頬の強調性
vol.13のテーマは『顔』
「顔」には日常の大切な情報のやりとりをする、重要なパーツが集結しています。
今もこうして目で文章を読んでいるように、意識しないうちに「顔」を通して膨大な情報のやりとりしているのです。
キャラクターのチャーミングポイントになることも多く、魅力的な部分をたくさん持つ頬。
その魅力はどこからくるのだろうか?
「頬」について考えてみた。
愛される頬の秘密
「赤い林檎の頬をして 眠っている 奈々子」の一節から始まる吉野弘の『奈々子に』という詩がある。『奈々子に』は奈々子に向けた奈々子のお父さんの語りかけで構成されている。冒頭の「赤い林檎の頬」という言葉からは、林檎のように赤く頬を染めている可愛らしい頬を想像させられ、父の子に対する愛情や奈々子の愛らしさを感じられると思う。ここから頬の赤い状態は可愛らしさという印象を相手に与えているのではないかと考えた。
例えば、多くの人に愛されている人気キャラクターである「ピカチュウ」「くまモン」「アンパンマン」も赤い頬を持ち、赤い頬は一種のチャーミングポイントになっていると感じる。
また、赤い頬でないが魅力的な頬をしているキャラクターは他にもいる。その代表的なキャラクターとして「クレヨンしんちゃん」のキャラクターが挙げられる。「クレヨンしんちゃん」のキャラクターは頬が強調され、その柔らかそうな頬は親しみを感じやすく、魅力的に映る。このように頬は人に与える印象に関わっている。
頬も持つ力
しかし一方で、頬は感情や印象を伝える力が目や口ほどないようにも感じる。目や口といったパーツは単体でも何のパーツであるか認識し、感情や印象を読み取ることが可能だ。だが頬は単体では頬というパーツの境目が曖昧だ。そのため、切り取り方によってはそれが何であるかすらわからない。結果、感情や印象も読み取りにくいと感じる。
また、頬には目や口が動くと一緒に合わせて動くという特徴がある。笑うと口角が上がりそれと連動で頬も持ち上がる。あくびをすると口を縦に大きく開けるのと連動して縦に伸び、少し凹む。頬にはこうした連動した動きが多く、頬のみで動くという印象が薄い。そこで私は、頬は感情や印象を生み出すというよりは感情や印象をさらに強調するパーツなのではないかと考えた。
ではこの仮定が本当だとして強調する力のもとになっているものはなんなのだろうか。私は頬の柔らかさと、頬が人の状態によって色が変わることがそのもとになっているのではないかと考える。
頬の柔らかさの力
まず、頬の柔らかさだと思う理由についてだが、もし頬が硬かったらと仮定をしてみよう。頬が硬い、つまり口を上下させてパクパクと動かすことしか出来ないからくり人形のような状態といえるだろう。からくり人形は口を動かすことができるが、人間が感情表現する時よりも感情があまり伝わってこなく、無機質なイメージを与えていると感じる。
しかし、からくり人形と同じように口を動かすことができる人形としてパペットがあるが、パペットは愛らしさを感じることがある。これらの違いとしてパペットは口を動かす時に頬も一緒に動いていることが挙げられると思う。つまり、感情が伝わってこないのは頬が硬く、動いていないことに原因があるのではないかと考えた。
頬が色づく力
次に頬が人の状態によって色が変わることについてだ。ここで言う色が変わるというのは頬が真っ赤になったり、頬を白くさせることを指している。例えば、SNSで使用される絵文字では普通のにっこりマークと頬が赤くなったにっこりマークがあると思う。この時多くの人は後者の方が嬉しそうに見えるのではないだろうか。
また、私は表面上、必死な顔を作るということはできなくもないが、頬を赤くするほど必死な顔というのは本当に必死でないとできないという特性があると考えている。こういった特性はより表情のリアルさが増す要因だと考えられる。したがって頬の色が変わることはその人の状態や感情を表すことに結びつき、色が変わることでその感情の生々しさが付加されるといえると思う。
このように頬は感情や印象に関わっている。仮定の是非はともかく、頬は顔の感情や印象を伝える上で大切な要素であるといえるのではないだろうか。