私の履歴書 江崎利一(江崎グリコの創業者
グリーコーゲンというのは、濃厚栄養剤で、それが日本の貝類、ことに牡蠣の中に多量に含まれていいるということを佐伯博士(初代内務省栄養研究所長)が学会で発表した。
グリコーゲンは、生化学的には、次のような機能を持っている。食物を食べると、炭水化物はブドウ糖となって腸管から消化吸収されるが、そのうち余剰分はグリコーゲンとして肝臓に貯えられる。そして、組織における消費につれて、再びブドウ糖に分解されて血液中に送られる。いわばエネルギーのもとのようなものである。だから、我々が水だけで20日以上も生き続けたり、激しい運動に耐えられるのも、一つはグリコーゲンのためである。江崎は大正8年春に有明海に近い筑後川防波堤で牡蠣の干し身作りの工程で、溢れている煮汁を見てグリコーゲンの製造を気がついたそうだ。
事業においても、合理化で能率が向上しているが、それ以上の能率ということになると、精神の持ち方で決まってくる。能率研究の目的でアメリカへ行っての帰り、船上で一行の座談会が行なわれたが、そのとき結局どんな機械文明の時代になっても、最高の能率をあげるためには、そこに働くわれわれの精神、すなわちモラールに帰着するという結論を得たことがある。健康も事業も、精神によって左右されるわけである。(精神の持ち方で決まる)