経理コラム(2023.05.04)中小企業向け「賃上げ促進税制」のご紹介
皆さんこんにちは!
今回は、中小企業にとって非常に節税効果の高い、「賃上げ促進税制」についてご紹介します!
(※本コラム記事は、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度を対象とした賃上げ促進税制についての解説になります。)
賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
これまでは、「所得拡大税制」という制度でしたが、令和4年度の税制改正により、「賃上げ促進税制」という名称に変更、これまでよりも要件が緩和され、税額控除率も大きくなりました。
1.通常要件
中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者等が前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
具体的には、雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加した場合、15%の控除が受けられます。ここで、雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される全ての国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。(なお、ここでいう国内雇用者には、役員や役員の身内などは含まれませんのでご注意ください)。
つまり、ある会社の前年の雇用者給与等支給額が5000万円、今年の雇用者給与等支給額が5200万円の場合、1.5%以上の増加に該当しますので、(5200万円-5000万円)×15%=30万円が、納める法人税額から控除できるということになります!
ただし、税額控除の上限として、法人税額(個人の場合は所得税額)の20%が控除上限と定められています。このため、上記の例で、年間の会社の法人税額が100万円だとすると、その20%は20万円ですので、30万円ではなく20万円が、税額控除の上限ということになります。
同様に、赤字で法人税額が発生しない場合は、税額控除は適用にならないため、注意が必要になります。
2.上乗せ要件
また、上乗せ措置を利用する場合には、教育訓練費増加要件があります。この要件には以下のような条件があります。
・教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加していること
・適用年度の終了の日までに中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされていること
対象となる教育訓練費の範囲は、外部講師等に対して支払う報酬、料金、謝金その他これらに類する費用であったり、施設・備品・コンテンツ等の賃借又は使用に要する費用であったりします。
上乗せ要件に該当した場合の税額控除の内訳は以下のとおりです。
①雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加した場合、通常要件を満たすことで15%の控除が受けられます。
②さらに、教育訓練費増加要件にも該当する場合、上乗せ要件①の控除率に加えて10%の上乗せ控除が受けられます。
つまり、通常要件に加えて、上記の①②を満たすと、合計で40%の税額控除が受けられることになります!これはとても大きな効果ですね。
3.まとめ
このように、中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者等が従業員の給与アップに取り組むための制度であり、経営力向上や教育訓練の促進にもつながる制度となっています。
ただし、制度を利用するためには、一定の要件(雇用者給与等支給額の増加率や教育訓練費の増加率など)を満たす必要があります。
また、中小企業向け賃上げ促進税制は、令和4年4月1日以降に開始される事業年度(個人事業主については令和5年分)が対象となります。
税額控除に関しては、法人税額の20%という上限はありますが、給与等を前年から増額させることで、大きな節税効果を見込める場合もありますので、中小企業の経営者の皆様には、是非知っておいていただきたい制度の一つといえます。
ご不明な点、あるいはもっと詳しくお知りになりたい、という場合は、遠慮なく当事務所までお問い合わせください!