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GGD(GetGood Drums)と、つよつよドラムミキシング ドラムバス編


前書き

前回、Top Down Mixingの手順に従い、マスターバスの処理について紹介しました。
今回は、次の手順となる、ドラムバスのエフェクトチェーンを解説します。

お待ちかね、いよいよドラムトラックに直接アプローチです!

内容としては、コンプとEQをかけるのみでなのですが、各プラグインの紹介と、各設定の意図などを解説します。
完コピor類似の処理を施すことで、ドラムサウンドがめっちゃかっこよくなります。

GGDをお持ちでない方も、是非試してみてください。

本記事は、GGDのドラムライブラリと、NollyによるGGD公式チュートリアルを実践し、その内容を解説する趣旨となります。
つよつよドラムトーンを目指しましょう!

前提事項については、下記"導入編"をご参照ください。

本記事は、一連のシリーズとして連載しています。
Nollyのメソッドを踏襲し、Top Down Mixingの手法にて進めて参りますので、まずは下記、マスターバス編をご一読頂き、マスターバスエフェクトを適用した上で、本記事の内容を実践頂く事をお勧め致します。
下記記事には、Top Down Mixingの概要と、最初に実施するマスターバス処理についての情報を記載しております。

それでは、早速行ってみましょう。

ドラムバスの処理方法

ドラムバスの処理については様々な方法がありますが、今回は、下記の処理で完結します。

  • パラレルコンプ

  • EQ

え、それだけ…?

はい、それだけです。

私のトラックの場合、見た目上は1つしかプラグイン刺さっていません。

ドラムバスの設定

と言うのは半分冗談で、Slate DigitalのVirtual Mix Rackが刺さっており、実際には3つのプラグインが入っています。

Slate Digital Virtual Mix Rack

今回はGGDのチュートリアルの内容解説を趣旨としている為、Nollyと同じ、Slate Digitalのプラグインを使用します。

今回は、すべての処理をアナログモデリング系プラグインで行います。
やることはEQとコンプですが、アナログ機材には、それぞれ独特のキャラクタが在りますので、機材の個性も含めたサウンドに仕上げていきます。

よって、プラグインの解説に近い内容となりますが、プラグインの機能や特性を、どのように活用するのか、と言う観点の参考になれば幸いです。

また、生音系のドラムMixをする際、帯域の棲み分けなどは一旦意識せず、ドラムの音作りを行っている意識する事が重要です。

ドラムバスの処理は、ギターでいう所の、プリエフェクトやアンプを弄った後の、ポストエフェクトのようなものです。
あまり細かい事は考えず、感覚のままにツマミを捻りましょう。

では、それぞれ見ていきましょう。

パラレルコンプ

Slate Digital FG-Stress

では、初めに、パラレルコンプです。
Slate DigitalのFG-Stressを使用しています。
Empirical Labs Distressor(ディストレッサー)をモデリングしたプラグインです。

Distressorは、多様なトランスフォーマーベースのアナログコンプレッサーや真空管コンプレッサー(特に1176やLA-2Aなど)の要素を組み合わせ、デジタル時代にも通用する「アナログシミュレーター」としての位置付けを持っています。

要するに、歪ませたり、仕組みの異なるコンプを使い分けたりと、色々出来るHYPERコンプです。

本家Empirical Labsや、UAD等、複数社から同モデリングプラグインがリリースされています。

Nollyのドラムバスセッティングでは、以前は別途バスコンプのチャンネルを作り、そこにドラムトラック各種をsendしてパラレルコンプを実現していたそうですが、最近はドラムバストラックに直接コンプを刺して、MIXを調整してパラレルコンプを実現しているそう。

Cool.

このパラレルコンプのセッティングですが、なんとNollyご本人も、「Eric Valentineがやってたのをパクったんだ、HPFが入っているから全帯域に効いてる訳じゃないのは分かるが、詳しくはわからん」と言っています。

まじかよw

というわけで、詳しく見ていきましょう。

パラレルコンプのセッティング解説

まず、Inputレベルは6.5と、程々に突っ込みます。
リダクション量の目安は、概ね10dB程度です。

Atackはかなり遅め、Releaseは早めのセッティングです。
一般的には、全体を慣らすようなイメージですね。
しかし、DestressorのAtackはそもそも爆速な点に注意が必要です。
1176とかの感覚に近いです。

次にレシオですが、20:1と、超強力なコンプレッションをかける設定となっており、これがポイントです。
ほぼリミッティングのような設定ですが、パラレルコンプでは、思いっきり潰しにかかる事は、良くあります。
しかし、Destressorの場合は、意外とソフトニーな設定になっており、思っているほど激しいコンプレッションがかかる訳では無いです。
別種のコンプレッサーを使う際は、ニーをソフト寄りにすると良いでしょう。

ここからはDestressor特有の機能になりますが、ハイパスフィルタとDetector Emphasisボタンについて解説します。

まず、HPFボタンですが、カットオフ周波数が80Hzに設定されています。

このHPFは重要で、HPFがあるから、DrumsBusで直接パラレルコンプを適用できます
一般的にパラレルコンプ処理では、別途パラレルコンプ用トラックにsendするルーティングを取ります。

理由は、低音域は聴感音量よりもエネルギーが大きい為、キック等の低音パーツを、あまりsendしないように調整して、キックに過剰に反応し、不適切にトランジェントやパンチ感を損なうことを事を防ぐためです。

HPF未搭載のコンプを使う場合は、別途サイドチェインを組むか、パラレルコンプトラックを立ち上げて、キックを送り過ぎないようにする、と言う手段が有効です。

もう一つのDetector Emphasisボタン、画像のHPFの下にある、凸っぽいマークのボタンです。
こちらは逆に、主に中高音域(確か5K以上辺りだったはず)の検出感度を向上させます。
スネアのアタック等、トランジェントに対して、コンプレッサーが強めに作用するようになります。

最後に、このコンプのサウンドを、いい感じにブレンドします。
今回は、32%のブレンドとしました。
Nolly曰く、25~40%の範囲でブレンドするとのこと。

OutPutは、バイパス時の音量とあまり変化が出ないよう設定しますが、若干盛っても良いです。

この処理では、ドラムバスから出るサウンドに、大きな変化をもたらします。
全体的にファットでビッグな印象になります。
ディケイ、サスティンが強化されつつ、タイトさが失われません。
サウンドに芯がしっかりと存在する為、圧のある強力なサウンドに変化します。
空間が大きく感じるとでも言いましょうか。

Distressorだからこそ出せる変化だと言える側面もありますが、駆動方式は、このセッティングだとFETだったと思います。(DistressorはOpt駆動も可能)
正直、Distressor固有のキャラクタに依存している為、まったく同じ音を目指すことは難しいですが、考え方の側面を、特にHPFと高域感度調整を別のプラグインで処理する、と言うアイデア等を参考にしてみて頂ければと思います。

カッコイイ音が鳴れば、それが正解です。
私は、このプラグインのサウンドに、すっかりハマってしまいました。

それでは、最後に、今回使ったFG-Stressのセッティングを載せておきます。

FG-Stressのセッティング

  • Input : 6.5

  • ATTACK : 8(遅いセッティングだが、FETタイプなのでかなり早い)

  • RELEASE : 2.5(速い)

  • Output : 5

  • REATIO : 20:1

  • HPF : ON

  • 凸ボタン : ON

  • MIX : 32%

EQ

Slate Digital FG-N & CS-EQ

EQについては、あまり詳しく語る事はありませんが、アナログモデリングのプラグインを二つ使用しています。

単純にサウンドが好みである、と言う側面が強いので、好みに合わせていろいろと試してみて頂ければと思います。

FG-Nについて
Neve 1073という、クラシックなハードウェアEQのモデリングです。1970年代の設計だそうで、メタルMIXにおいても、良く使われています。

同機種のプラグインは、WavesのNave 1073や、IK MultimediaのT-Racks製品群に、EQ73というものがあります。

音のイメージは、ウォームでパンチのある質感と、シルキーな高域と言われています。
今回はその特徴を生かし、二つの帯域をブーストします。

  • 5.5kHz : 1.8dBブースト

  • 110Hz : 1.2dBブースト

全体的に、トーンがグッと持ち上がると同時に、前に出るようなパンチ感が付与されます
アナログ系プラグインは、倍音特性やシェイプに個性があるため、お気に入りの機種を探すのも一興です。

CS-EQについて
SSLの4000E-Seriesをベースとした設計ですが、Slate Digital独自のカスタムが施されたオリジナルシリーズです。
アナログモデリング系ですが、倍音付与はほとんどなく、自然なフィーリングを得られます。

設定としては、12kをグイっと持ち上げます。
こちらはハイシェルフですが、少々特殊な特徴があります。せっかくなので、目視で確認してみましょう。

CS-EQで12kを3dBほどBoostした際の周波数特性

単純なシェルフではなく、ベルとシェルフを組み合わせたような形ですね。
12kをブーストしているわけですが、2kあたりから徐々に持ち上がっていることが分かります。

Nollyはシンプルに、こいつで12kを上げたサウンドが好きですと言っていましたが、わたしもこのプラグインをかけた際、

なんかカッコよくなった!!

と感じました。(語彙力)

12kをハイシェルフ…というと、キンキンした音になるイメージだったのですが、全然そんな感じはありません。
中音域も自然に盛り上がる事で、相対的にシルキーな質感になっているのだと思われます。(感覚)

このように、ツマミ一つで「なんとなくかっこいい音になる」感覚は、アナログ機材ならでは、ではないでしょうか。

それでは、最後に、CS-EQのセッティングを載せておきます。

  • 12kHz(HF) : 3.5dBブースト

  • OUT : 2.0dBブースト

以上。

終わりに

今回は、ドラムバスのエフェクトチェーンについて紹介しました。

処理としてはコンプとEQをかけただけ、なのですが、それぞれ、どのような意図で、何を狙ったセッティングなのかが重要です。

ここまで読んで頂いた方はお気づきかと思いますが、ドラムバスのコンプ、EQは、盛る方向で処理しています。

MIXは、基本的に、カット方向でEQを適用するケースが多いですが、メタルにおけるドラムの音作りの場合は、とにかく盛る事も視野に入れましょう。
(もちろんカットも重要です。各キット編で詳しく解説します。)

デカい音は、音がデカいのです。

ただし、単純に音量がデカいわけではなく、パラレルコンプで倍音やサスティンを盛ったり、アナログEQの特性を駆使して「なんかいい感じ」にしたり、空間系のトラックを活用したりと、多角的に音をデカくする必要があります。
この話は、OH/ROOM編で、改めて触れてみたいと思います。

今回のような音作りを行う場合は、アナログモデリング系が有効な場合も多々ありますので、色々試してみましょう。

次回以降は、各キットの音作りについて解説したいと思います。
キックから行こうかな。

最後にちょっとお知らせ

私の音楽制作プロジェクト、UnhellDivA(アンヘルディーバ)のオリジナルロンTを作りました。
オーバーサイズタイプでゆる~く着れるので、長時間のMIX作業での疲労感を軽減(???)しつつ、そのままコンビニまで出られるように若干オシャレっぽいデザインになってます。
MIXって、DTMに携わる方なら誰しもが悩み、苦行だと感じる事も多いと思います。
せっかくなら、少しでもテンションブチ上げてMIXに挑めればいいな~という事で、ご紹介させて頂きました。

それでは、また。

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インフェルノ木村
ありがとうございます! 頂いたサポートでもっと曲作ります!