つぶやきメモ2:『闇の経済学』があったらよいのかもしれないという話
例えば、マイケル・ルイスの『ライアーズ・ポーカー』『世紀の空売り:世界経済の破綻に賭けた男たち』『フラッシュ・ボーイズ:10億分の1秒の男たち』とか、あるいは正垣泰彦『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』とか、経済・経営・ビジネス系の読みものに多少の関心があって、ときどき読んでいる。経済学とかの本も、少しは。
さいきんポップ?カルチャーのことばかりツイートしている気がするので、手元にある別種の本を列挙。ヘレン・ピルチャー『LIFE CHANGING:ヒトが生命進化を加速する』(的場知之 訳)。ハジュン・チャン『ケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド: 経済学の95%はただの常識にすぎない』(酒井泰介 訳)、
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) November 29, 2022
やる夫スレとかネット小説とかネット小説とかを読んでいると、意外と(?)実学っぽい方面にも関心が出てくる。そんな話はこの前に書いた。
あとは昔から横山光輝の『三国志』とか、秋本治の『こち亀』とかを読んでいたりもしたし、政治とか国家の話、ビジネスとかエンタメ産業の話などに対する関心が、たぶんそういうものでも培われていた。実のところ、児童文学版で読んだトルストイやユゴーなどから受けたりした諸々の影響もあるとは思うが、かしこまった文学の影響だけ挙げるのも事実に反する気がする。
ある程度は上の記事で挙げたようなものが自分の天下国家や経世済民の見方に影響を与えていると思う。
それで、物語ではない経済系の読みものとかだと、どんなものを読んでいたかというと、こんな感じ。
経済学や社会学や政治学って面白いし役に立つんだと自分に思わせてくれた本が幾つかあって、例えばそれは伊神満『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明 』2018、畑山要介『倫理的市場の経済社会学:自生的秩序とフェアトレード 』2016、坂井豊貴『マーケットデザイン』2013同『多数決を疑う』2015
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 5, 2023
同『ミクロ経済学入門の入門』2017、数土直紀『信頼にいたらない世界:権威主義から公正へ』2013とかで、またシーヴ+スタサヴェージ『金持ち課税:税の公正をめぐる経済史』2018訳やバナジー+デュフロ『貧乏人の経済学:もういちど貧困問題を根っこから考える』2012訳とかで、あと科学史・科学論だけど
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 5, 2023
ポーター『数値と客観性:科学と社会における信頼の獲得』2013訳、政治哲学に近いけどロザンヴァロン『連帯の新たなる哲学:福祉国家再考』2006訳とかで、まあ研究書どころか新書でも一知半解かもしれないとは思うものの、政治経済学、数理社会学、科学技術論などのポピュラー化には応援心があります。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 5, 2023
それで、結局『闇の経済学』って何かというと、こんな経済読みものの本があったらいいかもしれないな、という架空の書物で、要はポピュラー・サイエンス本みたいな意味でのポピュラー・エコノミクス本みたいなイメージの何かのことだ。
https://t.co/aNhmU8ReSz こういう企画:海老さん曰くの「内容は普通な教科書に『闇の経済学』ってタイトルつけて其れっぽいデザインで売ること」。ただ私はハジュン・チャン的?なPluralism In Economics(経済学における多元主義)を重んじたく、初手が「異端」でも他を無視しなければOKって思います
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 6, 2023
もしそんな本があったら、自分はよろこんで読むだろうし、読んでたのしみそうだな、と思う。そういえば『ヤバい経済学』『超ヤバい経済学』『ヤバすぎる経済学』という一連の翻訳本がすでにあるのだったか(いずれもスティーヴン・D・レヴィット+スティーヴン・J・ダブナー共著、望月衛訳)。
私は経済学というより実学のすごさを理由に文芸の人たちの(夢)物語をアタマお花畑だと馬鹿にしてネタトークしてれば社会がよくなるとでも言いたげな態度をとるひと(具体的に当てはまるひとがいるっていうか、「ポスト・トゥルースの元凶になったポストモダニスト」と同じ藁人形だと思ってください)
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 6, 2023
への(つまり空想上の存在かもしれないけど、いろんなヒトの端々の言動を組み合わせると生まれうる通俗的な悪魔化されたキャラクターへの)敵愾心をゼロにすることがいまだにできないのですが、こういう感じの本が出るとしたら、可能な限り、すごく歓迎したいと思いますし、どうしても批判側に寄る気が
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 6, 2023
しちゃってはいますが(勉強したら克服できるかもしれないなとは思ってます)、しっかり読みたいので(ただ、遅々たる速度で、他の人から見ると勉強さぼってグチってるようにしか見えない場合もあるかもしれないですが)、こういう企画通る世界だったらいいな、って本当に思います。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 6, 2023
これと関連する話で言えば、2021年の頃、『闇の自己啓発』の発売に合わせたブックフェア企画で、伊神満『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』2018を紹介したことがあった。そのときの連投を発掘したのが、以下。
Vのかたの生誕祭でいろいろ闇の自己啓発を共著で出してからの3年を思い出していたらブックフェアで『老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体』 (鈴木大介/著 筑摩書房/刊)と『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』(伊神満/著 日経BP/刊)と『現実性の問題』(入不二基義/著 筑摩書房/刊)を紹介した際の
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 26, 2023
書店のかたのツイートが見つかりました。ので再掲してみます。https://t.co/N3TmPY51C2 https://t.co/0ZCChkyxpD 経済学101でブランコ・ミラノヴィッチの翻訳など見つけたのがその後だったでしょうか。ヒース『資本主義が嫌いな人のための経済学』はその頃には読んでいた気がします。あとはVOID3107訳
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 26, 2023
ラジブ・カーン「革命を求めて声を上げたのに、誰も応じなかったらどうする?」を読んだのもこの頃のはずです。吉川浩満『理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ』2014や廣瀬純『美味しい料理の哲学』2005を読み、進化論への関心が私的に高まってた時分でした。生物学の哲学関係の本も今は随分増えました。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 26, 2023
この本のことはすごく印象に残っていたらしく何回か投稿していた。
伊神満『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』2018、経済学と経営学の初心者にとって本当にいい本だと思ったので(そのすごいと感じた説明の中身を一旦措くと、比喩とか例え話みたいな表現のレベルではちょっとどうなんだこれ的なのも見かけた記憶はあるんですが、それでも)闇自己のフェアの際
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 5, 2023
たしか一緒に書店に置いてもらったりもしたんですが、転居とか繰り返すうちに手元にあるか分からなくなってしまったので、もう一冊、買い直して読み直したくなってきました。https://t.co/8hKgPBqEY6 書籍の紹介ページあったので貼っておきます。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 5, 2023
https://t.co/ALP7NxqSfd 同じような読みやすさを感じたのは、これでした。ただ精読する前にこれも転居でどっか行ってしまったので、経済学の勉強しなおしがてら、また買いなおしたい本のひとつです(恥ずかしながら、値段的に、これ買い直す前に買いたい本がいろいろあるぞ、ってなりがちでした)。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 5, 2023
あと、闇の自己啓発読書会でもポピュラー経済学な感じの本を扱ったことがあった。内容的には、みんなが期待してた内容とは異なる面が多かったからミスマッチ、って感じだったりした。読書会で盛り上がれる本を選ぶのって意外と難しいものだ、と思ったりもした。
そういえばウォルター・ブロック『不道徳な経済学:転売屋は社会に役立つ』2020とかは、ちゃんと読む前は、そういう『闇の経済学』的な(初手は「異端」を紹介したり際どい思考実験とかで始まるが「経済学における多元主義」のことを教えてくれて色んな方向に勉強を促す、といった)本かと期待してたが
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 6, 2023
なんか読んでいったら全然違ってて。別に私が期待していたものとミスマッチだっただけで役立つ人には役立つだろうし、読み物として相応に楽しく読めたんですが、私の想定するハードルがそんなのだったので、無いものねだりだったけれど、つい、がっくりしちゃってた、というのを、いま思い出しました。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 6, 2023
上の読書会記事、取りあげた本に対する当たりが厳し目な内容になっちゃった感じもする。ただ個人的には、同書の「超訳」者である橘玲の本に、自分は少し思い入れがあったりもする。
これも遠い思い出ですが、橘玲『悪夢博士の経済入門』が中学の頃に自分が読んでた本でした。申し訳ないですが、当時ホントにお金なかったので、ブックオフ的な店で中古のを立ち読みしてました(確か飲食費を削り書籍に回してましたが、そもそも新品の本を買うって発想にならないレベルで金欠でした)。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 10, 2023
ついでに、上と直接の関係は無いですが、前に法律関係のことやってたひとに紹介したらメッチャうけてたネタ紹介します。アイドルゲームの二次創作小説で労使関連の法律の運用込み解説作品ありました。https://t.co/zgo7ty3UUT https://t.co/KRjxnZk4YW あと憲法談義とかも。https://t.co/CiTktDpSMV
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) September 10, 2023
いろいろ振り返ってみたが、やはり『闇の経済学』って本があったら、自分はフラフラと引き寄せられて読んじゃいそうだな、という気持ちは拭えないというか、強まったかもしれない。
そういえば、経済学で「闇の…」と言えば(?)オートメーション化で超AIな加速主義の話は? というひとがいるかもしれない、と、ふと思ったので一応は関連ありそうな話も少しだけ。
テクノロジーによる「ポスト資本主義」を夢みる「加速主義」、その思想が見逃していたこと @gendai_biz https://t.co/TxzdXhHRlF #現代ビジネス 「オートメーション論」とその批判、それと左派加速主義の関係。オートメーション化による従来の仕事の消滅自体は加速主義でなくとも悲観的にも楽観的にも
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) February 15, 2023
語る将来イメージであり、またこの意味での「加速主義」は、国外の政治理論・思想に留まらず、国内の経済学者も既に論じるところだが(井上智洋が提言する「脱労働社会の可能性」|光文社新書 @kobunsha_shin #光文社新書 https://t.co/xbAs52B0hw )、社会の「オートメーション化」という見通しの批判
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) February 15, 2023
が「素朴政治」の再評価にまで繋げられており、印象に残った。実際「ゼノフェミニズム」内の「素朴主義」要素を重視するギャロウェイの批判を左派加速主義者(ウィリアムズ)も容れたのだし、ドゥルーズ+ガタリは「左派加速主義政治と素朴政治のどちらかといった排他的な二者択一」は採らないだろう。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) February 15, 2023
個人的には、こういう主義なり思想なりは良いか悪いか、以前に、どういう流れで、ないしは、どういう下地があって、日本だとこんな感じで加速主義が捉えられるようになったのか、みたいな問いを立てることのほうに今の私の関心は向きがちで、その受容状況の現在が良いか悪いか以前に、そういう問いを立てながら昔のいろいろを振り返って眺めたらどんな景色が見えるのかに興味が湧いてきている。びっくりしたのが、加速主義や反出生主義とかを批判するぞ、ってスタンスのひとが技術で自動化してこういう主義に対抗するんだ、って感じのコメントしているのを見かけたときで、加速主義=オートメーションで未来志向、みたいな認識どころか、加速主義VS社会の各所の自動化、みたいな認識だってあるのだ、というのは、印象に残った。
このまえ、加速主義や反出生主義の批判者が、対案にテクノユートピア的なオートメーション化のビジョンを訴えていたのだが、日本では、ええじゃないか的な騒動を暗に待望する褒めごろしとしてだけの加速主義理解や、厭世的で人類嫌悪的な者としてだけの反出生主義理解が巷間に広まっているのだろうか。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) February 15, 2023
英語圏とかの加速主義や反出出生主義がそういう側面をまったく持たないとは(個人的には)思えないのだが、日本で普及するにあたって、例えば加速主義なら従前のお祭り騒ぎ(ネットでの)的イメージに、また反出生主義なら従前の間引き的イメージに、余りに引き寄せられたまま理解されている気がする。
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) February 15, 2023
『現代思想』の加速主義特集(2019年6月号)や反出生主義特集(2019年11月号)は、別のイメージをも提示していたはずなのだが。また国民皆兵制(戦争抜きの)で国民皆保険をアメリカ合衆国で実現するという(SF他で描かれていたネタをマジに考える)ジェイムソンのユートピア論は加速主義と同時代的だった.
— 江永泉 (@nema_to_morph_a) February 15, 2023
加速主義の話も折々に呟いてきた気がするので、そのうち、まとめたい。
(了)