趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.010 映画 セオドア・メルフィ「ドリーム」
カメラマンの稲垣です。
今日は映画 セオドア・メルフィの「ドリーム」 (2016/米)についてです。
60年代NASAを支えた黒人女性たちの真実に基づくお話。
確か邦題がいろいろとクレームがついたと言うことで話題になった作品。
最初邦題が「ドリーム 私たちのアポロ計画」と発表され、マーキュリー計画を扱っているのになぜアポロなんだと。
アポロは有名でマーキュリーは知名度が低いから分かりやすくと。
なんだか。
その批判を受けて「ドリーム 」に。
原題が「Hidden Figures」(隠された人物)なのに
「ドリーム」、なんだかフワッとした感じになってしまいました。
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まあ、そんなすったもんだがありましたが、作品自体は結構良い作品でした。
昔からよくありますが、”アメリカ映画の良心”の様な作品。
事実に基づいて、社会問題(今作は人種差別、女性差別)を扱い、
落ち着いた演出、しっかりとした俳優を配置など。
そして心温まる作品。
映画芸術ではなく、優等生的な伝記映画。
安心して見れましたし、結構心動かされて涙ぐんだりもしました。
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物語は60年代のアメリカ、まだ白人と有色人種の分離政策が行われている。
優秀な黒人女性の3人はNASAで計算手として働いていた。
ソ連は人工衛星スプートニクを成功させてアメリカのNASAは有人宇宙計画を成功させようと躍起になっていた。
主人公のキャサリンは宇宙研究本部へ移動になったが、その本部では露骨な人種差別に悩まされる。
黒塗りのデータしか渡さなかったり、コーヒーも白人とは別、トイレは800m先の有色人種専用のところしかない。
他の2人の黒人女性もそれぞれエンジニアを希望したり、管理職として昇進を希望しても前例がないため断られていた。
宇宙飛行士候補生がやってきて、彼らは彼女たちに分け隔てなく接することに感動する。
やがて主人公のキャサリンはそんな人種差別の中、持ち前の才能で上司に認められる様になる。
エンジニア希望の女性も裁判所に訴え、白人の学校で学んでエンジニアになる資格を得る。
管理職を希望する女性はスーパーコンピューターの時代が来ることを読み、独学でプロイグラミングの勉強し、計算手が解雇される前に黒人の計算手の皆に教える。
差別や苦難を乗り越え、才能のある女性3人が活躍していく。
というある程度事実に基づいて作られた伝記映画。
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宇宙飛行士や有人飛行、月探索など表の活躍ではない、影でNASAを支えた黒人女性にスポットを当てたのは興味深い。
NASAってアメリカの中でも最も科学的で合理主義な場所だと思ったら、
60年代はまだこんなに差別があったんですね。
結局こういう社会問題を突破するのは圧倒的に”才能のある人間”が先頭に立って突破していくしかない。
社会のムーブメントはその後ずっと遅れてですね。
日本はまたそのアメリカから遅れて何十年経ってやっと変わるかどうか。
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印象的なシーンは
主人公のキャサリンが皆と一緒のトイレを使えず毎日800m離れたところへ行かなくてはいけず、
雨の日ずぶ濡れになりながらトイレに行くと、
上司がなぜ君はみんな忙しいのに毎日どこかへ行っているんだと。
キャサリンは感情を爆発させ、自分は皆と同じトイレにもいけない、
コーヒーも同じもの飲めない、服装も決まっている、と訴える。
翌日上司のケビンコスナーはトイレの白人専用の看板をハンマーで壊す。
「NASAでは小便の色はみんな同じだ!」
最高のシーンです。
あと黒板に計算していくシーンはハリウッド映画では天才を表す表現としてよく見る定番ですが、やはり見ていてワクワクする。
主役の同僚として、エンジニアを目指す役でジャネール・モネイが出ているが
彼女ミュージシャンとして大好きで、女優としても活躍していて嬉しい。
上司役のケビンコスナー、良い味を出している。昔主役、一時期低迷、そしてまた最近助演俳優として良いような。
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こう言う映画、映画の歴史に残るような作品や監督ではないんです。
”事実に基づいた”と言う映画は大体、その枠に収まって
映画芸術になることはなかなか少ないんです。
それでもやはり事実は何かしら心を打つものがあります。
人種差別女性差別と戦った女性たち、影で活躍した彼女たちを知れたことは
何かしら勇気をもらった様な気がします。
この映画を見て数学や宇宙やコンピューターに興味をもった子がいると良いですね。
勉強が大事。
勉強して自分に才能を身につける。
世界と戦うには”才能”と”勇気”が必要だと。
今日はここまで。
「NASAで女性を雇っている理由は職場の花だからじゃない、眼鏡をかけてるからよ」/「ドリーム」の中で主人公のキャサリンが再婚相手になる男性に言った言葉。