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マーケコラム第3弾:WEB広告会社が月間広告費50万円以下の事業会社様を、経営的にどう捉えているのか

こんにちは。石川知史です。
初めての方向けに簡潔に自己紹介させていただくと、今年4期目になるマーケ支援会社、株式会社インディゲンスのCOOをやっています。

私自身、今年で社会人歴が6年になるのですが、ずっとマーケ支援会社側のキャリアを歩んでいます。

またありがたいことに、小規模のWEBマーケ会社、大手広告代理店、WEBマーケ会社起業を経験することができ、マーケ支援会社の組織体制に関してはそれなりに詳しい方かと思っております。

私について知りたい方はぜひこちらをどうぞ。

今回は表題の通り、「WEB広告会社が月間広告費50万円以下の事業会社様を、経営的にどう捉えているのか」について語っていきたいと思います。

ただ、この内容を語る前提として「粗利」の概念を理解している必要があるので、「粗利って何?」って方は下記をどうぞ。

前回の記事はこちらをご覧ください。

今回の内容は、さまざまな意見を持つ方がいらっしゃると思いますが、あくまで石川の一意見として捉えていただくと幸いです!

1.広告費50万円の粗利額

まず整理したいのは、広告費50万円の場合「広告代理店にいくら利益が残るのか」という点です。

今回はかなりサラッと解説しますが、よく広告代理店が経営のKPIに定めているのが「粗利」という指標です。

月間広告費50万円で手数料を20%と設定すると、粗利額(内掛けグロス)は下記になります。

  • 広告費:50万円

  • 媒体配信費:40万円

  • 代理店手数料:10万(手数料20%)

※内掛けグロスを想定しております。
上記の通り広告代理店の儲け = “粗利”は「月間10万円」となります。

この月間10万円の粗利が、広告代理店の経営的な観点でどう映るか、をテーマにお話ししていきます。

2.広告営業マン1人当たりの稼働工数

業種問わずどの会社もそうですが、会社を経営する上で避けて通れないのは「営業利益の最大化」です。特に、広告代理店・コンサルのような無形商材を扱う会社でかなり重要になるのが「1案件に対する人件費」です。

ここは前回の記事と同様になってしまいますが、広告代理店の平均年収ってご存知でしょうか。
JobQさんの調査によると、だいたい575〜675万円が相場とのことです。

今回もわかりやすく「年収600万円・月給50万円」をベースに考えてみましょう。
広告代理店・コンサル業界では、必ずと言っていいほど「一人あたりの保有粗利目標」が置かれます。
ここは広告代理店あるあるかと思いますが、「一人あたりの保有粗利目標をどのように達成するのか」は会社によって思想が全然違います。

最も思想が反映されるのは、広告代理店営業マン・コンサル営業マンの「経営変数」であり、下記の指標です。

・1人あたりの案件保有数
・1案件の粗利単価
・1案件の原価(運用者、デザイナー)
・顧客満足度

つまり、「広告代理店営業マンが稼ぐには、より単価が大きい案件をたくさん保有し、原価を最低限まで抑えた上で、顧客満足度が高い状態をキープする」

わかりやすく具体的に解説していきましょう。

仮に中途採用で年収600万円・月収50万円の広告営業マンをアサインできたとして、初年度の人件費に対する粗利益率を150%に設定したとします。

その場合、この営業マンの粗利保有状況は下記のようになります。

■月収50万円の広告営業マン目標
・月収:50万円
・月間広告運用額:750万円
・月間粗利運用額:75万円
・広告費に対する粗利益率:10%
・人件費に対する粗利益率:150%
・1人あたりの営業利益:25万円

※業界の慣習だと20%モデルが一般的ですが、解説する際の変数を少なくしたいので、運用・バナー制作は外注し、委託先に10%で運用してもらう形で話を進めます。
 
この状況を見ると、この営業マンは「25万円の利益を会社に残している」となりますが、経営を考慮するとオフィス代、接待交際費等もあります。

したがって、25万円の利益を会社に残したくらいで、経営的には「やっと赤字人材から脱出してくれた」と捉えられる範囲でしょう。

3.50万円の広告費案件は広告代理店的にどのように捉えられるのか

それでは本題にいきましょう。
前章では、年収600万円・月収50万円の広告営業マンが月間粗利目標75万円を掲げている前提をまとめました。

その場合、広告費50万円案件(粗利額10万円)のインパクトはどれくらいでしょうか。

簡単な算数なので答えを言っちゃうと、13.3%しかございません。。

そのため、この営業マンはプラスで「月間粗利65万円分」の案件量を維持しないと、目標達成どころか赤字人材になっちゃうのです。

あくまで「石川自身が思っている」とは捉えないで欲しいのですが、広告営業マンのマインドを察すると、粗利目標に対して13.3%のインパクトしかないクライアントさんに対して、膨大な時間をかけていたら目標達成が難しくなりますよね。

ここが代理店経営の難しいところ。クライアント様の中には、、

「全然誠実に対応してくれない、、」
「返信がかなり遅い、、」
「提案量が少ない、、」

という意見が多いのを理解していますが、広告営業マンからすると「そう言っても動けないのよ、、」と内心思っているケースが多いのです。また、広告営業マンはタフな方が非常に多く、無形商材なので頑張れば提案量を増やせることも事実。

そういった背景から、広告業界は他業種と比較すると、非常に残業体質になりやすいのです。

4.「50万円の広告費」は少ないのか

このままでは広告代理店を庇っているような論調ですので、事業会社さん側の目線にも立ってみましょう。これは私自身の見解であり、経営者になってみて本当に痛感しているのですが、「月間50万円の販管費を捻出する」ってものすごく大変なことなんです。

月間50万円あれば年収600万円の人材を雇うこともできますし、その金額を従業員のボーナスに充当することだってできます。

私自身、最初は小さいWEBマーケティング会社出身で、月間広告予算30〜50万円のクライアント様を多く担当していたのですが、月間何千万レベルの案件とはまた違った「重み」「責任感」を感じることが多いです。

したがって、月間広告予算30〜100万円だから「責任が軽い」と思ったことは一度たりともございません。
※正直ここを履き違えている広告営業マンが多いのも事実。。

5.どうすれば長期的なお付き合いができる?

前述したように、「広告予算50万円前後」は広告代理店側と広告主側で最もトラブルになりやすい金額感なのではと思っています。

それでは、どうしたら円満に長期的なお付き合いができるのでしょうか。

個人的に重要だと思うのは、「明確なスコープ」「アカウントの透明性」の2つです。

明確なスコープ

最も大事なところだと思っています。
簡単にお伝えすると「代理店側がやるべきこと、やらないこと」を明確にするべき、ということです。

よく揉め事の種になるのが「CPAが悪いので、なるべく早く提案ください」ってお話をもらうパターン。
先に事業会社側の立場に立つと、「お金払っているのはこっちなんだからちゃんと動いてよ」ということですよね。

しかし、広告代理店側の立場に立つと「いや、MTG時に提案をまとめる話だったので話は違うよ」ということになります。
※あくまでビジネスモデル上の話なのでご理解くださいませ。笑

広告代理店はビジネスモデルの性質上「マーケティング業務の支援」しかできないにも関わらず、なぜか業界慣習的に「支援の範囲を決めない」ことが多いかと思います。

なぜなら、広告代理店営業マンが「期待値を上げて受注しようとする」から。

前述したように、広告代理店は「無形ビジネス」いわば「コンサル業」です。契約形態は準委任であるケースがほとんどですので、いくらでもサービスを上乗せすることができちゃうんです。

広告代理店の営業マンは日々粗利目標を追っています。
その状況下で「やらないこと」を先に明記してしまったら、受注率が下がるリスクがありますよね。
こうやって「期待値を無理やり上げる」広告営業マンが誕生してしまうんです、、

だから、個人的におすすめなのが、「やること、やらないこと」をちゃんと明記し、ロードマップを引いてくれる広告営業マンを信頼することをお勧めします。
そしてさらに良いのが、急遽対応が必要になった場合に対応できる方を確保しておくと、さらに安全です。

アカウントの透明性

次に、アカウントの透明性です。
ここでいう「透明性」とは、「管理画面の数値をちゃんと把握できる」、代理店の都合上、管理画面が把握ができないとしても「すぐに実数値が確認できる」という文脈での透明性です。

なぜ透明性が必要なのか。

「明確なスコープ」と若干被るところがありますが、主に2点です。
・マーケティング施策の先回りが可能になる。
・代理店と契約したスコープ上、対応できない部分を巻き取ることができる。

※前提として、事業会社が代理店に対して「CPA悪いからすぐに対応してよ」と言うことは「スコープから逸れる行為」として解説しています。

お互い最もしんどく、やめた方が良いのは「お互い状況がわからない環境」を作ってしまうこと。
この状態だと、マーケティングにおける意思決定が遅れてしまいますよね。
そうなると成果も出ないですし、これまでもお互いがウィークポイントを突き合うイタチごっこになったプロジェクトも経験したことがあります。。

6.マーケティング組織全体を理解することの大切さ

今日はここまで。
最後にまとめとして書かせていただきたいのが、「マーケティング組織における不具合を指摘する前に、会社間のビジネス構造やマーケティング組織構造をちゃんと見直してみたら?」ということです。

これは持論ですが、マーケティング組織において「1担当者だけが悪い」というケースは本当に少ないです。

それよりも「そもそも役割が明確じゃなかった」「予実目標の根拠が薄すぎた」など、組織構造そのものが働きづらさの原因を起こしているケースが圧倒的に多いです。

「人」を疑う前に「仕組み」を疑え。

これはマーケティング組織にも通じるところです。
そして、この「仕組み」の理解こそが、弊社のミッションにある「世界を全力で心地良くする」と通じる点があると思い、今回執筆させていただきました。

次回は「広告代理店の手数料はどう向き合えば良いのか?」について語っていきたいと思います。

次回もお楽しみに〜。


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