テクノ御三家とはなんだったのか ~1stアルバムを比較する~
こんにちは。印度孔雀です。
我ながら記事の更新頻度の遅さが気にかかります。高校生ってかなり忙しいんですよね。できれば月3回程度の更新を心掛けたいですが、冬休みには毎日更新とかもやってみたいところです。
さて、本題です。
私は昨年平沢進ファン(俗に言う「馬の骨」)になったのですが、それから1年のタイムラグを経て、ヒカシューとプラスチックスの虜になってしまったのですね。
もちろん聴いていなかった訳ではないです。P-MODELが出演していた大昔の映像で共演してますし、それで曲も何曲かは知っていました。しかし、ヒカシューは歌謡曲っぽさ、PLASTICSにはポップさを感じてしまい、あまり深追いはしていなかったのです。まあP-MODELのようなあからさまにテクノポップにパンクが混ざってるバンドもなかなか日本にはありませんが...。
しかし、それは非常に軽率でした。笑。
今年、誕生日にレコードプレーヤーを買ったのですが、それを機にP-MODELのレコードを集めだしました。集めると言ってもなかなか置いてないので、『IN A MODEL ROOM』を辛うじて手に入れただけですけどね。
その後、県北某所にあるリサイクルショップに行くと、ヒカシューの『夏』がなんと300円で売っていました。ウォーターダメージや黄ばみが酷かったですが、安いしヒカシューを聴いてみたかったこともあり即購入しました。そして、帰って聴いてみると、なんとも素晴らしい作品で。「アルタネイティブ・サン」、「不思議のマーチ」、そして「パイク」。最初の3曲で、もうヒカシューの沼に嵌ってしまいました。
そしてそこからは、YouTubeやサブスクリプションでヒカシュー、そして同時にPLASTICSを漁り始めました。このバンドの凄さたるや。P-MODELと同時に聴き始めなかった事が悔やまれる限りです。
・・・というわけで、今回は、この3バンドの「1stアルバム」に絞り、類似点や相違点について解説していこうと思います。ちなみに敬称は総じて「氏」です。
今回取り上げるのは、以下の三作品。
IN A MODEL ROOM/P-MODEL
WELCOME PLASTICS/PLASTICS
ヒカシュー/ヒカシュー
ジャケットからなかなかインパクトがあります。
それでは、解説していきましょう。
○IN A MODEL ROOM/P-MODEL
さて、この中では1番知名度も高いであろうP-MODEL。残りの2つのバンドとは大きく異なる点があります。
1つ目は、ドラマーの存在することですね。
ヒカシューはキーボードの御二方(だったような)、PLASTICSは島武実氏がリズムボックスを担当しており、ドラムセットを叩くメンバーは居ません。ヒカシューについては後に加入しますが。
さらに、編成も他の2バンドと違い、ボーカル&ギター、ベース、キーボード、ドラムという構成なので、割とベターなロックバンドのような雰囲気があります。そのため、P-MODELに関しては、尖っている、パワフルな印象があります。
2つ目は、歌詞です。
ヒカシューとPLASTICSの歌詞は、ストレートか抽象的、どちらかと言われれば抽象的な部類です。しかし、初期P-MODELの平沢の歌詞はかなりストレートで、時に攻撃的であったりしました。
まあなんと、若気の至r...今の平沢氏では書かなそうな、というか見るだけで焦りそうな歌詞ですね...
ただし、「子供たちどうも」のような1984的世界観はP-MODEL解散後も楽曲の世界観に投影されており、核P-MODEL名義の「Big Brother」なんかはその一例と言えます。
アルバム通して聴いていくと、「美術館で会った人だろ」「ヘルス・エンジェル」「ルームランナー」「サンシャイン・シティー」「偉大なる頭脳」「MOMO色トリック」といったTHE・ニューウェーブという曲も去ることながら、「ソフィスティケイテッド」「アート・ブラインド」などのプログレ的エッセンスを感じる曲、「子供たちどうも」「ホワイト・シガレット」といったパンクと言うよりは純ロックな曲もいくつか存在感を発揮しています。P-MODELの前身がプログレッシブ・ロックをやっていた「MANDRAKE」ということもあり、その匂いがこのアルバムからは少し感じられますね。
余談ですが、「美術館で会った人だろ」などは改訂P-MODELの頃までたまに演奏されてきました。しかし、ソロ以降は還弦(詳しく知りたい方は「還弦主義」で検索!)されている「アート・ブラインド」しか演奏されていません。伴奏だけはヒカシューとの対バン(絶景クリスマス)でやっているんですけどね。
○WELCOME PLASTICS/PLASTICS
続いてはプラスチックスのファースト。プラスチックスは、この3バンドの中ではアーティスティックなバンドに感じますが、それもそのはず。活動当時、音楽が本業なのはメンバー5人中2人しかいらっしゃいませんでした。
ボーカル(+ダンス)のCHICA氏はスタイリスト、ボーカルと作詞の中西氏はイラストレーター、ギターの立花氏は映像作家となかなかアバンギャルドな構成と言えます。ちなみにリズムボックスの島氏は作詞家、シンセサイザーの佐久間氏がミュージシャンであり音楽プロデューサーでした。ちなみに先程のP-MODELの「IN A MODEL ROOM」のプロデュースも、実は佐久間氏なのです。
さて、このバンドの他と異なる点は、なんと言ってもそのサウンドでしょう。
単純なリズムに乗るピコピコシンセサイザー。そしてCHICA氏と中西氏の素っ頓狂(?)なボーカル。これがテクノポップ、と言った感じのサウンドです。ピコピコと言ってもYMOのような硬派な感じではなく、かなり軽めのサウンドでポップに仕上がっています。そして、先進的なのはサウンドに留まらず、その歌詞もなかなかなものです。
初見で何を言いたいのかわかる人は恐らく居ないでしょう。いや、何回聴いても分かりませんね。日本語も全てローマ字表記なのが特徴で、アートワーク含め洋楽的なアプローチが強いです。
・・・TOKYO COPY TOWNというのは、先進的になるが故に同じようなビルや建物が絶え間なく建設されて行くことの揶揄なのでしょうか。
PLASTICSはこの後2枚目の「ORIGATO PLASTICO」、そして1stと2ndの楽曲から選曲し新録されたベスト盤的な立ち位置の3rd「WELCOME BACK」を発売し解散。現在では中西氏、佐久間氏、島氏がこの世を去り、CHICA氏も表立った活動をしていない事もあるため再結成のチャンスがほとんどない事が非常に悔やまれます。
○ヒカシュー/ヒカシュー
最後の登場となりましたヒカシュー。記事を書いている現時点で一番ハマっているバンドです。
彼らも結成が劇団からの派生ということもありなかなかの個性派です。そんな彼らのファーストアルバムは、その曲ごとの雰囲気の違いに音楽性の広さを感じさせられます。
ジャンルごとに大別するとすれば、
テクノポップ・・・レトリックス&ロジックス、プヨプヨ、ラヴ・トリートメント、何故かバーニング
ロック(広義)・・・モデル、ルージング・マイ・フューチャー、20世紀の終りに、炎天下、幼虫の危機
ジャズ(広義)・・・テイスト・オブ・ルナ、ヴィニール人形、雨のミュージアム
といった感じになります。ちなみに作曲はシンセサイザーの山下氏や井上氏の担当が多いですが、代表作「20世紀の終りに」はボーカル巻上氏の曲となっています。また、メンバーには他の2バンドにはいないサックス担当の戸辺氏がいたので、その存在も他との差別化に大きく影響を与えていると思われます。
そして、その音楽性とともにヤバいのは歌詞です。
不可算名詞RhetoricとLogicに複数形のs。こちらがさっぱりわかりません...
???
??????
?????????(最早危険な歌詞)
ちなみに非公式のベスト盤『ツイン・ベスト』では、8曲目に収録されている「炎天下」の歌詞は掲載されていません(オリジナルアルバムは未所持のため、手に入れたら確認します)。とりあえず聴いてみることをおすすめします。
とにかくこれがヒカシュー・ワールドです。P-MODELとはベクトルの違う「ヤバい」ですね。文学的な表現も多いです。
ヒカシューは、今回取り上げたバンドの中で唯一現役で活動しています。ライブもやっているので、足を運びたいところです。個人的には現在の戸辺氏の動向が気になるところです。
ちなみに、ヒカシューの元キーボードで現在は同じく元ヒカシューの山下氏と共に「イノヤマランド」を組んでいる井上氏は、神奈川で幼稚園を経営されているのですが、そこには巻上氏が訪れることもあるそうです。なかなかの音楽英才教育。
いかがだったでしょうか?この記事を読んで、テクノポップ御三家と呼ばれたバンドに興味を持ってくださる方がいれば嬉しい限りです。
まずはサブスク(注、初期P-MODELは残念ながら未解禁です...)、そしてもっと気になったらタワレコへCDを買いにGOしましょう。
余談ですが、ヒカシューとP-MODELは1981年に発売した3枚目のアルバムでテクノポップから脱却。それぞれの路線を歩み始めるので、それからの音楽もいずれ触れて行ければいいなと思います。
それでは、次の記事でお会いしましょう。印度孔雀でした。