海外マーケティングに活かす!?日本と世界の「食」に関する共通点
先日、国際的な食文化の交流イベントとして開催された、米を「unite(むすぶ)」だけでなく、人と人もむすぶ食文化イベント『United Rice Ball』が今年(2020年9月26日)も開催されたもようです。米をむすんでできるのはもちろんおにぎりですが、まったく性質の違うタイ米と日本米をミックスしたおむすびをつくるというイベントで大変興味深い内容でした。
詳しくは以下リンクからご確認ください。
参照:「絶妙なマリアージュ」タイと日本をむすぶ、意外な米の親和性
https://forbesjapan.com/articles/detail/37676/1/1/1
このような国際的な食文化イベントの開催や日本と世界の「食」及び「食文化」に関する共通点は海外マーケティングのアイデアやターゲットの明確化などに活かせるのではないかと思い、今回は日本と世界の食に関する共通点をいつくかの国を挙げて考えていきます。
◇◆タイと日本の共通点
食文化イベント『United Rice Ball』では、まったく性質の違う両国の米を一つの塩にぎりとして、いかに調和させおいしくできるかということを工夫されていましたが、タイと日本の食文化に共通点はとても多いです。特に日本でも古くから盛んにつくられてきた発酵食品は、タイでも同様で、多くの種類が生産されており文化の一つとなっています。タイと日本の発酵食品は製造方法や原材料などから似ている食品が多数ありますが、似ているようで似ていないものもあり、深堀すると非常に面白いです。
一例として、タイの納豆と呼ばれる「トナオ」という食品があるのですが、こちら日本の納豆とは形状や質感がまったく違い、そのまま食べるのではなくスープに入れたり、炒め物に入れたりするなど調味料のように使用するという納豆があります。
参考:タイ、チェンマイの納豆「トナオ」前編:トナオとは何か?【諸国菌食紀行】https://haccola.jp/2017_10_16_4294/
またタイではインドや中国など周辺国の文化を広く受け入れてきたという経緯があり、この周辺国の文化を取り入れてきたという点も日本と似ている部分です。
両国の食文化の共通点や似ているようで似ていない部分は、タイへのマーケティング活動の一つのヒントになるのではないでしょうか。例えば、発酵食品が文化として根付いているタイでは干物や漬物のような日本の食品に抵抗がないと仮定すると、日本独自の製造工程、製造する地域の文化や自然に興味を持つ方がいる可能性があることから、食品の味と共に生産者のストーリーを伝えることがタイへの有効なプロモーションになるということが想定されます。
◇◆ベトナムと日本の共通点
まじめで、手先が器用と言われる国民性、南北に長い国土の形状や盛んな水産業など日本と共通点の多いベトナムですが、「食」というジャンルだけでもベトナムマーケティングに活かせそうな様々な共通点が見えてきます。その中でも今回は「お茶」に絞って考えてみたいと思います。
ベトナムのお茶産業は中国からの伝来を起源として1,100年以上の歴史があり、ジャスミン茶、ウーロン茶、緑茶や茶葉を使わないロータス茶、アーティチョーク茶、バラ茶、キク茶など様々な種類があります。生産量も中国、インド、ケニア、スリランカに続き世界第5位(日本は11位)とお茶が重要な産業となっています。ベトナム茶が日本や中国と違う点は、苦みが強いこと。苦みを楽しみながら、その後に残る甘みや香りを味わうのがベトナム茶の醍醐味の一つです。と聞いて、今ベトナム茶を飲んでみたいと思った読者の方もいらっしゃると思いますが、まさにそれがベトナムマーケティングのヒントであると思います。
ベトナム茶の味の特徴を聞いて、日本人が飲んでみたい、またどのような製法で作っているか知りたいと思うことは逆のパターンでも起こり得るニーズです。日本茶独自の味の醍醐味や製造者のストーリーはベトナム人の興味・関心にスムーズに入り込み、お茶という共通文化がある両国であるからこそ起こるニーズとして、マーケティング活動に活かせるのではないでしょうか。
ベトナムに興味をもつきっかけが「お茶」であるとすれば、その逆に日本に興味をもつきっかけが日本茶である可能性もあると思います。
◇◆ポルトガルと日本の共通点
最後はアジアから離れ、ポルトガルについてです。
教科書でも有名な鉄砲伝来から始まり、その後様々な食文化がポルトガルから日本へやってきました。諸説ありますが、テンプラ、カステラ、キャラメル、コンペイトウなどなど。それはあくまでも歴史として、実際に現代において食文化の共通点にはどのようなものがあるのでしょうか。
1つ目は、国土の殆どが大西洋に面しており魚介類の宝庫であるということです。イワシ、アジ、サバ、マグロ、スズキ、マス、アンコウ、イカ、タコ、エビ、アサリなど欧州の中でもここまで多様な魚介類を食べる国はないのではというほどの魚介大国で、日本でもなじみの魚介類が食べられています。
ただ魚介類というキーワードだけでは他の国でもある為、重要な共通点は次の内容です。
2つ目は、出汁(ブイヨン)の文化です。出汁だけであれば他の欧州国にも共通しますが、魚のブイヨン、貝類のブイヨン、キノコのブイヨン、ご飯を炊くときに使用するブイヨンなど、日本のカツオ出汁や昆布出汁のように料理によって使い分けられるほど多様な出汁文化が存在し、さらに食材に下味をつけることにこだわる調理方法も欧州の中でも特出しています。
このことから、多様な魚介と出汁を使った食文化を持つポルトガルに向けて、見た目は違えど共通点の多い和食は、ポルトガル人にとって親近感があり興味深い食文化であると思います。その為、例えば、「和食においての出汁の取り方」などのディープな情報発信はマーケティングのポイントになる可能性があります。
◇◆まとめ
今回ご紹介した内容なほんの一例ですが、世界と日本の「食」の共通点から海外マーケティングの糸口を検討することは、重要且つ有効な手段となります。もちろん共通点ではなく、違いを発見することが大事な場合もありますが、共通点のパターンとして、「食文化全体に共通点がある場合」と「食材、料理、食事作法などに共通点がある場合」が考えられます。
また、上記の国は共通点も多い為、「食文化全体に共通点がある場合」に入ると思いますが、どちらにせよ、食文化の共通点と違いを調査及び理解した上で、コロナ禍においてでも海外マーケティングへ活かしていくことは非常に重要ではないでしょうか。
著者:JOINT ONE 嶋田拓司
コラム元:海外・訪日プロモーション専門広告代理店『インバウンド ONE』
https://www.jointone.biz/hanginthere-jpn-20201029/