■補足:「クレイヴンズ・ラストハント」当時の『スパイダーマン』
前回のエントリでは、「クレイヴンズ・ラストハント」の成り立ちを紹介したので、今回は「クレイヴンズ・ラストハント」の作中のトリビアルな話を。
▼スパイダーマンのコスチュームについて
本作「クレイヴンズ・ラストハント」では、スパイダーマンはおなじみの赤青のコスチュームではなく、いわゆる「ブラック・コスチューム」を着ている。
このブラック・コスチュームは、元々はスパイダーマンが異世界「バトルワールド」で手に入れた、生きているコスチューム(シンビオート・コスチューム、エイリアン・コスチュームとも)であったが、本話の時点ではそのコスチュームは失われており、代わりに普通の布で作ったブラック・コスチュームを着ている。
大まかに、ブラック・コスチュームの歴史について箇条書きにすると、このような具合になる。
・『アメイジング・スパイダーマン』#252(5/1984):ブラック・コスチューム初登場。異世界「バトルワールド」での冒険を終えたスパイダーマン、バトルワールドで手に入れたブラック・コスチュームを着てニューヨークに帰還する。
なお、スパイダーマンの「バトルワールド」での冒険に関しては、同月にスタートした、全12話のリミテッド・シリーズ『シークレット・ウォーズ』(「マーベル グラフィックノベル・コレクション」では、91号と100号で刊行予定)にて、徐々に語られていく。
・『アメイジング・スパイダーマン』#258(11/1984):地球に持ち帰ったブラック・コスチュームが変わらず機能する上、彼の思考を読んで、コスチュームが普段着に変形するなどの便利な機能も持つことに気を良くしたピーターは、#252以来、新コスチュームを使い続ける。
が、彼が寝ている間に、ブラック・コスチュームが勝手にピーターの身体を動かして出歩いていることが判明。ピーターはファンタスティック・フォーのミスター・ファンタスティックにコスチュームの分析をお願いしたところ、実はコスチュームが未知の生命体(エイリアン)であり、他者に寄生する生体を持つ(寄生体/シンビオート)であることが分かる。
ピーターはファンタスティック・フォーの助けを借りてコスチュームを引きはがすことに成功し、元の赤と青のコスチュームに復帰する。シンビオートはファンタスティック・フォーの拠点で封印される。
・『シークレット・ウォーズ』#8(12/1984):バトルワールドでスパイダーマンがブラック・コスチュームを手に入れた経緯がようやく明かされる回。
作中で、ヴィランとの戦いによりいつもの赤青のコスチュームが破けてしまったスパイダーマンは、謎の機械が排出したブラック・コスチュームを手に入れる。このコスチュームは自動的にウェブを精製する、傷ついても自己修復するなどの便利な能力があり、気に入ったピーターは、以降も使い続けることとする。
・『スペキュタクラー・スパイダーマン』#99(2/1985):ブラック・コスチューム姿のスパイダーマンを気に入っていたブラックキャット(フェリシア・ハーディ、当時のピーターの恋人)、お手製のブラック・コスチュームを作り、ピーターにプレゼントする。しかしピーターは、シンビオートを引きはがすのに苦労したトラウマから、このコスチュームをクローゼットにしまい込む。
・『アメイジング・スパイダーマン』#263(4/1985):いつもの赤青のコスチュームを手洗いしていたピーター、うっかり干すのを忘れ、スパイダーマンとして出かけなければならないのに、着ていくコスチュームがなく途方に暮れる。しょうがなく、ブラック・コスチュームを着て出動する。
以降、スパイダーマンは赤青のコスチュームとブラック・コスチュームを割と脈絡なく交互に着るようになる。
・『ウェブ・オブ・スパイダーマン』#1(4/1985):休刊した『マーベル・チームアップ』誌(スパイダーマンと他のヒーローが共演するというテーマ誌)に代わり創刊された新オンゴーイング・シリーズ。ファンタスティック・フォーの拠点から脱走していたシンビオートが、ピーターの身体に取り付き、彼と結合しようと目論む。
ピーターはシンビオートの弱点である強力な音波でコスチュームを倒そうとし、至近距離で教会の鐘の音波に身をさらすことでコスチュームを引きはがすが、自身も死にそうになる。重傷を負ったシンビオートは、最後の力を振り絞り、ピーターを安全な場所に動かした上で消滅する。
ブラック・コスチューム関連の新しいトラウマが刻まれたピーターだが、以降も割と普通に赤青のコスチュームとブラック・コスチューム(布製)を着回していく。
・『ウェブ・オブ・スパイダーマン』#16-18(7-9/1986)、『アメイジング・スパイダーマン』#279(8/1986)、『スペキュタクラー・スパイダーマン』#117(8/1986):『アメイジング』『スペキュタクラー』『ウェブ』3誌で展開されたストーリーライン「ミッシング・イン・アクション」の中で、ヴィランのマグマと戦ったスパイダーマンは大爆発に巻き込まれ、赤青のコスチュームがボロボロになる。これ以降、ブラック・コスチュームがメインに。
・『スパイダーマンvs.ウルヴァリン』#1(2/1987):特別号。謎のスパイ・シャルルマーニュの取材で冷戦下(当時)のベルリンに赴いたピーターは、東西陣営の諜報戦に巻き込まれた挙げ句、ウルヴァリン(シャルルマーニュの元恋人)と共闘することに。この時、スーツを持ってきていなかったピーターは、ベルリン市内のコスチューム・ショップでブラック・コスチュームの代わりとなる衣装を買おうとするが、店内のボディスーツの在庫は全部売り切れていた。代わりに店主は「馬鹿げた模様のコスチュームだが」と断りつつ、赤青のスパイダーマンスーツを貸してくれる(どうやら借りパクした模様)。
・『アメイジング・スパイダーマン』#289(6/1987):仇敵ホブゴブリンとの戦いでブラック・コスチュームが燃えてしまう。意気消沈するスパイダーマンだが、実はブラックキャットがもう3着分のブラック・コスチュームを作っていたことが判明。ブラック・コスチュームのメインの座は維持される(この数ヶ月後に「クレイヴンズ・ラストハント」が開始)。
……と言った具合な流れで、1980年代中頃~後半にかけて、スパイダーマンのブラック・コスチュームはレギュラーのコスチュームの座に就いており、1987年初秋の「クレイヴンズ・ラストハント」でも、メインのコスチュームとして登場することとなる。
が、「クレイヴンズ・ラストハント」の終了から半年後、1988年初頭に刊行された『スパイダーマン』#300号記念号(5/1988)において、実は生きていたシンビオートと、スパイダーマンに強い恨みを抱く元新聞記者エディ・ブロックが合体した「ヴェノム」が初登場を果たす。
ピーターの家を強襲したヴェノムは、たまたま部屋にいたメリージェーンに強烈なトラウマを残す。その後スパイダーマンは、因縁の教会でヴェノムを倒して帰還するが、メリージェーンは「ヴェノムを思い出す」という理由で、ブラック・コスチュームを着たピーターに近寄りたがらない。メリージェーンの話を聞いたピーターは、コスチュームを暖炉に投じ、もう二度とブラック・コスチュームを着ないことを宣言する。代わりにメリージェーンは、ベルリンでピーターが着ていた赤青のスパイダーマン・コスチュームを仕立て直したものをピーターにプレゼントし、再びスパイダーマンはオリジナルのコスチュームに復帰するのだった(『アメイジング・スパイダーマン』#300は、「マーベル グラフィックノベル・コレクション」36号として刊行予定)。
なお、「エイリアン・コスチューム」関連の一連の物語は、全2巻の単行本『スパイダーマン:ザ・コンプリート・エイリアン・コスチューム・サーガ』(「コンプリート」の名の通り、各巻500ページ前後の分厚い単行本)に収録されている。
収録作品は『アメイジング・スパイダーマン』#252-258、『スペキュタクラー・スパイダーマン』#90-95、それに『マーベル・チームアップ』#141-145、『マーベル・チームアップ』アニュアル#7。エイリアン・コスチュームを持ち帰ったスパイダーマンが、その正体に気づくまでの期間のコミックを全収録。
収録作品は『アメイジング・スパイダーマン』#259-263、『スペキュタクラー・スパイダーマン』#96-100、『マーベル・チームアップ』#146-150、『マーベル・チームアップ』アニュアル#4、『ウェブ・オブ・スパイダーマン』#1。
エイリアン・コスチュームを引きはがしたスパイダーマンが、ブラックキャットの手縫いのブラック・コスチュームを着る一方、エイリアン・コスチュームがファンタスティック・フォーの拠点から脱走し、ピーターをストーキングした挙げ句、『ウェブ・オブ・スパイダーマン』創刊号で、一応の決着が着くまでを収録。
▼メリージェーンとの恋愛
本作では、ピーター・パーカーは、メリージェーン・ワトソンと結婚している……というか、「クレイヴンズ・ラストハント」の始まる前月に結婚したばかりだった。
そもそもメリージェーンは、ピーターの高校時代に「メイ叔母さんの隣家に住むワトソンさんの姪」として初登場し、以来、『スパイダーマン』の物語のサブキャラクターとして露出してきた。
後にピーターの恋人のグウェン・ステーシーがグリーンゴブリンに殺された際(『アメイジング・スパイダーマン』#121(6/1973)での出来事)、メリージェーンが落ち込むピーターを元気づけようとしたのをきっかけに、2人は徐々に接近していく。
やがてピーターは、『アメイジング・スパイダーマン』#182(7/1978)で、彼女に婚約指輪を送り、結婚を申し込むのだが、この時はメリージェーンは「自分は1人の男性に縛られるのは好まない」と言い、指輪を彼に返している。
その後、メリージェーンは叔母さんと共にフロリダに引っ越してしまい(すぐに戻ってくるが)、その間にピーターは、スパイダーマンとして遭遇したブラックキャット(フェリシア・ハーディ)と恋仲になる。ただしブラックキャットは、「スパイダーマン」というコスチューム・ヒーローに好意を持っており、そのマスクの下のピーターへの興味は薄いという、特異な関係だった(ピーター自身は彼女との付き合いをそこそこ真摯に考え、自身の正体を彼女に明かして、家庭を持つことも考えたりしていた)。
やがて、『アメイジング・スパイダーマン』#257(10/1984)で、自身のアパートでピューマ(トーマス・ファイヤハート)に襲われたピーターは、たまたまアパートを訪れていたメリージェーンを部屋の外に追い出しつつ、エイリアン・コスチュームを身にまといピューマを撃退する。
その後ピーターは、メリージェーンにいつもの言い訳をしようとするが……実はメリージェーンは、以前からピーター=スパイダーマンであることを知っていたと打ち明ける(後付けの設定では、メリージェーンは「スパイダーマン」第1話目の、ベン叔父さんが撃たれた事件の際に、「自宅にピーターが駆け込んだ直後、彼の家からスパイダーマンが出ていった」所を見ていた)。
続く『アメイジング・スパイダーマン』#258(11/1984)で、ピーターは、アパートから出ていったメリージェーンを追おうとするが、たまたまアパートにブラックキャットがやってきたり、エイリアン・コスチュームが自分の身体を操っていることが判明したりといったアクシデントに見舞われ、中々彼女に会うことができない。
最終的に同号のラストでメリージェーンが再びピーターのアパートを訪れたことで、ふたりは互いのことを話し合う機会を持つ。
次号、『アメイジング・スパイダーマン』#259(12/1984)で、メリージェーンは、「ピーターの秘密を知った代わりに、自分の秘密も話す」として、自身の過去──夫に苦労させられ自身の人生を持てず死んだ母親と、10代の内に結婚した末にシングルマザーとなった姉の影響で、表面的には奔放で恋多き女性を演じ続けていた──を話す。そしてメリージェーンも自身と同様に「家族の喪失」を心の傷として抱えていることを知ったピーターは、改めて彼女を強く意識することとなる。
とはいえピーターは「自分の今の恋人はブラックキャットなので、メリージェーンとはいい友達であり続けよう」と思ったものの、わずか数ヶ月後の『スペキュタクラー・スパイダーマン』#100(3/1985)で、ピーターはブラックキャットと性格や生き方が決定的に合わないと結論し、彼女に別れを切り出す。
その後の『スペキュタクラー・スパイダーマン』誌上では、ブラックキャットは自分をふったピーターへの意趣返しを目論み、世界的な暗殺者/傭兵のフォーリナーの恋人となった上で、フォーリナーにスパイダーマンを倒させようと試みるが、最終的にピーターへの未練故にフォーリナーを裏切り、彼の追及をかわすため、しばらくアメリカを離れる(『スペキュタクラー・スパイダーマン』#129(8/1987)での出来事)。
他方、『アメイジング・スパイダーマン』誌の方では、ピーターとメリージェーンの関係は徐々に進展していき、遂に『アメイジング・スパイダーマン』#290(7/1987)のラストで、ピーターはメリージェーンに再度プロポーズをする。
続く#291(8/1987)の冒頭で、メリージェーンは一旦は返事を保留し、ピッツバーグに住む姉ゲイルの元を訪れる(なおブラックキャットがアメリカを離れることとなる『スペキュタクラー』#129は、この号と同月の発売)。
そして、次号#292(9/1987)で、メリージェーンはピーターの協力により、姉と和解する一方で、犯罪に手を染めていた父親を警察に引き渡すことで、家族に抱いてきたわだかまりを解消。前向きに生きる決心を固めたメリージェーンは、ピーターのプロポーズを受け入れる。
で、#292が発売された翌週に刊行された『アメイジング・スパイダーマン』アニュアル#21(9/1987)で、晴れてピーターとメリージェーンは結婚式を挙げるのだった(そして翌月から「クレイヴンズ・ラストハント」が始まる……)。
ピーターがメリージェーンにプロポーズしてから結婚するまでの話は、単行本『スパイダーマン:ザ・ウェディング・アルバム ギャラリー・エディション』に収録されている。
収録作品は『アメイジング・スパイダーマン』#290-292、『アメイジング・スパイダーマン』アニュアル#21、『スペキュタクラー・スパイダーマン』アニュアル#7、『ホワット・イフ』#20-21(それぞれ「スパイダーマンがメリージェーンと結婚しなかったら?」、「スパイダーマンがブラックキャットと結婚したら?」という可能性の世界の話を掲載)、それにマーベル・コミックスの様々な歴史を概観する資料本『マーベル・サーガ:ジ・オフィシャル・ヒストリー・オブ・ザ・マーベル・ユニバース』#22(ピーターとメリージェーンの出会いから結婚までの歴史を特集した回)、それに1960年代後半に刊行されたパロディ誌『ノット・ブランド・エック』#6(2/1968)に掲載されたスパイダーマンの結婚にまつわる短編。
▼バーミン
本作の狂言回しであるバーミンは、元々は「クレイヴンズ・ラストハント」を手掛けたJ.M.デマティスとマイク・ゼックのコンビがレギュラーで担当していた『キャプテン・アメリカ』誌の#272(8/1982)で初登場した。
初登場時のバーミンは、謎の「マスター」の指示でキャプテン・アメリカを狙う刺客として登場。その後の『キャプテン・アメリカ』#275-278(11/1982-2/1983)で、マスターの正体は、キャプテン・アメリカの仇敵バロン・ジモ(ヘルムート・ジモ)であり、彼に協力する遺伝子学者アーニム・ゾーラ(実際にはゾーラが造り出した人造人間プリムスの変装)によって肉体を変異させられた存在であることが判明する。
この一連のバーミンとバロン・ジモ関連の話は、『キャプテン・アメリカ・エピック・コレクション:モンスターズ&メン』に収録されている。
収録作品は『キャプテン・アメリカ』#267-285と『キャプテン・アメリカ』アニュアル#6、それに『キャプテン・アメリカ』#268とクロスオーバーしてる『ディフェンダーズ』#106(4/1982)。
また、「クレイヴンズ・ラストハント」の作中で繰り返し言及されている、「スパイダーマンがキャプテン・アメリカと協力してバーミンを倒した」というエピソードは、『マーベル・チームアップ』#128(4/1983)でのこと(こちらもデマティスがライターを担当)。
内容的には、食い物を求めてカーニバルや食料品店を襲うバーミンを、スパイダーマンとキャプテン・アメリカが共闘して倒すというもので、当時『キャプテン・アメリカ』のライターだったデマティスによる、キャプテン・アメリカとガールフレンドのゲイルとの関係の掘り下げの方にページが割かれており、バーミンの方の掘り下げは行われていない。
この『マーベル・チームアップ』#128は、なかなか単行本に再録されなかったが、近年刊行された『クレイヴンズ・ラストハント:デラックス・エディション』に、「クレイヴンズ・ラストハント」の関連作品と共に収録された。
収録作品は、
・「クレイヴンズ・ラストハント」:全話。
・『アメイジング・スパイダーマン』#15:クレイヴンの初登場回。
・『マーベル・チームアップ』#128:キャプテン・アメリカ&スパイダーマンvs.バーミン。
・『アメイジング・スパイダーマン:ソウル・オブ・ザ・ハンター』: 「クレイヴンズ・ラストハント」の完結編である描き下ろしグラフィックノベル(詳細は後述)。
・ 『ホワット・イフ?』#17:「もしもクレイヴンがスパイダーマンを殺していたら?」という仮想の話。ライターはリチャード・ホゥエル。
・ 『センセーショナル・スパイダーマン』アニュアル’96:同号に掲載の「クレイヴンズ・ファースト・ハント」(『アメイジング・スパイダーマン』#15をクレイヴンの視点から振り返った話。ライターはやはりデマティス)を収録。
・ 『アメイジング・スパイダーマン』#634-637:クレイヴンの一家が、スパイダーマン、ケイン、エゼキエルら、クモの能力を持つ者たちを襲撃していく「グリム・ハント」編と、クレイヴンの過去を描いた「ハンティング・ザ・ハンター」編を掲載。いずれもライターはデマティス。
・『ホワット・ザ--!?』#3:パロディ誌に掲載された、「クレイヴンズ・ラストハント」を題材としたスパイダーハムの短編。
なお、「クレイヴンズ・ラストハント」の後、デマティスがライターを務めていた『スペキュタクラー・スパイダーマン』#178-184(7/1991-1/1992)で展開された「チャイルド・ウィズイン」ストーリーラインの中で、バーミンのキャラクターの掘り下げが行われ、彼の本名(エドワード・ウィーラン)や、彼が子供の頃に父親から虐待を受けていたことなどが明かされている(またこれ以降、バーミンはキャプテン・アメリカのヴィランではなく、スパイダーマンのヴィランとして定着していく)。
▼「ソウル・オブ・ザ・ハンター」
「クレイヴンズ・ラストハント」は、発表以来読者の大反響を呼び、スパイダーマンのマイルストーン作品となった。そんなある日、マーベルの総編集長の座に就いていたトム・デファルコは、読者からの手紙をデマティスに見せつつ、「君は自殺を賛美しちまったな!」とジョークを飛ばした。
が、根が真面目なデマティスは、この言葉を重く受け止めてしまった。その「自殺は賛美すべきではない」と言う、彼の人生哲学を元に、彼とマイク・ゼックが再び組んで送り出した同作の続編が、1992年刊行の描き下ろしグラフィックノベル、『スパイダーマン:ソウル・オブ・ザ・ハンター』である。
同作は、自殺をしたことで現世に留まり続けることになってしまったクレイヴンの魂を、彼との間に縁を結んでしまったスパイダーマンが解放する……という物語。
こちらがグラフィックノベルの表紙。同作は再版や単行本への収録、電子書籍化などは中々されず、上で紹介した『クレイヴンズ・ラストハント:デラックス・エディション』の電子書籍版でようやく手軽に読み返せるようになった。
以上、今回はここまで。