spica.11 大好きな十本の映画
最近映画についての記事を書かれている方が多かったので、それに触発されて、自分の好きな映画について書いてみる。
映画は、時折無性に見たくなる。
けれどあまり詳しくないので、同じ映画ばかり見てしまい、何か新しいものが見たくなったときは妹に聞くようにしている。
私が本の虫であるならば、妹は映画の虫だ。
年間何百本という映画を、映画館や家で見ている。傍から見ると何か修行でもしているのかと思うほど、TSUTAYAのレンタル品を山のように並べ、一晩中映画を見ている時もある。どれだけ睡眠時間の足りない日も、「明日は朝一番で映画を観る」と決めると、何がなんでも起きて一人で見に行く。隣に人がいると気が散って落ち着かないらしく、二回目以降でないと一緒に見に行ってくれない。アカデミー賞授賞式は毎年携帯片手にテレビにかじりつく。妹の自室には、映画のパンフレットやポスターや雑誌、DVD、映画の予告チラシを入れた何冊ものファイルが足の踏み場なく散らばっているーーーそれだけの映画好きだ。
私は本も映画も音楽もアニメも、大好きなものは人が呆れるほど、何度も、くり返し繰り返し見てしまう。大河ドラマの同じ話を、何度もくり返し繰り返し見る父を見て、ああこれが遺伝というやつか、と思った。
以下、今ぱっと思いついた十本の映画を、思い浮かんだ順に語ってみたいと思う。
ちなみに、私は映画についてそこまで詳しくないので、聞き齧りや自分の考えなどが中心の、「映画の知識を増やしたい方向け」ではなく、「どんな映画を見ているのかなと、気になる人向け」の記事になることを、あらかじめ述べておくので、あしからず。
1、グランド·ブダペスト·ホテル
私が選ぶ十本の映画の中では恐らく一番新しい。ウェス·アンダーソン監督の最新作で、アカデミー賞でもいくつかの部門で受賞するなど、旬な映画かもしれない。とりあえず、とても好き。初めてこの映画を見た晩に、はまり過ぎて3回見た。
小説では表せない、と私が思う映画の良さの一つに間の取り方がある。文字で沈黙を表すことが、何よりも難しい。言葉は万能だけれど、言葉にしない限り形にはならない。書くことで存在を形作ることは簡単でも、書かないことで存在を表現することはよほどの作家出ない限り厳しいと思う。
その、小説では出来ない良さが散りばめられた、宝物のような映画。
舞台は現代…に近い時代と思しき、ズブロフカ共和国なるヨーロッパ的町並みの寂れた墓地で、女学生がとある作家の胸像を前に一冊の本を取り出すところからはじまる。(このオープニングが実はとても好き。)映画はいくつかの時代を遡るように語られ、本の作者の体験、さらに本の元となったエピソード、と、移り変わる。
この映画のストーリーだけを小説にしたら、こんなに明るい気持ちで感想を語れないかもしれない。内容は理不尽なこともあるし、大切な人を失う痛みも描かれている。
それなのに、なぜかこの映画は随所にシュールな笑いが詰め込まれ、悲しくなる暇もなく、けれど少し切なく、過去から未来へと「想い」が受け継がれる。
どことなく、古き良きヨーロッパへの哀愁を感じる作品でもある。詩集や、誇りの高さや、質の良い物への執着などに。これだけ可愛くてヨーロッパ愛が凄まじいのに、監督はアメリカのテキサス出身だというのがまた面白い。ちなみに好きなシーンは、エレベーターボーイの絶妙な顔と、グスタヴがゼロを雇った従業員を呼び出して、窓からその人が答えたあとのカメラアングルと、絵画を盗む直前の二人の間と、早く逃げろやと観客のツッコミまちの黙祷。
嬉しかったのはアガサ役が「償い」という別の映画で可愛いなぁと思っていた女優さん(当時子役)だったこと。(でも、名前はおぼえてない…)
笑って、笑って、少し切ない。
この黄金比が守られる映画が、たぶん私の大好きの基準だ。
2、ダージリン急行
1の映画と同じく、ウェスアンダーソン監督の作品。こちらも間の撮り方が絶妙で、笑って、少し切ない。テンポはグランドブダペストホテルの方がいいかもしれないけれど、これもとても好き。この監督の描く世界はどうしてこんなに綺麗なんだろう、と焦がれてしまうほど、一つ一つが魅力的に描かれすぎてその世界に酔ってしまう。
舞台はインド。この監督の映画らしく、何から何まで、なぜか可愛い。この監督のすごいところが、クランクインの前に全シーンをミニチュアで撮って音声を入れ、俳優たちに「こうやって撮る予定だから」と配るところ。映画を撮る前に一本撮っちゃった、みたいなところが何とも頭がおかしくて、とても好き。「小説書く前にとりあえず原稿用紙400枚書いちゃった」みたいに置き換えると、より眩暈がする。
3、南極料理人
夜に見るのはおすすめしない、見るとお腹がすく映画。上記の映画を全部知っている人は「こいつ、本当に似たようなテンポの映画が好きなんだな」と思うだろう。
南極観測隊に不本意ながら選ばれた主人公が、男ばかりの観測基地で日々料理担当としてごはんをつくる。
「えっびふっらい」と、隊員一同が雪をかきながら掛け声を合わせるシーンが好き。オープニングで真面目な話かと思えば、全然そうじゃない、という詐欺感も好き。大切な人と離れて気づくことや、閉ざされた雪一面の世界の中での生活が面白い。堺雅人に生瀬勝久といった癖の強い豪華なメンバー。元気がなくなると必ず見たくなる映画の一つ。
4、名探偵コナン 世紀末の魔術師
映画館では見なかったのに、地上波で見てから大好きになった、言わずと知れたコナンの映画第三作目。
「おいおい、アニメも入れるのか」という声が聞こえてくる気がするけれど、是非見て欲しい映画の一つ。こういう歴史と絡めてくる作品、素晴らしい。ベイカー街と迷いに迷ったけれど、歴史考察も入っていたことでこちらに軍杯が上がった。
セリフのほとんどが頭に入っていて、友人たちと「コナンnight」と称して一晩中コナン映画を観る、という謎の会では、友人たちに「気は確かか」と疑われた。
エッグという秘宝を盗んだ怪盗キッドを追うコナンたちだが、目の前でキッドが銃に撃たれ海に落ちる。エッグを狙う真犯人の影がつきまとうが、その最中にエッグに隠された秘密にコナンは気づいていく。
好きなシーンは、ラスト。鳩と雨。あれより良いラストシーンは未だにコナン映画の中で出てきていないと思う。今見ると古い映像なので、作画はところどころ笑ってしまうけれど、良作。
5、プラダを着た悪魔
私にとっては元気が出る映画なのだけれど、友人の一人は怖い、と評していて驚いた。なんでも「服や靴に囚われて、主人公が少しづつ自分らしさを失っていくところが怖い」のだそうで、そうかそんな捉え方もできるのかと思った。
好きすぎてDVDでは飽き足らず、iTunesで購入し、iPodに入れていつでも見られるようにしたほどだ。有名作なので多くは語らない。
好きなシーンはアンドレアが劇的変身をした直後の通勤シーンと、最後の電話後にエミリーが笑うシーン。ツンデレは世界共通で良いのかもしれない。
6、天使にラブソングを
何がすごいって原題を邦題に訳した人。
sister's actを天使にラブソングを、なんてどうやったら訳せるのか。
2より1の方が好き。マクゴナガル先生訳の女優さんが出ていたことに気づいたのは随分あとだった。テンポが良いのと、時折出る合唱シーン。見ている人も体が動き出してしまいそうな、楽しさいっぱいなところ。
好きなシーンはやっぱり、合唱シーン。
7、バックトゥーザフューチャー
ダントツで1が好き。帰れるか帰れないかの瀬戸際。シリーズ物の一作目はやっぱり愛されるだけの凄味がある。
好きなシーンはマクフライが過去に行き、コーヒーを頼むところ。「コーヒーをfree(ミルク抜きの意)で」と頼む主人公に店主が「何でfree(無料)で出さなきゃいけねーんだ」と怒る。新しい時代にできた言葉が、過去では通じない、という描写がとても面白い。確かに今の時代から過去に行って、「~なう」とか「ワンチャン」とか伝わらないだろうな、と、なんだか不思議な気持ちになる。
日付や伏線が本当に至る所に散りばめられていて、考察の多い映画だというのもまた面白い。
8、ハチミツとクローバー
サウンドトラックの意義を知った映画。それまでサウンドトラックなんて全く興味がなかったのに。菅野よう子様様と言っていい。
原作がもともと大好きで、実写映画には全く期待していなかったのだけれど、音楽が良すぎたせいで好きな映画になった。配役も良かったと思う。
とにかく音楽がいい。及川りんを初めて知ったのもこの映画。ちなみに下妻物語も原作が大好きで、映画音楽は菅野よう子が担当だった。こちらのサウンドトラックも、非常におすすめ。
羽海野チカ作品は本当に大好きで、話したいことがたくさんあるけれど、これはまた別の機会に。
好きなシーンは、color's in bloomとgo to the seaが流れるシーン。
9、アフタースクール
大泉洋に堺雅人が出ているだけでも見る価値がある。と、思ったら脚本もいい。
「学校がつまんないんじゃなくて、お前がつまんないんだ。」
あの台詞にぐっときて、誰が主人公だったのかわからなくなる。踊らされてたのはお前らじゃなかったのか。と、巻き戻してもう一度見たくなる映画。見終わったあとのスッキリ感が格別。
好きなシーンはお蕎麦屋さん(だったかな?)で、すべてのネタばらしがはじまるところ。あのシーン、オチを知っているのに何度見てもワクワクする。
10、メリーポピンズ
恐らく、私の妄想癖の根源となっている。
風の強い日に傘を差して飛ぼうとした子どもは私だけじゃないと信じたい。指でぱちん!とするのもこの映画を見て練習した。今でもとっさに出る鼻歌はメリーポピンズの劇中歌だ。
少し前に出ていた「ウォルト・ディズニーの約束」はメリーポピンズの作者とウォルト・ディズニーのやりとりを映画にしたもので、あれを見たあとにメリーポピンズを見ると、また違った趣がある。
一度でいいからメリーポピンズと一緒に片付けをしたい。
●その他好きな作品
アメリ、ハリーポッター、最強のふたり、時をかける少女、ローマの休日、マイフェアレディ、ティファニーで朝食を、ネバーエンディングストーリー、キサラギ、不思議の国のアリス、チャーリーとチョコレート工場、耳をすませば、千と千尋の神隠し、猫の恩返し、ジュマンジ、ハングオーバー、ホームアローン、プリティプリンセス2、ベガスの恋に勝つルール、バットマンシリーズ、インセプション、ミッドナイトインパリ、ビフォアサンライズ
こうして並べてみると、自分でも新しい発見がある。見終わったあとにいくつも考察が出て、誰かと話したくなる映画は無条件で好きだ。
そのうち、本、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などバージョン違いで、好きな十作品だけ集めてテキストにしてみたい。
〈了〉