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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.269 読書 飴村行「粘膜戦士」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 飴村行さんの「粘膜戦士」についてです。


飴村 行さんのホラー小説「粘膜シリーズ」第四弾。シリーズ初の短編集。

短編集が出るということは、本編が充実していないと出せないわけで、

今作の前に3編の長編「粘膜人間」「粘膜蜥蜴」「粘膜兄弟」と分厚くて凄い作品がある。

この短編集は粘膜シリーズの世界観を踏襲している。

太平洋戦争最中の日本とアジアの国(架空の国ナムール)が舞台。

河童や蜥蜴人間も出てくる。

そして今まで読んだことのないようなエロとグロの世界。

身体破壊、拷問、動物との◯◯、死体との◯◯、もうなんでもあり。

江戸川乱歩もびっくりな世界観です。

この短編はその世界観で新しい話を5編。

ただし新しい物語に今までのキャラクターが少し垣間見れるスピンオフ的な要素もあるのでファンにはたまらない。

あの話もあのキャラクターも!という感じで前日弾だったり、正体がわかったり、嬉しいです。

より粘膜の世界を深掘りできたと思います。



物語は、第一話「鉄血」
アジアの小国ナムールに日本軍の駐屯地がある。ある日軍曹(あだ名はベカやん)は大佐の部屋に呼ばれる。軍隊では上官の命令は絶対で、大佐の話すことにいちいち賛同する。大佐は蜥蜴人間の脳みそを食べそれから絶倫になったと。男でも女でも毎日しても飽き足らない。
そこで大佐から同性愛を強要される。仕方がなく手で◯◯はやったが、大佐は次はナイフを持ち出し、究極の絶頂を得るために「男体股ぐら泉責め」というそんなことをしたら死んでしまうような◯◯なことをして、その後で蜥蜴人間の脳みそを食べた時に頭の中にあった玉を食べるという。軍曹は必死に説得して、自分に変なことをする前に、その玉を大佐が食べてみてその様子を随時大佐に報告すると約束する。大佐は納得して玉を食べると・・・。

第二話「肉弾」
ナムールの激戦で大怪我をした兵士は、人並みはずれた強い生命力を評価され軍で人体改造をされ人造人間になり、その成果で出世して一度本土に戻ってくる。

日本の実家に戻ると家族や弟がいて、迎えてもらう。

軍の研究員が実家に充電設備を作り、家の中で充電している兵士は見た目は反機械人間になっていた。

弟は英雄の兄が学校でも噂になりもてはやされる。

ある日末にサーカスが来てそのパレードの警備を人造人間の兵士が警備していた。

パレードの最中に突然の轟音がし、その音に驚いた熊が暴れ出し、兵士の頭を爪が直撃して故障してしまう。

修理不能になり、人造人間は除隊となる。

人造人間の兄は故障したように、ひたすら指令をずっと待っている。

弟は学校でいじめられ、先生からもなぜ兄は自決しないのだと言われる。

塞ぎ込んだ弟のところに学校の優等生がやってきて、実はあのパレードの爆音は
クラスのいじめっ子の仕業だと、復讐そそのかされて、弟は兄にいじめっ子を抹殺する司令が来たと騙す。

果たして兄は実行するのか、はたまた正気に戻るのか。

第三話「柘榴」母を早く亡くした少年は、祖父母と父と厳しい婆やと立派な屋敷に住んでいる。祖父は不治の病に犯されていて体を動かすことができない。
父親とサーカスを見にいき爬虫人の曲芸に少年は喜ぶが、婆やが異常に嫌うのでその話は家ではできない。
少年は父と婆やの話を盗み聞きして、祖父は昔女癖が悪く酷かったことを風の噂程度に聞いている。ただ病気になったから祖母は甲斐甲斐しく毎日看病をしている。

少年は部屋の地下から不思議な声が聞こえることに気がつく。
また真夜中に誰かが庭を彷徨いているのを見かける。

ある日体調を壊し学校を休み、父や婆やが留守にしている間禁止されている地下室へ行ってみる。

真っ暗な部屋には少女の声が聞こえる。

少女は少年と異母兄弟で、明かりをつけその正体を見ると、少年は気絶してしまう。

果たしてその正体は・・・。

第四話「極光」
日本の軍事施設、拷問のスペシャリストの少佐とその部下。

ナムールゲリラの青年と老人が軍事施設に侵入して、軍の重要書類を盗もうとしたところを捕まえられ、取り調べのため二人のところへ連れてこられた。

少佐は何人もの拷問をしてきたため、一目で黒か白かわかるようになっていた。

青年が主犯の凄腕のスパイで、老人はただの助っ人の無能な人間だと。

拷問を開始する。鼻の穴に巨大な肉食のムカデを入れられる。青年はあまりにもの恐怖に気絶してしまう。

次は老人、同じ拷問をしようとすると、逆にムカデを食べてしまう。

青年と何も話さないと約束した老人は、しゃべらず口だけ動かす。

少佐は読唇術でそれを読み解く。

老人は重要書類を盗むのを手伝えば大金を払い、軍で飼われている豚を好きなようにしてもいいと言われたから手伝っと自供する。

次の日意識を取り戻した青年は自供し、ヘモやんと言う老人から軍の書類を盗めば大金を渡すと言われ、老人に催眠術をかけられナムールのゲリラに仕立てられたと。

慌てて老人を入れている牢獄へ行くと・・・。

第五話「凱旋」
第一話の軍曹ベカやんは日本に帰ってきたが、逃亡生活を送っている。
ある村で爬虫人の女の死体を見つける。
その死体を検分しているとある男に襲われる。
目が覚めると拘束されていて、男と酒盛りをしながら話をする。
男はナムール人と日本人のハーフで、人種差別を受けて、徴兵逃れのために森へ逃げているとそこで爬虫人の女と出会い、お互いにいじめられていた二人は意気投合して一緒に暮らす。
爬虫人は河童とも知り合いだと言う。
お互いにいつかナムールへ行くことが夢だったが、徴兵逃れをしている男には海を渡ることができず、二人はある日口論になり男は爬虫人を。
ベカヤンも嘘をついている(逃亡兵なので偽名を使っていた)と言って男は銃で殺そうとするが・・・。



短編の上手い作家さんは本物だと自分は思っています。
長編とは違うテクニックとアイディアが大事なんです。
村上春樹さん、宮部みゆきさん、キング、京極夏彦さん、原田マハさん、ジェフリーディーバーなど。

飴村 行さんもものすごく上手い。

うま過ぎてこの人の才能の底が見えないと恐ろしくなりました。

単なるエログロじゃない、もちろん第一作目からわかっていましたが。

シリーズ長編も短編も上手く、この三話の屋敷での話を読んで、アガサクリスティか江戸川乱歩的な話も書けるのではと思いました。

いつか飴村さんのシリーズ外もぜひ読んでみます。


飴村さんの上手さ、描写の素晴らしさがすごく光る短編集ですが、エログロばかり目がいってしまいますが、ムカデの拷問や男体股ぐら泉責めや動物との◯◯、爬虫人との◯◯、などこれでもかとバイオレンスが描かれています。

ただ短編なので、その暴力も一瞬なので、なんだかいつもの長編よりは割とライトな気分で読めました。

それとも慣れてきたのか。

賞の審査員だった林真理子さんが拷問シーンを喜んで描いていると心配していましたが、

別に危ないとは感じません。

まあまだ現実世界の体験が少ない子供が読むのはどうかと思いますが、大人なら逆に戦争な悲惨さをわかるし、読んで良いと思います。

まあこの猛毒さは異端ですが、異端だからこそ見えてくるものがあると思います。

今日はここまで。




「これは18歳の時に観たポール・バンホーベンの映画『ロボコップ』をやってみたかったんです。マーフィーという巡査がマフィアの一味に撃たれて、生体部分を改造されてロボットとして蘇る。その設定が巡り巡って『肉弾』になりました」
/飴村 行