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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.176 読書 小野不由美「残穢」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 小野不由美さんの「残穢」についてです。

ここ数年小野さんにハマり、『十二国記シリーズ』『屍鬼』『ゴーストハントシリーズ』と続けて読んでいて、とても信頼のおける作家さん。特にシリーズものは構成力も半端ないです。

単発ものは今まで読んだことがなかったが、「十二国記」、「屍鬼」の後、2012年の作品なので円熟期の頃、山本周五郎賞を受賞して、映画化までされている。

期待して読んでみる。ドキュメンタリー風ホラーと言うルポタージュ文体で描く斬新な物語。なのでリアリティは半端なく、小野さんの才能にまたまた舌を巻きました。

ただその手法は面白いが、いつもの読んでいて楽しい小野さんの文体や構成とは違って、淡々としているので、ちょっと恐怖の勢いが感じられないのは残念なところです。

変な音がする。その謎をコツコツと調べていく。一つ一つ。そしてじわりじわりわかってくる恐怖。全部繋がっていく、繋がるというか感染していくように。

ただ恐怖の原因を探していく過程が、幾人もの知らない人の人生を辿っていくので、途中で多すぎて理解がついていかなくなってしまいました。

これが最後に悪の元凶と対決!お祓い!とかだとスッキリ面白かったで終わりますが、まあそんなことも起こらず、じわじわと淡々と。

それが日本らしいと言えばそうかも。



物語は、小説家である私(たぶん小野さん)は昔ティーン向けのホラー小説(たぶんゴーストハントシリーズ)を書いている時、読者から恐怖体験の手紙を募集していた。

20年も経った今でもたまにまだ読者から手紙が届くことがある。

ある日読者から彼女の住むマンションの誰もいない部屋から箒で畳を履くような音が聞こえると言う手紙が届いた。

彼女は30代女性編集プロダクションでライターをしている。

何度か手紙のやり取りをしていると、「私」は過去にこれと似たような怪談を読者から寄せられたことを思い出し、確認してみると、その女性と同じ住所だった。

その女性と連絡を取り合い、周りの住人や不動産に調べてもらうと、そのマンションではいろいろな怪奇現象が起こり、また何人か不審死をしていることがわかる。

部屋だけでなく、マンション全体、街全体と調べていき、その土地の歴史を調べていくと、一つ一つ、怪奇な現象が、不審な出来事が浮かび上がり、それらが結びついている。



まあものすごく細かく怪奇現象を積み重ねていき、じわじわと恐怖は来るが、
結局ど〜んと怖いものは出てこず、なんだか心に引っかかり読後感はなんとも言えない感じで終わる。

まあ、そこがまたこのドキュメンタリー風ならではの、答えが出ない感じがまた良いのでしょうが、ちょっとスッキリしませんでした。

同時進行で小野さんの「鬼談百景」を読んでいるが、こちらは99話ある怪談短編集。

この九十九話と残穢の一話を合したら百物語が完成してしまう!

そして今作が小野さんの実体験したような怪談であり、いろいろな怪談を一つにまとめ上げた感じもする。

玄人好みの仕掛けがまた小野さんらしいが、まだ怪談初心者の自分には、分かりにくかった部分もあります。

でもドキュメンタリー風の書き方と、小野さんの原点である怪談を、知れたことはとても良かったです。



この本で印象的なところは 

P.26で 彼女は部屋を見て周り、そして何気ない素振りで押入の中や靴箱の中を覗いてみた。つまり、お札の類がないか、確認してみたのだ。
強いて言うなら「ホラー好きの嗜みでしょうね」と、久保さんは笑う。

嗜み!無理無理!絶対ホテルの部屋の絵の額縁をひっくり返して見たくない!

今日はここまで。







精神科学では、人間は恐怖をシミュレーションすることで、いざという時の耐性を付けるんだという見方があります。生物学的にも、パニックに陥った時、固まってしまう個体と逃避行動に移れる個体の違いは、それまでの恐怖体験の違いだと言われています。そういう意味では、いざという時のためにホラーはたくさん読むべき、たくさん観るべきかもしれません(笑)。
/小野不由美 映画「残穢」のインタビューにて