ブックオフで買った本の書き込みが大胆すぎる


ブックオフで本を購入した。

・岡田尊司『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』光文社新書、2011年。

夏目漱石やヘミングウェイ、スティーブ・ジョブズといった偉人の逸話や、
あるいは文学作品から具体例が多数引用されているため、単なる心理学書よりも親しみやすい。パーソナリティの形成に対して、遺伝的な気質ではなく「愛着」の問題から論じている。著者によれば、およそ三分の一の人が「愛着」に何らかの問題を抱えているという(p.48)。その愛着スタイルの傾向・分類と、対処法について論じられており、自分自身の「生きづらさ」の原因を考える手助けとなりうる。あるいは子供の教育について関心がある人にもおすすめする。


さて、本の紹介はこれくらいにして本題に入る。

ブックオフで購入した本の書き込みが大胆すぎる件について、以下では検討する。


1.ラインマーカー

迂闊にも中身を確認せずに購入した私は、ラインマーカーのページで手が止まった。安さにつられて古書を購入したが、あまりにも大胆にラインマーカーが引かれている。失敗だ。最近は本が本棚に収まりきらなくなってきたのもあり、電子書籍に移行していたので、久しぶりにこのような古書に出会ったのである。

ちなみに彼(※書き込みの主)が引用したラインマーカーのページ数は以下の通りである。

p.31, p.32, p.33, p.34, p.89, p.98, p.100, p.115, p.121, p.122, p.125.

この本は全313頁。

…もしかして彼は前半しか読んでないのでは??

そのような疑問を抱きつつ、私はさらにページを繰った。


2.「☆オレはこれかな」シリーズ

「☆オレはこれかな」という書き込みが二か所(p.38, p.41)にあった。

率直に言って、驚いた。オレって誰だよ!急にどうしたんだよ!ラインマーカーまでは辛うじて分かる。でも、「オレはこれかな」ってわざわざ書く意味っていったい…?

なお、書き込みによれば、彼は「抵抗/両価型」であり、「従属的コントロール」の態度を取るとのことである。


3.「オレ」のパーソナリティについてシリーズ

オレ(書き込み主)「オレがあまり遠くへ行きたくなかったりすぐ家に帰りたがるのは愛着が不足していたからか」(p.34)

遠くへ行きたくなくって、すぐ家に帰る…?

それって単にインドアなだけでは…??

十分な安心が得られる「安全基地」が確保されていると、次第に「安全基地」から遠く離れていようと、あまり不安を感じることもなく、探索行動、つまり仕事や社会的な活動に打ち込めるようになる。(p.34)

なお、同書の引用と「オレ」の書き込みとを比較検討したが、あまり応答が対応していないように思われた。


オレ「いつも絵里ちゃんの言葉を思い出そう」(p.35)

絵里ちゃん?!

誰!??

と思った。しかし、同書の内容と照らした結果、絵里ちゃんとは「愛する人」である可能性が高い。すなわち、「オレ」の恋人である。

同ページにて、アウシュビッツで精神の平衡を保つために愛する人のことを回想するという話が載っているのである。それを考慮すれば、絵里ちゃんは「オレ」の恋人である可能性が極めて高い。(あるいは妻かもしれない。)


オレ「一人だけ大きな体 大きな足 みんなと違っていた」(p.42)

絵里ちゃんの件で油断したのもつかの間、彼はまた本の内容と関係ないことを書きだした。

同ページにはオバマが常に「外国人」として扱われる境遇であり、「優等生」を演じていたと述べられている。

大きな体と大きな足についてはちっとも書いてない。

したがってこれは「オレ」の身体的特徴と思われる。「外国人」のように周囲から浮いた存在であることは、「オレ」の場合、「大きな体と大きな足」であることが理由のようだ。

え、そんなことで浮くことってあるかな…?単に体格がいいだけでしょ?

むしろ、いいことじゃないの?男性だし…。羨ましいよ!

オレ「オレも漱石と似てる!」(p.126)

に、似てるの?!そうなんだ?!すごいね!!

この書き込みを確認したところ、内容に即していた。よかった。どうやら彼は二分の一の確率で本に即したことを書き込んでくれるらしい。

そこには漱石自身が全か無かの認知で人を見定める傾向を持っていたことが関係している。(中略)わずか二、三か月で大学の講義に出なくなり、残りはほとんど下宿にこもって悶々と暮らした。(p.126)

「オレ」は、「全か無か」の極端な思考回路を持っているのか、あるいは講義をサボる学生かは分からない。もしくは両方かもしれない。

とりあえず、「漱石」を漢字で書ける教養を持った人物であることは確かである。


まとめ

今のところ分かった「オレ」の情報は以下の通りである。

・「抵抗/両価型」であり、「従属的コントロール」の態度を取る

・インドア

・絵里ちゃんという恋人がいる

・大きな体と大きな足を持つ

・漱石に似ている(極端な思考回路、もしくは講義をサボる)


4.診断テスト編

オレ「母親:心配性、否定的、厳しい、明るい、甘い/ 父親:いい加減、家族 自分勝手、怖い、?(判読不能)/兄:優しい、弟想い、怖い、影響、父代わり」(p.203)

父親のこと、すごく嫌いなんだね…。

しかし、明るい母といい加減な父、優しくて弟想いの兄が居るのは、なかなか良い家庭なのでは?


こちらの診断テストは数ページあるが、すべてを掲載するのは省略する。

一部気になった「オレ」の特徴として、写真の7-11の設問と回答を見てほしい。

めっちゃいい家庭じゃないか!!!

1-6の設問への回答については、人見知りの人なのでは?という感想を持った。

すべてのスコアを計算すると「オレ」は「不安型」に当てはまるらしい。まともや「☆」の記号によって印をつけてくれた。

5.結論

以上、「オレ」の書き込みの内容と、本文との関連、および「オレ」のパーソナリティーについて検討を加えた。これらの内容を総合すると、「オレ」のパーソナリティは以下のとおりである。

まず、「オレ」は絵里ちゃんという恋人を持つ男性である。また、鉛筆あるいはシャーペン、蛍光ペンを所有している。そして、すぐに家に帰りたがる。一人だけ大きな体と大きな足で、浮いた存在であった。漱石に似て極端な思考(全か無か)を持っているか、あるいは漱石に似て講義をサボって下宿に引きこもっていた。そして「漱石」と漢字で書く教養もある。(講義をサボりがちでインドア、大柄な男子大学生が思い浮かぶ…。)

そして、明るく厳しい、心配性な母といい加減で怖い父親、弟想いの兄が居る。(つまり「オレ」は二人兄弟の次男である。)やや厳格な家庭で育ったものの、家族からの愛情は「オレ」も認めており、性格はやや人見知りの傾向を持つ。

本書は2011年9月20日に初版が刊行されている。「オレ」は2012年10月15日の10刷を購入している。定価は860円+税である。すなわち2012年10月15日以降に、「オレ」は860円+税以上の金額を持っており、その代金で本書を購入した。そして2015年までにブックオフに売りに行ったことが分かる。

今まで色々な古書を購入したことはあるが、こんなに大胆な書き込みがあるのは初めてだった。すっかり「オレ」に魅了されてしまった。

「オレ」が夏目漱石の本を売り払っていないだろうか?そこにまた書き込みをしていないだろうか?(なにしろ「オレ」は漱石の境遇に共感を覚えている。彼が漱石を愛読し、同店舗に売り払った可能性は十分にあるのではないか?)という推論を基に、今度また同店舗の漱石の棚を見ておきたい。

ひとしきりこの本を楽しませてもらったが、「オレ」の想いが詰まりすぎていて怖い、読了後売りに行ってもいいけど、自分がこんなに書き込んだと思われたくない、との思いから手元に置いている。

いつか、「オレ」に出会うことができたら、ぜひお渡ししたい。この本は、彼が持つのがふさわしいと思われるからだ。

同店舗のブックオフ、漱石の棚でお待ちしています。


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