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Dear カゲプロ

始まりはどこからだっけ。

創作や、ネット、ボカロのことをネットに上げ始めた最初を思い返すたびに、私はカゲプロをいつも思い出す。

今日はカゲプロを思い出す日。


1.カゲロウプロジェクトとは。

みなさんは、あの伝説的なネットシーンであるカゲロウプロジェクトを知っていますか。

当時、ニコニコ動画には多数のボーカロイド楽曲が投稿されていました。
DECO*27さん、ハチさん、トーマさん、sasakure.UKさん、Orangestarさん、n-bunaさん、kemuさんといった多くの有名ボカロPの中に、じん(自然の敵P)さんというボカロPさんがいました。

じん(自然の敵P)さん(以下:じんさん)は、2011年から投稿した「人造エネミー」から楽曲を繋ぎあわせ、少年少女たちの群像劇を編み上げたボカロPさんです。

当時のボーカロイド楽曲は各曲単体の作品が多く、物語を楽曲を繋ぎ合わせて作り上げたり、キャラソンのように各楽曲を成立し、そのキャラたちを他楽曲のキャラと繋ぎ合わせたりといった、楽曲同士を関連させることはあまりありませんでした。(なくはなかったです)

それをプロジェクトとして立ち上げ、各楽曲のキャラを成立させ、繋げたのがカゲロウプロジェクトでした。
まさに革新的プロジェクト!

とは言いつつ、じんさんのボカロ処女作「人造エネミー」では、そんな各楽曲を繋ぎ合わせるなんて考えてなかったそう。


処女作から三作目である「カゲロウデイズ」がはねた後に「各楽曲を繋げ合わせたら面白いんじゃないか」と考え、そこから「カゲロウプロジェクト」が始まりました。

当時、この楽曲の物語を聞いたとき痺れました。物語の構成の美しさ、文字列のグロテスクさと、あんまりに残酷で素敵なラスト。
しかもそれが音楽とも合っている。
短い楽曲であるのに短編を一作読んだような聴了感(読了感的な)。

こんな楽曲があっていいのか。
これがボカロ?
これを一般の人が作ってる?

あまりの衝撃、そしてその後に知った楽曲の繋がりに思わず惹き込まれました。

なんと言っても、動画も、絵も、音楽も、歌詞も、全てが高クオリティ……当時高校生、稲穂。曲はGReeeeNや嵐、YUIなどのアニソンアーティストしか知らない状態。そればっか聞いてた。
まさに水を得た魚のようにのめり込んでしまいました。

2.カゲプロの沼へ引きずり込む章

今カゲプロを全く知らない人は羨ましい。知識ひとつない人は、今からカゲプロの面白さを授けられ、体験できるからです。

とにかく何にも知らない状態が望ましいのです。知らない人はいっさい情報を入れないでください。

カゲプロの面白さは各楽曲の高クオリティな音楽性とキャラクターの魅力もありますが、「解釈」という部分が一番だと私は思っています。

(単純に音楽がめちゃくちゃ良いってことで楽しむのもありです)

まず、各楽曲の発表順に聞いてほしいです。
「人造エネミー」から、「メカクシコード」「カゲロウデイズ」「ヘッドフォンアクター」……物語にひたってください。そして、各楽曲の繋がりはどこにあるか、おそるおそる探っていくか、そのまま物語を辿ってほしいのです。

そして物語を辿っていくと「コノハの世界事情」という楽曲にぶちあたります。

この曲は「カゲロウデイズ」の裏の話であり、カゲプロの登場人物が初めて公表されたものになります。

この子はあの子で!? え、この人は? と初めて気づきます。
カゲプロをリアタイした方はこの楽曲で初めて楽曲の繋がりが明かされました。

あとはもう沼。

解釈合戦の始まりです。
カゲプロとは? どう言った話なの?
「人造エネミー」や「メカクシコード」は一枚絵のみですので解釈をするには、歌詞を読み込む必要があります。

いかんせん、全く情報がない状態。

カゲプロの世界なんてキャラクターや一部の物語しか分からない。
しかも、「コノハの世界事情」に関しては、あまりに抽象的な動画や歌詞。

(因みに「コノハの世界事情」はカゲプロ内で初めてアニメーションが加わった動画でした。)

それぞれ読み込んでこういうことなのでは? と妄想が捗ります。

ええ、実際、私はそうでした。

当時は自己解釈動画を見漁り、新たな情報が出ないか目を配らせました。それくらい物語の強度、キャラクターの魅力。しかも何度も聞き返しちゃうくらいの中毒性が各楽曲にはありました。

特に、「各キャラには能力がある」とわかった「如月アテンション」なんて垂涎もの。
今楽曲のキャラクターであるモモは、ありとあらゆる人の目を奪う能力があります。

それと鉛筆画の切ないPVと心痛むお話の「透明アンサー」を見直すと、あのキャラクターがいる!? しかも、こんな繋がりが!? となり、ますます深みにハマっていきます。

しかも、アルバム発売についているキャラクター紹介を読むと、また謎が増えていく……
メカクシ団とは、メンバーは誰がいるのか、目の能力とは、各キャラにはどんな繋がりが……

個人的にはセカンドアルバムで発表された「全員死んでいる」説とメカクシ団のリーダーがあの人!? と知った衝撃が凄まじかったです。

おおっと、ここからはネタバレになっちゃいますかね。

ネタバレついでにカゲプロのOP曲置いてきます。この「チルドレンレコード」はカゲプロのOPとして発表され、初めて各楽曲のキャラクターが一堂に会したものです。
当時の私は燃えました……スナァ(-_:::………
続きはよって言ってましたね……(遠い目)

この「チルドレンレコード」の疾走感と中毒性、情報開示とキャラクターの発表にまた更に爆発的人気となったカゲプロ。

その後に「夜咄ディセイブ」「ロスタイムメモリー」と伝説的な曲が続きます。

とにかく知らないことが、情報が、リアルタイムで更新されていく。
この面白さがカゲプロにはありました。

当時はこの楽曲の情報開示もさることながら、PVも革新的でアニメーションや原色の分かりやすいキャラクター、キャラソンのような各キャラにあった音調でどの楽曲もPV単体で物語や音楽のクオリティが高く、ずっと聞いていられました。

各メディアにミックスしたのもカゲプロの特徴です。

全ての物語がその分明確になってしまい、解釈が必要とのされなくなってしまったんですが、小説やアニメ、4D映画にもなりました。

特に今では当たり前となったボカロ楽曲からのラノベ化はカゲプロが先駆けだと思います。

3.こんな人もカゲプロにかかわってた!?

と、沼へ引きずり込む手を緩めて……
カゲプロにかかわっていた人を観測する限りですが……

カゲプロを歌うボーカロイドIAの元絵を描いたのは、現在売り出し中の「【推しの子】」や「かぐや様は告らせたい」などの赤坂アカ先生だったりします。


また「幸色のワンルーム」の作者様である、はくりさんは元々カゲプロのFAを描かれていた方々でした。

まだまだいると思いますが、私もそんなカゲプロに多大な影響を受けた一人です。

4.カゲプロと私。

ここからは私の話。
カゲプロを思い出すと、必ず初めてのネッ友たちとの思い出が吹き出します。

彼らと出会ったのは、Twitterでした。
そこからLINEで毎日トークするようになって……

初めは、解釈を一緒にする仲間が欲しかったんです!!!!

でも、結局、毎日取り留めない話しかしませんでした。今日のご飯は〜。ちょっと歌ってみて! とかなったり。ふざけて話を書いたり。
私がWeb上に作品をあげたのはここのグループで、小説を書くノリがあったからでした。高校生から大学生しかいないグループで、小説をちらほらあげて、それぞれ読み合いました。
初めての短編、初めての二次創作……どれどれと読みに行くと、ネットならではの表現がぎっしり詰まってて、惚れ惚れしたのを覚えています。

改行の使い方、二次創作の作り方、どこのサイトに上げるかまで、彼らに教わりました。
pixivというものも彼らから教わり、Twitterの楽しみ方まで……本当に楽しかった。

夜遅くまでチャットしあって、本気で怒りあったり、本気で勉強するために「一回抜けるね」って深刻に告げたり。

ネットなんだから本気にするのも何なんですが、私たちは、そこのコミュニティが世界みたいでした。

最初は28人いたコミュニティも、最近会ったら6〜7人に減っちゃって、彼女と別れた人もいれば、お母さんになった人もいて、仕事をするようになっていました。

あの頃は、怖い話とかグロテスクなサイトとかでも盛り上がってたりしたんです。

一時間に1000通知もいくような話し込みよう。

いや、なんて取り留めなさ笑
ただ「w」を打ち続けたり、仮想カレカノになったり。「眠い」「お腹空いた」しか言わない子とかいたりもしました。

思い出しても笑っちゃう。
とっても楽しかったんです。

それもカゲプロがあったから繋がれたんです。私たちの繋がりは、それだけ。
カゲプロの楽曲が上がるたびに私たちは盛り上がりました。
「やばー!」って。

「ロスタイムメモリー」、「夜咄ディセイブ」の流れが来た時はみんな興奮してました。
中には絵師さんもいましたから、その子がFA描いたりもしたり。

現実がしんどかったとき、私はここが秘密基地のようでした。愚痴をどこに吐いたらいいか分からない、どこにも行けない、どこに行ったらいいか分からない、この寂しさをどう表せばいいか分からない時、みんなが何かをここで話していました。

だから、だんだん過疎になっていくコミュニティに寂しさを感じたことを覚えています。

今もあのコミュニティの黎明期を思い出すたび、私はカゲプロの歌詞が脳内に流れてくるんです。

「思い出して終わったって
  秘密基地も冒険も
  あの日に迷い込んだ話の事も」

  独りぼっちが集まった
  子どもたちの作戦が
  また今日も廻りだした

「また何処かで」

サマータイムレコード

何度でも描こう
また何処かで

と口ずさむたびに懐かしさが込み上げて仕方なかった。

その懐かしさに踏ん切りをつけて、「また会おう」と毎年書きつける桜エッセイという、私のエッセイに彼らへの思いを叩きつけるように書きました。

「桜の咲いたときにまた会いましょう。」 https://ncode.syosetu.com/n3113gx/

そして、これ書いて三年後の昨年、コミュニティのイツメンと再会したわけですが。
なんという偶然でしょうか! 笑ってしまいました。
全く彼らは変わらずにあり続けていました。

「私たちの関係って何?」と再会した後、メンバーの一人が面白がって言いました。「いや、友達に言われたんだけど『友達』って訳でもないし……どう言えばいいか分からない」
既にコミュニティは分解し、過疎化され、メンバーそれぞれは自身の人生を歩んでいます。
「確かに、変な繋がりだね」
と、私たちは微笑みながら傾けたものです。

居酒屋へ行けばいいものの、「あのファミレス行ったことない」で大の大人がファミレスで最後の晩餐をしました。
ほんと、あの頃のまんまです。

楽しい一時は一瞬で、メンバーの一人が最終電車に遅れないようにみんなでファミレスから電車まで走って送り出しました。

メンバーの一人を送り出すとき、みんなで手を振りました。
「また会おうね」
「会えてよかった」
「また!」
胸がいっぱいでした。

泣きそうでたまらなくて、また一緒に会いたいって、話したい、取り留めない話でいいし、本名すら私たちは共有してないけれど、今どんな仕事をしてるか分からないし、どんなコミュニティにいるかも分からない、どんな家族構成かも知らない。
でも、表面上の会話だけでもいい、顔も知らなくても、また会って、当時のことなんて覚えてなくても、どんな話しをしたかも覚えてなくても、私たちがあそこで何時間も、何回も、チャット上で話して同じ時間を共有したことに変わりはないのだから。

大好きなカゲプロと、大好きなコミュニティと、大好きな人たちに。

今、私があるのはあなたたちのおかげです。

ずーっと私はカゲプロを愛してます。
そして、変わらずあなたたちに出会って何時間も話した思い出を宝石のように、私は記憶の棚に大事にしまっています。
きっと、忘れやしません。

また、きっと、いつか、会いましょう。

2024/08/15
カゲプロと愛しい人たちに捧げます。

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