津久井湖に行きました
こんにちは。一人称です。今日は久しぶりに不要不急の外出をしました。3ヶ月ぶりくらい。ぶどうを食べながら書きます。皮なし種なしぶどう素晴らしいですね…。
今日は雨でしたが、涼しくてむしろいい天気だったなと言いたいくらい。美術館巡りをするはずがなぜこんなことに。
東京・外苑前、ワタリウム美術館です。「青木陵子+伊藤存 変化する自由分子のWORKSHOP展」を見ました。コロナ明け(明けてないけど)最初の美術館がなぜワタリウム美術館かというと、このコロナの期間でもずっと開館していた(予約制ですが)ことに感動したから。美術が人生に必要なものであるということを身を挺して表現しているわけです、かっこいい。もう今は予約制ではないですが、お客さんは一人もいませんでした。人のいない美術館大好き。
展示についての詳細はまたいつかInstagramに書きますが、すっごく良かった。最近なんとなく現代アート分かってきたなという感じが勝手にあったのですが、やっぱり分からなくて、安心しました。「分かる」って分割して、単純化することじゃないですか、だけど、こういう空間にいると、複雑なものが複雑なまま襲いかかってくるわけです。分からなくていいよ、と語りかけてくる。子どもの頃ってきっとこういう感覚なんだと思います。世界がよくわからないものだらけで、見たり嗅いだり触ったりして、楽しみながら少しずつ理解していく。「ワークショップ」と展示タイトルに入っているように、必ずしも全てがアーティストとして活動している人の作品ではないので、民藝とかハンドメイド的な要素があり、その温かさ、人の体温に囲まれて、「外に出るってこういうことだな」と深く思い入りました。
で、これにかなり感動してしまった。そして、とにかく、自然に、木、土、水に触れたくなった。ひとまず、美術、どうでもよくなった。どこに行こうかな、身近な自然、子どもの時に触れたような自然、どこかな…と思って、突如、津久井湖に行くことに決めました。
青山一丁目と外苑前の間くらいのここの景色、日本じゃないみたいで好きです。正面に見えるのは聖徳絵画記念館です。まだ行ったことないですね…。
そんなわけで、京王線に乗り込みます。ちょうど都道府県を跨いだ移動が許可された日でしたが、そもそも京王相模原線は東京ー神奈川ー東京ー神奈川ー東京ー神奈川というふうに通っていますので、昨日以前は運転見合わせでもしてたんですかね?
新宿から40分、橋本駅に到着。「三ケ木」行きのバスに乗ります。「みかげ」と読みます。見た目の割にかっこいい読みですよね。
30分くらい揺られて、津久井湖につきました。都心から1時間くらいで来れるし、1時間に5本バスあるし、普通に都会だなという気もしますけど、湖です。そして山です。普通に雨も降っています。
かわいい。
まあ、ダム湖なんですけどね。別にダム湖だろうと自然の湖だろうと、水は低きに流れて自然と溜まっているわけですから、特に変わりはないと思います。水に悪気はない。神奈川は自然の湖ほとんどないですしね、相模湖も宮ヶ瀬湖も丹沢湖もダム湖。芦ノ湖と震生湖だけは自然です。東京は一つも自然の湖ない気がする(調べたら洗足池と不忍池は自然の池らしい)。
ここはダムの堰提(水を遮る建造物)の上に国道が走っているのが特筆すべき点です。通ったことある方もいるのではないでしょうか。正面には山、下には湖、そしてそれを支える巨大コンクリートと、その上を間借りする国道。自然と人工が溶け合っています。
味のある看板があります。ふりがなが漢字の下にあるっていうのはなかなか読みづらいですね、後づけしたのかな。
浮遊(うかべ)させる、、、(笑)子供にとってはこっちのほうがわかりやすいってのもありそうですけど、文章の表現自体はかなり硬いのがまたちぐはぐ。というか改めて上の写真全体のふりがなを見ると「下記図」=「したのづめん」、「水域」=「みずのなか」、「立入禁止水域以外」=「みずにはいってはいけないところのほか」、「上流」=「うえにむかって」と、たくさん面白いふりがながありますね。極めつけは「立ち入り」=「はいるに」。「ち」と「り」どこ行った。詩人ですね、これは。
久々にちゃんと外出して、一面緑で、そこらへんに雲が浮いているわけですから、なんか急に異世界に来たようで、しばらくくらくらしていました。
で、何をするかというと、先ほど正面に見えていた山に登ることにしました。「津久井城山」という山で、標高は375m、その名の通り「津久井城」というお城が作られた山です。さっきの画像にもあるように、湖のすぐ横に山塊がいらっしゃるので、結構印象が強く、いつか登ってみたいなーと思っていた山でした。雨なのに山登るのバカですけど、突然思いつきで津久井来るくらいのバカなので仕方ないです。ちなみに服装は美術館巡りのそれなので、全く合いません、普通にバカ。
少しコンクリートの階段を登ったところ。いい眺めですね。雲が近い。
てなわけで、登り始めましょう。ここ登るのかよ…とちょっと躊躇しましたけど、まあここまで来たからには登らざるをえません。
木の根っこを越え、雨に濡れる草木を掻き分け、ぬかるみを飛び越えながら進んでいきます。これがしたかったんだ〜〜〜〜とワクワクしながら登っていってますが、運動不足なのですぐぜえはあするし、湿度が高いので汗をかいても乾きません。タオルも持ってません。マスクはいつの間に外してました。
ふと足元に目をやると、ヒトデみたいななにかがたくさん落ちていました。花なのか、花のがくなのか、きのことかなのか…よくわかんないけどかわいかったのでなんか嬉しい気分になりました。
こんな感じのところを歩いていきます。ふと足を止めれば、雨の音と鳥の声のアンサンブル。葉っぱにあたって跳ねる雨粒は、葉っぱも雨も嬉しそうです。奥地にある山とかではないので車の音が時々聞こえるのがいやでしたけど、ある意味では、地上界を見下ろしているような気分になれたかも。感染者数も減らないなかで雨の降る平日にわざわざ外出してマイナーな山を登る変人はもちろん私以外にはおらず、山にいる間、誰ひとりとして他の人間と会いませんでした。密なんてどこへやら。
霧がかかってます。遠くからなら霧や雲として認識できるけど、中に入っちゃうとあんまりわからない。こういう感覚も都心にいるとなかなか味わえませんね。
ここで転びました。
割と盛大に転びました。思った以上に適当な格好で自分でもウケます。スニーカーですらない。トートバッグはミツメのやつです。山をナメるなと言われた気分になりましたので、今後気をつけます。
山頂に近づくにつれて徐々に頭上が明るくなってくるっていうのも山登りのいいところですよね。ちゃんとした山登りは全然したことないですが、こういうなんでもない山とか森とかを適当に歩くのは結構好きで、たまーにやってます。
ちょっと開けたところに出て、看板がありました。「自分の足でゆっくり歩いて、豊かな自然にふれ、歴史などをたずねながら、ふる里を見なおしませんか。」素敵な文章ですね。最後の太字の「貴重な自然を大切にしましょう"」の「"」はなんなんだ、なぜ最初にないんだ。それとも絵文字的なやつ?「ツ」みたいな。
いろいろ城の遺構(を示す看板)はありましたが、別に面白くないのでカット。登ること30分、頂上につきました。頂上の証に、空です。「津久井城山頂上」みたいなのが特になかったのはちょっとあっけない。
城があったことを示す石碑はありました。まあ、大した山ではないし、何なら昔は甲冑を着た人たちが登ってきてたわけで、あるいは今ではこの看板を付ける人とかが登ってきてるわけで、そういう人は本当にすごいなと思います。とはいえ標高375m、東京タワーの頂上より高いわけですからね、さっきまで東京都心にいた人間からすると不思議な感じです。
景色はあんまり良くないけど、ちらっと湖が見えます。
なんか頂上は芝生広場みたいになってて、楽しくて踊ってました。雨に打たれて静まり返る山を独り占めしているような感覚。雨もちょうど少し止み気味で、傘も投げ出しちゃう。木に手を当ててしばらく対話してみちゃったりする。
あとは山に登ったらもちろん聴くのはこれですね。LILI LIMIT『at good mountain』。LILI LIMITは私が愛してやまなかったバンドです。2018年末に解散しました(説明2回め)。リリリミットよ、なぜお前が…解散…😭
山なのはもちろんですけど、ラスサビが「雨を降らすことはとてもいい 大地にとって救われる物なんだ」から始まりますから、まさしく雨に打たれながら山を登ってきたこの状況です。人もいなかったので大声で歌いました。
管理用のケーブルカーがありました。こういうの一回は乗ってみたい(多分資材用だけど…)。
下山を始めます。ちょっと寄り道して神社へ。
飯縄(いいつな)神社という神社です。財布の中の5円って、探しはじめて、あっやばいないかも、と思った瞬間に見つかりますよね。無事に帰れるよう祈りました。
大きな杉があるというので見に来たら、なんとこの状態。
「大杉は落雷により消失しました」。
雷って落ちる音こそ聞こえど、どこに落ちてるんだろうなあって思いますが、こういうところに落ちるんですね。ここまで生々しく落雷の脅威を感じたことは初めてかも知れません。
これは人間には真似できない造形美ですね…。自然同士がまさしく化学反応を起こして、ここにしかない作品が出来上がってます。
ということで下山。気をつけないとマジで結構やばい感じです。
都心って、安全じゃないですか。柵や手すりがついていて、ホームドアまである。そもそも平らだから、足を踏み外すことがまず難しい。でも、山って、すぐ横に崖があって、木がたくさん生えてるから死にゃしないだろうけど、骨は折りそうなくらいの高さに目がくらみ、足がすくむ。そもそも足元も石や土や葉っぱ、凹凸だらけで、ましてや雨に濡れて滑りやすい。そんな中でも、足元をしっかり見て、ここに足を置けば滑らなそうだなっていうのを瞬時に判断して(感じ取って)、一歩一歩進んでいく。考えるより先に足が出て、思ってるよりリズミカルに、ひょいひょいと歩くことができる。アフォーダンスのような考えとして、こういうことが人間と環境との対話なんだろうなということを感じます。全て設えられた環境も、それはそれで楽しいこともあるけど、危険が存在しないというのは、生きた感覚、生きた経験みたいなものを生めない(生み出しづらい)だろうな、とも思います。
雨の山、本当に良いな〜〜〜〜〜〜。
下り始めると早いですね、20分くらいで舗装路。
御屋敷跡という原っぱがありました。山城だと山の頂上に家を作れるほどの平地がないので、普段はこうして麓に屋敷を構えて住んでいたのだそう。これがまたいい原っぱでした。
眩しいくらいの緑。セキレイが散歩してます。そして何より人がいないのが最高。やっぱり密は避けるべきです。
橋を渡ってフィニッシュ。気軽で短い山行でしたが、かなり充実した時間になりました。
津久井は2006年まで津久井町、それ以降は相模原市に合併されて今は相模原市緑区となっています。どうしても田舎なイメージがついちゃってますが、こうしてみるとかなり人住んでますね。
登ってきた津久井城山。いい形してますでしょ。今日登ってきたんですよこれ。
続いて、湖。
湖、本当に飽きない…いつまでも見てられる…。
海って、せわしなく動いてるから、どうしても気持ちが急かされちゃう気がするんですけど、湖は、基本的には静かに佇んでいて、でも表面は風と一体になって多彩な表情を見せていて、落ち着くし、包み込まれるような気分になります。水道管やコップに窮屈に閉ざされているときと比べて、こんなに雄大な自然の中に湛えられていると(湛える、讃える、称える、同じ読みなの面白いですね)、水がのびのびいきいきしているように見えます。水はほんとうは子どもみたいに動き回るのが大好きで、風にあわせて踊ったり、川となって流れたり、時には水蒸気として蒸発して雲や霧になったり、そこからまた雨になっては湖と一体になったり、そういう水の悪気のない気ままさに思いを馳せていました。車の音is本当に邪魔です。
そんなこんなで、20分くらいずっと湖を眺めていました。小さい頃の記憶では湖面に下りて水遊びをした記憶もあったのですが、場所がいまいち見つけられませんでした。またいつか見つけに行きたい、水遊びしたい。
というわけで、バスに乗って帰宅。この時間に上りなのに結構バスが混んでて、人の流れってよくわからないなあという気になりました。
そういえば津久井と言えば、津久井やまゆり園、相模原障害者施設殺傷事件が起こった場所としてのイメージが皆さんは強いのでしょうか(距離的には相模湖の方なのであまり近くありませんが)。このことについて語る語彙をまったくもっていないので何も言うことはできませんが、私にとっては津久井湖は一つ心の故郷みたいな場所になっていて、とても好きです。あまり観光地化されておらず、山なんだけど、人々の生活がかなりありありと存在しているというところが面白い点だなというふうにも今日改めて思いました。橋本からバスで30分くらいですから、近い人は行ってみてもよいのではないでしょうか。それでは。
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