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留学日記 3 Budapest




街中を走るトラム

貴腐ワイン、プスカシュ、ソボスライの国。それがハンガリーについて知っていた事の全てだ。しかし今まで訪れた国の中で最も美しい国の一つだった。ドナウ川の真珠などと称されるブダペストは、その名に恥じない程に魅力的だった。
僕の住むリュブリャナからは、バスで6時間。日本でも同じだが、最も安い移動手段はバスなのだ。実際55ユーロほどで往復のチケットが購入できた。そこでヨーロッパ中に散らばる大学の同期と集まることになっていた。木曜日の深夜1時にリュブリャナ市内のバスターミナルに向かうと、かなりの人数の人が待っていた。それに乗り込みブダペストへと向かう。乗り心地は最悪だ。窮屈で固い椅子。自分の体力と忍耐を引き換えに格安で移動する。それは世界のどこでも同じようだ。こんな旅ができるのはきっと若いうちだけだ。朝方ブダペストについた。バスを降りるとあまりの寒さにびっくりした。今の季節、リュブリャナは、昼間は22、23度で朝晩は15くらいまで下がる。しかしブダペストは8度だった。その後無事に友達と合流し、腹ごしらえをすることになった。適当に見つけたハンガリー料理の店に入り、レバーの炒め物を頼んだ。正直いうとあまり美味しくなかった。それはアルゼンチンのパンパの様に単調で変わり映えしない味がした。パンパは教科書でしか見た事ないけど。ハンガリーの建物自体は石造りでかなりくたびれた様子だった。ところどころ塗装が剥げ、壊れかけている建物も多く見た。それはそれでノスタルジーを感じられて良いのだが。日本の市役所などに感じる無機物感というか、無駄な装飾がなく殺風景な感じ。それを見てロシアぽい感じがすると友達は表現していた。それと同時に色使いが独特なのだ。緑やオレンジ、ピンク、水色などしかしそれらはうまいこと調和していて、統一感のある街並みなのだ。それは写真の彩度を全く同じ数値に設定したかのように均衡が取れ、調和していた。また区画整理もしっかりされていて歩きやすい街だった。どこに行くにも購入した72時間パスを使えば、トラム、地下鉄、バスに乗り放題で行きたいところにどこでも行ける。ここまで交通機関が街の隅々まで張り巡らされた都市も多くないだろう。しかもそれは深夜の2時くらいまで走っているため終電を機にする必要がない。そのため街中の飲み屋は、ヨーロッパでは珍しく遅くまで空いていてそこは多くの人々で賑わっていた。その辺りの飲みの文化が日本とかなり近く感じて親近感を覚えた。街の規模感に関しても、日本に近いものを感じた。というのもしばしヨーロッパの都市においては、本当に都市の周りの一部が栄えて15分も歩くともう郊外という形の都市が多い。一方ブダペストはおそらく栄えているところ端から端まで移動すると、おそらく1時間ほどかかるに違いない。小高い丘に登って街を見下ろすと見渡す限り建物が広がっていた。他にも共通していることとしては、温泉の文化とハンガリー料理だ。ハンガリーには至るとこに温泉がある。地理的にプレートの裂け目に位置しているらしくその間から温泉が湧くようだ。しかし日本のように男女別れて全裸で入るわけではなく、水着を着用して入る。そこでおじさんおばさんがお喋りしてゆっくりしている姿をよく見た。夜には若者向けにそこで音楽フェスのようなものも行われるようで、全世代にこの温泉の文化が愛されていることが分かる。それからハンガリー料理については、ヨーロッパの料理とは、かなりかけ離れたものであると感じた。おそらくトルコやジョージア、アルメニアあたりの料理に近いのではないかと感じた。ケバブ以外トルコ料理知らんけど。2日目のお昼に食べたのチキン料理が絶品だった。それはチキンを生クリーム、パプリカパウダーで煮込んだ料理だったのだが、辛くはないスパイシーさを感じつつ生クリームの柔らかい味のバランスが絶妙な一品だった。ヨーロッパ料理によくあるはっきりした味付けではなくて、味の複雑さ、奥深さを感じ、楽しむ料理が多いと感じた。実際かなり遅い時間に歩いていても危ないと感じなかった上に、スリや物の推し売りなんてことも無かった。人々親切に道案内をしてくれたり、ハンガリー語を教えてくれたり。きっとヨーロッパの国でどこか行くべきところはある?と聞かれた自信を持ってこの国のことをお勧めできるくらいには素敵な国だった。


中央市場
ブダペストの街並み

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