RenderMan XPU™ ピクサーの新しいハイブリッドCPU+GPUレンダリング技術 Part3
はじめに
YouTubeに説明動画をUPしておりますので、併せてご覧ください。
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XPUとRIS画質比較
RenderMan XPU™についての解説、今回は3回目(最終回)となります。
今回はRenderMan XPU™とRISの画質比較やサンプルシーンを用いたルックデブを行います。
Mat Material
Metal Material
Glass Material
レンダリング設定が同じ場合、明らかにXPUの方が速いということはわかりましたが、ではそのレンダリングされた画像に違いはないのでしょうか。
RISとXPUそれぞれのレンダリング画像を横並びにしてみました。
このように見比べてみると分かるのですが、ライトの明るさが若干異なります。今回のシーンで使用しているライトはドームライト1つとエリアライト1つだけのシンプルな状態です。マテリアルの再現性はどちらも変わらないように見えるのですが、透過屈折を伴うガラスの質感の場合はガラス自体の色や影の色などに明らかな差が見られました。また同じサンプリング設定でもノイズの出方が若干異なっています。
これらを見るとRISとXPUでまったく同じにはなっていないと思われるかもしれませんが、Pixar自身もXPUの説明の中で、現在のXPUは最初のリリースであり、ルックデベロップメントとシェーダオーサリングの作業のイテレーションを加速するというというところに焦点を当てており、プロダクションレンダリングに取って代わるものではないと言っています。
ですので、XPUではサポートされていないパラメータや設定がまだいくつかあり、そのリストも明示されています。
機能と制限 (pixar.com)
サンプリングについてもXPUではアダプティブ サンプリングをサポートしていないため、デフォルトの設定では実はRISの方が有利に働くようになっているのです。
しかしながら、そのレンダリングパフォーマンスは圧倒的であり、GPUとCPUどちらのパフォーマンスも生かせるため、ハードウェアを無駄に遊ばせるということもなくなります。
HannyBee ルックデブ
それらのことを承知の上で、Pixarが配布しているサンプルシーンを使ってルックデブを行ってみました。
この蜂のモデルはMayaのXGenを使って体毛を生やしています。
レンダリング時間は記載の通りです。
XGenを使用したキャラクターのルックデブを行ってみましたが、光の拡散具合に若干の差異が生じていますが、こちらも4倍近いレンダリング速度となっています。
アニメーションレンダリングの画質比較
↓クリックすると該当箇所から再生されます↓
プロダクションレンダリングに使用できるか
RenderMan XPU™はまだ最終レンダリングに使用しないようにとPixarはアナウンスしています。それにはいくつか理由があります。
・対応していないマテリアル(Luma Shader,MaterialX)
・対応していないライト(Mesh Light、Light Portal、Light Link)
・対応していないジオメトリ(NURBS、ネスト化された誘電体)
・対応していないレンダリング設定
(アダプティブサンプリング、ロシアン ルーレット、個別のレイデプス)
・対応していないインテグレータ(PxrUnified、PxrVCM)
代表的なものだけで上記の機能をXPUは扱うことができません。
最初に記述したようにRenderMan XPU™はまだ最初のリリースを迎えただけなので、最も効果的なシェーダーオーサリングとアセットルック開発に使用するようにと推奨されています。
しかし、RenderMan XPU™の開発は継続的に行われていくということですので、将来的にはREYSからRISの時がそうであったように、RISに取って代わるプロダクションレンダラーとなることを期待したいと思います。
その時にはこのようなシーンを何倍もの速さでレンダリングすることができるようになるでしょう。
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3回に分けてお送りしました「RenderMan XPU™ ピクサーの新しいハイブリッドCPU+GPUレンダリング技術」は以上で終了となります。
ご閲覧ありがとうございました。
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