天皇賞秋

 2008年ウオッカが勝った天皇賞秋が好きで、15年以上たった今もたまに見返します。(っていうか15年前!?)。フジテレビ青嶋さんの実況も大好きで、

「ウオッカ!ディープスカイ!内からもう一度ダイワスカーレットが差し返す!これは大接戦!大接戦のゴール!」

「上位人気3頭、牝馬と牝馬と今年のダービー馬。1分57秒2はレコードの赤い文字です!」

 当時は、こんな記録は2度と破られないだろうと思っていました。




過去5年良馬場平均ラップ

 それから15年、1分57秒台は当たり前。2F目以降がすべて11秒台の決着は珍しくありません。時計の速さは、中盤の緩みのなさと、ラスト1Fの持続力が起因します。今年も、予想のポイントはこの2点。

18~23年 35.70-46.63-34.57
11~16年 35.63-47.33-35.08
00~09年 35.35-47.62-35.25



 過去2年の比較でも、対局にある天皇賞秋。23年のような持続力戦か、22年のような加速力戦か。どちらに振るかで、印は大きく変わってきます。



 ここからは前哨戦と個体分析をしながら、前走とのリズムの違いと馬ごとの特徴を整理していきます。


★ドバイシーマクラシック

前哨戦評価:D

 ドバイシーマクラシックは、道中12.5前後を推移し、スローのL4F瞬発力戦になりました。先行したシャフリヤールがリバティアイランドに先着するほど前残りの決着でした。

 緩すぎる流れが影響してか、このレース出走組の次走は、距離短縮戦で軒並み凡走しています。テンのスピードが鈍り、前走のペースを引きずっているように感じます。

シャフリヤール
次走2,000m 札幌記念(2番人気5着)
自身のテンが去年より0.5秒遅くなる

ジャスティンパレス
次走2,200m 宝塚記念(2番人気10着)
自身のテンが近走で最遅
雨を差し引いても遅め

リバティアイランド
次走2,000m 天皇賞秋(想定1番人気 X着)


リバティアイランド

近走の個別ラップ

評価:C
スタート:13.0/中盤:12.3/減速:96%

 今回410mの距離短縮に加え、軽度な靱帯炎症からの休み明けです。グラフが示す通り、前走ドバイの中盤ラップは天皇賞(秋)と大きく異なります。追走に違和感があるのは間違いないでしょう。

 加えて、昨年秋から速い追走を求められていません。中盤平均ラップは、ドバイシーマクラシック(12.5)→ジャパンカップ(11.8)→秋華賞(12.7)と遅めです。菊花賞→有馬記念を経験した3歳牡馬が、翌春に成績が伸び悩むように、長距離への慣れを戻すのは一苦労です。

 一方で、前走のL3Fのトップスピード (11.1-10.5-11.6) は見事で、ジャスティンパレスとは0.5秒も差がありました。またトップスピードだけでなく、オークスでは6F連続11秒台の持続力も証明しています。一定の能力は認めつつも、追走体験・状態の過程がオッズと見合わずという評価です。


★ドバイターフ

前哨戦評価:C

 ドバイターフは、マテンロウスカイの超Hペースでの逃げとなりました。2F目から 11.0-11.2-11.2-11.5 を刻み、スプリント並の速さです。

 それを追走したダノンベルーガとドゥデュース。L2Fの再加速は流石の底力です。直線は互いに窮屈になりながら、道が開いたL1Fは方や加速・方や減速で、明暗を分ける結果となりました。微差ですが、このレンジの追走スピード耐性の差かなと思います。


ダノンベルーガ

評価:C
スタート:13.1/中盤:11.6/減速:98%

 特殊だったドバイターフ以外は、L3Fの推移の仕方は似ています。中盤の速さが、終いのトップスピード差に繋がります。この馬の特徴であるトップスピードの高さを活かすために、22年のような緩む流れが理想です。

 ただ、若いころからあまり成長を感じません。テンの速さも終いのキレも体重も距離も。今回もいいところにはいるんでしょうが、勝ち切るにはどうでしょうね。


★宝塚記念

前哨戦評価:C

 道悪。4角から直線でのスピード差が勝敗を分けました。
 ソールオリエンスは重馬場でも良馬場と遜色ないトップスピードが出せています。脚力は圧巻です。また、外が良い馬場で、彼が苦手な鋭角コーナーを勢いのまま大外にブン回してもロスにならなかった点も効果的でした。

 ドウデュースは道悪でも持ち味のコーナーの推進力は健在でした。下り坂で1秒以上加速し、一気に距離を縮めます。ですが、直線はさすがに脚が鈍り、ラスト1Fの減速率はいつも通り高め。良馬場で巻き返すのは間違いないでしょう。

 ジャスティンパレスは休み明けに重馬場でノーカウント。ルメールも馬場を敗因に挙げています。L3Fのすべてでこの4頭中もっとも遅いラップを刻みました。いかに能力を発揮できなかったかが分かります。


ドウデュース

近走の個別ラップ

評価:B-
スタート:13.3/中盤:11.9/減速:96%

 テンは年を重ねる毎に少しずつ遅くなり13.5前後です。この馬の特徴はなんといっても3~4コーナー加速力でしょう。京都記念・有馬記念で見せた推進力は王者の走りです。

 勝ちパターンは、コーナーの利を活かして、スタートの遅さを挽回しつつ、直線のトップスピード差で押し切ります。コーナーからやや長めに吹かす分、L1Fの失速率は高めなので、相殺できる急坂コース+小回りに良績があります。グラフがイメージ以上に右肩下がりで、底力の高さを感じさせます。

近走のラスト4Fの違い

有馬記念

ドウデュース
11.7-11.4-11.2-11.8
スターズオンアース
12.1-11.7-11.3-11.9
ジャスティンパレス
11.8-11.6-11.3-11.5

京都記念
ドウデュース
12.0-11.3-11.1-11.5
マテンロウレオ
12.2-11.5-11.2-11.5
プラダリア
12.0-11.5-11.5-11.9

 2走前に1800m戦があり、近走の追走ペースに緩急のリズムがあります。特に、そのドバイターフは中盤が 11.2-11.2-11.6 とスプリント並でした。この経験は、走りを活性化させ、距離短縮の今回に向けて間違いなくプラスです。

中盤追走スピードと結果
11.0~11.4 ドバイ(5)、天皇賞(7)
11.5~11.9 ジャパンカップ(4)、ダービー(1)
12.0~12.4 弥生賞(2)、皐月賞(3)、京都記念(1)、有馬記念(1)
12.5~   宝塚記念(6)


ジャスティンパレス

近走の個別ラップ

評価:C-
スタート:13.3/中盤:12.3/減速:96%

 テンはデビュー時から13.3前後で変わらず、いつも後方からです。持続力に長けた馬で、L4Fから徐々に加速してL1Fの減速を小さく抑えられるのが特徴です。

 L1Fの持続力は、有馬記念ではドウデュースを、ドバイシーマクラシックではリバティアイランドを上回ります。

有馬記念
ドウデュース    11.7-11.4-11.2-11.8
ジャスティンパレス 11.8-11.6-11.3-11.5

ドバイシーマクラシック
リバティアイランド 11.6-11.1-10.5-11.6
ジャスティンパレス 11.7-11.2-11.0-11.4

 加速力では劣りますが、直線の長い東京は合います。去年のような持続力を活かす展開が理想ですが、今年の逃げの構成だとどうでしょうか。


ソールオリエンス

評価:C
スタート:13.1/中盤:12.0/減速:94%

 この馬の特徴は、宝塚記念と中山記念に現れているように、道悪を苦にしないパワーと一瞬の加速力です。ラップが終盤に上下する中山小回りや京都外回りが適しています。

 一方で、持続力戦は結果が出ていません。有馬記念や大阪杯のように、中盤から長くいい脚を求められる展開では、ラストの加速力が鈍ります。また、他馬と比べスピードに欠ける(=グラフ推移が高め)ため、一雨ほしいです。

 宝塚記念後、鞍上が「返し馬のバランスが良かった。いつも以上に大きく変わったと感じた。」と語っていました。成長がスピード不足をどこまで補えるかがポイントですが、スピード持続質で良馬場の天皇賞では難しいという判断です。


べラジオオペラ

評価:B
スタート:12.7/中盤:12.1/減速:94%

 ペース経験が一定で、この舞台でも追走に驚くことはないでしょう。スタートがよく、近走実績からは2番手につけられます。初角は窮屈な東京2,000m、スタートの利を活かせる絶好枠となりました。

 特徴は、ロングスパートL6F戦だった大阪杯でみせた持久力の高さです。加えて、スローL3F戦のダービーで上がり 33.0 だったように、加速力とトップスピードもあります。加速力自慢のソールオリエンスを上回るほどです。

 陣営からは夏負けが伝えられていますね。状態はもう一歩上があるようです。


★毎日王冠

前哨戦評価:E

 毎日王冠で初めてGⅠ馬不在の低調なメンバー。低調さは中盤ラップにも現れて、逃げたホウオウビスケッツが 11.9-12.1-12.1。スローからのL3F瞬発力戦。全頭の上がりが33秒台の珍しい決着で、掲示板は4角5番手以内が独占した前残り決着となりました。


マテンロウスカイ

評価:C+
スタート:12.8/中盤:11.5/減速:89%

 前走、唯一際立っていたのがマテンロウスカイ。直線は終始前が壁となり、ほとんど追えていなかったにもかかわらず、メンバーNo.1のトップスピードで美しいVラップを刻みました。

 1,800mを主戦場とする先行力と、昨年末から切れ味が増した末脚が魅力です。鞍上込みで暴走する懸念はありますが、補って余りある単勝万馬券の穴馬です。


★オールカマー

前哨戦評価:C

 秋の中山、高速馬場3週目。雨の影響は少なくクッション値10.0。4角5番手以内が上位を独占する前残り戦となりました。1番人気が仕掛けを遅らされた分、全体的にスローとなり、L2Fの瞬発力勝負となりました。


レーベンスティール

近走の個別ラップ

評価:B+
スタート:13.0/中盤:12.2/減速:96%

 前走は、距離延長で折り合いを欠きながらでしたが、L2Fの加速力&持続力は流石でした。L2Fのラップは、自身のセントライト記念を再現するものでした。なお、セントライト記念で同じようなラップ推移だったアーバンシックが菊花賞を制しました。

レーベンスティール
オールカマー   11.7-11.7-11.0-11.2
セントライト記念 11.8-12.0-11.0-11.0

アーバンシック
セントライト記念 11.8-11.8-11.0-11.1

 オールカマーのL2F瞬発力戦、エプソムカップの11秒台連発の持続力戦と、どんなペースになってもパフォーマンスする安定感があります。加えて、12秒後半のテンのダッシュ力と絶好調の鞍上を引き連れて、もっとも欠点の少ないという評価です。


隊列想定

近走1F実績からの隊列想定

 ジャックドール・パンサラッサG1級の逃げ馬が不在で、過去2年のような確固たる逃げにはならなそう。1着をとるための逃げではなく、善戦するための逃げというイメージです。

 同じ奥村厩舎馬で親子が騎乗予定のホウオウビスケッツとノースブリッジ。また、逃げるために大野騎手に戻してきたシルトホルン。基礎ダッシュ力と好枠のべラジオオペラ。不完全燃焼続く典さん率いるマテンロウスカイ。最初の1Fの駆け引きは、欠陥東京2,000mの面白さですね。


◎レーベンスティール
〇べラジオオペラ
▲ドウデュース
注マテンロウスカイ


 どれも単勝のイメージが湧わないので、持続質にも加速質にもバランスよく対応できる3頭+穴馬を選びました。どの馬も長所と短所がはっきりしていて、いつも以上に展開に左右され、結果がガラリと変わりそうです。

 GⅠらしく中盤締まった底力戦を期待しています。そんな中で、上位人気馬が不安要素をあっさり振り払うような快勝劇を、負のレッテルを張られた4歳勢の成長を楽しみたいと思います。2008年のような好勝負がまた見られることを期待しています。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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