■ニューX-MEN:E・イズ・フォー・エクスティンクション
■New X-Men: E Is For Extinction
■Writer:Grant Morrison
■Penciler:Frank Quitley
■翻訳:田中敬邦 ■監修: idsam
■カラー/ハードカバー/1,999円 ■ASIN:B0BC1V6MD1
「マーベル グラフィックノベル・コレクション」第17号は、2001年より気鋭のライター、グラント・モリソンを迎えて新展開を行った『ニューX-MEN』誌の最初のストーリーラインを単行本化。
グラント・モリソンは、マーベル・コミックス社のライバルのDCコミックス社で、同社の看板タイトル『ジャスティス・リーグ』を、(この当時の市場の潮流であった「王道路線」で)再生した『JLA』を1997年より手がけ、高い評価を受けていた作家。
2000年に刊行された『JLA』#41で、ひとまず連載を完結させたモリソンは、そのままマーベルに引き抜かれ、マーベルの看板タイトル『X-MEN』誌の再生を任された。
内容は、『ニューX-MEN(vol. 1)』#114-116(7-9/2001)の全3話で展開された表題作「E・イズ・フォー・エクステンション」編と、『ニューX-MEN(vol. 1)』#117(10/2001)に掲載された「デンジャー・ルームス」を収録。
ちなみに本来の『ニューX-MEN:E・イズ・フォー・エクスティンクション』の単行本では、#116と#117の間に、増刊号『ニューX-MEN アニュアル』#1(9/2001)に掲載された「ザ・マン・フロム・ルームX」を収録しているのだが、本単行本ではなぜだかカットされている(なので、大分薄い単行本になっている)。このアニュアルは、モリソンの『ニューX-MEN』の重要キャラクターであるゾーンの初登場号である。
こちらがオリジナルの単行本のKindle版。『ニューX-MEN』#114-117とアニュアル#1を収録。
で、本作の続刊『ニューX-MEN:インペリアル』(『ニューX-MEN(vol. 1)』#118-126を収録)は、「マーベル グラフィックノベル・コレクション」第75号として刊行予定。だいぶ先過ぎる(オリジナルの「The Official Marvel Graphic Novel Collection」では、『E・イズ~』が17号、『インペリアル』が34号なのだが)。
なお、グラント・モリソンによる『ニューX-MEN』の連載(#114-154+アニュアル1冊の41話)は、連載当時に全話が全7巻の単行本にまとめられているが、「マーベル グラフィックノベル・コレクション」で刊行されるのはこのうち2巻分(#114-126の13話)である。
そんな訳で今回は、モリソン期の単行本の残り5冊を大まかに紹介する。
まずは第3巻『ニュー・ワールズ』。『ニューX-MEN』#127-133の7話分を収録。
『アニュアル』#1で初登場し、X-MENに加入したゾーンが、ミュータントの少年を救おうとするシンミリした話(#127)に始まり、やはりモリソン期の『ニューX-MEN』の重要キャラクターであるファントメックスが初登場し、プロフェッサーX、ジーン・グレイと共に超人兵士製造計画「ウェポン・プラス」によって生み出された改造人間ウェポンXIIと戦う話(#128-130)、サイクロップスと学園の生徒ビークの日常に焦点を当てた回(#131)、壊滅したジェノーシャを舞台に、生き残った人々と死んだマグニートーの「遺言」を巡る話(#132)、マーベルの初期のムスリム系キャラクターであるダストの初登場回(#133)と、バラエティに富んだ内容。
続いて第4巻「ライオット・アット・エグゼビアズ」。『ニューX-MEN』#134-138の5話分を収録。
内容的には、エグゼビア高等学院で、自身の能力の訓練に励む若きミュータント、クェンティン・クワイア少年が、ニューヨーク市内で著名なミュータントが殺害された事件をきっかけに、「キッド・オメガ」を名乗るようになり、ミュータントの権利を獲得するための闘争と内ゲバを開始する表題作「ライオット・アット・エグゼビアズ」(#135-138)と、そのプロローグである「キッド・オメガ」(#134)。
その後の『X-MEN』関連誌でレギュラー・キャラクターとなる新世代ミュータントの、キッド・オメガ、ステップフォード・カッコーズ、グロブ・ハーマンらに初めて焦点があてられたエピソードである。
第5巻『アサルト・オン・ウェポン・プラス』は『ニューX-MEN』#139-145の7話分を収録。
中身はエグゼビア学院内で起きた殺人事件を、X-MEN別動隊(当時刊行されていた『エクストリームX-MEN』誌の主役チーム)に所属するビショップとセージが捜査する「マーダー・アット・エグゼビア・マンション」(#139-141)と、ウルヴァリン(ウェポンX)、ファントメックス(ウェポンXIII)の二人が、彼らを改造した秘密機関「ウェポン・プラス」の持つ情報を探るため、たまたま遭遇したサイクロップス(ジーン・グレイにエマ・フロストとの浮気がバレて家出中だった)と共に組織の拠点に乗り込む表題作「アサルト・オン・ウェポン・プラス」(#142-145、クリス・バチャロがゲスト・アーティストとして参加)の2本のストーリーラインになる。
「アサルト・オン~」は、第3巻収録話の続きで、キャプテン・アメリカ(ウェポンI)やニューク(デアデビルの古典的名作『デアデビル:ボーン・アゲイン』で初登場した改造兵士)もウェポン・プラスの生み出した存在だったことが判明するなど、ウェポン・プラス関連設定のさらなる掘り下げが行われている。
続く第6巻「プラネットX」は、『ニューX-MEN』#146-150を収録。モリソン期のクライマックスとなるエピソード。
謎の敵の巧みな攻撃により、プロフェッサーXとX-MENが全滅。正体を現した「彼」は、有志のミュータントらを味方につけ、マンハッタンを占拠する(ネタバレになるので詳細は伏す<いやまあ、表紙に登場してる人が「彼」なんだけどさ)。
最終7巻『ヒア・カムズ・トゥモロー』は、『ニューX-MEN』#151-154を収録。
可能性の未来で、モリソン期の『ニューX-MEN』に登場した無数のキャラクターたちが、謎の「フェニックス・エッグ」を巡る争いに巻き込まれていくというエピローグ(モリソンは『JLA』でも「レギュラーキャラクターらが可能性の未来で絶望的な戦いに挑み、戦死する」話を書いているので、まあ、こういうネタが好きなのだろう)。ゲストアーティストのマーク・シルベストリが全話を描いている。
なお、モリソン期の『ニューX-MEN』は、高い評価を受けたため、その後2006年に、全話を1000ページ強のハードカバー単行本全1巻に完全収録した『ニューX-MEN オムニバス』も刊行された。
この豪華単行本は、非常な好評を博し、2012年、2016年、2023年の3度にわたり増刷され(1回出せば終わりなコレクターズ・アイテムの『オムニバス』単行本では珍しい話だ)。
上のリンクは2023年度版。中々の価格だが、1000ページのハードカバーなのでしょうがない(それでも毎度売り切れるのだから、大したものだ)。
なお、『ニューX-MEN オムニバス』は電子書籍版も刊行されている。この原稿を執筆している時点(2023年2月2日)では、なんか期間限定キャンペーンをやっていて、2684円で、1000ページ強のモリソン期『ニューX-MEN』全話が手に入る模様。お得過ぎる(上で紹介した単行本全7巻の電子書籍版を買うより安い)。
ただしこの本「全1巻」なので、ファイルサイズが3ギガ以上ある。購入時は端末の容量に注意。
また2008年には、オリジナルの全7巻の単行本を、そこそこ厚めの全3巻の単行本として再編集した『ニューX-MEN バイ・グラント・モリソン:アルティメット・コレクション』が刊行されている。
上はその第1巻。まあ、端末の容量と相談しつつ、全7巻か、全3巻か、全1巻かを選ぶとよいだろう。