
箱根の宿: HAKONE 1914
先週末箱根に参った。
箱根事情に全く詳しくなく、また主体性のない同行者がいたため(こういう人と二人だと、割を食いたくないので普段以上に怠ける癖がある)直前まで宿が決まらず、結局箱根の中心地らしき箱根湯本駅周辺ではお手頃な宿を取れなかったので、ロープウェイの宮ノ下という駅にあるHAKONE 1914というゲストハウスに泊まることにした。
booking.comで調べると、ドミトリータイプではあるものの一泊二名6400円とかなり良心的だった。まあ寝るだけなら良かろうという心づもりで行ってみると、そこはかなり私好みの宿であった。そこで、この宿が宮ノ下の地に存続することを願ってひとつ文章を書くことにする。
【立地】【建物】【ホスピタリティ】の順に書くので、気になるところから読んでいただきたい。
【立地】
まずは立地の良さを言いたい。当初泊まろうと思っていた箱根湯本よりも、結果的に宮ノ下の方がはるかに良い町だった。良いってどういうこっちゃというと、箱根湯本にもその雰囲気なくはないのだが、宮ノ下は大正時代くらいの和洋折衷、レトロかつモダンなあの空気の色濃い場所である。観光客は少なく、それでいて町はこぢんまりと洗練されており、なぜか食べ物もうまい。
あの富士屋ホテルもこの地にある。
富士屋ホテルとは、実際に目にするまで忘れていたが、ジョン・レノン一家やチャップリンも泊まったりしていた箱根有数の旅館である。そしてこの旅館は日本式のカレーが完成を遂げた記念すべきレストランを擁している。昔父がその著作を読んでいた水野某とかいう人がテレビでそのカレー発明秘話を披露しているのを見て以来、ずっと気になっていた老舗を見つけて、心躍る思いであった。
また、食べ物もさることながら温泉が湯本よりはるかに安いのも魅力である。
貸し切りの温泉、湯本だと4000円/時間くらいが相場のようだったが、宮ノ下で入った貸し切り温泉は1時間700円であった。ちゃんと岩とかでできた露天風呂でしたし。何よりふらっと予約せずに連休中に行ってもすぐに入れるのがありがたい。ちなみにこの温泉はHAKONE1914にチェックインしてからホストの方が予約して下さってスムーズにいった。ありがたや。
【建物】
さて立地の話はこれくらいにして、次に建物の話をしたいと思う。
HAKONE1914という名が表すとおり、この建物は1914年に建てられたものである。
しかし、当初はホステルではなく、郵便局として建てられたという。それをリメイクして人が泊まれるようにしてあるわけだが、内装も外装も郵便局がめちゃくちゃ活きている。大昔の防火弾とか置きっぱなしである。
大正時代の郵便局にこたつやら布団やら置いて寝泊まりしているようなワクワク感がある。
また、ロビーは全面ガラス張りとなっており、朝の日差しが心地よい。瀟洒な洋館の風情が引き立つ。
【ホスピタリティ】
最後に最も重要な話、ホスピタリティ。
ホストのお姉さんが非常に良くしてくれた。
まずそもそも、チェックインに2時間ほど遅れてしまったのだが全く咎めることなく歓待して下さったことがありがたい。
当然の報いとは思うが、こういう場合価格のお手頃な宿だと露骨に嫌がられたり、お叱りを受けることもあるのだが、全くもってそういうことが無かった(とはいえ遅れないように気をつけたいところ)。
そして先述の貸し切り温泉であるが、もともと自分たちが調べていきたいと思っていたところが改修中で入れないと知って落胆していたところへ、地元のお宿ならではの好ディールを提案していただけたのは非常にありがたかった。子宝温泉という男根だらけの湯もあるその温泉については別稿にゆずる。
私達はとても運がよく、部屋のアップグレードもしていただいた。ドミトリーのベッドを予約していたが、空きがあったということで和室に交換していただいた。旅館によく見られる、入口の反対側の壁が全面障子になっていて、そこを開くとガラス張りの壁との間に小さな円卓をはさんで二つソファが向かい合わせに置いてある空間がある、みたいな、そういう和室。箱根の山々が見渡せて非常に具合のいい部屋だった。
温泉に入って広々とした和室で快眠を貪り、ゆったりと起床してロビーに出てくるとガラス張りなのて朝の陽光が柔しく目映い。ソファに腰掛けて、無料サービスのお茶やコーヒーを飲みながら、すぐ向かいにあるピコットという先述の富士屋ホテルのパンを扱うパン屋さんのアップルパイやらエクレアやら頬張るにつけ、箱根に来てよかったとしみじみ感じたものである。
【跋】
漠然とした終わり方であるが、だいたい言いたいことは言えたし明日も仕事なのでもう終わる。
この宿に泊まった時の記憶は本当に完璧で、何度記憶の中で味わっても色褪せることがない。
活力をいただいた。ありがとうございました。