僕は無職で夢男②~バトルの原因~
僕ら夫婦には定期的なバトル期間がある。
普段は仲が良い二人だが、年に何度か大きな喧嘩をするのだ。
喧嘩中はしばらく冷戦状態が続く。
妻は2階へこもり、僕は一階のソファーで寝る。
顔も合わせなければ、言葉も交えない。
1週間ほど冷戦は続き、話し合いの上で和解する。
そこからは以前にも増して仲が良くなるという具合だ。
まるでそれも、プレイの一環のように…。
喧嘩の理由なんて大したことではない。
その大半が飲酒中の衝突だ。
お互い大好きなお酒だが、
口が達者で男のくせに女々しい僕と、口数少なく女のくせに男前な妻は、何かの拍子で口論が始まってしまうのだ。
僕に言葉のチャンバラでは勝てない妻は、”働いてない”という切り札をいつも出してくる。
そこで僕はさらに激怒するというわけだ。
働いていない僕が言い返せることではない。
でも口論中に”それ”を出すのはルール違反ではないか?
戦争にだってルールはあるものだ。
しかしわかるよ、皆さんの声が聞こえてくるようだ。
働けよ!!
でしょ(笑)
ここで誤解がないように説明しておくが、僕は仕事をしたくないのではない。
先々を考えたときに、今やっておくべきことの優先順位が人と違うというだけで。
パートナーである妻の仕事が順調なうちに、日銭を稼ぎにでるのではなく、お金が生まれる仕組みを作っておくという考えだ。
コロナ禍でそのことをより考えるようになった人も多いはず。
現に妻の仕事も以前より落ち込んできているのも事実。
だから今回の大喧嘩のときも妻へその旨を伝えた。
『で、結果出てないやん?』
…。
そう突っ込まれた僕は、何も返す言葉がなかった。
しかしだ。
しかしもう少しで形になりそうな案件はあった。
それが出版社立ち上げだ。
僕が自ら書いた小説を、プロの担当者が認めてくれている。
もちろん無名のため売上を推測することはできないが、有名な作家も最初は無名なわけで。
アルケミストのような世界で読まれる物語を僕は書いたつもりだ。
誰もが何かの拍子でチラッと覗いたことのある、僕らが住むこの世界のもうひとつの一面を描いた作品なんだ。
僕はこの作品で世界に広げていきたい思想があるんだ。
そう、僕は夢男なんだ。
しかしこの文章を書いていて改めて思う。
妻はよくこんな僕を支えてきてくれたものだ。。
まず何よりもそこの部分への感謝を忘れていたのかもしれない。
大概にして僕は、ぶっ飛んでいるのだから…。
こうして今回の大喧嘩は、夫婦生活の中で最大級のものとなった。
夢を追うなら一人で生きる。そうでなければ仕事をする。
僕に突き付けられた条件は、この二択となったのだ。
つづく。
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