BloodBagBrainBomb/爆発の中心に。
2024年6月14日、Vtuberでありラッパーのピーナッツくんが4thアルバム『BloodBagBrainBomb』をリリースしました。こちらはその曲の感想記事…ではありません。それを書けるほどこのアルバムをまだ理解できていないことをまず前提とさせてください。
そのうえで、私の足りない頭を爆発させながら聞きまくっていて気付いた点を記す備忘録です。おぼろげながら見えてきたのは、音楽に向き合う彼の姿と、彼の中心部分にある『オシャレになりたい!ピーナッツくん』という創作群に対する誠意でした。
1.『BloodBagBrainBomb』からの『Yellow Big Header』
まずこのアルバムは、『血と汗。精神と肉体。破壊と創造。棺桶と揺籠。ダンスフロアとモッシュピット。輸血袋と脳爆弾。』をイメージしたものです。(以下引用より)
確かにえぐい曲だらけなんですが、往々にしてこういう場合にはその「エグみ」がしつこく感じるもので、「もういいよ」という感覚になるんですね。でも、全曲聞いて思うことは「読後感良すぎじゃね?」というものでした。
正確には読後感じゃなくて「聴後感」というべきなのかな?めちゃくちゃ中華の辛い奴食ったはずなのに、サウナでぶっ倒れるくらい頭やっちゃったはずなのに、ライブで脱水症状直前だったはずなのに、「なんで俺こんなに世界に愛されているんだろう?」ってなるあの感覚にすごく似ている。
このアルバムでこうなるその理由を自分なりに考えてみた結果、やはりこのアルバムの構成にあるんだなといつものように思ったのです。曲順にはものすげくこだわってると思ってるんです毎回。今回ばかりはある程度当たってると思ってるのですみませんがお付き合いください。
まずタイトル曲の『BloodBagBrainBomb』。逆再生っぽいなと思ったら有識者の皆様が最速で探知されていたので感服しておりました。いやほんとすげえ。
ここで「あれ…アニメ…?」と思ってからの『Yellow Big Header』です。タイトルからまずアニメ『オシャレになりたい!ピーナッツくん』バージョンのピーナッツくんが浮かんできて、チャンチョのターンでダメでした。
(7/3訂正 上記ダークモカチップフラペ子ちゃんはぽんぽこアフレコとの記載をしておりましたが、有識者より指摘をいただきました。謹んで訂正させていただいております。先達がいるってのはありがたいです)
『BloodBagBrainBomb』では逆再生や救急車の音、ドラムのモッシュな雰囲気で不安を煽り立てるような構成ですが、逆再生がアニメの曲だというなら、『ピーナッツくん』が何だったのかを兄ぽこは忘れていない、ということになります。
『Yellow Big Header』=黄色デカ頭はまんまチャンチョやんね。言われてみればね。まあそれは半分冗談なんですが、この曲すごく疾走感があって、Green DayやAvril Lavigneの『Sk8ter Boi』を思い出しました。ハイパーポップを基調としながらもピーナッツくんとしては珍しいロックな感じでとてもいい。プロデューサーnerdwitchkomugichanの本領発揮。
曲がめちゃくちゃかっこいいのは当然として、この曲の真骨頂は『アニメキャラの声で歌ってる』ことなんですよね。no skript writer!のコールも暗喩的です。リリックはファンタジー全体の話をしているようで、全部Yellow Big Header≒ピーナッツくんに収束していき、そこから彼のファンタジー≒『オシャレになりたい!ピーナッツくん』の世界を肯定して拡散する、そういう構造に見えます。
ってなことを書いていたらMVも発表されましたね。X上ではアニメとの関連性に対しての考察も多く、私自身も視聴しながらMVに描かれている部分を見たうえで自分の書こうとしていることがただの妄想なのかを見つめていました。多分妄想だと思います。
これが2曲目という点にメッセージ性を私は強く感じました。でも次からの曲構成でそのエグみになる要素を打ち消すように、ピーナッツくんの音楽家としての裾野の広がりを見せていきます。
2.『Squeeze』『not ok』『Liminal shit』
『Squeeze』 こういう記事書く奴に対する強烈なパンチラインをかましていくスタイル。最高。ラッパーはそうでなくちゃって思いながらこれを書いています。半端な気持ちで半端なもの書くならやめちまえ。勝手な解釈が許されるなら、hiphopはそういうライフスタイルのぶつかり合いであって、どこまで本気なのかをお互い試す、そういうものとして受け止めています。
とにかくこの曲はリリックの本気みが素晴らしい。Squeeze「絞りだす」ってフレーズは、<ピーナッツくん>っていう潤沢な才能やキャラクターを取っ払っていった奥にあるhiphop根性みたいな、そういう後ろ暗さがあって。その全方向ディスを支えるディープで音が少ないビートも正統派hiphopです。8小節を明確に聴き手にも意識させるリリック構成なのもクラシックな感じで。ナッツらしさよりも伝統的なhiphopへのリスペクト、それを表現したかった曲なのかもしれないと感じています。
『not ok』は転じてフローを重視したメロディアスな曲です。ビートはヤギ・ハイレグ。この曲は別記事書きます。端的に申し上げるなら、<ピーナッツくん>の中に揺れて動く兄ぽこの姿がこの曲に詰まっている気がする。『GRWM freestyle』ではダイレクトに描かれている兄ぽこの心境ですが、『not ok』はその姿がヤギハイビートの上でチラチラ見える感じが、その、大好きです。
そちらも出来上がりましたら、よろしければご覧ください。
『Liminal Shit』 ビートはピーナッツくん本人。気のせいかもしれませんが、リリックの当て方に気楽さというか、肩の力が抜けた「ちょうどいい」感を強く感じます。リリック自体は社会に振り回されるShit感がめっちゃ出てて攻撃的で重たいんですが、ビートの軽さやスタッカートや銅鑼の遊び心と相まってくそったれな状況を軽妙に切り出しています。
Liminalの基本訳は「境界面の」。会社で言えば中間管理職みたいなイメージを持たせます。「皺寄せ」「サラリーマン」「下請け」などのフレーズで、人気Vtuberやらラッパーやら言われていますが、顎で使われてる一人だぞ、ということを歌っているのだと捉えています。
社会風刺はhiphopの十八番。トラディショナルなhiphop感も出しつつ自分の持ち味を押し付けていく、そういう巧みさを感じる曲です。
個人的に好きなフレーズが
なんですよね。ぽこピーの商売人としての矜持を感じます。描かれている「結局俺たちも社会の下請け」であり「僕のwallet 流れ着く君のマーニー」という業態としての構造は否定しないながらも、それでも「そりゃ違うだろ」っていうこだわりが見えるのがとてもいい。「みんながほしいものをあげたい」っていうのをこっち(視聴者側)が感じられる。ここら辺の良識がしっかりしてるからこの兄妹推せるんだよな…
特徴的だと思うのは、この3曲はそれぞれ表情が全然違うんですよね。同じアニメなのに作風が全然違う、みたいな。挑戦的でありながらも統一感もしっかりあってめちゃくちゃバランスいいなって聴きながら思ってました。
3.『ぼくたちにEarthはない』『Hanged Man(feat.レオタードブタとヤギハイレグ)』『Dance for What?』
『ぼくたちにEarthはない』 ahamoとのコラボレーション曲であります。『期待に応える』という意味でピーナッツくんはほんとに職人だなって心底思ってます。ahamoの特徴である世界中どこでもつながる(どこでもは言い過ぎか)っていう特徴と、世界のどこでもYouTuberをやってしまう自分たちの危なっかしさを不朽の名作『俺たちに明日はない』とEarthを掛けて表現する。おいおい洒落ききすぎてんじゃないすか。
原題の『Bonnie and Clyde』からもわかる通り男女の2人組であるところも、ぽこピー感と合ってていいチョイスだなって思いました。映画では最後バッドエンドなところも兄ぽこは意識してそう。
今回のアルバムは全体的にhookの強烈な曲少ないな、それが全体の調和に一役買ってるんだなって勝手に思ってるんですが、この曲はCMソングということもありキャッチーなhookで目立つようにしている点にも技術を感じて一人でにやにやしています。気持ち悪いですね。
『Hanged Man(feat.レオタードブタとヤギハイレグ)』 はい無事に死亡しました。初見の時はマジでぶっ倒れるかと思った。ヤギハイの息が詰まるようなライムからレオブタの低く響かせるようなフロー、そしてピーナッツくんが運転するかのような曲全体を引っ張っていくリリック、最後はStop me i fyou can. We are the Hanged Man.でフィニッシュ。
個人的な感想。LBYHのEP『HIGH NECK』で示されていた数々の暗喩を全回収して突っ走ってきました。『Ghost Town』で示された<逆位置のタロットカード>は正位置の逆を示しつつも、同時にハングドマン=吊るされ男(刑死者)を彷彿とさせます。伝統的なタロットカードデザインでは、ハングドマンだけが正位置の時点でひっくり返っていますので。ハングドマンの逆位置は「徒労、やせ我慢、投げやり、自暴自棄、欲望に呑まれる」です。
ハングドマンにはもう一つ意味があり、正位置の場合は「忍耐、試練、着実、努力」などの意味になります。通過儀礼としての死を超えた先にはより高みを目指せる運命である、というのがタロットカードのハングドマンが示す道しるべです。
私は「着実」のフレーズから『The Iron Steppers』を思い出しましたし、「努力」からは『舌打ち』の「むかつくなら努力しなさい それしかないからやるしかない」が頭をよぎりました。思い返せばHIGH NECKの各曲はLBYHとしての「急がない、でも確実にカマしていく」スタンスを確かめるためのものだったようにも思えてきます。
「逆位置のタロットカード」としか曲中では言っていないので想像の域を出ないのですが、でもなあ、We are the Hanged Man.って言われちゃったらもうそうとしか思えないんですよね。hanged menじゃなくてthe Hanged Manなのも、複数形としての個々ではなくLBYHを形容する固有名詞的な扱いをしたかったのかな、とか。
レオブタの「休み明けのガキ」も良かった。「ズル休み気分」と歌っていた『Ghost Town』での感傷的な雰囲気を全部炎の中に投げ込んで、暗い森をバギーで抜けて突っ走ってくる、そういうイメージを持っています。
拙作で恐縮なんですが、HIGH NECKの感想を書かせていただいた最後に車の話をしているんですよね。レンタカー云々のやつ。Hanged Manでは最後ピーナッツくん(の声)がかっ飛ばしたところで鳥肌止まらんかった。レンタカーなんてとんでもないな。運転してるのはピーナッツくんで、彼らがLBYHを牽引するような、そういう力強さも感じます。
ビートはナーコムさんなのが意外でした。ヤギハイが作ってるもんだとおもっていたので…すごくヤギハイビートっぽさも感じていて、リスペクトしているのも知っていたので、知ったかぶりな顔をする後方腕組おじさんみたいな表情をしていました。気持ち悪い。
『Dance for What?』 ビートはピーナッツくんと玉田デニーロさんとの共作。この曲からはピーナッツくんがライブなどで共演したみなさんから得たものを形にしたらこうなった、のかなって。特にPAS TASTAさんから影響を受けている話はいろいろなところでされていますし、Tomgggさんとの共作『Dance on the table(from ひ~!ひ~!ふ~!)』も思い出します。
先ほど『Squeeze』で伝統的なラップの話をしましたが、この曲では音楽的には結構真剣に遊んでいるというか、意図的に作り上げた不安定さの中にピーナッツくんのフローで確かなラインを引くような音楽になっています。そのためにかなり耳に残るし、聴けば聴くほど好きになるスルメ曲だなって。
現代音楽の最先端をいくミュージックメーカーたちに刺激を受けて、自分でもそういう音楽をしてみたい、って思っても全く不思議でないし、PAS TASTAの皆さんも全力でピーナッツくんの音楽を楽しんでいる感もあって素晴らしい相乗効果だなと感じます。個人的にEP『GOOD POP』も聴きこんだので、この挑戦を私自身心から喜んでいます。
先ほど不安定な音楽に、みたいな話をしましたが、そこがリリックとかみ合ったときに言い表せないような感情を抱きます。
この部分めちゃくちゃ好きなんですよね。『Kids Room Man』を思い出す切なさがあります。この前段のリリックも、確かなものを感じられる瞬間が音楽の中にある、他人の意見なんてあてにならないぞって歌っていて。それに深く頷いている私がいました。そのうえで「ぼくら似た者同志」なんてね。掌で踊らされてるわあ。
『Dance for What?』のタイトルも、「運命はいつだって数奇」「覚めない夢」などのリリックも、どこまで走るかわからない自分の在り方も全部正直に形にしたんだろうなって。あくまで私個人の感想ですが、結構頻繁に露悪的な表現をしがちですが、基本的には自分に誠実なリリックを書くし、根っこはロマンチストだよなって。この曲を聴きながら特に思いました。
『Liminal Shit』もそうですが、「ピーナッツくんが曲作ったから最高!」って感じよりは、他のビートよりも「ピーナッツくんの内面」がリリック面でも顕れているためにより好ましく感じてしまいがち…っていうのが実際に起こっている心の動きなのかなって思っています。
逆のことも思っていて。だとするとこれらの曲が突出してないってことは他の曲の完成度エグくないか?って。やっぱすごいんすよこのアルバム。
4.『GRWM freestyle』『Birthday Party (feat. 月ノ美兎)』
『GRWM freestyle』不勉強でGRWMがわからないため調べたのですが、『Get Ready With Me』だったんですね。朝、家を出発するまでの様子をASMRよろしくYouTubeに収めたものらしいです。見たことはないんですが、なるほどと曲の構成に得心がいきました。
この曲に一番兄ぽこを感じている。非常に描写的で、滋賀で生きている彼を感じます。『Gordon kill the Thomas』の間奏部分を聴いているときの感情と同じ。サムネイルや曲、動画撮影をしている彼(と妹)の姿を幻視せずにはいられません。この次の曲の『Birthday Party』との対比を考えたときに、Vtuberとしての生き方とその風景、生身として生きている中での情景をどちらもよく見つめているのをすごく感じて、心がギュってなる。
陽キャ陰キャみたいな雑なくくりは良くないので丁寧に書きたいなって思っているんですが、外の明るさを眩しいと思ったり、電話に出るのに勇気が必要だったり、真面目に考える自分に萎えたりするのってめちゃくちゃわかる人多いんじゃないかな。配信者を仕事として考えた場合には、炎上のリスクは0に近づけることはできたとて、常にあることには変わらないわけで、擦り切れる気持ちもわかる。
これは次の『Birthday Party』のメッセージでもある、と思っています。つまり配信者としてのリアルが『Birthday Party』で歌われているのに対し、『GRWM freestyle』は<ピーナッツくん>として生きる自分の今を確かめる曲でもあるのかなって思います。だとすればこの曲順には大きな意味がある。
『Birthday Party』 大手VTuber事務所にじさんじに所属する<月ノ美兎>さんとのコラボレーション曲です。彼女のあだ名は「委員長」。
みなさんも感じていることと思いますが、この曲の特徴はなんといってもピーナッツくんを喰ってしまうほどの委員長の声の存在感。ビートも空間を取り込むような浮遊感を作り出していて、何より声とのマッチングがヤバい。ピーナッツくんは彼女の空間になってしまった曲の中で戦うような印象すら持ちます。『Unreal Life』も同じような構造だったように思います。
旧知の中でありながら、ともすれば上位存在として委員長を見ているのかも、とまず妄想していたんですね。そしてそれに力強く抗うようなピーナッツくんの歌声を聴きながら、対決というのはお互いの力への信頼があって成立するよな、とか思ってました。委員長もその意図を汲み取っているかのような優しくも支配的な歌声で空間を彩っていました。赤色の極彩色?
この曲はピーナッツくんへの誕生祝い曲でもあると同時に、彼と彼女との中にある共通見解を作品として製作したのだと思います。
証拠みたいなものが委員長の配信で存在する、というのはフアンの中でも結構周知の事実でありまして、そこから導き出される血生臭いリリックの解釈があります。この曲のリリックは直接的な死と誕生を意味しているのではなく、自らの立脚点であるVTuberの在り方をグロテスクかつキャッチーに描き出すことを目的としているんだろうなって。
この場合の死は引退や卒業を内包する表現です。失踪も含むでしょう。『GRWM freestyle』で歌われている「炎上」「擦り切れ」は人気とはいえVTuberの宿命であります。それでもVTuberとして新しい人生を歩むことができた自分の祝福的な部分も強く感じているのでしょう。
この歌詞などはめちゃくちゃ象徴的だと思っていて。これは引退を示唆した歌詞にも見えますが、どこから見るか問題でもっと深くなるんですよね。「引退した後」の視点からだと、「かつて共に活動したVTuberとしての〇〇」を見ることができますが、「活動する前」の視点からだと「VTuberとしてしか生きられなくなってしまった〇〇も、実はいなくなっていたりしていない」「VTuberに囚われてしまった、本来の〇〇を見つめている」歌詞になるなって。そうなると最後の
もめちゃくちゃ深くなるんすよね。はじ「まる」ではなくはじ「める」なのもポイント高い。この死と誕生は最終的に自分で決めることになる。どちらの選択をするとしても、それを祝福するBirthday Partyです。
この2人で歌うならこのテーマ以外はありえなかった、今ならそう思えます。委員長は先駆者のひとりでありながら挑戦的な企画を次々と考えつき、VTuber概念そのものの枠を押し拡げる一人でもあり、彼女の持ち味を考えた結果のリリック群でもある、そういう風に思います。
いやほんと、すげえ曲作るなあ。
5.『Wha U takin' bout(feat. lilbesh ramko & hirihiri)』『Bloody Mosquito』
『Wha u takin bout (feat. lilbesh ramko & hirihiri)』 作曲は lilbesh ramko さんと hirihiriさん。最近のピーナッツくんの音楽性は、ライブやコラボレーションの中でさらに変質しているのはこのアルバム全体を見ても間違いのないことです。この曲はピーナッツくんの中には(まだ)ないサウンドと爆発力があって、ちょっと異質でもあり、だからこそこのアルバムに入っているんだろうなって感じています。
まず歌詞の『Wha U takin' bout』からもメッセージが伝わるんですが、スペルの脱落は確実にわざとだと思ってまして。文法的にこの分成立しないんですよね。正確には「What do you talkin' about?」つまり「何のこと言ってんの?」です。スペル脱落によってリスナーに「何言ってんの?」と思わせる手法ですね。リリックではtalkin' boutって言ってますしね(笑)
分類するとハイパーポップってことになるんでしょうが、ケロケロさせてメロディアスに歌うって感じでもないんですよね。徹底的にデジタルなチップチューンや破壊的な歌唱の中に、逆説的な生の音楽を見出しているような感じを強く受けています。リリックもあっという間に過ぎていく活動のせわしさを表現していて、忙しさや煩わしさがそのまま「生きる」ことを示しているように思われます。
バンドサウンドやクラシックな音楽と同等な存在感をデジタルの中に見出していく、それは自らのガワがデジタルでもあるVTuberとの同調を感じる部分もあるのかもしれません。いやいちゃもんだなそれは。そんなこと考えなくても音楽的な共鳴を感じたのだな、で説明がつきそうです。
良い曲ですよね。大好きです。
『Bloody Mosquito』 これライブのトリ曲ですよね?合ってますか?このアルバム『BloodBagBrainBomb』の音楽的な総決算と言ってもいいと思います。全部ぶちまけて踊れ!みたいな。ライブなら最後でみんなぶっ倒れてほしい、みたいな。
ビートはダンサブルで明るく、モッシュな感じも出しつつもクリーンでもある。リリックの密度は高いですが駆け抜けるようにストンと終わる。気持ちよく終われるラインをビシッと作っています。
リリックも自分の活動、自分のスタイル、どう見られるかよりどう在りたいかを示すように作られていて、首めっちゃ振ってしまうよねって。
どれも素晴らしいパンチライン。聴いてて気持ちいい。私たちが応援しているのはこいつなんだって胸を張って言える存在であってくれる、そういう頼もしさがあります。BBBBといえばこの曲、と言いたくなるような曲だなって思っています。
この曲で終わらない、という点が、この記事を書く理由でもありました。
6.『Dreamworks』
まず曲の前に、ある配信について触れさせてください。
この配信の最後のほうにピーナッツくんが凸をしに来るんですが、そこでの刀也くんとの掛け合いでぽろっとピーナッツくんが言ったんですよね。
これ聞いててめちゃくちゃ心が痛かった。刀也くんが終わり際にさらっと「音楽頑張って」「ぽんぽこチャンネルはマジで見てる」って言うんですよね。活動者としてのリアルと気持ちの配分が見えてるんだなって思います。
アニメを作ってほしい、という視聴者は少なくはないと思うんですが、どうしたってそこに割くリソースがなさすぎるというのは良識がある視聴者なら推して知ることができると思うんです。
活動全体としても継続性のある=収益性のある活動をメインにするのは当然で、コンテンツの充実という意味ではアニメ制作に価値をおくことはできるでしょうが、それ以上をアニメに求めるのは難しいと思います。
一番苦悩してるのは兄ぽこであることははっきりしていて、アニメの決着をどうするのか、ピーナッツくんというガワだけ残して、音楽と動画でやっていくのか。その答えが『Dreamworks』であり、このアルバムから見える『ピーナッツくん』だと私は思っています。
一通りアルバムを聴いた最後にこの曲が流れるんですが、はじめて聴いた時にぶわーっと上記の配信のことを思い出し、そしてアルバムの曲順と違和感のことを考え始めました。そして、このアルバムは彼の中にある『オシャレになりたい!ピーナッツくん』なんだと私は結論づけています。
爆心地の中心にいたのはミュージシャンのピーナッツくんではなく、クリエイターであり自分の作品を愛する一人の人間であることは、『Dreamworks』のリリックの端々から感じ取れます。特に最後、ピーナッツくんじゃない<兄ぽこ>のターンが来た時には気持ちが決壊していた。
なぜ最初に『たんさいぼうのうた』の逆再生を入れたのか、2曲目が『YellowBigHeader』だったのか、『HangedMan』がLBYH単体の曲ではなかったのか、『GRWM』や『Birthday Party』でVTuberの曲を歌ったのか、
たくさんのコラボレーションや挑戦的な曲を入れたのか。
全部全部持っていきたい一人のわがままな主人公がそこにいて。
私たちはそいつが大好きなんですよね。
そのことを気付かせてくれたから、私にとって『Dreamworks』は特別な曲です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
書いてあることと意見が違っていても、ここまで読んでくださる私とあなたは友達だと思います。
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