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新たな人生の一歩を支える、「計画相談支援」というお仕事

 主にメンタル不調の方を対象に、就労移行支援自立訓練(生活訓練)を行うインクルード。脳科学に基づくブレインフィットネスなどのプログラムが大きな特徴のひとつですが、「計画相談支援」も積極的に行っています。

 今回は、インクルードが運営する「イノベイジ相談支援センター」にて計画相談支援を担当されている安井(やすい)さんにお話を伺いました。

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編集部(以下、「編」):
さっそくですが、「計画相談支援」とはどのようなものでしょうか。もしかすると、言葉そのものを一度も耳にしたことがないという方もいるかもしれません。その概要や重要性などについてご説明いただいてもよろしいでしょうか。


安井(以下、「安」):
「計画相談支援」は、さまざまな障害福祉サービスの利用を申請する際に、「どのような生活を送りたくて」「何のために」「どのサービスを」「どのぐらい利用するのか」についてまとめた『サービス等利用計画書』を作成するサービスです。また、計画書の作成だけでなく「困りごと」と「解決してくれる社会資源」をつなぎ合わせる役割もあり、障害のある方やそのご家族から、生活全般に関するご相談もお受けしています。

編:
「サービス等利用計画書」というのはあまり聞きなれない言葉ですね。こちらは相談者が自分で作成することはできない書類なのでしょうか。


安:
計画書は、ご自身で作成することもできます(※いわゆる「セルフプラン」)。ですが計画相談支援を利用することで、第三者の視点を交えて課題や目標を整理できるとともに、最適なサービスや事業所を探したり、複数のサービスをより効果的に利用することが期待できます。

また、障害福祉サービスの利用以外にも「障害年金の申請をしたい」といった相談があれば、手続き方法を一緒に整理したり年金事務所に同行したりなどもします。ご相談といってもただお話を伺って終わるのではなく、そのお悩みを解決するためのサポートも行っていきます。

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編:
つまり、計画相談支援は「福祉サービスを効果的に活用するためのサポート」ということですね。

ちなみにですが、どのような経緯でこうした計画相談支援を担当されるようになったのでしょうか。


安:
元々は心療内科クリニックのデイケアの職員として、利用者さんの支援やプログラム運営、外来のインテーク面談を担っていました。その中で、就労に挑戦したいとの想いを抱かれる方との関わりを通して、就労のサポートに興味を持ち就労移行支援事業所に転職しました。その採用面接時に事業所から相談支援の業務を兼務することを提案されたのが、計画相談支援の業務に関わることになったきっかけです。

お恥ずかしながら、お話をいただいたときは相談支援専門員の業務を詳しく知らなかったため手探り状態でのスタートでしたが、地域の支援機関の方に恵まれて支援を続けていくことができました。今の事業所は2018年の立ち上げのときから携わっており、皆さんの力になれるよう日々奮闘中です!


編:
携わられてから約3年とのことですので、現在の大まかな業務の流れついてお伺いしてもよろしいでしょうか。


安:
基本的には、担当の利用者さんが利用されている事業所に訪問してサービスの利用状況を確認したり、その結果やご相談内容を書類にまとめたりなどして過ごしていることが多いです。その合間にメールや電話での相談対応や、自治体と事業所との連絡調整もしています。

計画相談(面談)は平均して1日に3名ぐらいの方をお受けしていることが多いですが、他の業務が立て込んでいる時期は0件のこともあり、反対に多いときは日に6件程度など、日によってばらつきが大きいように思います。面談の時間は、その方の相談内容やご負担を考えて15分~60分以上と幅があります。

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編:
計画相談支援の担当者として、これまでに多くの相談支援をなされてきたと思います。さまざまな相談の中で特に多いのはどのような内容なのでしょうか。


安:
最近は、ご自身でサービス情報をネット検索されている方が多く、初回の面談時には「就労移行支援を利用したい」「グループホームを利用したい」など、利用したいサービスが明確になっている方が多くいらっしゃいます。ですが、お話を詳しく伺っていくと「金銭面に困っている」「家の片付けの仕方が分からず散らかってしまっている」などのお悩みを抱えている方もいらっしゃるので、希望されているサービスだけでなく他のサービスや社会資源を提案させていただくこともあります。

就労訓練の利用開始手続きに併せて生活保護の相談同行を行うこともあり、解決する手段が明確になっていても優先順位が整理されていない方に対して、ステップを一緒に整理するなどの相談を受けることもあります。

サービス利用開始後は、定期的な面談(モニタリング面談)を行い、体調や生活状況だけでなく、サービス利用による課題解決の進捗状況などを確認させていただいています。その中で事業所の職員や他の利用者さんとの関わりで困っているなどの相談をいただくこともあり、事業所との間に入り環境調整を行うこともあります。

編:
事業所の利用後も、さまざまな形で関わりを持ちながらサポートされているということですね。

場合によっては数回の相談や面談に留まらず、長期間にわたって深く関わり続けることも少なくないと思います。計画相談支援を行う際には、どのような点を強く意識されたり、心構えとして持たれているのでしょうか。


安:
基本的なことではありますが、ご本人の感じている困り感や不快感、気持ちを否定せずにしっかりと聞き、その上で一緒に解決方法を考えていくようにしています。

「否定されてしまうのではないか」「なんで自分はできないのか」「こんなことを相談するなんて恥ずかしい」と不安な気持ちの方もいらっしゃいます。なので、まずは話しやすい雰囲気と環境づくりを意識しています。

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編:
これまでの多くの相談の中で、解決にあたって一筋縄ではいかなかったことや特に大変だったことはありますか。


安:
精神障害の男性の方で、同居されている親御さんが認知症になられたことを理解しきれず、親御さんの言動に対する不満が攻撃的な行動に繋がり警察沙汰が続くというケースがありました。その状況を解決するために、ご本人の支援者だけでなく親御さんの支援機関とも協力して支援調整を行いました。「大変だった」というよりも、既存のサービスの枠内だけでの対応の難しさを感じるとともに、制度や支援対象者という枠を超えて信頼関係や協力のもとでサポートしていくことの重要さをあらためて実感する機会となりました。

認知症を受け止めきれず悲しい想いや行き場のない怒りを抱いたりすることは、障害の有無にかかわらず誰にもあるものかと思います。仲良く親御さんと会話される姿を拝見していた分、想いを整理しきれずに涙するご本人を見てやりきれない想いがしました。障害ゆえのお困りごとだけでなく、当事者の方の生活を織りなす家族や環境の変化といったものも含めて、その方の人生や想いに寄り添っていくことの大切さを実感した出来事でした。


編:
そうした事例を考えると、もしかすると既存のサービスや支援の限界が、本当に必要とされていることや新たな取り組みのヒントになるのかもしれませんね。

これまでの計画相談支援の取り組みが、やりがいや嬉しさにつながったということも多いのでしょうか。


安:
面談を終えたときに面談前よりも表情が穏やかになられていたり、必要なサポートやサービスの利用が決まり喜ばれているとき、または計画書の内容を確認いただいたときに「私の想いがしっかりとまとまっています」とおっしゃっていただいた際には特にうれしく感じます。

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編:
計画相談支援を活用することで、まさにその後の人生を大きく変えることにつながるというケースも多いと思います。

計画相談支援の利用を考える場合に、選ぶポイントや利用する際のポイントなどはあるのでしょうか。


安:
計画相談支援事業所は、基本的に提供するサービスはどの事業所もほぼ同じです。中には24時間の電話対応を行っていたり、高度な相談支援スキルや地域の社会資源開発に尽力されている主任相談支援専門員を配置している事業所もあり、そのような体制の事業所をお選びいただくのもひとつかと思います。ただ、支援者の個々のスキルや経験値などの違いはあるものの、何よりも担当者との相性や信頼関係を築いていけそうな人なのかというところも重要な点といえます。また、相談内容によっては人には話しづらいこともあると思います。「この人には言いたくない」「この人は信頼できないから話したくない」と思うことが多いようであれば、せっかく計画相談支援を利用していても有効的なサポートが得られなくなってしまいます。

計画相談支援事業所は、ニーズに反して事業所数や支援者の数が追い付いていないのが現状です。選びたくても選ぶ事業所がないということもありますが、まずは初回の面談や顔合せの対応を注意してみていくとともに、利用開始後に相談員に対して疑問や不満に思うことがあればしっかりと相談していった方が良いと思います。

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編:
なるほど。

それでは、現時点で計画相談を利用していない、もしくは計画相談支援の存在を知らない方で、利用することで解決できるであろう悩みを抱えている方に向けてメッセージがあればお願いします。


安:
家事や身の回りのことを手伝ってもらえる「居宅介護」や、就職に向けた訓練をする「就労移行支援」といったサービスと違い、障害福祉サービスの中でも特に計画相談はイメージのしづらいサービスかと思います。

計画相談支援は、障害者のある方が希望とする生活を実現するための伴奏者の一人です。「どんな福祉サービスが利用できるのか」「計画相談のことがよくわからない」などのお悩みがある方や、「こんなことを相談していいのか分からない」「どこに相談してよいのかがわからない」などのお悩みのある方はぜひ一度ご相談ください。

お力になれないご相談内容であっても、相談できそうな施設や機関をご案内することもできるかと思います。まずは近くの相談支援事業所にお電話してみてください!


編:
福祉サービスにさまざまな種類があり、どれが自分の人生にとって最善であるかを判断するのは難しいことだと思います。ひとりで考え込むのではなく、「計画相談」を活用することで自分にあったサービスを見つけることができるということですね。

今お一人で悩まれている方は、ぜひご活用いただければと思います。


本日はありがとうございました!


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