ジャック・アマノの“アメリカNOW” 感染者数が500万人を突破したアメリカ テキサス、フロリダなどの感染数減少傾向は本物?
アメリカの感染者数が500万人を超えたね。フロリダやテキサス、ミシシッピなどの感染爆発州では、さすがの強面・共和党・州知事たちも対策を講じていて、数字は落ち着く方向に向かいつつあるのかも。……と思ったら、ノース・ダコタなどで感染者が急増している一部地域があったりと、まだまだアメリカが平和になるのには長い時間が必要な感じだ。私の今いるインディアナ州は、学校の始まったその日に1人の生徒に感染発覚があった。ただ、この5日間で初めて州内の新感染者が1,000人を切った(=673人)と安堵してるような報道がされてもいた。1,000人切って喜んでるところにこの地域の深刻さがよく出てると思う。人口、州全体で675万人しかいないのに、つい最近まで毎日1,000人以上増えてたってんだから。ということで、ワイルド・ウェストの話は1回休み。レースを含めたスポーツの現状など、見たり聞いたりしたことを書いてみる。
ペンシルベニア州でのPCR検査の様子。主としてナショナルガードがこうした役目を担っているようだ(タイトル写真=US NATIONAL GUARD)
自分の周りを見る限り、マスク着用はかなり浸透してきてる。地方政府が義務付けをしなくても(なぜしない?)、全米チェーンのスーパーが、「マスクをしていないお客さんお断り」とかテレビCM流し始めて、その動きがかなり広がってる印象。ウーバーだって、今やマスクをしてないと乗れないんだからね。もちろん、まだ全然気にしてない人も、残念ながらちゃんといる。そこがアメリカなのか? 太り過ぎで普段から息が荒い人とか、マスクをしにくい人もいる。その辺りはちょい悩ましい……。
昨年5月26日のインディー500のスタートの様子。インディー500のレースデイは、40万人以上の観客を集めい、単一のスポーツイベントとして1日で世界最大の観客動員数のイベントとして知られている 写真=INDYCAR
8月1日、オハイオ州コロンバス郊外で翌週7日から始まる予定だったインディーカー・レースが突如延期に。その3日後、インディ500の無観客開催が発表になった。30万人以上を集めるのが恒例の、世界で一番歴史の長いビッグ・レースは、5月末から8月末へと3ヵ月も延期されたってのに、インディアナ州とその周辺部のパンデミックが沈静化しなかった……どころかイヴェントが近づいた頃にまた悪化し始めたんで、観客を入れるのを諦めるしかなくなった。収容人員の半分、さらには4分の1に減らしての開催も検討したけれど、ついにギヴ・アップ。
インディー500のスタート前セレモニーの様子。有名な俳優、歌手、スポーツ選手らがセレモニーに招かれて盛り上がる。この様子を見ると感染防止策がいかに困難かわかる 写真=INDYCAR
それでも、モータースポーツの置かれた状況は、他のスポーツに比べるとかなりマシなんだよね。自動車レースは、もう観客の数を制限してのイヴェント開催に漕ぎ着けていて、幾つものレースが感染拡大を巻き起こさずに行われてきているんだから。ほかのスポーツは? というと、メジャー・リーグ・ベースボールは先月末に開幕してすぐ、選手やコーチに感染者が多数出たチームが現れ、同じケースが続発。観客を入れての試合を行う見通しは立ってなくて、シーズンを最後まで続けられるかに黄色信号が灯っている状況。
バスケットボールとアイスホッケーのプロフェッショナル・リーグはプレーオフをつい先日スタートさせたけれど、コンタクト・スポーツだけにアウトブレイクの起こる可能性に常に直面してると思う。
アメリカでダントツ一番人気のアメリカン・フットボールもコンタクト・スポーツ。果たして彼らはどうなるか。「プレ・シーズン・マッチはナシ」と発表したNFLだけど、シーズンを無事にスタートさせ、続けて行くことができるかね? 正直わからない。
資金力も強大なNFLをもってしても、そんな感じ。9月の開幕を彼らは大々的に宣伝しているけど、「今のアメリカはスポーツどころじゃない」というのが厳しい現実だね。 ゴルフも無観客での開催が続いてる。4月開催が恒例のマスターズが7ヶ月も遅らせた11月にリスケジュールした時には、「そこまで遅らせなくても……」と思ったが、今になってみると、あの判断が最もスマートだったかも。
「我々は致死的なウイルスとの戦いにある。この戦いで勝利を収めるには、絶対的なスケールでの我々の集団的な強さ、愛、献身が必要なのです」写真=U.S. Department of State
実際に都市部のど真ん中まで乗り込んで行って取材をしてはいないけど、郊外で見ている限り、アメリカで感染が収まらないのって、結局は国全体が強い危機感を共有して、同じ方向を向いて解決にあたっていないからと思う。その動きを先導してるのが大統領なんだから処置ナシ、か。人々がプロ・スポーツを楽しめなくなってるのは、国民の責任でもあるけど、それ以上に政治の責任、大統領のせいってことだね。しかし、インディー500が無観客になるなんて、ホント、今でも信じられない。
以前のスタージスの様子。見渡す限りハーレー! これまた感染防止は困難
このご時勢に25万人だか50万人だか集まるバイク・イヴェントがサウス・ダコタではあって、そこに集まる面々はマスク着用なんか全然しないで、毎晩バーで宴。インディアナポリスの郊外でレストランを覗くと、お客さんが随分入ってる。それも、アウトドアのテーブルじゃなく、室内に。ロス・アンジェレスじゃ、巨大な屋敷でプライヴェート・パーティを大々的に開いてたお金持ち集団が摘発されて、市が水道とかを止めるペナルティ課した、なんてニュースも近頃あった。なんでもかんでも自粛すりゃいいってものじゃないかもしれないけど、アメリカ人は警戒しなさ過ぎ。
ホワイトハウスのコロナウィルス・タスクフォースのアンソニー・ファウチ医師が言ってたでしょ。「私なら当分の間、インドアのレストランで食事をしないし、飛行機にも乗らない」って。空港の保安検査官たち、全米で1,500人以上も感染したっていうし。
以上 第23回終了