ジャック・アマノの “アメリカNOW” 分水嶺をイエロー・ストーンで実体験
分水嶺ってことば、運命の分かれ道みたいな意味で……自分では使ったことはないけれど、聞いたか、あるいは読んだことはある。そういう人、多いんじゃないでしょうか?
水がどっちに流れるかを決める地点=尾根が分水嶺。山の上に雨が降ると、尾根の両側に水は別れて流れて行くので。日本の本州なら、空から降って来た雨水は中央の山脈によって日本海側に流れるのか、太平洋側に流れるのかが分けられる。その山々が分水嶺ということ。アメリカの場合は国土がデカいので、太平洋側に流れるかメキシコ湾側に流れるかというケースだけじゃなく、大西洋とメキシコ湾に分ける場所もあるし、カナダ側との分水嶺もあるという話だ。
公園内に立っている分水嶺の標識。ここの標高は約2,557メートル(タイトル写真)
アメリカの分水嶺について習ったのは中学だったか、高校だったか……。ぼんやり記憶はある。しかし、まさかその40年以上も後に自分がアメリカの地で目の当たりにするとは思いもよらなかった。
英語だと Continental Divide というんだね。ちょっとわかりにくくない? 日本語の分水嶺は意味を的確に表してる。大陸分水嶺って呼び方もあるらしく、そっちだと英語からの翻訳っぽいものの、まだ意味は伝わりにくい。いずれにせよ、イエロー・ストーンに着いた日、公園内の道沿いにその標識を見つけた。標高も書いてある看板だったが、それがアラスカからメキシコまでを貫く分水嶺を示すものと気付くのには、少し時間がかかった。そして、気づいたのちには、「ここで別れてんのか……太平洋に流れて行く水か、メキシコ湾(=大西洋)に流れて行く水かが」と小さく感動した。
湖の西側=太平洋へと繋がっているのがこっち側。道路の向こう側からは、メキシコ湾に水は流れて行く
コンティネンタル・ディヴァイドの看板をもう一か所で発見。そちらには水草が水面を覆った池があった。Isa Lake(イサと読む人も、アイサと言う人もいる)。私自身の中では池(Pond)に含まれるサイズだけど、湖(Lake)と名づけられている。自分の勝手な感覚なんで、湖と池を分けてるのって、本当にサイズなのか? と調べたら、決め手は水深とわかった(少なくともアメリカでは)。深いと湖で、浅いと池なんだって。太陽光が底まで届くか、届かないかがポイント。深けりゃ広いのが道理なので、理論的には間違っていても、現実としては“広いのは湖”と考えるの、ほぼ合っているということじゃないだろうか。
水色が綺麗なエクセルシオール・ガイザー(グランド・プリズマティック・スプリングの隣り)の水は、太平洋側に流れて行くはず
Isa Lake はどう見ても小さかったけれど、実は深いのかもしれない。しかし、それ以上に Isa Lakeって“池”にしとくにはもったいないものなのだ。なんと、分水嶺上にあるので、ここから大西洋とメキシコ湾、両方に水が流れてっている!
Fire Hole River 高温の温泉は結構な水量があって、川にジャンジャカ流れ込んで湯気をもうもうと立てている。日本人としては、かなり勿体ない感を感じてしまった
東端からの水はメキシコ湾へ、西の端からは太平洋と水は流れて行っている。その場所に立って水面を眺めると、「凄いことだなぁ、この小さな湖から……。パッと見、なんでもない池だけど」と、さっきより大きく感動した。“池”を低く見る気はまったくないけれど、アメリカの人たちも、PondよりLake の方が合う……って考えたんじゃないのかな?
以上 第33回 終了