視聴したMVの話04(自分の視聴した2020年のボカロMVから10本)

前回

はしがき

この記事では、2020年に発表されたボカロMV10本を挙げてみます。私自身は音楽や映像などのつくり手でなくて、ボカロシーンに詳しいわけでもないので、自分の感想の拙さに忸怩とするところもありますが、自分がいいなと思ったものに誰かが出会うことにつながればと思い、書きました。

これまで音楽雑誌もあまり読めず、音楽理論も学べずにいて、ただたまさかに出会えた素敵なMVを視聴して、またレコメンドなどを利用して他のMVも眺めて、というような、偏食めいた享受の仕方できたものですから、主観的な印象や連想ばかりになってしまいますが、MVに触れ心躍るような気分になったときの記憶を思い出しつつ書いたつもりでは、きました。以前、視聴してきたMVを引用して、このような記事も書いてみました。主に4章などで、それまで視聴してきていたボカロ曲のMVをいろいろ挙げつつ思った話をしています。

例えば、私が感想を書こうとすると、こんな感じになります。

lumo『パラレルレイヤー feat. 初音ミク & VY2』2020

2016年にサービスが開始されたスマホゲーム、『#コンパス 【戦闘摂理解析システム】』のプレイアブル・キャラクター「零夜」(2019年10月に実装)のテーマソングです。初音ミク & VY2の声のループに『もってけ! セーラーふく』2007でのループを思い出したり、イントロから入る電子音にR2-D2の声を思い出したりしました(MARETU『うみなおし』2017のイントロの声をR2-D2に替えたらこんな感じでしょうか)。自分はおそらくSharper Image社の目覚まし時計でクラフトワーク『ザ・ロボッツ』(1978)に馴染んで以来、テクノポップ的な音楽には親しみを覚えがちだったようです。動きとかも、なめらかな感じよりカクカクした感じの方が好きで。実はこのMVで初めてこのゲームのことを知ったぐらいで、設定や物語をあまり理解できていないのですが、零夜の装いが画面上で切り替わるのと同期するように伸ばされている声が一瞬途切れる(切り替わる?)ところもとても印象的でした。

この文章を書くのに、何度かこのMVを視聴したり、思い出したほかのMVを視聴したり、記憶を思い出したり、用語を調べたりして、2時間ほど経っていました。自分の元の不勉強さもあり、なかなか筆が進まず、「いいな」と感じたこと、思った理由が書けないのはもどかしい体験です。

コメントをうまく書けませんでしたが、ほかに9曲を挙げてみます。

なお、ボカロ曲に関しては、音楽的な位置づけでも参考資料の渉猟度合でもものすごい方の執筆された記事が存在するので、それを先に挙げます。この方の他の記事もたいへんありがたいものでしたので推奨いたします(また以下で挙げる、いよわの楽曲も、私はこの方の紹介記事によって知りました)。

いよわ『さよならジャックポット  feat.初音ミク・flower』2020

Flat「新感覚ポップスを聴きたいなら"いよわ"を聴くべし」(2020)で私はこのボカロPのことを知りました。

以下、7曲ほど列挙します。

john『ヒガン feat.初音ミク』2020

すりぃ『テレキャスタービーボーイ feat. 鏡音レン』2020

Chinozo『シェーマ feat. flower』2020

てにをは『ヴィラン feat. flower』2020

syudou『ジャックポットサッドガール feat. 初音ミク』2020

Kanaria『KING feat. GUMI』2020

一二三『蜜を嗜む feat. flower』2020

最後に10曲目、個人的な思い出を少し。

稲葉曇『ラグトレイン feat. flower』2020

ある方が、この曲の感想をSNS上で語っていて、私はそれでこの曲に出会いました。2020年に、これまで触れていなかったボカロPのMVを視聴しようと思うようになったのは、その体験がきっかけでした。いよわ『無辜のあなた feat.初音ミク, flower』2019などもそうだと思いますが、こうしたキャラクターの身振りが切り離されて並んでいると、私は魅了されてしまいます。

むすびに

歌詞で何が語られているかや、映像にどんな姿が登場するかも少しで、私がMVに触れて何を連想したかや思い出に話が終始しがちなのは、主に自分の力不足によります。例えばイギリスのバンドスクリッティ・ポリッティには『ジャック・デリダ』という曲があって(アルバム『Songs to Remember』1982に所収)、でジャック・デリダと言ったら、フランスの著名な哲学者なわけですが、私は、デリダがどんな哲学者で、イギリスの音楽雑誌でどんな風に紹介されていたかなら少しは話せても(といっても専門家ではないし、マーク・フィッシャーの本を頼りにとなりますが)、音楽史的な位置づけ、ジャンルや曲調、そして旋律や拍子に関しては、ほとんど語れないわけです(たしかに人文学知もその曲の構成要素のひとつではあるはずとはいえ)。

本当は、上で紹介した諸MVにも、どのように歌われているか、どのように音楽が奏でられているか、何をどのように描き、映しているのかなど、分析され、語られるべきことがたくさんあるはずです。そういう意味で私が続けて書いている「視聴したMVの話」たちは、歌詞の話に寄った大雑把な感想なのに、どうも言葉遣いばかりが大上段になってしまうきらいのある旨を、自身も痛感しています(知識不足と口にするだけでなく、少しずつでも自分で知識をつけていこうと思っています。といっても「ループ」という言葉を調べたり、マーク・フィッシャーを読み始めたりで、楽曲分析については、入門もまだできていないのですが)。そうした知識があれば、私がMVに感じている魅力を、もっと語ることができるのだろうと、痛感します。

ただ、MVに触発され、自分はこのような連想をして、こんなふうに思いを巡らせた、といった記述も、ありうべき感想の形であるはずだとも思いたくはあります。きっと、触れた文章にインスパイアされることでできた音楽があってよいように、触れた音楽にインスパイアされてできる文章もあってもよいことでしょう(イラストや、動画もまた、そのような相互触発の網を形づくるであろうことでしょう)。最後に、自分が(音楽文化の)歴史って大事だな、という気持ちを以前よりも強く抱くようになったきっかけのひとつである、あるラップ曲のMVを引用して、記事をむすびたいと思います。

U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS『BUNKA』2019

 「先人たちの偉業 リスペクト 人の営み積み重ね 歴史 文明 文化」

[了]

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