「シナぷしゅ」の話
こんにちは。一人称です。
なかなか美術館に行けない生活が続いています、というか、美術館は門扉を開いているのでしょうが、美術館に行くことに踏ん切りをつけられません。電車に乗って外出はするのですが、美術館や食事など室内でのイベントには気が乗らず、街を歩くことでひたすらフラストレーションを溶かしています。
しかし暑い。結果家にこもることになります。実家にいるとYoutubeや映画だけではなくテレビもついていることがあるのですが、帰ってきて初めて知ったテレビ番組で、唯一好きだな〜と思ったのが、「シナぷしゅ」です。
かわいい。テレビ東京が0歳〜2歳向けに作っている知育番組で、平日毎日朝と夕方にやっています。夕方のしか見たことありません。
全体的に音ハメと色のビビッドさが気持ちいい。「シナぷしゅ」というタイトルからして良い。キャラクターが円や動物などの特定の形を持つのではなく不定形なのも良い。ふつうに見てて楽しいので、わたし0歳児かもしれない。
人に解説できるほど見てるわけでもないので、見てこの面白さを体験してくださいとしか言えませんが、なんだろうな、「同じ立場感」がすごくて、見ていて安心できます。赤ちゃんの気持ちになれる、赤ちゃんが見ている世界ってこんな感じなのかもな、と言ったら手のひらの上で転がされている感じでちょっとアレですが、もし私に子どもがいたら、一緒に見て、踊ったり歌ったりしてる我が子を動画に撮りたい。
たぶん、NHKの知育番組と比べると、歴史もノウハウもないし、予算もないんですよね。だけど、だからこそ新しいし、身近だし、令和の知育番組という感じなんですわよ。「東京大学赤ちゃんラボ」が監修していることからもわかるように、きっと均整に設えられているんだけれども温かいというか、すげえいいクリエイティブだなと。NHKの知育番組でもなく、熟練の保育士の読み聞かせでもなく、両親からの読み聞かせ。遊園地でもなく、子ども向けのボールプールでもなく、木のおもちゃ。子どもの頭を上から撫でるのではなく、実際に今を生きる子どもと同じ方向を向いている、そんな感じがします。(個人的には、最初と最後に子どもたちが出てくるところだけNHKっぽくてなんかな、、、という感じ)(別にNHKそのものが嫌いなわけではなく、NHKの知育番組と比べるとシナぷしゅのほうが好きだという話)(家族と話しててそういえばと思いましたが、NHKも「オドモTV」はおもしろいですね)
というか、めっちゃあざといなというか、指人形の猫ぜんぜんかわいくないし、英語のアニメ素人くさいし、唐突にイワシを三枚下ろしするし、かわいいうさぎがセミでDJしだすし、まじでわかんないんですよ。ゆるふわにまとめ上げられた果てしないカオス。5分15秒くらいから始まるヒップホップの童謡(え?)も超いい。赤ちゃんよりもサブカル人間にウケるかもしれない(?)。もしくは、そういうサブカル人間が親になってきているということなのかもしれませんね、こわいな。
noteもやっていてやはりあざとい。
個人的には、このあざとさが安心感にやや繋がっているということがあるような気がします。子どものクリエイティビティそのものは信じていますが、実際に子どもが描いた絵が好きかというと(少なくとも今の時点では)あんまり好きじゃなくて、子どもの粗暴さ、危なっかしさがこわい。なので、こうしてデザインされた「子どもらしさ」はそのクリエイティビティだけを掬い取ることができ、笑顔で見ていられる。実際に子どもを育てたらまた変わるのだと思いますが、というかそこも含めて責任を追わなきゃいけなくなるのでしょうが、どうだろうな…。
実家にいると、いくつになっても(21歳ですが)「子ども」なんだなということを感じます。家族というシステマティックな単位が自然と内在化され、個人の境界が薄れます(ノックせずに部屋に入ってくるなという話である)。昔のハードディスクを整理して、小さい頃の私や弟の動画を久々に見ました。画像はその時出てきた桃をもぐ私です。叫んだり、走ったり、やっぱり子どもって何するかわかんないんですよね。でもそれが面白いし、なによりそれが十数年前には自分、ないしは目の前にいる弟(私より背が高い)だったわけです。大人になった私もなんとか子どもの目線、子どもの感覚を取り戻してみたい。そんな無謀な思いを、(美術館に行く代わりに?)今は「シナぷしゅ」で味わいたいなと、そう思っています。それでは。
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