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僕が山の中でパワースポット誕生の瞬間を目撃した話【山コラム】

みなさん、パワースポット巡りしていますか?

僕はしていません。というか、そもそも僕自身はそれほどパワースポットに特別な思い入れはありません。僕は旅好きですが、パワースポットを目的地にしたことはほぼありません。まぁ、近くにあれば、ちょっと寄ってみるかな? くらいのスタンスです。

しかし、全然、まったく興味が無いというわけではありません。どういうことかと言うと、僕自身はパワースポットの効果よりは、何故そこがパワースポットと呼ばれるようになったのか? そっちの方には興味があります。

僕は歴史好きなので、そういった場所にパワースポットが集中していることは多々あります。なので、思い入れが無いと言いつつ、それなりの数のパワースポットには行ったことはあると思います。

パワースポットと呼ばれるくらいなので、その場所に何らかのパワーがあり、そこで不思議な現象や人々の体験があった結果、それが口コミ等で広がっていき、パワースポットと呼ばれるようになったと思われます。

つまり、そこには何らかのイワレがあるハズです。以下にサクッと考えられるイワレをあげてみました。もちろんこれ以外にもあるとは思いますが。

  1. 歴史や伝説がある
    古くから信仰の対象となっている神社・寺院、伝説や神話が残る場所は、霊的な力が宿るとされることが多いようです。このような場所はパワースポットになりやすいと思います。
    僕が行ったことのあるパワースポットはこのパターンが1番多いと思います。

  2. 自然のエネルギーが強い
    雄大な山、滝、湧水、奇岩など、自然の力を感じられる場所はパワースポットとして認識されやすいですよね?

  3. 地理的要因(風水・地磁気
    風水的に良い位置にある、または地磁気が強い場所は、特別な力を持つと考えられやすいと言われています。

  4. 不思議な現象が報告されている
    奇跡的な出来事、癒しの効果、スピリチュアルな体験をした人が多い場所は、口コミなどでパワースポットとして広まることがあるようですよ。

今回のお話は、そんな僕が、いずれこの場所はパワースポットと呼ばれるようになるんじゃないかな? という現象を目撃したお話です。上の理由でいうと、1か4、または1と2の合わせ技みたいな感じですかね?


基礎情報

もう、過去に何度か書いているのでサクッと書きますが、僕は以前、深い深い山の中にある金山遺跡の測量・調査のお仕事に就いていたことがあります。その現場は、登山道はおろか、バリエーションルートからも遠く離れた場所にあます。そこは、普通の人はもちろん、山登りの経験がある人ですら容易には近づくことは出来ません。

その現場まではとある林道脇から入山して約3時間の山登りになります。まぁ、これは数ヶ月たった頃には1時間強で現場に着けるようにはなったんですが、深い深い山の中にあることは間違いありません。

今回のお話の舞台はそんな現場に行く途中でのことです。

パワースポットの予兆

8月のお盆明けに始まった金山遺跡の測量・調査のお仕事もひと月がたち、ようやく身体もお仕事にも慣れてきた頃です。山の上では、ゆっくりですが秋の気配も濃くなっていました。

その頃は、林道から現場までは2時間ほどで着けるようになっていました。当初は3時間掛かっていたのですから、身体もそれなりに慣れてきたってことでしょうね。まぁ、初めの頃は測量のための機材(結構、重量があります)を運び入れることもあったので、時間が掛かったのは仕方ないでしょう。なので、一気に登るようなことはせず、途中で小休止が一度、大休止も一度取るようにしていました。

問題のその日も僕らはいつものように小休止を取り、そこからさらに標高を上げた場所にある大休止ポイントで休憩を取っていました。5〜6人が各々、岩に座ったり、寝転んだりしながら休憩しています。

すると、突然どこからか大きな音がしました。

ゴロゴロゴロゴロ〜!!!

それは今までには聞いたことが無いような音で、僕らはみんな立ち上がり、周りを確認しました。

よりによって、なんですけど、僕らの休憩している場所は、大きな岩が堆積したV字の谷の末端でした。もし、その谷に沿って大岩が落ちてきたらひとたまりもありません。しかし、その谷には特に異変は感じられません。じゃあ、今の爆音はなんだったんだ? とみんな辺りをキョロキョロ見渡します。すると1人の人が「何だ? あれ?」と、今登ってきたルートの下の方を指差しています。

皆で咄嗟にその方向を見ると、谷底から一段上がった辺りから煙のようなものが見えます。直線距離にして500〜600mくらいでしょうか。一瞬、火山が噴火したのか? と思いましたが、どうやらそうではなさそうです。先ほど上がっていた煙もすぐに見えなくなりました。恐らく大きな音はそこが発生源だと思われます。

じゃあ、そこで何があったんだ? とすぐに近くまで行って確認してみたい気持ちもありましたが、今はお仕事中です。すごく気にはなりましたが、その日のお仕事に穴を空けるわけにはいかないので、通常通りにお仕事を済ませて、いつも通りに下山します。先ほど見た煙の場所は自分たちの下山ルートとかぶっていたので、普通に下山すれば、否が応でも問題の場所を通るはずです。

その日1日はちゃんとお仕事をこなしながらも、話題は先ほどの大きな音の話で盛り上がっていました。火山の噴火説に始まり、山の崩落説、不発弾の爆破説、ミサイルが着弾した説、挙げ句の果てには第三次世界大戦の勃発説。まぁ、みんな言いたい放題です。そんな感じでワイワイ言いながら下山していて、問題の場所に近くにきたら不意に生木と埃が混じったような臭いが強くなりました。その直後、目の前の風景の変化に皆立ち尽くしてしまいました。

道が無い

えっ? 何が起こったの? 一瞬の思考回路の停止と共に、僕の頭の1ビットコンピュータが動き始め、目の前の状況を解析しています。

その時見た風景が下の数枚の写真です。本来はまっすぐに道が付けられていました。それが今は岩に埋め尽くされていて、道は確認出来ません。本来そこに生えていただろう多数の木々もなぎ倒されています。

木はなぎ倒され、岩がゴロゴロと散乱している(2010.9.21撮影)
大岩が木に当たり、幹がえぐれている(2010.9.21撮影)
木がパックリ割れています(2010.12.26撮影)

冷静になって辺りを観察した結果、僕らはひとつの結論に達しました。どうやら山の斜面が崩落したようです。午前中に見た煙のようなものは、崩れた時に上がった砂煙りだったようです。幅にして約20m、縦方向は200mもの山肌が崩れたようです。この範囲は後に調査した人から聞きました。幅方向は、道が遮断されている範囲ですので、簡単に確認出来ましたが、その上部が200mも崩れていたとはビックリです。相当量の土砂、ここでは岩が多く含まれているので、土や砂より大きな岩がゴロゴロと崩れてきたようです。

遥かなる帰還?

さて、何が起こったのかはある程度理解はしました。問題はこの崩落地の向こう側へどうやって渡るかです。

本来は真っ直ぐ道が付けられているので、崩れた岩の上をトントンと越えていくのが最短です。しかし、崩れてからまだ数時間しかたっていません。そんな場所を越えるのは自○行為です。これは全員一致で、「ここを渡るのは、やめよーよ」ということになりました。

1枚目の写真の右側が山側で、左側は谷側になっていて、20mほど先が谷の最深部で沢が流れています。だとしたら、この規模で崩れているということは、当然、谷底まで岩が崩れて堆積していると思われます。そうなると、右側の斜面を登り、崩落地の上部(この時はまだ確認出来ていません)、または、いったん尾根まで登ってから、崩落地の向こう側に降りてくる。という案が考えられました。今の時間は午後4時頃です。まだ9月なので、完全に日が落ちるまではもう少し時間があります。しかし、右側の斜面を登っていては、林道に着く前に辺りが真っ暗になるのは間違いないと思われます。崩落前は10秒ほどで通り抜けられたところを1時間以上の時間をかけて迂回するのは、1日中、山の中で作業をしてヘロヘロになっている僕らにはちょっと酷なことです。

だったら、とりあえず左の谷側を確認してみよう。ということになりました。恐らく谷底は岩で埋め尽くされているでしょう。万が一にも谷が埋め尽くされ、沢の水が堰き止められていたりでもしたら大惨事になることは容易に想像できます。確認だけはしなくてはなりません。谷底までは20mほどの距離です。そこまで行かなくてもある程度行けば状況の確認はできるでしょう。時間にして数分程度で確認はできるはずです。

ちなみにですが、谷側の沢を渡って迂回することはできないの? と思った方もいるかもしれませんが、沢とはいえ、渡渉(としょう→沢をザブザブと渡ること)するには深く、流れが速いです。岩づたいに渡ることもできなくはないのですが、どこからでも渡れるというわけではなく、慎重に場所を探す必要があります。また、運良く渡れたとしても崩落地の向こう側で戻ってこられる保証はありません。そもそも、沢の向こう側は人が歩けようなスペースはありません。ということで、選択肢にはなりません。

話を戻して、谷側の調査に向かいます。1枚目の写真の左側数メートルの位置の1段下がったところに石碑が立っています。というか、いました。

その存在はここが崩れる前から知っていたので、恐らく一緒に流されてしまったんだと思いました、しかし、……下の写真を見てください。何と! 石碑には一切の被害が出ていませんでした。石碑のすぐ後ろで落ちてきた岩が、まるで見えない壁があるように止まっています。

上の写真じゃわかりにくいので、落ちてきた岩を赤く塗ってみました。それが下の写真です。わざとそこに並べて置いたの? っていうくらいにピタッと止まっています。つまりこの赤く塗られた石が崩落地の先端ということになります。あと1回転ゴロンとしたら石碑に直撃していたでしょう。この赤く塗られた岩の奥、約200mもの斜面が崩落しました。そのエネルギーは凡人の僕には想像すらできません。しかし、なぜかこの石碑の後ろで止まったのです。これは事実です。もしかしたら、この石碑がエネルギーを吸収したのでしょうか? 『奇跡』と言うほどではないにせよ、不思議な光景なのは間違いないでしょう。これを目の当たりにしたら、誰だって何らかの不思議パワーが働いて、岩を止めた。と思いたくなるでしよう。

ちょっと熱くなってしまいました。ここで一旦クールダウンしましょう。

結局、僕らはこの石碑の前に付けられていた踏み跡を辿って迂回することになりました。あの石碑のすぐ後ろ側にメインのルート(今回のことで埋まってしまったルート)があります。そして、この石碑の見るために付けられた迂回路には、小さな岩はゴロゴロしていましたが、通行の邪魔になるようなものではなかったので、ほぼロスすることなく崩落地を渡ることができました。

文章だけだと分かりづらいので、図解してみました。えっ? もっと分かりづらいって? ひとつ言い訳させてください。いつもならこの手のイラストを書くのはAdobe Illustratorを使用していたのですが、昨今の値上がりについに僕自身、音(ね)を上げてしまい、先月解約してしまいました。その結果、急遽Affinity Designerを導入することになりまして……。まだ使い方がよくわかりません。なので、多少……多々お見苦しいところもあると思いますが、広い心で見ていただくと幸いです。

パワースポット化?

この落石を止めた石碑 ⇒ 落ちてくる石を止めた石碑 ⇒ 落ちるのを止めた石碑、となり、やがてそれが口コミで広がり、受験生がこぞってここにお参りするようになるのでしょう。こうやってパワースポットは作られていくのではないでしょうか? しかーし!

残念なお知らせ

ごめんなさい。今回の石碑の詳しい場所を公開することが出来ません。一般登山道等なら公開しても問題ないとは思います。しかし、ここは登山でもなければバリエーションルートでもありません、なので、とても危険な場所ににあります。僕らが通っていたわずか半年の間にも今回の崩落ほどではないにせよ、ルートの状況は目まぐるしく変化していきました。僕がこの場所を最後に訪れたのは10年以上前のことです。今現在どうなっているのかは想像すらできません。もしかしたら、その後の大雨等で、止まっていた岩が動き出し、石碑を押し流している可能性も否定できません。そんな場所を無責任に公開するわけにはいきません。ごめんなさいm(_ _)m

シークレット・パワースポット

でも、もしかしたらこのような場所(シークレット・パワースポット)が日本中の山の中にたくさんあるのかもしれませんね。今回のように物理的に行きにくい場所もあるだろうし、廃村等で忘れ去られているような場所もあるでしょう。もしかしたら、人の目に1度も触れられていないような場所もあるかもしれません。

僕が山登りをするのは、もしかしたら、このシークレット・パワースポットとの出会いを求めているのかもしれませんね。パワースポットなんか興味は無いって言っておきながら……。

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