キノの旅2003
僕がキノの旅と出会ったのは、小学生の時だ。クラスには学級文庫とは別で、担任の先生がオススメしていた本が置いていた。その中の1冊がキノの旅だ。不思議なユーモア、世の中の非情さ、それらがたくさん詰まった小説を読んだのは、初めてだった。
それからしばらくして、アニメがあると知った。僕はもうだいぶ成長していたが、それによってキノの旅のアニメをより深く味わえた気もする。内容が内容だから。
アニメは2作あって、僕は一応両方1話ずつ観た。そして、気付けば古い2003年版のDVDを買っていた。
ネットで調べると、新旧あるキノのアニメのうち旧作の方の絵柄が好ましくない人が多い印象があった。確かに、原作小説の挿絵の変化や時代の変化で、新旧のアニメではだいぶ作風も絵柄も違う。
旧は絵本みたいな絵柄で、キノはまんまるとした顔。色合いもキラキラしてないし、キノが出会う人達も青い空も、どこか暗く淀んでいる。
新はアニメ技術の進化もあって、キノのビジュアルも美しくなった。CGを使ったり描写にも進化が見て取れる。出会う人達も青い空も、美しい。そして、キノ以外の人が主役の話も多い。
だが、この「旧作の絵柄」がキノの旅の主題に関わってくる。キノの旅のテーマの1つに「世界は美しくなんかない、それゆえに美しい。」がある。旧作の絵柄は色合いもキャラの顔つきもきらびやかじゃないし、確かに美しくないかもしれない。だが、「それゆえに美しい」のだ。
そして何より、声優の演技が世界観にマッチしていると思う。レギュラーキャラのキノ役は前田愛さん、エルメス役は相ヶ瀬龍史さん。それぞれ女優、舞台男優の経歴がありながら声優を務めた。
この2人の話し方、雰囲気、態度が世界観に合っている。あくまで2人は国を巡る上での傍観者、だからこその棒読みのようで緻密な仕草がとても上手いと思う。
2人や、出会った人々の声が作中の名言をより素晴らしいものにする。
エルメスなんかは、キノと「旅人とモトラドの契約」を結んでいるものの、不思議な関係を保っていることが演技から伝わる。
2話でキノが殺されかけた時も、新しい運転手を用意すると言われて「そりゃどーも」と返す。取り乱すことない様子。それはキノが死ぬことに興味がないのか、はたまたキノが殺されることに苛立って素っ気ない返事をしたのか。
とにかく、エルメスはキノと信頼関係ではあるものの、とことんドライ。キノのエルメスに対するドライな描写はないが、エルメスのそうゆう性格がキノとの不思議な関係を目立たせている。
とにかくエルメスの性格に合った演技がスゴイ。まぁモトラドゆえの性格なのかもしれない、人間を客観的に見ているからこそのドライな性格とも言える。
エルメスと同じく「あくまで傍観者」として国を巡るキノも、ドライではあるが死の恐怖に震えたり、似た境遇の人に自分を重ねたり。そんなキノの人間性が垣間見える時、よりエルメスの非人間性が際立つ。
最後に、「音」の演出が素晴らしいことを伝えたい。BGMにしろ、主題歌にしろ、それらの使い方も抜群に素晴らしい。
余計なところでとりあえず入れるようにBGMを使わず、大事なシーンでさりげなく流れる。人が亡くなるようなシーンや、戦闘シーンも、BGMが無いことが多い。それは、新旧関係なくキノの旅の戦闘シーンは、だいたい生きるか死ぬかの場合が多い。
旧作は戦闘シーンではBGMが無く、発砲や鍔迫り合いだけなど緊迫したシーンに仕上がる。つまり戦闘にしろ死亡にしろ、「人の命が失われようとしている時にBGMがかからない」というのは上手い演出だと思う。これ以外でも、ただの会話シーンですらBGMがかからないことが多い。
だが、BGMが無いから良いわけじゃない。とにかく使い方が上手い。国の本性をキノ達が掴んだ時や、出会った人々が身の上話をする時など、その回で重要なアクションが起きたときなどに流れるイメージがある。
そして何より、旧作を観た人なら誰もが知っているBGMがある。それは、次回予告や最終回の旅立ちシーンで流れた「あの」BGMだ。(曲名は不明)
あの次回予告BGMを聴くと、最終回のキノを思出だす。そして、どこまでも旅をしたくなる。どこまでも自由になりたくなる。(友人から世界に数曲しかないレベルで弾くのが難しいと言われたが、真偽は不明)
OPの下川みくにさんの「all the way」も、キノの世界観、生き方が感じられる曲。出かけた時は聴きたくなる。個人的には2番のサビ前「好み汚し頷く強さと いつも前を見つめたい弱さを 誇り高く眼差しで誓う 負けたくないから」が凄く好き。
EDの「the Beautiful Would」も名曲。キノ役の前田愛さんの歌声もさることながら、作詞が作者の時雨沢恵一さんということもあって「THE旅」ってカンジの歌詞が味わえる。しんみりしながら、どこか力強い。
まぁ、あくまで「アニメ版キノの旅1作目」としての素晴らしさを伝えたかったので、「キノの旅」全体としての文章ではなくなったかもしれない。特に、僕自身も最近忙しくて知識が間違っているかもしれない。
でも、この記事を読んで1人でもキノの旅2003に興味を持つ人が増えたら嬉しい!僕は初海外でオーストラリアに行った時、常に旧作キノのOPを聴いてた。それ以外にも、キノは僕の人生に影響を与えてくれた。以上!いつか前田愛さんにお会いしたい…
キノ「人は空を行く鳥を見ると、旅に出たくなるそうだ。」エルメス「誰の言葉?」キノ「…わすれた。」
あと、時間をあまりかけたくなかったのと機能を上手く使えなくて文字ばかりになってしまいました…いつかリメイク記事を書きたい!(1時間くらいしか時間使ってません…スイマセン)
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