィルソンは「クレイジーなアイデアだ」と面食らったものの、そのアイデアについて考えれば考えるほど「クレイジーだが、最高のアイデアでは?」と思うようになった。
んで、ウィルソンはそのクレイジーを企画書にまとめ、マーベル編集部に投げたところ、特に「クレイジーだ」と突っ返されることもなく、即座にOKがもらえた。だもんでビーノックスは、このクレイジーを筋の通った物語に仕上げるべく、当時の『スパイダーマン』関連誌で辣腕を振るっていたライター、ダン・スロット(後の『スパイダーバース』のライターだ)を起用することにした。
カナダのケベック州にあるビーノックス社に招かれて説明を受けたスロットは、このゲームのアイデアが最高で、非常に面白いと思った。なのでスロットは、このアイデアをゲーム単体で終わらせずに、コミックの方でも同様のアイデアを用いた作品を送り出し、ゲームとのインタラクティブ(相互作用)を図ろうと考えた。
早速スロットはカナダからマーベル編集部に電話し、「全ての並行世界のスパイダーマンが一堂に会するコミック」の企画を提案した。これが『スパイダーバース』というコミックの始まりとなった。
が、スロットによる『スパイダーバース』の企画は、実現するまでには4、5年ほどの時間がかかった。
これは多分、この時期の『アメイジング・スパイダーマン』誌が、結構先まで展開を作り込んでたため、中途に『スパイダーバース』の話を挿入してる余裕がなかったからだと思われる。
※個人的な推測だが、2009年の『アメイジング・スパイダーマン』#600(9/2009)で、「ドクター・オクトパスが不治の病に罹っていた」ことが判明した時点で、3年後の『アメイジング・スパイダーマン』#700(2/2013)で「瀕死のドクター・オクトパスがピーター・パーカーの肉体を奪う」という展開と、それに続く『スーペリア・スパイダーマン』(オクトパスが“最上の”スパイダーマンとして活躍する新オンゴーイング・シリーズ)の創刊は決定事項になってて、余分なエピソードを差し挟む余地はなかった……のではないかと思う。
でー、『シャッタード・ディメンション』のゲームが発売されてからしばらくの後(2011年頃)、スロットは、来たる2012年(マーベル50周年記念イヤー)に、どんな凄いことをやるのかを話し合う企画会議に参加した。
んで、その会議の席上で、「本家スパイダーマン(アースー616 ピーター・パーカー)とアルティメット世界(アースー1610)のスパイダーマン(マイルス・モラレス)を、次元を超えてクロスオーバーさせるのはどうか」というアイデアが出た。
このアイデアは好評をもって迎えられ、その後『アメイジング・スパイダーマン』誌の担当編集者から、「であればこのシリーズは、本家『アメイジング』のライター、ダン・スロットと、『アルティメット・スパイダーマン』のライター、ブライアン・マイケル・ベンディスが共作するのが筋だろう」との意見も出た。
が、スロット自身は、「俺は将来的にもっと規模のデカい、『スパイダーバース』を書くからなぁ」と思っていたので、ピーターとマイルスの共演企画はベンディス一人に任せることとした。
結果、翌2012年にブライアン・マイケル・ベンディス脚本のリミテッド・シリーズ『スパイダーメン』#1-5(6-9/2012)が刊行された。
この『スパイダーメン』は好評を博し、5年後の2017年に続編『スパイダーメンII』も刊行された(好評だったのに、続編が出るまで5年かかったのは、2015年の『シークレット・ウォーズ』でアルティメット・ユニバースが消滅したせいで、ストーリー構成を練り直す必要があったためだろう)。
上掲は『スパイダーメンII』の単行本。リミテッド・シリーズ全5話を収録。
でー、この『スパイダーメン』が完結してからさらに2年後の2014年(※)、ダン・スロットによる新雑誌『アメイジング・スパイダーマン(vol. 3)』誌上にて、ようやく『スパイダーバース』の物語が送り出されたのだった。めでたしめでたし。
※なにしろ2012年末~2014年前半の『スパイダーマン』関連誌は、前述したようにピーター・パーカーの肉体を奪ったドクター・オクトパスが、新雑誌『スーペリア・スパイダーマン』の主役としてブイブイ言わせてた時期(=本来の主人公であるピーター・パーカーが退場していた時期)なので、主役不在のまま『スパイダーバース』の話をやる訳にはいかなかったのだろう(これも推測だが)。
▼『スパイダーバース』に続くものたち:
ダン・スロットが満を持して送り出した『スパイダーバース』は、そのコンセプトの秀逸さ・斬新さもあり、当たり前のように大ヒットとなった。
で、それだけのヒット作となったことで、マーベルは二匹目、三匹目のドジョウも掬おうと考え、『スパイダーバース』の続編や、それに類する作品を刊行していった。
以下はその一覧である。
・『スパイダーバース(vol. 2)』
2015年の大型イベント『シークレット・ウォーズ』のタイインとして刊行されたリミテッド・シリーズ。ライターはマイク・コスタ。
なお、『シークレット・ウォーズ』のタイインとして刊行された一連のリミテッド・シリーズ群は、『シビル・ウォー』や『インフェルノ』、『マーベル・ゾンビーズ』など、過去のマーベルの「有名な作品」の名前をあえてリフレインしたものになっていた。
つまり、名前やモチーフを踏襲してはいるものの、元の作品とは関連が薄い作品ばかりだったのだが、『スパイダーバース』の場合は発表年代が近かったため、オリジナルの『スパイダーバース』の登場人物がそのまま登場しての話を展開することが出来た。
内容的には、消滅した多元宇宙の残滓を用い、ドクター・ドゥームが生み出した世界「バトルワールド」の一地方「アラクニア」を舞台に、スパイダーグウェン、スパイダーハム、スパイダーマン・ノワール、スパイダーマン・インディア、スパイダーUK、アーニャ・コラソンといった、『スパイダーバース』のメインキャラクターが、「ウェブ・ウォーリアーズ」なるチームを結成。未知のエネルギー“ジ・ウェブ”を悪用しようとするノーマン・オズボーン市長の野望を挫く……といった具合。
※なお、「ウェブ・ウォーリアーズ」は、カートゥーン版『アルティメット・スパイダーマン』で2015年に放映されたエピソード「ザ・スパイダーバース(後述)」で、スパイダーマンらが名乗っていたチーム名。
こちらがその単行本『スパイダーバース:ウォーゾーンズ!』。『スパイダーバース(vol. 2)』#1-5を収録。
なお、『シークレット・ウォーズ』の完結後(多元宇宙が大体元通りになった後)、オンゴーイング・シリーズ『ウェブ・ウォリアーズ』#1(1/2016)が創刊され(全11号で割と早めに休刊してしまったが)、リミテッド・シリーズに登場したメンツのいくらかは引き続きそちらのタイトルで活躍した。
こちらがその単行本1巻。『ウェブ・ウォリアーズ』#1-5と、『アメイジング・スパイダーマン(vol. 4』#1(12/2015)に掲載されたウェブ・ウォリアーズが主役の短編を収録。
・『スパイダーゲドン』
2018年にアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』が公開されるのを受けて、タイアップ的に(映画に先駆けて)展開されたイベント。ライターはクリストス・ゲイジ。
ゲイジは元々は『スパイダーバース』のイベントでダン・スロットと組んで諸々の話を書いてた人で、今回は忙しいダン・スロットに代わりメインライターを務めることになった。
(なお当時のスロットは『アメイジング・スパイダーマン』#801(8/2018)をもって『スパイダーマン』関連誌のライターを降り、『トニー・スターク:アイアンマン』と『ファンタスティック・フォー』の2誌のライターに就任していた)
内容的には、『スパイダーバース』のラストで並行世界アース-3145に封印されたはずのインヘリターズが解き放たれ、これに対抗して並行世界のスパイダーマンたちが再び結集する……という、直球の続編。
本作は、オリジナルの『スパイダーバース』の構成を踏襲し、まずリミテッド・シリーズ『エッジ・オブ・スパイダーゲドン』#1-4(10, 10, 11, 11/2018)が刊行され、その後、物語の中核となるリミテッド・シリーズ『スパイダーゲドン』#0-5(11, 12, 12/2018, 1, 1, 2/2019)が刊行。更に諸々のオンゴーイング・シリーズでタイインしたり、『スパイダーゲドン』本編の内容を補完するリミテッド・シリーズが刊行された。
ちなみにこの作品は、2018年9月にソニーのPlayStation 4用に発売された家庭用ゲーム『Marvel's Spider-Man』ともタイアップしていた。
こちらがそのゲームのパッケージ。同作の脚本は、クリストス・ゲイジやダン・スロットらが3年ぐらいかけて書いたとか。こちらは日本版も作られている。
ゲームとのタイアップとして、『スパイダーゲドン』#0(11/2018)の巻頭には、ゲーム版のスパイダーマン(アース-1048 ピーター・パーカー)が主役の短編も掲載。またゲーム版のスパイダーマンは『スパイダーゲドン』本編にもそこそこ登場していた。
『スパイダーゲドン』はおおよそ6冊の単行本にまとめられている。こちらの『エッジ・オブ・スパイダーバース』は、前日譚である『エッジ・オブ・スパイダーバース』#1-4と、やはり前日譚である特別号『スーペリア・オクトパス』#1をまとめたもの。
続いて『スパイダーゲドン』単行本。物語の核となる『スパイダーゲドン』#0-5と、タイインのリミテッド・シリーズ『ヴォールト・オブ・スパイダーズ』#1-2を収録。
3冊目はサブストーリー『スパイダーゲドン:カバート・オプス』。
スカーレット・スパイダー(ケイン)、スパイダーウーマン(ジェシカ・ドリュー)らによる特務部隊の活躍を描いた『スパイダーフォース』#1-3と、スパイダーリング(アニー・パーカー)、スパイダーガール(アーニャ・コラゾン)、スパイダーウーマン(メイディ・パーカー)らによるチーム「スパイダーガールズ」の冒険を描く『スパイダーガールズ』#1-3を収録。
4冊目、『ピーター・パーカー:スペキュタクラー・スパイダーマン:スパイダーゲドン』。『ピーター・パーカー:スペキュタクラー・スパイダーマン』#311-313と、タイインの『スパイダーゲドン:スパイダーマン・ノワール ビデオコミック』#1、『スパイダーゲドン:アニメイテッド ビデオコミック』#1を収録。
実は『スパイダーゲドン』本編には、本家スパイダーマン(アースー616 ピーター・パーカー)はろくろく登場しておらず、タイインである『ピーター・パーカー:スペキュタクラー・スパイダーマン』#311-313(12/2018-2/2019)の方で、3ヶ月に渡り因縁の宿敵モーランと戦い続けていた(途中でマイルスが加勢に来たが、ピーターは「自分がモーランの相手をしてる間に、他のスペイダーマンと協力して、残りのインヘリターズを打倒しろ」と指示)。
こちらの単行本は、その『スペキュタクラー』誌でのピーターの戦いを収録したものになるが、なにしろ3話分しかないので、水増しで『スパイダーゲドン』タイインのコミック2冊も収録(それでも110ページ強と、割合薄い本になってる)。
5冊目、『スパイダーグウェン:ゴーストスパイダー:スパイダーゲドン』。ゴーストスパイダー(グウェン・ステーシー)が主役のオンゴーイング・シリーズ『スパイダーグウェン:ゴーストスパイダー』の1巻目に当たる本。『スパイダーグウェン:ゴーストスパイダー』#1-4(#1-3が『スパイダーゲドン』タイインで、#4が後日談)と、『スパイダーゲドン:ゴーストスパイダー ビデオコミック』#1を収録。
ちなみに『ゴーストスパイダー』の連載は全10号で完結し、後に全話を収録した厚めの単行本がでてるので、ゴーストスパイダーのコミックにも興味のある方は、下の全1巻本を買った方がお得(表紙が同じなので注意)。
収録作品は『スパイダーグウェン:ゴーストスパイダー』#1-10と、『スパイダーゲドン:ゴーストスパイダー ビデオコミック』#1。
6冊目、『スーペリア・スパイダーマン:フル・オットー』。2018年に創刊されたオンゴーイング・シリーズ『スーペリア・スパイダーマン(vol. 2)』誌の1巻目の単行本。このうち#1が『スパイダーゲドン』タイイン(前日譚)。
スーペリア・スパイダーマンにさほど興味がなく、『スパイダーゲドン』とのタイインだけ読みたい場合は、上の#1の単話版電子書籍を買うのもいいだろう。
こちらは『スパイダーゲドン・ハンドブック』#1。作中に登場するスパイダーマンらのプロフィールをまとめたガイドブック。通常の単行本には未収録(のはず)で、こちらは単話版の電子書籍。
で、『スパイダーゲドン』の関連誌は、前回も紹介した分厚い「オムニバス」レーベルの単行本、『スパイダーバース/スパイダーゲドン オムニバス』に『スパイダーバース』の関連誌共々全収録されている(全1376ページ!)。
収録作品は、『スパイダーバース』関連の『フリー・コミックブック・ディ2014』掲載の短編に始まり、『エッジ・オブ・スパイダーバース』#1-5、『スパイダーバース (2014)』#1-2、『スーペリア・スパイダーマン』#32-33、『アメイジング・スパイダーマン(2014)』#7-15、『スパイダーマン2099 (2014)』#5-8、『スカーレット・スパイダーズ』#1-3、『スパイダーウーマン(2014)』#1-4、『スパイダーバース・チームアップ』#1-3。
『スパイダーゲドン』関連の、『エッジ・オブ・スパイダーゲドン』#1-4、『スパイダーゲドン』#0-5、『スーペリア・オクトパス』#1、『スパイダーフォース』#1-3、『スパイダーガールズ』#1-3、『ピーター・パーカー スペキュタクラー・スパイダーマン (2017)』#311-313、『スパイダーグウェン:ゴーストスパイダー』#1-4、『ヴォールト・オブ・スパイダーズ』#1-2、『スパイダーゲドン:スパイダーマン・ノワール ビデオ・コミック』、『スパイダーゲドン:スパイダーグウェン ゴーストスパイダー ビデオ・コミック』、『スパイダーゲドン:スパイダーマン ビデオ・コミック』、『スパイダーゲドン・ハンドブック』。
ちなみに、『スパイダーゲドン』とその関連作品は、ヴィレッジブックスから邦訳版が刊行されていた。
邦訳版は、本編である『スパイダーゲドン』と、前日譚の『エッジ・オブ・スパイダーゲドン』の単行本が一般発売され、更に、限定版のボックスセットには、『カバート・オプス』が丸々1冊オマケでつくという仕様であった。
上は『スパイダーゲドン』ボックスセットへのリンクだが、まあ、無論、現在は在庫は払底しており、ヘル高いマーケットプレイスの商品しかない。
・『スパイダーバース(vol. 3)』
2019年に刊行されたリミテッド・シリーズ(全6話)。ライターはジェド・マッケイ。タイインはなく、『スパイダーマン』のオンゴーイング・シリーズに話が繋がったりもしない、非常にコンパクトな話。
内容的にはスパイダーマン(マイルス・モラレス)が、なんだか不思議な力に巻き込まれ、無数の並行世界をさまよい、『スパイダーバース』でお馴染みの面々と遭遇した挙げ句に、謎の少女「スパイダーゼロ」と対面。彼女の存在によって引き起こされた異変に立ち向かう、という話。上の単行本にはリミテッド・シリーズ全6話を収録。
ちなみに同作は、2024年夏に小学館集英社プロダクションから邦訳版も刊行されている(流通限定での少部数の刊行だったが、幸い、電子書籍版も刊行されたので、手軽に読める)。
内容は、原書と変わらずリミテッド・シリーズ全6話を収録。
・『エンド・オブ・ザ・スパイダーバース』
2022~2023年にかけ、「スパイダーバース最終章」と銘打って刊行された、今のところの最終作。ライターは最終章にふさわしく、オリジナルのライターであるダン・スロットが担当。
例によって、2022年8月に先ぶれとなるリミテッド・シリーズ『エッジ・オブ・スパイダーバース(vol. 2)』#1-5(10, 10, 11, 11, 12/2019)が刊行。ナイト・スパイダー(フェリシア・ハーディ)、ハンター・スパイダー(クレイヴン)、スパイダーリザード、サクラスパイダー(初出は日本で刊行されたマンガ『デッドプール:サムライ』)といった、来たる本編に登場するスパイダーマンらが顔見世をした。
こちらがその単行本。リミテッド・シリーズ全5話を収録。
で、その後、ダン・スロットがライター、マーク・バグリーがアーティストを務める新雑誌『スパイダーマン(vol. 4)』誌の#1-7(12/2022-6/2023)にかけて、本編である『エンド・オブ・ザ・スパイダーバース』全7話が展開された。
今回のヴィランはベッコウバチ(クモに卵を産み付ける生態を持つ)を司る古代の女神シャスラ。クモの加護を受ける存在(=スパイダーマン)に“毒針”を打ち込むことで、己の配下に変異させる能力を持つ彼女が、マルチバース中のスパイダーマンを自身の配下とすることで、その力を増そうと目論む……的な話。
ちなみに最終章と銘打ちつつも、規模的には小さめな話で、先行する『エッジ・オブ・スパイダーバース』5話+『スパイダーマン』誌7話のわずか全12話で完結している。
そんな訳で、今のところはこれ以上の『スパイダーバース』のシリーズは作られていない。
追記:この原稿を仕上げてる合間に、マーベルから新作『スパイダーバースvs.ヴェノムバース』が2025年5月に始動するというアナウンスがあった(最終章とは……)。
こちらが『エンド・オブ・ザ・スパイダーバース』本編を収録した『スパイダーマン:エンド・オブ・ザ・スパイダーバース』の単行本。『スパイダーマン』#1-7を収録。
▼他メディアでの展開:
『スパイダーバース』のヒットを受けて、アニメや映画などでも、同作のコンセプトに倣った作品が登場した。
・カートゥーン版『アルティメット・スパイダーマン』:
オリジナルの『スパイダーバース』のコミックが刊行された翌年(2015年)に放映された、カートゥーン作品『アルティメット・スパイダーマン』シーズン3第9~12話で「ザ・スパイダーバース」と銘打った長編ストーリーが展開されている(日本では、ディズニーXD、テレビ東京などで「異次元のスパイダーマン」のタイトルで放送)。
さらに、2016年放送のシーズン4第16~19話でも「リターン・トゥ・ザ・スパイダーバース」なるストーリーが展開された(日本版は「異次元のスパイダーマン、再び」のタイトルで放送)。
いずれの話もピーター・パーカーやマイルズ・モラレスら、並行世界のスパイダーマンが集い、マルチバースの危機を救うという内容であった(見てないので淡白な紹介)。
・映画『スパイダーマン:スパイダーバース』
2018年公開のアニメ映画。タイトル通り、『スパイダーバース』のコンセプトを取り入れた作品。好評を受け、続編『アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)も制作された。完結作『ビヨンド・ザ・スパイダーバース』は制作中(有名な作品なので、本稿では特に語らない)。
・映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
2021年公開の実写映画。まあ、『スパイダーバース』の影響下にある作品(有名な作品なので、本稿では特に紹介しない)。
▼オマケ:『スパイダーバース』っぽいコミック
『スパイダーバース』のヒットにあやかり、似た感じのコンセプトのコミックも企画された。
・『ヴェノムバース』
2017年刊行のリミテッド・シリーズ(全5号)。ライターはカレン・バン。2016年末に創刊された『ヴェノム(vol. 3)』誌(1/2017-)を盛り上げるべく企画された作品。
オリジナルの『スパイダーバース』のフォーマットに倣い、先行してリミテッド・シリーズ『エッジ・オブ・ヴェノムバース』#1-5(8, 9, 9, 10, 10/2017)が刊行され、「様々な並行世界のヴェノム」を紹介した上で、本編であるリミテッド・シリーズ『ヴェノムバース』#1-5(11, 11, 11, 11, 12/2017)が刊行され完結した。
内容的には、ヴェノム・シンビオートの天敵である異次元の生命体「ポイゾンズ」に対抗するために、並行世界のドクター・ストレンジ(シンビオートと合体してる)に召喚された本家ヴェノム(エディ・ブロック)が、他の世界のヴェノム(キャプテン・アメリカとかデッドプールとかウルヴァリンとか、おなじみのキャラクターがシンビオートと合体してる)と共に戦う話。
核となる2本のリミテッド・シリーズ以外には、増刊号『ヴェノムバース:ウォー・ストーリーズ』#1(11/2017、様々な世界のヴェノム化したキャラクターを主人公にした短編集)が刊行された。
また、オンゴーイング・シリーズ『モンスター・アンリーシュド』#6-8(11/2017-1/2018)では、『ヴェノムバース』とクロスオーバーし、主人公のキッド・カイジュウとエルザ・ブラッドストーンが、ポイゾンズに寄生されたフィン・ファン・フーム(マーベルの古参怪獣)と戦う話が書かれた。
こちらは『エッジ・オブ・ヴェノムバース』の単行本。リミテッド・シリーズ全5話と、増刊号『ウォー・ストーリーズ』#1を収録。
『ヴェノムバース』本編の単行本。リミテッド・シリーズ全話を収録。
『ヴェノムバース』とのクロスオーバー話が収録された『モンスター・アンリーシュド』の単行本第2巻(全2巻)。
で、この『ヴェノムバース』はそこそこ好評を博し、早速翌年に続編であるリミテッド・シリーズ『ヴェノマイズド』#1-5(6, 6, 6, 6, 7/2018)も刊行された(ライターは前作に引き続きカレン・バン)。こちらはアースー616に顕現した新たなポイゾンズの軍勢と戦う話。
『ヴェノマイズド』単行本。リミテッド・シリーズ全5話を収録。
また2023年には、ヴェノムの誕生35周年を記念して、短編集『エクストリーム・ヴェノムバース』や、カレン・バンによる新作『デス・オブ・ザ・ヴェノムバース』なんかも刊行されたが、面倒くさいので詳細は略。
ちなみに『ヴェノムバース』、『エッジ・オブ・ヴェノム』、『ヴェノマイズド』の3作は、かつてヴィレッジブックスより邦訳版が刊行されていた。
このうち『ヴェノマイズド』は、『エンド・オブ・ヴェノムバース』と改題されている(多分、「ヴェノムバース」という引きの強い語感を重視したのだろう)。
あと、小学館集英社プロダクションは、2023年刊の『エクストリーム・ヴェノムバース』の邦訳版を刊行している(これも流通限定だが、電子書籍で買える)。
あと2022年には、スパイダーグウェンが、並行世界のグウェン・ステーシー(魔法のハンマーを入手してたり、超人血清を投与されてたり、コズミック・パワーを得ていたり……)と共闘するリミテッドシリーズ『スパイダーグウェン:グウェンバース』#1-5(5-6, 8-10/2022)なんて作品も出ている(ライターはティム・シーリー)。
こちらがその単行本。リミテッド・シリーズ全5話を収録。
以上、だいたい最低限触れとくべきことは書いたので、今回はこれまで。