Incubate Camp連載企画 #2 DNX Ventures 倉林氏へキャピタリストインタビュー!
こんにちは。Incubate Camp事務局です。
先週、グロービス今野さんのインタビューを公開させていただいたところ、「素敵な内容!」など嬉しい反応をたくさんいただきました。ありがとうございます!
さて、キャピタリストインタビュー、第二弾はSaaS王子🤴DNX Venturesの倉林さんにご登場いただきます。国内外のVCやCVCを経験してきた倉林氏だからこその、熱いメッセージを是非ご覧ください!
編集部注)
・インタビューは2018年春に実施し、そちらを書き起こしたものになります。
【プロフィール】
DNX Ventures 倉林 陽氏
2015年3月より現職。50社を超える日本のSaaS/Cloudベンチャーへの投資実績を保有。現在、マネーフォワード(東証マザーズ 3994)、サイカ、フロムスクラッチ、toBeマーケティング、UPWARD、モビンギ、カケハシ、マツリカ、トレンドExpress、オクトの社外取締役を務め、FOLIO、フレクト、スタディスト、リフカムの取締役会オブザーバーを務める。また、DNX Ventures SaaS Seed Programを主導し、これまでに20社を超えるSeed Stageのベンチャー企業への投資、支援を実施中。
「こんなに面白い仕事が日本でメジャーになっていない」ということに衝撃を受けた
事務局:Incubate Camp連載企画、ゲストキャピタリストインタビュー。今回はDNX Venturesの倉林さんにお時間をいただきます。倉林さん、よろしくお願いします。まずは起業家のみなさまに、倉林さんのこれまでのご経歴だったりとか、VCをやっている理由、DNX Venturesとしてやってらっしゃることなど、自己紹介をお願いできればと思います。
倉林:一気にお話させていただきます。私、今社会人20年目なんですけど、新卒は富士通という会社に入りまして、最初はソフトウェアや携帯電話の基地局の営業をやっていました。その後、25歳くらいの時に経営企画部門に移りまして、アメリカのベンチャーキャピタルに出向させてもらい、そこからこの仕事に興味を持ちました。その後、VCの仕事をやるならシリコンバレーにいかなければと思い、三井物産に転職しまして、シリコンバレーに駐在させてもらいました。約5年、日本の本社とシリコンバレーの駐在の往復でした。
ずっと「アメリカのファンドに入りたい」と思っていたので、ビジネススクールに留学した後に、Globespan CapitalというアメリカのVCに入りました。で、日本の投資を担当してたんですけど、そのときに、Salesforce Venturesの立ち上げの話がありまして。日本のSaaSのスタートアップのエコシステムを作りたいということでお話いただいて、入ったのが2011年ですかね。そこから、3年半くらい、Salesforce Venturesの立ち上げをやっていて、その後、ドレイバーネクサス(現:DNX Ventures)に来て、今4年くらいやってるっていう感じです。
VCに興味を持ったのは、25歳の時に、富士通からWalden InternationalというVCに出向させていただいたときに、日本がベンチャーキャピタル後進国だということに気づいて、こんなに面白い仕事が日本でメジャーなビジネスになっていないというところに衝撃を受けまして。また、米国でいう本当のVC、という仕事をしている日本人は殆どいなかったので、「今からそこに人生を賭けてして勉強していくと、それなりのプレイヤーになれるんじゃないか」と思いまして。アメリカのトップVCの方の経歴を見て、それと同じような経歴になるよう、シリコンバレー駐在やMBA留学をしてキャリアを構築していったというのが僕の半生です。
事務局:なるほど。ありがとうございます。日米それぞれの、事業会社やベンチャーキャピタルの中から、実際にご自身の目で見られてきて今があるということですね。25歳の時から今まで、日米を股に掛けてお仕事していらっしゃる中で、倉林さんの中で感じていらっしゃる、日本とアメリカのベンチャー投資の環境の差分や、今後やっていきたいチャレンジがあれば、ご紹介していただければと。
倉林:そうですね。私自身もそうなんですけど、アメリカと日本を比べたときに、投資家も起業家の方も、まだまだ能力に差があるなと。一方で、最近は日本でも優秀な人がどんどんスタートアップの経営者をやるようになって、我々キャピタリストは非常に仕事しやすくなってきました。この流れっていうのは止められないかなって思います。これまでの日本のキャリア形成は画一的でしたが、スタートアップを自分でやってみるというのが、実力のある人ほど、非常に良い選択肢になり、そういう道を選ぶ方が増えてきています。今後スタートアップ経営者のレベルはどんどん米国に追いついていくのではないでしょうか。
経営者の方がレベルアップしているので、それに見合うように、我々投資家もどんどんレベルアップしていかなきゃいけないという課題感も感じます。Incubate Fundさんなんかは独立系VCの先駆けですけれども、そういった独立系VCがどんどん増えていって、経営者とリスクを共有するような投資家が増えていって。かつ理想的には、それぞれのキャピタリストが得意分野を持っていて、「この分野であれば誰々」という形で、経営者からするとメニューが選べる、みたいな。そんなような分厚いベンチャーキャピタリストがいる国になると、すごく競争力が上がってくるんじゃないかなと個人的には思います。
事務局:業界全体、我々としても1プレイヤーとして、頑張ろうと思う熱い気持ちになりました。ありがとうございます。
倉林:いえいえ。
SaaS一筋20年!ベテラン倉林氏の最近の注目領域とは
▲起業家にメンタリングをする倉林さん
事務局:起業家の方にとって豊富な選択肢が存在する状況にしていきたいという思いで、活動されていらっしゃると。倉林さん個人として、起業家の方に向き合われる際に、大事にしていらっしゃる部分や、どういう価値を出したいのか、という特徴について教えていただけますか。
倉林:僕はあんまり器用なタイプじゃないので、ソフトウェアとワイヤレスですね。それしかもともとやっていないので、そこをずっとやっています。今はSaaSの案件ばかり見てますし、その方が自分としてもやりやすいです。逆にそれ以外やるのは、結構勇気がいることなので、すごく調べないといけないですし、そういう意味で楽してるだけかもしれないですけど。自分の20年のIT業界での経験と、ソフトウェア業界での経験、勉強してきたものを経営者の方にお伝えできれば、それで役に立てるんだったら良いなという風に思いますね。
もう一個は、やはり「あるべき会社」っていうんですかね。最近の投資先だと「カケハシ」という会社がちょっと話題にはなったんですけれども。SaaSアプリケーションを提供する日本のスタートアップなんですが、薬剤師のお客様に対して非常に良い価値を提供できる。こういった社会性のあるベンチャーの経営者に会うと、すぐに応援したいなと思います。この会社が日本の、もしくはグローバルの社会のために存在すべきだなって会社かどうか。そういう思いを社長が持っているかっていうのは重視しています。
事務局:なるほど。まさに今、カケハシさんのお名前が出ましたけど、BtoBのSaaS特化のVCというところで圧倒的な強みを発揮されていらっしゃる中で、これまで伴奏してこられた代表的な投資案件を挙げるとすると。
倉林:そうですね。こういうとき、できるだけ有名な会社を言いたいものなんですけど(笑)。有名な会社でいうと、Sansanですね。寺田社長は三井物産の同じ部署でした。
事務局:なるほど。
倉林:Incubate Fundさんが最初に出資されてると思うのですが、自分も創業期から友人として応援していて、Salesforce Venturesのときに出資もさせて貰いました。日本を代表するSaaSのスタートアップだと思いますし、それを自分の友人が作ったというところでは、誇らしく思っています。どちらかというと、僕の方が仲良くしてもらってるって感じで、今も情報交換はさせて貰ってたりします。
マネーフォワードの辻社長は、僕のビジネススクールの後輩です。元々はエンジェル投資家として支援させて貰った縁で、上場した後は「役員になってくれ」ということで、社外取締役をやらせて貰っています。これも私の方が勉強させて貰ってるというところで。
有名な案件をご紹介しましたが、これから有名になる会社ですと、チームスピリットはシリーズAからずっと応援してる会社でして、現在社外取締役もやってます。SaaS事業専業のベンチャーとして、すごく伸びている代表的な会社かなと思います。あとは、あと十数社、役員やってる会社があります。名前を挙げるのが悩みますが、エンタープライズのSaaSでは、フロムスクラッチとか、サイカとかありますけど、それに加えて注目しているのが、インダストリークラウドって言われる業界特化型のSaaSで、これは建設業界でオクトとか、薬剤業界でカケハシ。それから、私投資してませんけど、これも三井物産の後輩が経営しているatama plusという、塾業界向けに教育のSaaSを提供しているスタートアップがありまして、こういう会社は非常に面白いかなって思います。
スタートアップ経営者必見!SaaSスタートアップ立ち上げ方程式
▲マッチングシーン。11thにて、HERP庄田さんとペアになった瞬間。
事務局:せっかく倉林さんなのでお伺いしたいなという質問があります。まさに現在Incubate Campのエントリーを受け付けていますが、シード/プレシードのSaaSスタートアップからの問合せもたくさんいただいていまして。SaaSビジネを立ち上げる上で、倉林さんがよくフィードバックしていらっしゃる「SaaSビジネスの肝の肝」「一番最初の頃は特にこれだ」というのがおありでしたら、お話をいただきたいなと。
倉林:そうですね。シードの場合、まずは解決すべき課題がモダンなSaaSアプリケーションで解決されておらず、オンプレの古いソフトウェアだったり、電話やFAXとか、マニュアルで提供されてるというマーケットを見つけることですね。そういう各業界の課題感については、我々が分からないようなところですので、まず、経営者の方にそういう潜在的に面白い市場を見つけていただきたい、と。
その後は、そこに対する解決策として、優れたSaaSのアプリケーションを作れるチームを作ること。その過程で、色々お手伝いもできればと思います。あとはSaaSなので、プロダクトのユニットエコノミクスが回ってるか。要は、そのプロダクトがちゃんと十分な単価を取れていて、そのアクイジションコストが十分小さいものかどうか、LTV÷CACが回ってるかっていうところは重要です。
初出場でサクッと( !?)優勝。リフカム清水氏にみた、経営者としての強い意志
▲Incubate Camp 9th(2016年開催)にて、見事優勝ペアに!その後、投資にも繋がりました。
事務局:ちょっと話題を変えていきまして、Incubate Camp。今回もまたありがとうございます。
倉林:こちらこそ。
事務局:倉林さんでいうと、Incubate Camp 9thでまさに初めてご参加いただき、サクッと優勝っていう。
倉林:ありがとうございました。
事務局:素晴らしいですね。サクッと優勝したので(笑)、10thで一度審査員としてご協力いただいて、翌年にまた戻って来ていただいてますが。Incubate Camp 9thに参加いただいて、どういうご感想を率直に持っていらっしゃいますか。
倉林:そうですね。初めて参加させていただいたときは、割としっかり経営者の方とメンタリングしなきゃいけないので、噂に聞いてた通り、大変だったんですけど。面白いスタートアップを数多く見ましたし、その後、連絡取ってらっしゃる経営者の方も居るので、非常に良い経験だったなと思っていまして。前回、審査員だったんですけれども、やっぱり審査員やってみると、やっぱりキャピタリストね。実際にプレイヤーとしてやってみたいなという風に去年思いました。
事務局:そうですか。
倉林:そうしないと経営者の方と仲良くなれないなと思いましたので。今回は満を持して、1プレイヤーとして、また素晴らしい経営者の方と出会えれば良いなと思っています。
事務局:9thのときでいうと、ペアになったのはリフカム清水さん。
倉林:そうですね。
事務局:Camp開催後、実際の投資にも至っていますね。キャンプでは、ドラフトでお互いがマッチして、メンタリングしていく過程で、リフカムに対してどんな印象だったりでしたか。
倉林:そうですね。さっきの話をシンクロするんですけど、彼の着眼点がすごく良かったなっていう風には思ってまして。フェーズとしてもプロダクトをスタートした段階でしたし。思い出話といえば、例えば、リファラル採用というのが、アメリカではすごく広まっていますけど、日本でどういう風にやるべきか、どんな機能があればやりやすいか、というところを話をしたりしました。そういったプロダクトの話もそうでしたけど、清水さん自身が結構経営者としていろんな面白い経験を持たれていて、そういうのを聞いたのも面白かったですよね。最初、別のビジネスやっていて、少しピポッドして、今にたどり着くまでの過程とか。
事務局:実家に帰ったりみたいな。
倉林:そうです。実家に帰って、お金稼いでまた上京して。
事務局:バスツアーやってるみたいな。
倉林:地元でバスツアーの事業をやって、また東京戻って来るとか。実はそこってすごく大事なところで、折れない心を持っていて、スタートアップ経営者として成功するんだっていう強い気持ちをみれたって言うところもあり、そこがすごく初期の段階では、そのときは投資もしたんですけれども、大きなポイントだったかなという気持ちはしてます。
事務局:なるほど。じゃあ、今回のIncubate Campで、倉林さんとして、どういう投資領域、企業領域に注目していらっしゃるか。あるいは、こういうパーソナリティ・思いを持っている起業家と知り合いたい、といったリクエストとかがございましたら。
倉林:貢献しやすいところで言うと、先ほど申し上げた通り、ソフトウェア、BtoB、SaaSっていうところではあるんですけれども。せっかくIncubate Campのようなところに参加するので、普段、自分がお会いできないような面白いアイデアを持っている経営者の方にお会いできるのもすごく醍醐味かなと思っています。そういう意味では、いろんな分野のいろんな課題をいろんな解決手法で、解決しようという。一言で言えば、いろんな方にお会いしたいなと。
事務局:ありがとうございます。
日米間のコーポレートベンチャーキャピタルの違いは「プロフェッショナリズム」
事務局:倉林さんは「コーポレートベンチャーキャピタルの実務」という書籍を出されていますね。ぜひ、コーポレートベンチャーキャピタルの実務についてだったりとか、あるいはそれをどういう思いでやってらっしゃるかというのをご紹介いただけたらなと。
倉林:そうですね。先ほど申し上げた通り、私は富士通、三井物産、それからSalesforceっていう大企業で投資をするという経験をしてきましたので、そのときに日米の大きな違いっていうのを感じて。アメリカの一流企業のCVCはこんなにも効率的に、合理的に動いているんだと衝撃を受けました。これまでは大学とか、企業とかでご説明する機会が結構多かったのですが、日本企業の方々にこれを知ってもらいたい。日本のスタートアップとか、投資の環境がよりプロフェッショナルになってもらいたいっていうところがあって。
特に日本のコーポレートベンチャーキャピタルっていうのは、まだまだ発展途上のところがありまして。1つ私が思ったのは、アメリカに比べたときに、プロフェッショナルリズムの欠如にあるんじゃないかなという思いから、本を書かせていただいて。今後はVCとしてやっていくつもりで、二度とコーポレートベンチャーキャピタルしないと思ったので、みなさん、これをみて下さいという意味で書きました。あとは、日米のスタートアップ環境の違いっていうのもかなり書いていまして、アメリカがこの分野に関しては、いかに合理的で先進的かというところを日本のみなさんに知ってもらいたいなというところで書きました。アメリカのスタートアップの成功要因とか、経営手法みたいなものもなるべく拾って書いています。
事務局:(読者に向けて)みなさん、ぜひ、Amazonで買えますので。
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起業家へのメッセージ
事務局:それでは、ぜひ、Incubate Campに今回エントリーをいただいている、もしくは、これからエントリーいただく起業家の方に向けて、倉林さんからメッセージをお届けいただけたら。
倉林:Incubate Campは、ゲストキャピタリストは私の友人も多いですけれども、バラエティに富んだ、いろんなアドバイスをする人が揃ってると思います。一泊二日の期間で、一度に全員のコメントを貰えるという、非常に良い機会ですので、それを活用していただければ。
あと、やっぱりすごいのが、実際にその後、ファイナンスに繋がっているっていう。どんなイベントも、結局その後ビジネスにならなければ、僕としてはあんまり価値はないかなと思っているんですけど。実際に、私も投資させて貰いましたし、そういう意味では、今回も参加したいという思いが分かると思うんですけど。経営者の方にとってもファイナンスに繋がるっていう、意味のあるイベントです。
事務局:ありがとうございます。倉林さんでした!
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倉林さん、熱いメッセージをありがとうございました!SaaS領域の方はもちろん、あらゆる領域の起業家の方と広くお話したいという倉林さん。投資意欲もモリモリですね…!倉林さんにピッチのフィードバックを受けたい起業家は、ぜひキャンプへエントリーください!
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