世界一信頼度が高い観光客は日本人!?観光立国に向けたイン&アウトバウンドの相乗効果を再考
訪日外国人旅行者数(インバウンド)は、2012年の835万人から右肩上がりに増え、2019年には約4倍となる3,188万人となっています。その後コロナの影響で“消滅”に等しい状況ですが、コロナが発生しなければ、オリンピックもあり増加傾向は変わらなかったのではないでしょうか。
一方、出国する日本人であるアウトバウンドは、2019年時点で2,008万人と直近10年の中で見ると微増ではありますが最高数値でしたが、2015年を境にインバウンドに追い越されている状況です。しかし、近年横ばいだったアウトバウンド数も2018年の1,895万人から6%程度も増加し2019年2,000万人を超えたことはインバウンドとの相乗効果の可能性も感じられる大きな出来事であったと思います。
その為、今回は、インバウンド消滅の今こそ、インバウンドとアウトバウンドの関係をあらためて考え、今後の観光立国へのリスタートには何が大切か考えてみます。
世界で最も信頼度の高いパスポートは「日本」
日本人にとって誇らしい情報の一つとして、日本のパスポートが世界最強であるというデータがあります。
【最新版】日本のパスポートは世界ランキング1位!2021年海外渡航状況:https://esta-center.com/passrank/index.html
日本は2018年から3年連続で渡航可能国数が世界で最も多い国となっており、2021年に入っても渡航できる国が191ヶ国にも及び1位の座は変わらないようです。その為、日本のパスポートがある意味で最強であるということです。
このことを日本の出国者数(アウトバウンド)と関連させて考えるのは少し乱暴かもしれませんが、世界最強のパスポートをもっている国であれば、もっと海外旅行に出ても良いのではないかと個人的には思うところもあります。
また、あくまでも一例ですが、渡航可能国数3位(韓国も3位)であるドイツは、2018年時点で年間延べ1億人以上が国外へ旅行しています。中国もアウトバウンド1億人以上ですが、ドイツは人口が8,000万人程度であることからすると、世界有数のアウトバウンド大国であることが分かります。もちろんEU圏内の旅行の容易さや休暇の長さ、人口構造など日本と違う様々な要因があるので、一概に比べることはできないですが、日本のアウトバウンドはもっと増えても良いと思います。
インバウンドとアウトバウンド
日本人の外国旅行者数と訪日外国人全体の推移(2010年~2019年)
日本人の外国旅行者数と訪日外国人全体の推移(2010年~2019年)
では、訪日外国人旅行者であるインバウンドとアウトバウンドに相対的な関係や相乗効果はあるのでしょうか。国際的な交流・関係人口を増加させるという観点から考えてみます。
上記がインバウンドとアウトバウンドを重ねたグラフですが、2015年からインバウンドは10~20%ずつ増加、アウトバウンドも4~6 %ずつ微増が継続しており、ここ数年だけでみると相関関係があるようにも見えます。
しかしながら、明確にはインバウンドとアウトバウンドの相関関係を証明するデータはないように思います。
そこで、筆者の個人的見解となりますが、イン・アウトには以下のような内容が相互に影響を及ぼすのではないかと思います。
・旅行者の移動は国家間の輸出入
外国からの旅行者の獲得は、その国にとって、観光という商品を外国へ販売したということになる為、インバウンドは輸出産業でもあります。
逆にアウトバウンドは相手国の輸出産業となります。その為、ある2国間で旅行者の往来が相互に増えることは、輸出産業(外貨獲得)を維持、発展させるという政策的観点から重要です。また、ある2国間の旅行者数が相互に拡大しているのであれば、両国の関係性は良好であるケースも多く、相互プロモーションなどにより、さらなる拡大を促進することも検討できます。逆に2国間それぞれの送客数に差があるのであれば、国際政策の一つとして交渉することもできるのはないでしょうか。
・人は情報源
外国からの旅行者はその国の情報源であるということもできると思います。直に接する観光施設や飲食店などはもちろん、直に接触しない方でも、歩いている旅行者のファッションや行動、またメディアを通じて訪日外国人の習慣や文化の違いを知ることもあると思います。そのことから、外国人旅行者が増えることは、日本人が外国への興味・関心をもつきっかけになる要素を含んでおり、外国(海外)旅行をする動機に繋がるのではないでしょうか。また、このことを逆に考えた場合、海外へ出る日本人(アウトバウンド)が増えることで、訪日外国人旅行者(インバウンド)の増加につながる可能性もあります。
・グローバルビジネスの発展
世界旅行を経験した後に、ITや旅行系企業を日本で起業したという話をよく聞きます。世界の国々に直接触れ、刺激を受けたことが起業の一因となることも多いと思いますが、逆に訪日外国人旅行者に何かしらの形で接点をもち、外国人の価値観などに直接触れることで、世界に関心をもつ日本人が増えるということもあるのではないでしょうか。そのことから、世界を旅する日本人や日本を訪れる外国人が増えることはグルーバルビジネスに関わりたいというマインドが高まり、インバウンドやアウトバウンドを促進するようなビジネスが立ち上がることで、結果的にイン・アウト両方の増加につながっていくことも想定されます。
まとめ
コロナ禍で消滅しリセットされた訪日インバウンドですが、観光立国に向けリスタートする時に備えて、あらためてアウトバウンドとインバウンドの関係性を考えておくことは重要です。日本は最強のパスポートですが、人口に対する保有率は2019年時点で約23%程度に留まっており、イギリス(イングランドとウェールズ)76%、カナダ60%などと比べると低い数値で、先進国の中でも最低水準と言われています。パスポート保有率は一つの情報に過ぎませんが、最強パスポートを活かす意味でももっと海外へ旅行し見聞を広めることが日本人にとって一般的になれば、相乗効果としてインバウンド(訪日外国人旅行者)のさらなる増加につながっていくと思います。
著者:JOINT ONE 嶋田拓司
コラム元:海外・訪日プロモーション専門広告代理店『インバウンド ONE』
https://www.jointone.biz/hanginthere-jpn-20210215/