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【読書感想文・ゼロからわかる量子コンピュータ(小林 雅一 著)】20〜30年後(?)に現れるだろう技術革命を知っておこう

Audibleで「ゼロからわかる量子コンピュータ」を聴きました。

量子コンピュータについては、開発側ではありませんが、次世代の計算機がどのような変革を生むのか興味があり、聴いてみました。

専門家に対しての本ではないので、量子力学を学んだことがない人にも、多少の数学の説明はありますが、非常にわかり安く量子コンピュータについて説明してくれている良書と思いました。

内容としては、

・量子コンピュータとは(基本原理含む)
・量子コンピュータの現在
・量子コンピュータがもたらす将来

でした。量としては、下二つの内容が多く、量子コンピュータが持つ影響力のポテンシャルを知ることができました。

本書で学んだことは、

・量子コンピュータは実験段階だが既に商用利用が行われている
・量子コンピュータは国家安全保障に深く関わっている
・量子コンピュータの開発自体が重要な一方で、使用に関する倫理基準の制定が課題

ということです。

まず驚いたのは、情報収集していなかったので研究者として恥ずかしい限りですが、量子コンピュータは商用利用が始まっているということ!現在の量子コンピュータは未だ実験段階で、未だ課題が多く残されている状態ではあるにも関わらず、GAFAMに代表される企業や、IBM、その他のスタートアップ企業が既に、開発した量子コンピュータをクラウド上で提供しているのだそうです。

量子コンピュータは、その計算アルゴリズムが、現在の古典的PCとは異なり、使い方を身につける必要があるようで、しかも使いこなせる人材も今の所少数。なので、企業は今のうちに、そのアルゴリズムにより計算を行えるようにしておくこと、そしてそれを使える人材を育成・確保する目的で使用しているのだそうです。すなわち、「量子超越性」(量子コンピュータの性能がスパコンを含む既存計算機の性能を凌駕すること)が確実になった際に、スムーズにそれを活用するための準備段階、と言えそうです。

量子超越性を得た段階の量子コンピュータは、それはそれはすごいシロモノらしく、現在、スパコンでも数万年かかるような暗号解読を一瞬のうちに行える能力を備えるのだとか。ここで、一番重要なのが、いわゆるサイバーセキュリティで、国家安全保障に直結しています。つまり、量子コンピュータを開発、活用で先を越されることが、国家安全保障上めちゃくちゃ危険、ということになります。ですので、アメリカでは量子コンピュータ関連の国家財源が、国防省からかなり多く捻出されており、その重要性が見て取れます。

このような事実を知ると、一概に、軍事研究を行わないというスタンスをとっていいのかな?ということを、個人的には思いました。なんでもそうだと思うのですが、ある技術を平和利用するために、その技術で自国を守る、という考え方もしていいのでは?ということを感じました。

多分ですが、量子コンピュータの開発競争に勝った国がその倫理を決定できると予想しています。現在のところでは、アメリカと中国です。本書では、現在は開発を進めることだけに注目が集まっており、その利用に対する倫理基準は注目されていない、という旨の記述がありました。これは、現在のメタバースによるVR空間の不動産などの現状に似ているのかな、と思いました。つまり、「使っていく過程で倫理ができ、修正していく」というプロセスが、量子コンピュータでも起こりそうだな、と感じています。

ただ、量子コンピュータの場合、上述のように、国家の安全保障に直結するので、倫理基準の制定はかなり早くから行われるかもしれません。ただ、開発でイニシアチブをとる国が主導するのは間違いないと思います。それを考えると、とにかく「最低限遅れないようにすること、後追いはもってのほか」と思いました。

とにかく、未来を創造しそうな量子コンピュータ。今後も目が離せないな、そう思った次第です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。