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【出資馬の思い出】スターリーソング

大橋が過去の出資馬について振り返る記事です。
今回は広尾サラブレッド倶楽部にてウディバードソングの18として募集されたスターリーソング号について。
相馬とかそういう話ではなく、エモかった思い出みたいな感じです。


スターリーソング号について

「努力は報われる」

好きな言葉ではあるが、実際のところがこの言葉が美しく実現する様は僕はあまり見たことが無い。ただ、スターリーソングが辿っている馬生はなんとなくこの言葉が似合うなと個人的には思う。

スターリーソング自体は結果として中央では未勝利に終わっているが、6月の早期デビューから未勝利終了までに11戦と多くのレースを走った。勝利や回収という視点では厳しい結果ではあったけれど、それとは別軸の、出資者が抱く出走欲というか、単純に愛馬が走る姿を見たいというニーズにひたむきに元気に応えてくれた素晴らしい馬だった。

スターリーソングはファンド解散後にオークション経由で、とある地方馬主さんに購入され、地方競馬で現役を続けている(2023年9月現在)。X(Twitter)のアカウントもお持ちなので興味ある方はご覧になっていただけると良いかと思うが、こちらの馬主さんはスターリーソングの競争引退後の馬生もすべてご自身で面倒を見るという前提で購入をされている。素晴らしいことだと思う。また、この話の詳細はnetkeibaのコラムでも紹介されたことがあったので、未見の方はご覧になっていただければと思う。

引退馬支援界隈で「キョウエイボーガンを救った女性」の話がある。こちらも未見の方はぜひ調べてみて欲しい話で、1頭の馬を1人+αの人が支えるという引退馬支援の美しい形の一つだが、じゃあこの事例を再生産していけるかというとそう簡単にはいかないのだろう。個人が1頭の馬を支えるという事例はあまり多くは聞かない。

スターリーソングの場合、現在の地方馬主さんが購入を決意されたきっかけは馬主さんの旦那様が広尾TCでの出資者でいらっしゃり、オークション出品にあたり個人で購入したいという意思を持たれたからだそうだ。

中央では掲示板にも乗ることはできなかったスターリーソングだが、いつも真面目にひたむきに走り続ける姿は、実際出資者として胸を打つものがあった。
中央所属の終盤で自身の募集額を回収した時は(もちろん賞金ではなく出走奨励金と出走手当の積算)、地味ながら一つの大きな目標を彼女が達成したようでとても嬉しかった。

厳しい中央のレースを無事に走り続けたスターリーソングの努力が、良き人との縁をたぐりよせたのだと考えると、まさに彼女は「報われた」のだなぁと思う。

いろんな角度の楽しみ方がある「一口馬主」という趣味の中で、僕にとってスターリーソングへの出資経験は、馬と人とのすこし特別なドラマを覗き見させていただいているような、素敵な経験になっている。

出資のきっかけ

広尾TCの入会の年で、名物の4口無料をフィルメーザに使わせていただいた上で「もう少し馬を増やしたい」という心理からまだ残口があった馬から選んだという感じだった。
決め手としてはエスポワールシチー産駒であるということ。丁度この頃友人が出資していたノルマンディーOCのエスポワールシチー産駒が新馬勝ちをしたという個人的なニュースもあり「エスポワールシチー良いのかも」と思ったことが大きかった。大橋ミーハーである。

新馬~未勝利期間

あんまり売れていない馬だったので使えるなら早めにどんどん使おうというクラブの意図と、高柳大輔調教師がまだ脚光を浴びる前だったということもあったのかすんなり早期デビューとなったスターリーソング。
レースの中しっかりポジション取りができる程度にスタート・二の脚も良いものを持っていた。ただ、どうしても一息でしか走れないところがあり、勝負所でギアが上がらず着順を落とす、厳しいレースが続いた。
結局中央では、掲示板に乗ることもできなかった。

高柳大輔調教師の手腕

そんな冴えない成績のスターリーソングが未勝利終了まで11戦も走ることができたのには、本馬のがんばりと同時に高柳先生の手腕があったかと思う。当然ながら優先出走権を持つことができなかったスターリーソングの状態をうまく維持しながら、適度に節を開け、適性条件に近いと思われるレースに使っていくマネージメントの上手さはとても素晴らしいなと感じた。さらに鞍上配置も納得感があり、出資者感情としてはありがたい思いがあった。

ファンド解散~地方移籍

中央で11戦走り終えたスターリーソングは、ほぼ出走奨励金と特別出走手当で自身の募集総額を回収するという地味だが見事な記録を達成し、ファンド解散となる。
広尾TCは地方の馬主格が無いため、他クラブで見られるクラブ名義のまま地方移籍という扱いが無かった。一応広尾TCとは別名義で地方転籍した後、中央に戻れる際に再ファンドするという事例はあるものの、スターリーソングにそれは適用されず、そのままサラブレッドオークション行きとなった。その後は前述の通り。

ただ、一つ面白いのは地方に移籍した後の彼女はもの凄く強かったということ。馬主さんが馬の体調優先にレースに使われているということで、暑い夏場はレースを避けていらっしゃったり、クラス分けがうまくいってるところもあるのかとは思うが、まるで馬主さんとの縁に感謝するかのようにクラスの中で実に安定した走りができている。

スターリーソング号のこれから(2023年9月現在)

一口馬主として出資を続けていく中で、ふと過去に出資したあの馬はどうなったのだろう、と思うことがある。実際にできる範囲で調べるとその足跡を辿ることができる馬もいれば、そうでない馬もいる。後者は成績を残すことができなかった馬ほど多い。
そんな中、スターリーソングは人との縁によって競争寿命を延ばすことができ、さらに引退後の第二の馬生として繁殖含め様々な進路が検討されているということが伝えられている。

実際にどうなるかは別として、こういった話題を知ることができることは、一口馬主という趣味の影の部分に対する一つの救いだと思う。そして現在の出資馬や今後出資することになるかもしれない馬たちの「その後」に対して何か自分ができることがないか、それを考える良き事例にもなっている。

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