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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.043 映画 トラビス・ファイン「チョコレートドーナツ」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は映画 トラビス・ファインの「チョコレートドーナツ」(2012/米)についてです。

ゲイのカップルがダウン症の子供を育てるお話。

と聞くと、偏見や差別について問題定義する社会派映画というイメージを容易に持ってしまうが、

この映画はさほど声だかに語らず、とってもしっかりとした落ち着いた表現で静かな偏見への怒りとそして本当の愛を見せてくれる。

見終わった後も、歌と彼らの思い出の8mmフィルム共にじんわりと心に残る作品だ。

特にゲイのパフォーマーを演じるアラン・カミングはいろいろな映画で変わったちょい役が多かったが

今作は彼の代表作になるでしょうね。



物語は、時代は70年代、まだホモセクシャルや障害児は差別されている時代、

主人公はゲイのパフォーマー。ある日検事局の男性がショーを見に来た。

2人はすぐ恋に落ちる。

ある日主人公のアパートの隣の部屋にダウン症の子供と母親が住んでいるが、

母親が薬物で警察に捕まりそのダウン症の子供が施設へ連れて行かれた。

主人公はその子を不憫に思い、検事局の男性と同性愛の恋人という関係は隠して

母親が刑務所にいる間、2人は法的手続きをとって彼の監護人になり育てることに。

3人は偏見のない愛に溢れた幸せな日々を送る。

しかし、次第に2人の同性愛の関係は世間に知られるようになり、裁判沙汰になり3人の中を引き裂かれるようになってしまった・・・。



原題は「Any day now」、いつの日か。

いつの日か、同性愛やダウン症が差別されなくなる日は来るでしょうか。

2022年の今、だいぶ偏見は少なくなりましたが、それでもまだ偏見は残っています。

邦題が「チョコレートドーナツ」なのは良いですね。

ダウン症の子が食事を食べないので、何が好きなのと聞くと「ドーナツ」というシーンがあるんです。

主人公が「ドーナツは健康に良くない」と言うと、

恋人の検事局の男性は「たまにはいいじゃないか、そういう日もあるさ」

嬉しそうにドーナツを食べる少年。

まるで家族のようなすごく幸せなシーン。

そこからこの題名をつけたんですね。



映画の中で「知的障害の子を養子にする者はいない」という言葉は結構重い。

確かにそう。綺麗事ではできない。

けど差別を受けたゲイのカップルだからこそ、ダウン症の子を差別から守ろうとしたと思います。

本当の愛をそこから感じます。

血は繋がっていても麻薬に溺れ育児放棄をする母親と本当に愛情を注ぐゲイのカップル、

どちらが良いのでしょう。

裁判所の判断は。

世界中でもほとんど母親の味方をする中どうなるのでしょうか。



この映画は実際にあった出来事から作られたらしいが、

綺麗事にはしない哀しい胸を打つラストです。

ちょっと衝撃的で呆然としました。

いつまでもずっと3人が幸せだった頃の8mmフィルムの映像が頭の中で回り続けます。

いつの日か、差別のない世界になりますように。

今日はここまで。




誰も欲しがらないから この世に背が低く 太った知的障害児を養子にする者はいないからです 私たちしか 私たちはあの子を愛しています 面倒を見て教育をし 大切に守り よき大人に育てます 彼に機会を過ぎた望みですか?
/「チョコレートドーナツ」より 
ダウン症の子供を取り返すために裁判所でいつも冷静な主人公の恋人の男性が力強く熱弁するシーン