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【 ひとりごと 】岩手県田野畑村における学生と村民の関わり方
田舎留学プロジェクト事務局長の三井です。
つい先日、noteを上げたと思っていましたが、またまた順番が回ってきたようです。東京では、常にパソコンと向き合って、新歓計画策定、回覧板づくり、イベントの企画などを行っています。個人的には毎日大変勉強になることばかりで、やりがいを感じています。しかし、こんなことを書いてご報告しても見てくださる皆様には全く面白くないと思われるので、今回も広報班より「ひとりごと」のコーナーを任されました。
今回は私が所属しているサークル「思惟の森の会」における、岩手県田野畑村における関係人口としての早大生の事例についてご紹介しようと思います。私は田舎留学プロジェクトを「早稲田大学地域連携ワークショップ(南伊豆町)」でご提案した際、地域住民との関係性の構築と継続性の確保における参考として、以下の通り資料内に記載しました。
「思惟の森の会」は早稲⽥⼤学、WAVOC双⽅の公認を受けており、林業を主たる活動と する全国的にも珍しいサークル。年間3回ある合宿では岩⼿県⽥野畑村にある早稲⽥⼤学の寮「⻘⿅寮」で共同⽣活しながら、⼭での育林作業や地元住⺠との交流をしている。第⼀次 産業のお⼿伝いをしたり、地区のお祭りなどイベントのスタッフとして活動したり、地元住 ⺠とお酒を飲み交わしたりする機会が多くある。
1961年、東北・三陸海岸沿いで起きた⼭林⽕災「三陸フェーン⼤⽕」で、約4万ヘクタールが消失し、村は5名の死者や多数の負傷者を出すなど⼤きな被害を受けた。会はその復興活動に関わったことがきっかけとして設⽴された。
なお、会の名前にもある「思惟」とは⽥野畑村の⾃然の中で学⽣に「思惟」してほしい という⼩⽥泰⼀⽒(思惟の森の会創⽴者・元早稲⽥⼤学商学部助教授)の願いが込められたものである。本名称は国道に架けられた橋「思惟⼤橋」や道の駅「思惟の⾵」にも⽤いられ ていることから、地元住⺠と会との関係性が伺える。
思惟の森の会における⽥野畑村での合宿は主として ①⼭での育林活動 ②村の⽅との交流 ③仲間との共同⽣活 の3つの活動によって成り⽴っている。
① ⼭での育林活動
早稲⽥⼤学が岩⼿県⽥野畑村に借りている2つの⼭「オマルペ⼭」「七滝⼭」の⼿⼊れや 管理を⾏っている。作業に使⽤する鎌やナタ、⾜袋は寮で管理しており、それらを使って会 員⾃⾝が間伐や枝打ちをしている。第55回夏合宿においては、⻘⿅寮の裏にある森林「思 惟の森」内の傾斜の急な登⼭道に階段を建設した。なお、建設に使⽤した⽊材は数年前に同 会の先輩によって切り倒され、乾燥されたものである。このようにして何⼗年という⻑い期 間の中で⼭を保全し、整備している。
② 村の⽅との交流
⼭での育林活動の他、地元住⺠のもとでお⼿伝いをすることがある。お⼿伝い先は農業・ 漁業・林業・畜産業といった第⼀次産業が主たるものである。その際に収穫された野菜や果 物をお裾分けいただき、それらを⽤いて寮にて会員⾃⾝で料理をする。なお、夏合宿中はそ れらが主たる⾷料源であり、調味料を除いてスーパー等での⾷材購⼊は禁⽌されており、会 員は⾃給⾃⾜⽣活を楽しんでいる。合宿最終⽇には寮にてコンパが開かれ、地元住⺠と密な コミュニケーションをとることができる。それ以外の合宿期間中においても地元住⺠が差し ⼊れしたり学⽣に会うために寮を頻繁に訪れる。学⽣は卒会後も就職や結婚、出産などの⼈ ⽣の節⽬で地元住⺠への報告に来村したり、ふるさと納税で村の名産品を楽しんだりする 他、中には村内で就労した⼈もいる。
③ 仲間との共同⽣活
寮では、⾵呂や⽶を炊くためのかまど、暖をとるためのストーブは全て薪から⽕をおこさなければならない。もちろん薪も会員⾃⾝でマサカリを使っ て割って作る必要がある。また、寮の管理⼈はいないため、掃除や洗濯、寮の設備の管理も会員⾃⾝で⾏う。こうした環境下で助け合いながら共同⽣活を⾏うことによって、会員同⼠の関係性が構築される他、⽣きる⼒を⾝につけることができる。
会はこのような活動を1968年から継続して⾏なっている。私たちのヒアリングにおいて、幹事⻑(早稲⽥⼤学⼈間科学部2年)は会の継続性について「⼀度⽥野畑へ来た⼈は⽥野畑を好きになるし、更に深く関わりたくなる⼈も多い。サークルの仲間のことも好きにな る。だから50年続いてきた」と話した。 会は⼭の保全を主たる活動の⼀つに据えているなど、⽥舎留学と異なる点も多いが、学⽣と地元住⺠との関係性や会の歴史は、⽥舎留学における参加学⽣と南伊⾖町のみなさんとの関係性の構築や⽥舎留学そのものの継続性の確保において、参考になるものである。
一部抜粋、編集しています
私はこのサークルで単なる社会的正義ではない地方創生を学びました。
当然、田野畑村には人口減少や東日本大震災からの復興など様々な課題があって、それをサークル会員は認識してはいるものの、彼らは単に田野畑村での生活を楽しんでいるだけなのです。そのモチベーションに社会的正義はありませんが、楽しいからこそ続いていきます。
活動内容も限りなくボランティアに近いですが、心情としては単に仲良い村のおじいちゃんおばあちゃんを手伝っているという感覚です。村民のみなさんも彼らに対して労働力として期待しているわけではなく、村内にほとんどいない学生が村と関わることそのものに希望や楽しみを見出してくださっています。これがここまでの歴史が紡がれた理由です。
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町を歩いていれば「お、早稲田の学生、また来たな」と誰かが声を掛けてくれます。村民のみなさんの学生に対する受容性は極めて高く、だからこそ学生は「また帰ってきたいな」と思うようになるのです。大学が位置する東京・早稲田からは遠く離れた場所で、南伊豆町とは比較にならない程遠いですが、それでも休みがある度に学生は通い続けるのです。
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当然、これは先行事例として大いに参考にしつつ、私が事務局長として目指すのは決して思惟の森の会の模倣ではありません。我々に期待されているのは、南伊豆町長特命プロジェクトとしての関係人口の増加であって、第一に社会的使命があります。しかし、私は田野畑村で「楽しむ」ことの重要性を学び、これは継続性を確保することはもちろん、目的である関係人口増加にも直結することだと思っています。
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私たちは、思惟の森の会よりもっと包括的に町民のみなさんと関わり、自らの町との関わり方を模索し、かつ学生と町民のみなさんの間で個人的な関係性を構築するための制度設計を進めています。加えて「みなみの桜と菜の花まつり」など、町内や東京都内での各種イベントでのボランティア活動など、田舎留学期間前後も含めた活動を検討しているところです。1月に役場へ伺った際、町長と学生が町へ貢献するためのプロセスの明確化について、意見交換をさせていただきました。
今後も事務局長として、思惟の森の会における私の地方創生活動の原点ともいえる体験をはじめ、自ら立ち上げた2つの教育支援団体、海外などでのボランティア活動、大学におけるイベントの企画や主催などでの学びを融合し、当初の目的達成のために全力を尽くしていきたいと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。