解析系研究者が使うObsidian ―Organize編―
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Organizeの目的
1. 蓄積したメモを探しやすくする
2. 各研究プロジェクトの進捗を把握する
3. メモ間のつながりを見つける(副産物)
関連する状況
メイン、サブ、サポートといった役割は様々ですが、複数の研究プロジェクトに関わっている場合が多いです。
このため 各プロジェクトについて それぞれ 進捗を管理していく必要があります。
メモの種類
メモにはいくつかの種類を作ってます。使っていくうちに自然にできた分類なので、これからも変化していくと思います。
なお、これらはファイル名の先頭で区別してますし、後述のタグでも区別しています。
ファイル名については、次のような感じです。
クイックスイッチャーで探しやすいのでこうしてます。
propertiesが導入された今となっては、typeのようなpropertiesを設定して管理する方が良いんだろうなと思いながら、現状は困ってないのと、面倒で移行出来ずにいます。
以下ではメモの種類ごとに例を示しながら説明します。なお、メモの内容は全て架空です。
Guide
全体のMOCに相当するものですが、すべてのメモがつながるわけでもありません。今取り組んでいる、もしくは今年中(又は今年度中)に取り組む予定のものだけが羅列されてます。
基本的には年もしくは年度ごとに1ファイルとしていますが、大幅に作り変える場合は新しいファイルにする場合もあります。いずれの場合も常に使うのは1つの最新のファイルだけです。
例は次のとおりです。
構成はシンプルで、見出しも2つだけです。
"Task一覧"では、Valut内のチェックボックスをTasks pluginを使ってファイル別に一覧しています。近いうちに取り組むタスクを抜き出す際に一覧表示が良いので作っているものです。
"Project"では、抱えているプロジェクト(プライベート含む)をアウトライン形式で記載しています。これはOutliner pluginを使用しており、概ねその時の優先度順に並べています。
後述しますが、各メモで"Task一覧"を作っており、それを各プロジェクトにぶら下げる形で埋め込み表示しています。
両方で情報が重複していますが、主に使っているのは"Project”の方です。
"Project”は基本的に毎日確認して、自分が抱えているプロジェクトの全体を見つつ、気になる点があれば適時追記し、チェックボックスも適時完了させています。
また、チェックボックス以外にも思いついたことや気になったことも箇条書きで記載していますので、"Project”の方はタスク以外の項目も多数含まれます。
なお、完了したプロジェクトは、"完了"という項目の下に配置して、アーカイブ扱いにします。
研究メモ
研究プロジェクト毎に1つメモを作っています。
メモの例はこんな感じです。
役割としては、各研究プロジェクトに関するMOC+Log+αという感じです。
"Task一覧"は"Guide"と同じようにこのメモに含まれているチェックボックスの一覧を表示しています。
"Overview"は研究プロジェクトの概要を記載しています。"Memo"は概要以外で研究プロジェクトに関連して記載したい内容があれば記載するようにしています。
"Related notes"には関連するメモをリンクしておきますので、一応MOCとして機能してます。
"Log"がこのメモで一番重要なパートになります。
日付を見出しとして、その日にやった作業記録や次に必要な作業のメモ、作業中に考えたことなどを何でも書きます。プログラムコードも必要に応じて入れ込みます。
解析をやっていると、過去にやった解析の内容を参照したい場合が多々ありますし、日によって取り組むプロジェクトを切り替える際に、前の作業を思い出すのにも必要になります。
基本的にキーワード検索でたどり着けますが、日付はこういう時のヒントにもなってます。
必要に応じてチェックボックスを使いますが、主に"Log"のパートで使用することになります。
私の運用では、このチェックボックス≠タスクです。
チェックボックスの一部はタスクですが、その他に後から見返したいことや、別のメモとして切り出すかもしれないものなどを含みます。
Logには何でも書いていますが、自分にわかるレベルでしか書いてませんので、他人には意味不明かもしれません。また、これもLogが多いですが、記載中にvarious-complements-pluginで引っかかるメモがあれば積極的にリンクさせるようにしています。
執筆メモ
基本的な構造や使い方は研究メモと同じですが、論文原稿を作成する段階で作成します。ファイルの例はこんな感じです。
研究メモと違うところだけ説明します。
"Preparing Paper"は、論文のコンセプト等の概要をまとめたものです。科学者・技術者のための英語論文の書き方という本で紹介されていたのを最近知って作るようにしています。執筆途中にたまに見返してます。
"Manuscript"はそのまま原稿へのリンクを配置してます。大体Wordで執筆しているので、そのWordファイルへのリンク、もしくはWordファイルがあるフォルダへのリンクです。
"Ref"は研究メモの"Related notes"とほぼ同じで、関連するメモや文献情報、HP情報等を載せてます。
"Archive"は他のパートで使い終わった(今後の使用見込みがない)ものの置き場です。例えばPreparing Paperを途中で大幅に書き直すことがありますが、前のバージョンのものへのリンクを置いておく、といった使い方です。「使用見込みがない」と書いておきながら矛盾しますが、稀に後から見直したい時が出てくるのでこのようにしています。
こちらも"Log"のパートが主です。
毎日やった作業内容を簡単に(大抵数行程度)で記載していきます。
加えて、(私だけかもしれませんが)執筆途中で気になることや、修正したほうが良い点、調べ直すべき点、追加解析が必要な点等がバラバラ出てきますので、そういったものはチェックボックスとしてます。
打合せメモ
関係者と打合せを行うことが多々あるので、その都度打合せメモを作成してます。
これは基本的には研究メモのLogパートに引用するようにしています。"Log"パートに直接記載しないのは、打合せする場合は複数のプロジェクトに関してまとめて話す場合が多々あるためです。別のメモとして引用することで、両方の研究メモからたどりやすくなります。これはObsidianのメリットですね。
ファイルの例は次のような感じです。
各パート見出しの通りですが、"概要"と"内容"だけ説明します。
基本的に打合せ中に"内容"パートにアウトライン形式で打合せ内容を記録します。
打合せ直後や後日、重要な点を"概要"パートにまとめている感じです。ちなみに"内容"が薄ければ"概要"は割愛することも多いです。
文献調査メモ
文献調査を行うことが多々ありますので、それをまとめたメモです。
研究やりながらちょいちょい文献調査はしていますが、特に論文執筆の段階ではその整理が必要になるために作成するメモです。
文献調査メモは、複数の研究メモや執筆メモで引用する可能性が高いため、基本的に別のメモにしてます。
これについてはあまり型が決まってないのですが、例は次のとおりです。
”検索キーワード”は、検索したキーワードを簡単に記録しているものです。後から、検索すべきキーワードを思いついた時に、二重に検索するのを防ぎたいと思い記録するようにしてます。
文献調査の中でまとめた方がよさそうな内容が出てきたら見出しを立てて、関連の内容を記載していきます。
見出しを立てるほどではない(本題に関係ない等)ものは”memo”に五月雨式に記載しています。
その他のメモ
その他にもいろんなメモがありますが、詳細に解説すると切りがありませんので、例をいくつかあげておきます。
アイディアメモ(思いついたアイディアやネタ等のメモ)
解析方法メモ(手法についてのメモ)
トラブルメモ(プログラムでエラーが発生した際の対応メモ)
出張メモ(出張の際の宿や移動方法等についてのメモ)
学会メモ(学会中に聞いた発表内容、あったこと、思ったこと等を都度書き出したメモ)
各メモの関係
各メモはこんな感じの関係になります。
”Guide”で全体を見つつ、各プロジェクトの詳細は"研究メモ"を見ればわかるという感じにしています。こういうリンク構造で管理しやすいのはObsidianの利点と思います。
タグによる整理とフォルダ構成
各メモの分類とリンク以外に、タグも活用しています。全てのメモには何らかのタグをつけるようにしています。基本的にPropertiesのtagsに追加する形で、本文に書くことは少ないです。
これをTagFolder pluginを使うことですぐに探せるようにしています。
タグには2つだけルールがありますが、それ以外はフィーリングでタグを付与しています。
メモの種類がはっきりしているものは、対応するタグをつける(#研究メモ、#執筆メモ等)。
同じプロジェクト(研究)には、そのプロジェクト用のタグをつける(#○○のネットワーク分析等)
タグ一覧をたまに確認して、明らかに重複しているものや、タイプミスと思われるものはtag-wrangler pluginで一括修正しています。
フォルダでは整理はしていません。デイリーノート等の機能別に分けているもの以外では、"Inbox”と”Note"の2つのフォルダしかありません。
使い始めた当初にはNote内にプロジェクトごとのフォルダを作ることも考えていましたが、あまり馴染まず辞めました。
まとめ
目的との関連付けて現在の運用をまとめたいと思います。
1. 蓄積したメモを探しやすくする
2. 各研究プロジェクトの進捗を把握する
3. メモ間のつながりを見つける(副産物)
1については、"検索"、"Guideもしくは各研究メモからのリンク"、"TagFolder"のいずれかからたどることで、必要なメモにはたどり着けるようになっていると思います。
2については、Guideで全体像を見つつ、各研究メモのLogで把握しています。また、チェックボックスを活用することで、タスクや要確認な事項を把握しています。
3については、"検索"や"TagFolder"で探すときに、こういうメモがあったなと気づいてリンクを追加したり、先に記載した通りvarious-complements-pluginで見つかり次第リンクを追加することで見つけています。また、タグ一覧の修正時等に、似たようなタグを追加したメモが複数あることを後から見つけて、まとめページというか法則メモみたいなものを後から作ることもあります(これについては機会があれば別途ご紹介します)。
ただし、あくまで副産物と考えているので、積極的にリンクを作るために関連メモを探すみたいなことはしていません。
全体的には、"Guideもしくは各研究メモ"で縦割りに進捗管理しつつ、リンクやタグで横ぐしを指して横断的にメモを見てる感じかなと思います。
最初から計画的にこうしたわけではありませんので、今後も状況に応じて運用は変化(改良)していくと思います。
次は文献調査メモまわりで使っているアプリやプラグイン等を主に紹介したいと思います。