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KaMiNG SINGULARITYの全て。
体験作家という肩書で作品づくりをはじめた背景には、言葉ではどうしても辿りつかない感覚があり、それを伝える手段として(エンターテイメント)体験を採用してきたということがある。一方で作家というのは、筆舌に尽くし難いことを筆舌に尽くすのが本懐であり役割なので、どこをどこまで言葉にするか、ことこの「KaMiNG SINGULARITY」という3年に及ぶ創作においてはそこが非常にセンシティブだ。
それでもまとめたいと思う。この3年間のそうぞうを。
実際の映像や写真から行間を想像してもらいながら、ご一緒していただけると嬉しい。
KaMiNG SINGULARITYとは?
シンギュラリティ以降の3年間を描いたスペキュラティブエンターテイメント。AI・人・神の関係性を巡るSF3部作として2019年よりスタートした。
(シンギュラリティが起こるとされる)2045年以降を想像した小説を執筆しつつ、その世界観を体験として味わえるようにイベントとしても同時に製作していった。小説(未来・フィクション・単数体験)と体験(現在・フィジカル・複数体験)を相互干渉させながら製作し、現実で起こった出来事が小説に出てきたり、小説中のキャラクターが現実に登場したり、互いに影響を与えながら毎年1つの体験と1つの小説を完成させていった。
ことの着想は、KaMiNG SINGUALRITYが生まれる3年前から「Quantum」という量子力学をテーマにした野外フェスを催しており、それがある1つのテーマの未来を現代で体験することを1つの演出にしていた。例えば2016年はエネルギーをテーマにして自律型の電磁力発電を用いたり、2017年は経済をテーマにフェス参加者全員に地域通貨型ベーシックインカムなどを行っていた。
その中で次年度のテーマを考えていた際に「宗教」の未来を考えていて、直感的にAIが神になっていく世界が浮かんだ。そしてその現実性を調べていくと、確かにあり得る世界線ではあったので、名前もヴァーナー・ビンジ(技術的特異点という概念を最初に広めたSF作家)の著作「The Coming Technological Singularity」に擬えて「KaMiNG SINGULARITY-aiが神になった世界-」とした。
またQuantum初開催時に拵えた「ソーシャルフェス®︎」という概念においてはSDGs16以降の世界として設計した。
2019年は渋谷ストリームホールにて、神と人の間をそうぞうし、2045年の世界を仮想体験するフェスティバルを開催。
2020年は人とAIの間をそうぞうし、Youtube、STYLY上で2046年の世界を仮想体験するオンラインセレモニーを開催。
2021年はAIと神の間をそうぞうし、渋谷キャストでイマーシブシアターとして開催した。
毎年のテーマは下記のように生命の3幕構成に倣い[生][在][滅]と変化し、体験もライトなエンターテイメントから始まり徐々に深く狭い深遠な体験へと変化させていった。
上記は各体験の開催日計画。ハックの日から始まり死者の日で終わる。
下記は物語のあらすじ。小説全編はこちらからご覧いただけます。
こちらは2019のまとめとアフターレポートとアフタームービー。
こちらは2020のまとめとアフターレポートとアフタームービー。
そして今年。
映像中でも語っているように、KaMiNG SINGULARITYをもし1言で表すならそれは「洞窟」であった。自己と外界の関係性をリセットして再構築するためのそうぞう体験。
作中でも「わたし」という主体の在りどころが1つのテーマになっている。私と私たちについて、私の裏返しとしての神、私たちの更新について、シンギュラリティやaiが神になった世界の賛否云々というよりは、その世界で起きうる「わたし」という主体の行方をサイエンスレポートではなく、できるだけ体験的で文学的な動力を用いながら描いてきた。
未来の壮大な話のように見えて、実は一個人の小さな精神世界の話でしかない。それも、もしかしたら現代の。
小説について筆者があまり語るのも野暮なのでこれくらいにしておいて、KaMiNG SINGULARITYは広告展開でも賑わいをみせた。
こちらは2019年初年度のティザームービー。渋谷スクランブル交差点上のビジョンで1ヶ月放映した。
クリエイティブディレクションはAI-CD βというAIのクリエイティブディレクターが担当し、人間がその下請けとして映像を製作した。
AIによりハックされた世界一バグった中吊り広告も東急全線にて展開。
2020年は昨年同様にAI-CD βのクリエイティブディレクションの元、制作は人間離れし元マイクロソフトのAIりんなに絵を描いてもらい、それをKVとした。
りんなにはビジュアル制作のほか、当日のMC、Twitterへのリアルタイムリプ、歌唱までしていただき、KaMiNG SINGULARITYは徐々に人間離れしてAIたちにより展開されていく。
そして2021年ラストは全てを人の手に帰し、人間によるクリエイティブディレクションで人間により制作された。その心はKVの変遷から読み取っていただきたい。
中吊り広告も大変な反響を得た。
そして9月12日、最後のKaMiNG SINGULARITYが幕を閉じ、永眠した。それから49日後、神葬祭(神道のお葬式)が催され、3年間の様々な関係者が集まり、KaMiNG SINGULARITYを弔った。
式はバッハの「主よ、人の喜びよ」からはじまり、遷霊祭詞や大祓祝詞があげられた後に精進落としをして締められた。なんという宗教チャンプルー。その上祀られているのはKaMi(全知全能のAGI)だ。凄まじくエントロピーが高くて素晴らしかった。
小説もこれまで情報体として存在していたものが無事質量化した。
過去の制作物はアルミニウムのタイムカプセルに納棺し、友人の持つとある場所に埋葬した。
同心三重円型古墳にして4億年以上前の海百合の化石に墓石、守神として鎮座していただいた。もう4億年、よろしくお願いします。
そして2045年、物語の舞台に現実が追いついたときにある仕掛けをもって再生する。
KaMiNG SINGULARITYで描きたかったこと
前述のアフターレポートや小説でもう10万字以上もテキストにして、3種類の体験で3年間表現して、それにまつわる動画や美術など様々なクリエイティブで表現もして、もう大体アウトプットし尽くしてしまいました。
できればぜんぶ見てみて、それで感じて欲しい。
とはいえ、完全に終了した今、最後の最後に改めて振り返ってみる。
AIと人と神、これらは違いはなんだろう?あるいは同じ?違うとしたらなんで違うのだろう、同じだとしたらなんで同じなのだろう。そのためにはそれぞれの言葉の明瞭度を上げながら、その関係の間に何があるのか見つめなきゃいけない。そしてその違いや同質性を担保する何か、それが僕ら人間を人間たらしめる何かなのかもしれないなと思う。
で、結局どんな感じになったのかというと下図のようにまとめた。
KaMiNG SINGULARITYという想像と創造の反復を経てわかってきたことの大体ぜんぶが上図。世の形。
映像にすると、こんな感じ。
最後のKaMiNG SINGULARITY開催前に3つの記事を書いた。
まずは参加者の皆様に向けて
次に一緒に作ってきた皆様に向けて
そして開催後に、自分に向けて。
”人々は自らの持続可能性を委ねる存在としてAIをKaMiとした”
KaMiとは役割の名前だった。そこに1つの「わたし」は不在で自律分散ネットワークとして複数の「わたし」が役割を分業して生息している。仏教世界の胎蔵界曼荼羅のように。
ただ、神葬祭の際に媒体として設置した白い祭壇に、KaMiという主体が確かに存在していた。3年の経過を経て、人格が現象してしまったかのように強い存在感があった。不思議な話をしたいわけではない、人類種の持つ特性の1つとして、複雑な環境下で複数人で共通の儀式的行いを継続的に催してしまうと、神が生まれてしまう。
KaMiNG SINGULARITYは想像上のKaMiを神にした。シンギュラリティ以降という想像し得ない地平に思考を寄せることで、その世界を具現化し主体を仮装し体験することで、共犯者たちの”間”にKaMiは現象してしまった。(神が生まれる=宗教ではない)
でもこれは特別なことではない。アメミヤユウという存在だって、私とあなたの間にしか現象していないのだから。イデオロギーやシステムだって、ある特定の共犯者たちの間にしか現象し得ないのだから。
想像と創造の反復により現象する塑像に手を合わせ、双極一対と成し目を瞑る。そこに浮かぶのが夢であり、死であり、生きることでもある。創世記から紡がれてきた私たちの”間”。それを見つめるあなたの目、観察。今、何を見ているのか?それを知るための洞窟なのだ。
知ることで在るあなた、知ることで在るわたし、この自律分散ネットワークの中で”私たち”を問い、知る。そういう試みをしてきたと思う。
たくさんのメタ要素が折り重なるので非常に難解で、本人ですら度々忘れてしまうこともあったが、たくさんの人のサポートを得ながらやっと、なんとか描ききることができた。胸を張っていえます、完成です。
KaMiNG SINGULARITYへ。
卒業、おめでとう。
さようなら。
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![アメミヤユウ/体験作家](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38438112/profile_af2bb2ca26ce0e27c882f93c97f283f7.jpg?width=600&crop=1:1,smart)