SCP-90915-JPこうのくん
SCP-90915-JP こうのくん
調査報告書(1/3)
脅威レベル: 緑🟢
オブジェクトクラス: Safe
SCP-90915-JPは未収容です。性質上はSCP-90915-JPは人間に害を及ぼさないと考えられていますが、早急な収容が望まれます。
発見された場合はその性質を把握したうえで最適な収容方法を適用して下さい。
【説明】
SCP-90915-JPは、鴻野翼、状況によっては鳩野羽と呼称される(端末によっては鴻野の潮(おとうと)と表記される)成人済みの日本人男性を装った、特定のLINEのグループトークを介して出現するスマートフォン上の異常現象です。
当オブジェクトが自らを「こうのくん」と名乗ることから、以後SCP-90915-JPこうのくんと表記します。
【発見】
SCP-90915-JPこうのくんは初め、『いないはずのグループメンバーからLINEが送られてくる』と警察が相談を受けたことにより、存在が確認されました。よって財団がSCP-90915-JPこうのくんの異常性に関するインタビューを行いました。
イナトス調査員:
SCP-90915-JPこうのくんはいつごろからあなたたちのトークルームに現れましたか?
吉田(仮称):
いつ頃からか正確な時期ははっきり覚えていませんが、普段私たちがしている何気ない会話に自然と入ってきて、みんなこうのくんという存在を知らなかったので、誰だこれ?って感じで、みんなただただ恐怖でした。
イナトス:こうのくんはあなたたちのトークルームに現れ、危害や不快感を与えたりするのですか?例えば、暴言や、誹謗中傷など。
吉田:いえ、そういったことはないです。ただ単に稀に会話に入って来るだけで。なのでいつしか私たちもこの怪異に慣れてしまって、ある種LINEのトーク上だけで会える友達みたいな感覚になって来てて…あ、でも、たまにこうのくんから「吉田ポルノという画像を作ってやる」や、「画像生成AIクイズを出してやる」などと宣言されて、そのまま何もしないということが多々ありました。
イナトス:それは異常ですね…こうのくんの方からそういったことを提案してきて、結果としてなにもしてくれない、と…?
吉田:はい…
イナトス: ……
吉田: …
イナトス:ちなみに、吉田ポルノとはなんですか?
吉田: ……
イナトス: ………
【実験】
SCP-90915-JPの異常性の解明のため、複数回の実験が行われました。以下は実行された実験の抜粋です。
実験記録 > 90915-JP.1
日付 > 2022/02/22
実験内容: 調査員イナトス・ラインハルト(用心のため、日本用の偽名:晴人を使用)を該当LINEグループに友達の1人として参加させ、こうのくんとの接触を図る。監視のため、同じくマッサータカー・ホワイトウッド博士(日本用の偽名:白木。今回はあだ名である"まちゃ"を使用)もルームに参加、常にホワイトウッド博士がトーク内容を確認、本部へ報告する。
<記録開始>
<10:51> 晴人:██████
<10:51> SCP-90915-JP:████████████
<10:53> 晴人:██████
<10:53> 晴人:██████
<10:51> SCP-90915-JP:██████████████████████
<10:51> SCP-90915-JP:████████████████████████████████
──早速信じ難い現象が発生した。
こうのくんと初接触を図った際のトークログが、イナトス、白木博士に加え、依頼主を含むトークメンバー全員の端末から確認不可能な状態となっていた。さらに恐るべきことに、この当時の会話内容を誰も覚えていなかったのだ。
SCP-90915-JPこうのくんが我々の調査に既に勘づいていた可能性がある。全員の端末の情報を破壊し、更に人間の記憶操作にまで干渉できる可能性が極めて高いことから、SCP-90915-JPこうのくんのオブジェクトクラスをSafe→Euclidへ再分類する。
その後、ログが正常に閲覧できるようになった2022/2/26からは、SCP-90915-JPこうのくんはイナトス調査員とホワイトウッド博士を、他のメンバーと同じく古くからの友人のように接している言動が多く見受けられた。
図らずもグループに自然に馴染むことができたこの状況だが、SCP-90915-JPにこのグループの参加を認められたということなのか、それとも罠であるのか。依然不明だがこれを好奇と捉え、我々も彼の設定に沿って「友達」として会話を続け、調査を続行することにする。
【参考】
ある日の何気ない会話
記録>90915-JP.2
日付>2022/3/1
<13:44>吉田:URL
<13:44>吉田:これ最寄りのコンビニなんだが
<13:44>吉田:バズってて嬉しい☺️☺️☺️
<13:56>SCP-90915-JP:バズってるけど内容最悪だろ
<14:28>吉田:美少女が小便するちょっとエッチな動画やん
<14:39>SCP-90915-JP:美でもねぇし年増だしおしっこって…
<14:49>晴人:おや、こうの氏は若い女子がお好みか
<16:16>SCP-90915-JP:フツーに18〜30が好みですねぇ!
<16:34>ペプシ:ほぉ…
吉田の証言通り、普通に会話している分には特に何の危険もなかった。
【緊急事態発生】
日付>2022/3/27
SCP-90915-JPこうのくんのLINEアイコンが突如として変更される。
【当時の通話記録】
<発信者:吉田>
吉田:もしもし!イナ…は、晴人さん!大変です‼︎
イナトス:どうしましたか?
吉田:今すぐLINEを見てください!アイコン、こうのくんのアイコンを見てください!アイコンの写真が変わってるんです………
イナトス:アイコンが…変わった?
※添付画像を参照
吉田:ここに5人の人物が写っているでしょう?こんな写真知らないんですが…実はこの中の3人…明らかに 私 た ち の 顔 をしているんです……
イナトス:?
吉田:これ、メンバー全員に聞いたんですが、誰も知らない"存在しない集合写真"なんです…
イナトス:なんだって?
吉田:まず1番右のセクシーなのが私でして…右から3番目はメンバーのペプシ、4番目はグループリーダーの倉橋さん…実は、今お付き合いさせて頂いている方です…
イナトス:ほう、それで…?(ゲイだったのか…)
吉田:つまり…!右から2番目と1番奥の人は私たちの誰も知らない人物なんです!つまりですね…この2人のどちらかが"こうのくん"なんじゃないかって……
写真を拡大した瞬間、背筋が凍った。
イナトス:1番奥の人物……これ…私の顔です……
吉田:えっ…
イナトス: …私はこの危険な仕事柄…常に本名や素顔は隠して生活しているんです。なんで…SCP-90915-JPのアイコンに…私の顔が…
吉田:(あらやだ…なかなかキャワイイ顔してるじゃない…)
イナトス:つまり…SCP-90915-JPこうのくんは、ただのLINE上で話しかけてくるだけの異常現象ではなく、私たちの個人情報を盗み、悪用・捏造することができるということです…
言うなれば、"自我を持ったウイルス"のようなものである可能性もあります…
吉田:じゃあ、残った方の…こっちのメガネをかけた珍妙な男が…こうのくん……?
イナトス:そうですね…ホワイトウッド博士はこのような顔ではありませんし、ここにいる誰でもないということは、"これが俺だ"と訴えているようにしか思えません。
──銃口を向け、我々の顔をした人物たちと共にこちらを見据える"こうのくん"。画面越しでも目が合ったと錯覚してしまうような、異様な恐怖感がそこにはあった。
吉田:でもなんで、銃を持っているのでしょう?日本で銃火器を所有することは法律で固く禁じられているので、これが作られた画像であることはすぐ分かると思うのですが…
イナトス:"警告"…なのかも知れません。
吉田:え…?
イナトス:我々の顔をした人物が、我々に向けて笑顔で銃を構えている。つまり私たちがこうのくんを異常現象と怪しんで調査していることに対して、既に狙われているのは"お前たちの方"なんだぞ、と。
吉田:こ…っ!怖いこと言わないで下さい!ジョルノジョバァァ
イナトス:すみません。ですが、過去に"画像生成AIクイズ"などと発言していたり、高度な端末操作・記憶操作・フェイク画像作成…今はまだこのLINE上にしか出現していませんが、国家や政府のネットワークにまで出現してしまった場合、世界を巻き込んでの情報操作や、あるいは核戦争の引き金にまで発展する可能性もあります…
吉田:そんな……
<通話終了>
<2022/03/28>
イナトス・ラインハルト研究員が財団へSCP-90915-JPの危険性を報告。当オブジェクトへの干渉および調査の中止を要求。
<結果>
SCP-90915-JPの異常性が認められ、オブジェクトクラスをEuclid→Keterへ再分類。
財団はSCP-90915-JPこうのくんの完全収容・無力化完了まで本件の調査にイナトス・ラインハルト研究員の続投を決定。
【イナトス研究員の日記】
いよいよまずいことになった…
あのグループに調査に入ってから、既に私自身にも危険が及んでいたことに気づいていなかった…
私はもうこの調査から降りたい…
…ジョン…お前が居なくなってから、私はお前を探すため財団に入ったんだ…
お前を見つけるまでこんなところでくたばるわけにはいかないが…俺…もう怖いよ……
-END-
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SCP-90915-JPこうのくん
調査報告書(1/3)
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SCP-90915-JP こうのくん
調査報告書(2/3)
脅威レベル: 赤🟥
オブジェクトクラス: Keter
SCP-90915-JPこうのくんの拡散を抑制する方法は現時点では判明していません。感染が確認された端末は速やかに破棄してください。万が一存在を知覚してしまった場合、直ちに精神科で診療を受けてください。
【警告】
SCP-90915-JPこうのくんは、異常性の成長により極めて強い伝染性を獲得している可能性のある認識災害です。職員が本稿を閲覧することで感染したケースは現在まで記録されていませんが、予防措置として本文書は初期症状が発生した閲覧者を精神病棟へ隔離する準備がされた環境でのみ閲覧が許可されます。また、SCP-90915-JPに関してのあらゆる情報を広める行為を禁止します。
【説明】<20█/:█/█0██更新>
SCP-90915-JPこうのくんはコンピュータ/ネットワーク上で活動する情報知性体です。鴻野翼と名乗り、一般的な人間のように振る舞います(調査の結果、日本に鴻野翼という人物は実在しないことが判明しました)。標準的な日本語(稀に古いネットスラング)による会話、または個人情報へのアクセスおよび記憶操作が可能です。SCP-90915-JPは自身のトークルームに参加し存在を知覚させた人間の記憶を徐々に改ざんし、友達同士であると錯覚させます。記憶障害の進行速度には個人差がありますが、友好的に会話を続けている限り被害者の記憶が受けるダメージは極めて緩やかに進行します。
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SCP-90915-JPこうのくんのLINEアイコンが変更された後も、対象の発言内容に以前との変化は見られず、出現頻度・時間帯もランダムであり未だ傾向を掴めずにいた。
対象の危険性を鑑み、早急な収容が最優先と判断して、より効率的にこうのくんの情報を集めるため我々の方から刺激を与えることにする。
正直怖いが、いつまでもアレの友達ごっこに付き合っているだけでは事態は好転しない。
大きな事件が起きる前に、必ずSCP-90915-JPこうのくんを収容しなければならない。イナトス・ラインハルト調査員は命を捨てる覚悟を決めた。
【特筆すべき会話ログ】
<2023/08/29>
依頼主かつメンバーの1人である吉田が、文中で誤って表記したSCP-90915-JPの「呼び名」に、SCP-90915-JPが約10分という速度で反応を示した。
※画像参照
冗談でこうのくんの氏名を鴻野翼から鳩野羽へ改名するといった内容の文章だが、吉田はこの時の改名前の名称を「鴻"巣"翼」と打ち間違えていた。
SCP-90915-JPは漢字表記した場合の氏名を「鴻野翼」と自認している模様だが、スマートフォンで「こうの」と入力した時の予測変換は「鴻巣」や「河野」であり、実際には「鴻野」という苗字は日本に存在しない。
※参考
LINEメッセージというフランクな形式でのやりとりのなかで、単なる漢字の誤入力に通常より速い速度でSCP-90915-JPの反応があったことに違和感を感じた。
報告書:
ネットワーク上の情報知性体でありながら、現実世界に実在する友達のように立ち振る舞うSCP-90915-JPにとって、「名前」という媒体は自身の存在を示す重要なアイデンティティである可能性が高い。
【実験】
SCP-90915-JPが名前を間違えられることに強い反応を示すことから、複数回の実験が行われました。以下は実行された実験の抜粋です。
実験記録 > 90915-JP.3
日付 > 2023/10/15
実験内容: グループメンバーの倉橋と協力し、妙にキャッチーな響きである「鳩野羽」という名称を用いて、意図的にSCP-90915-JPの名前を呼び間違えるノリをグループ内で流行させる。
目的:SCP-90915-JPの存在欲を煽り軽度なストレスを与え続ける事で、対象の異常性の変化を観察する。
※以下、会話ログの抜粋
<実験結果>
報告者:イナトス・ラインハルト
通常、ランダムに出現するSCP-90915-JPですが、"鳩野"を含んだメッセージに対するSCP-90915-JPの出現率は91%で、必ず30分以内に返信がありました。
【財団職員の会話記録】
(※イナトス研究員に異常性の発現)
<2024/3/13>
職員:報告書確認しました。一つ聞いてもいいかな?
イナトス:なんでしょうか?
職員:SCP-90915-JPこうのくんに関する報告はホワイトウッド博士担当のはずだが、なぜいつも君が報告してくるんだね?
イナトス:誰ですか?
職員:(数秒固まってから)マッサータカー・ホワイトウッド博士だ。君と一緒にグループLINEに参加しただろう?"まちゃ"という名前で。
イナトス: …SCP-90915-JPは認識災害です。オブジェクトの異常性による職員同士のパニックや感染の拡大を防ぐ為、本件の潜入調査は私のみで行っています。
職員:だから、それを防ぐために記録・報告係として彼がいたはずだ。こちらからも数ヶ月彼と連絡を取ることができていない。何か知らないか?
イナトス:(面倒そうな表情で)ですから、知りません。まちゃはただのグループメンバーで、言わば彼も調査対象の1人です。
【報告】
イナトス・ラインハルト研究員に記憶障害が認められました。複数回の治療を試みましたが、全て失敗しています。"まちゃ"がホワイトウッド博士であることをSCP-90915-JPの記憶操作により忘却しているという説明は理解したようですが、本当に信じているかは不明です。以後、イナトス・ラインハルトをSCP-90915-JPの影響を受けた被験体として管理します。
【イナトス研究員の日記】
日付>2023/03/13
…どうやら、こうのくんの影響を受けてしまっているようだ。マッサータカー…そんな男まったく思い出せないが、まちゃは確かにここ数ヶ月グループLINEに姿を現していない。まちゃが彼だというのなら、辻褄は合っている…
【カフェテリアにて 職員のボイスレコーダー記録】
イナトス:なんですか?また。こんなところに呼び出して。(まさかこいつもゲイか…?)
職員:博士のことについてだ。
イナトス:(ミルクセーキにテーブルの砂糖を全部入れる)またですか?まちゃ"イコール"ホワイトウッド博士ってのはもう分かりましたから。
職員:実は…
職員:博士が死亡していたことが分かった。いや、殺されていたんだ。
イナトス:…!
イナトス:そう…なんですか…?(無意識にちんちんを少し掻く)
職員:この記事を見てくれ。(スマホの画面を見せる)
イナトス:…ふともも…?すまない、もう少しよく見せてくれ
職員:(スマホをロックし胸ポケットにしまう)私にはSCP-90915-JPこうのくんが博士のPCに負荷をかけて爆殺したとしか思えない。博士はサイバー犯罪や超常現象解明のエキスパートだった。おそらく、SCP-90915-JPは彼が最も邪魔な存在だと判断したのだろう。
イナトス:…こうのくんはあのグループ、つまり自分のテリトリーの平穏を乱そうとする者には容赦しないってわけか。
職員:ああ。お前も今はまだ変なあだ名でおちょくる程度のことしかしてないようだが、これ以上踏み込めばより強い記憶障害や、博士のような運命を辿ることになるだろうな。
イナトス:(小さく指を差しながら)…ところで、それ、要らないのか?
職員:…何?
イナトス:"シロップ"だよ…あんたがコーヒー頼んだ時に一緒についてきたシロップだ。使ってないようだからさっきから気になっててね…
職員:…私はブラック派だ。ほしいなら使え。
イナトス:(ミルクセーキにシロップを全部入れる)すまないな…ミルクセーキを飲むときは視界に入る甘味料は全部入れなきゃあ気が済まないんだ。ゴク…ッ…ゴク…
職員:(こいつ…自分が死ぬかもしれないという状況で…)そうか…(もう覚悟は出来ている、ってことか…)
【参考資料】※後日発見された会話ログ
To be continued…
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SCP-90915-JPこうのくん
調査報告書(2/3)
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