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第二十一回 書き出し祭り 第二会場の感想

 こんにちは。智子です。
 書き出し祭りの感想は「会場ごと」にご用意します。一つの記事の文量が多くなると、色々と弊害(Twitterカードの読み込みができないなど)があるな。と感じたので記事を分けます。


記事について

 表題の通りです。感想を別に分けています。別の会場についてはノート記事を添付しておきます。

感想の作成方法について


 今回はちょっとやり方を変えます。読みと書きをスムーズに行いたいので、感想依頼は「読み終えて、感想を書き終えた」段階で募集するつもりです。

 感想がいつも長尺となるので、要点をまとめたものを感想として残していきたいという目標があります。長いと記事が重くなりますからね。うまいことやっていきます。

感想依頼

 上記のマシュマロで、会場名と作品名を明記したうえで感想依頼を投げてください。

 一応、全感想として下記に感想は残しています。感想依頼があれば追記する形で感想を残していきます。

 何かしら、感想に要望等あればコメントも付してみてください。気になる部分あればそこも合わせて、感想を残します。


会場へのリンク

第二十一回 書き出し祭り 第二会場


2-01 シナスタジアの聖女、今日も最前線を征く

タイトル感想

 聖女とあるのでゲームライク作品のファンタジー作品でしょう。最前線とあるので。軍属のミリタリーものでしょうか。

あらすじ感想

 なんかイメージとは違いましたが。概ね間違ってはいなかった感じでしょうか。勇者や魔王といったゲームライクな世界観は理解したうえで、「主人公の幸せ」というのがまだよく掴み取れなかった情報です。
 子羊たちが誰にかかっているのか。修道女達のことを指してるんでしょうか。

本文感想(76/99)

主人公   :アリシア
主人公の能力:感情や性質が色で見える(共感覚的能力)
世界観   :魔王の討伐や、勇者といったRPGライクな世界観
異変・事件 :パレードへの襲撃(主人公は観覧している)
問題・課題 :不明(多分、聖女としてこの勇者一行を支える?)
決意・覚悟 :不明(あらすじの「幸せを掴む」の部分がまだ見えてこなかった)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):アリシアの「共感覚的」な能力による活躍を期待する。ヒーローが不明。もしかして、勇者が相手なのだろうか。戦闘シーンがガチめいていて、そっちの方が見応えがあった。

 子羊たちを守る。という言葉から、もっと「やましい感情」を内包した主人公が出てくるのか。と思っていたんですが。そんなことありませんでしたね。まっとうな主人公でした。

 そつない印象の作品でした。

 主人公の能力によるエピソード。勇者や魔王といった設定の開示による「RPGライク」な世界観を表現しつつ、パレードに伴うイベントから主人公の活躍(まだしてないけど)をさせる。

 といった、順当な読み味の作品でした。

 あらすじの「幸せを掴む」という部分がまだしっくりこなかったです。教会への不信感や諸々の話題からして「教会」が黒幕として機能することになるんでしょうか。

 今後のストーリーラインの中で「決意」のテイストが、自身の「幸せ」に直結するような情報になるのか。そこがちょっと気になる引きでした。

 感想は以上です。


2-02 公爵令嬢はバックレる

タイトル感想

 何をバックレたんでしょうね。何からバックレるのか。そして、それがどのような「物語の起こり」として機能しているのでしょうか。

あらすじ感想

 ちょっとよくわからんですね。どういう楽しみを提供してくれるのか。ファンタジー世界で「いちから始める破産宣告!」みたいなことですか。勢いがあって好きなあらすじです。

本文感想(77/99)

主人公   :セラティーナ
主人公の能力:領政を回す実務能力
世界観   :冒険者などの話題もあったので、ナーロッパ世界観。
異変・事件 :没落というか。破産宣言。家を畳む。
問題・課題 :不明(あらすじにも今後の展開がないため、わからない)
決意・覚悟 :不明(同上)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):女性向け作品にある「実務能力を兼ね備えた女性」としてのキャラクターの立て方。そして、それを約束する描写となっている。

 タイトルとあらすじでも予想はしていましたが。物語の起こりの部分で、引きとなっています。作品のキャラクターの立て方が「女性向け作品のカタルシス」のための作りではあるんですが。
 今後の展開にかかる情報が、本文にも、あらすじにも見当たらないので「どういう作品なのか?」という情報がまだ見えてこない領域でした。

 貴族の没落に関するバタついたシーンを描くという部分で見れば、順当な情報量であるし「読み物」としては十分楽しめるのですが。

 物語として何か期待できるか? というと、本文ではまだ足りない感じがします。

 家族は「ざまぁ」の対象なのでしょうが。主人公が今後どの立場、家族達の凋落や没落を楽しむ立場になるのか。

 隣国に舞台を移すということは分かるのですが。主人公が「どんな決意と目的を持って、隣国へ向かうのか」が情報としてあれば、連載作品の引きとして効果を発揮できるんじゃないでしょうか。

 感想は以上です。


2-03 智の煉獄へようこそ ~僕は魔女の伴侶となった~(感想依頼あり)

タイトル感想

 魔女の伴侶とあるので、ファンタジーであり。異類婚姻譚に絡む物語。イニシアチブは女性側にある。
 男性向けにも女性向けにも通用するような構成のカップリングを意識した作品のように捉えました。

あらすじ感想

 なんか。えっちな感じがするのは気の所為ですか? 一対一の少年がお姉さんに籠絡されるタイプのラブロマンスのえっちなファンタジーを期待していたのに、ちょっとお硬い感じのえっちさを感じています。
 どうして、変化するんでしょうね。本文でそれが明かされることを期待しています。

本文感想(78/99)

主人公   :僕(彼岸)
主人公の能力:菩提 涅槃の能力(ヒロインの洗脳? 魅了?)に対して、抵抗がある。
世界観   :現代ファンタジー。
異変・事件 :図書館の閉鎖に伴い国費経営の技能研修所への移管
問題・課題 :不明(本文にもあらすじにも移管にまつわる諸々は描かれていない)
決意・覚悟 :親公認による公私ともに、ヒロインの支えとなること。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):特殊な能力を持つヒロインを起因とする騒動を期待できます。

 タイトルにあるように。伴侶と明記しているので。ジャンルとしては「ラブロマンス」なんですね。というのを感じ取れる力があるのは良かったですね。

 舞台としてのセットアップが少々特殊であるため「僕」と涅槃の関係を崩しかねない。ないし、涅槃自体が崩しかねないような「危うさ」として活躍しそうな予感がしています。

 どんな話になるのか。想像がつかないですが。面白そうです。

 タイトルの力が強かった。ジャンルは明確で、舞台が特殊。それだけでも十分な引きになるのだな。と感じました。

 感想は以上です。

 感想依頼を受け付けたので、次の通り回答します。

書き出し祭り 2-3「智の煉獄へようこそ ~僕は魔女の伴侶となった~」、追加感想を頂ければと思います。

依頼文より

 受け付けました。とは申しても、基本的に「面白かった」作品というのは、感想が残しづらいんですよね。一回目の感想でも残しているんですが。セットアップのみで、面白そうと思わせた類の作品であり、まだなにかしらの「物語が始まった」段階ではないため、余りコメントが残せるものではない。という所はあります。幸い。質問事項があるので、お答えしやすくてよございました。

タイトルは雰囲気で考えた物ですが、本文内容とタイトルとのつながりは感じられますでしょうか。

依頼文より

 雰囲気で考えたんですか。結構ゆるい感じで作ってるんですね。タイトルよりサブタイトルで、期待できる関係性とか。ジャンルについての選好が働いた感じはします。

「~僕は魔女の伴侶となった~」

 このサブタイトルによって。キャラクター間には「好悪の情」を起因とした話題がある。ラブロマンス的な期待感を持ちました。

 ヒーローの方も「まんざらじゃない。むしろ嬉しい」というような感情まで本文で垣間見えてるわけですから。妙齢の男女が揃えば、そういう期待が出るってなもんですよ。

 今回の場合はヒロインが「魔女」としてのそれがあるんでしょうね。相手を洗脳してしまう。魔女と呼ばれるのにふさわしい能力じゃないですか。

 タイトルの部分も考えてみます。

「智の煉獄へようこそ」

 女性の元服役囚の社会復帰のための研修施設としているのですが。煉獄という表現の物騒さも相まって、何かしらのトラブルを予感させてくれるタイトルになっています。

 煉獄と聞いて、正確な意味は正直浮かびません。これは智子の語彙力の話なので気にせんでください。監獄位のイメージで捉えていました。
 というわけで調べてみました。

れん‐ごく【煉獄】
〘名〙 ローマ‐カトリックの教理で、小罪を犯した死者の霊魂が天国に入る前に火によって浄化されるといわれている所。天国と地獄の間にあるという。また、苦しみを受ける場所のたとえ。

 宗教的な用語なんですね。魔女と宗教的な用語と並ぶと。それだけでまた意味深ですね。

 魔女と煉獄というと。最終的には「ヒロイン」に苦み走った結末など。不穏な展開を予想します。

 それは、彼女が「箱物」施設として、天下りをしているとも取られるような環境もありますが。世間の批判や批難の元、魔女がこき下ろされるのかなぁ。

 煉獄の意味を知って、読んでみれば、今後の展開についてのちょっとした示唆には感じ取れました。

 此処から先は蛇足というか。智子の個人的な結末への期待ですが。

 良い物語というと結末が「苦み走った成功」というビターなものを期待する節があります。

 現状、作品のテンションとしては。

「好きな女性に便りにされてる! うれしいいい!」

 という高いテンションから始まっているので、そのテンションから乱高下しながら、最終的に「やっぱり嬉しい」で収まる程度のイベントを期待しています。

 苦み走った結末。どんな感じになるんでしょうね。

 なにか大きなやらかしが起きる。魔女が火炙りされそうになる。伴侶として、ヒーローが大活躍して、ヒロインの窮地を救う。しかし、元の場所には戻れない。みたいな?

 感想依頼を受けて、セットアップから妄想をしてみました。

 現状、この作品はセットアップのみなので、今後の「物語上の課題」とされるものが二話以降に提示されるのだろうな。といった予想と期待にとどまる作品でした。

 あらすじで、どんな問題に絡まれるのか。とか、先の展開まで思い切って書いてあれば、なおのこと高い期待感で次のページを切望できたと思います。

 質問や要望があって、感想が書きやすくてよございました。

 感想は以上です。









2-04  双子のルール〜ヤンキーとギャルが怪異に巻き込まれるが全然怖くない話。〜

タイトル感想

 ヤンキーとギャルの二人がどんな力を持っているのか。その部分に興味をもたせようというタイトルです。あらすじや本文でその興味を満たしてくれるでしょうか。

あらすじ感想

 わからんですね。まだ力が未知数です。この段階で「二人がどんな活躍をして、どんな感情を約束してくれるのか」という部分が分かりづらい、新規性のあるタイトルなので、良くも悪くも目立つ感はあります。
 ターゲットは誰になるのか。
 
 怖くない怪異。どういう需要になるのか。本文を待ちたい作品です。

本文感想(79/99)

 主役として据えられるであろうキャラクターが二人いるので、二人で整理してみます。

主人公   :ハル
主人公の能力:運と勘に優れている
世界観   :怪異等が登場する世界観
異変・事件 :ルール外の面白そうなものを見つけたので、追跡する。
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :着物の少女を口説く
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):あらすじにある通り、現代ファンタジー。怪異に遭遇して、生還する話。超常的な現象に対して、打破し続ける。

主人公   :ナツ
主人公の能力:記憶力と目や耳といった部分の感覚に優れている
世界観   :怪異等が登場する世界観
異変・事件 :ハルの勘によって、物語の誘導がある。
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):あらすじにある通り、現代ファンタジー。怪異に遭遇して、生還する話。超常的な現象に対して、打破し続ける。

 タイトルとあらすじにある通りの「◯◯な話」という誘導があることで、効果を発揮するタイプの本文でした。

 ヤンキーとギャルと言いますからね。この場合はあれなんですかね。女性のヤンキーと、男のギャルってことですかね。

 正直、最初はその設定と口調が飲み込めていなくて、読みながら最初の設定を読み直したりといったことが発生しました。

 チグハグなキャラクターですよね。

「ルール」といったものを遵守する一方。

 性的な規範による服装やスタイルからは逸脱しているキャラクター性です。これらの矛盾も内包しつつ、今後の展開にからめていくことになるんでしょうか。
 おそらくギミックとして、含めているのであれば、このキャラクターのジェンダーギャップについては、うまいこと飲み込ませないと。ギミックとして発動させるのは難しいかもしれません。

 今回の書き出し祭りは「タイトルとあらすじ」含みで、本文を揃えてきている作品が多いなぁと感じています。

 〇〇な話。というのは、それだけでも高い効果を発揮していそうです。

 感想は以上です。


2-05 虚界本紀 機神サカトケ(感想依頼あり)

タイトル感想

 わからん。ロボ物? でしょうか。

あらすじ感想

 ロボ物ですか。ジャンルも明確。主人公も明確。もしも機神達が味方出ない時、巫女も敵対するんですかね。端的ですが、舞台も明らかで展開への予想も立ちやすい。良いあらすじだったと思います。

本文感想(80/99)

主人公   :洸太
主人公の能力:謎のロボット『機神サカトケ』のパイロット
世界観   :SF。ロボットもの!
異変・事件 :光の柱の登場
問題・課題 :光の柱を生み出す『異虚』との戦い
決意・覚悟 :不明(あらすじを見るに、世界を救うという決意のシーンを用意していると予想)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):少年が主人公の巨大ロボットもの。としての期待される能力(ロボットの操縦者)を駆使して、世界を背負うこと。

 ジャンルとして期待される要素を満たした作品だと思います。少年なので、精神的な課題や葛藤もほんのりと期待しています。

 少年。巫女。ロボット。

 絶対好きな人に刺さっているでしょ。12歳の少年が。災害に近いようなものに巻き込まれて、どのような道筋をたどって決意することになるんでしょうね。お父さん多分、死んじゃってるから。悲劇が予想されます。

 さらには、あらすじでも「二転三転」の要素がありますよね。

 サカトケの巫女、タマデとともにパイロットとしてサカトケを駆使する洸太は、人類を救えるのか。そして『発見』された機神たちは、本当に人類の味方なのか。

あらすじより

 ああ。それやるのか! と思いながら、読んでいました。

 心を寄せて、信頼をしたタマデと敵対することになるとか。しんどかろうなぁ。今後の主人公の活躍と苦難をお祈りしております。

 感想は以上です。

 感想依頼を受け付けたので、次の通り感想を追記します。

 受け付けました。

 多分、忖度ない感想ってことですかね。

 基本的にそのまま思ったことを申し上げているだけなのでね。なにか気になった部分があるかというと。ちょっと、考えないと見つからないかも。考えてみますか。

 まず。前提としてですが。この書き出しは「成功」していると思います。

 というのが。

 書き出しって「プレゼン」だと思っています。

「この小説は誰のために、どんな風に楽しんでもらうのか?」

 という「楽しみ方」を提示することが書き出しの大事な点だと思っています。

 それを「明確にする」というのが。

主人公   :
主人公の能力:
世界観   :
異変・事件 :
問題・課題 :
決意・覚悟 :
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):

 上記の項目を埋めていく。
『ファースト10+主人公の能力+ナラティブ』
 を丁寧に埋めていければ、それだけで「誰が何をする物語なのか?」というのは十分に伝わっています。

 ボーイ・ミーツ・ガール的な開始。ロボットもの。少年ゆえの高揚感。

 基本的に智子が物語に求めるのって、個人的な「成長の物語」「葛藤」等を含んでのそれであるんですけど。

 この物語の言葉自体が「不穏さ」ありますよね。

 サカトケの巫女、タマデとともにパイロットとしてサカトケを駆使する洸太は、人類を救えるのか。そして『発見』された機神たちは、本当に人類の味方なのか

あらすじより

 主人公の少年は人類の尖兵として戦うことを求められるでしょう。

 しかし、彼って「巻き込まれる」形でパイロットになってます。さらには「贄」とまで物騒な言葉があります。

「洸。湧きいできらきら光る。渡ってくるとして悪くない。タマデはお前を主としとしよう――タマデヨリマツリキタル」

本文より

 これ、一段落終えたあと。主人公はすでに「違う体」になってますよね。この決意も何もない段階、本人の了承も得ずに、パイロットにする。という「巻き込まれ形式」の冒頭です。

 このあとに起きる「葛藤」(父の死。自身の変化。周囲からの期待。敵対者の登場)といった数々のイベントを仕込んでいるようにも感じられる冒頭なので。今後の期待十分、あらすじの不穏さも満たした。いいバランスの作品だったと思います。

 ロボものとして、期待される作品の描写があるのか? というと、そこら辺はよくわかんないですな。タマデというユニットがとても優秀なようなので、主人公の結構「ふわっと」した発想や印象を具現化できる。というのが「緻密なロボ」の描写を期待している読者にとっては、物足りないかもしれませんね。

 あえてあげるならば。というとここらへんでしょうか。

 少年の中にある「オトコ」であるのだから。とか、タマデに向ける視線とか。妙に甘酸っぱい感じがして良かったです。

 日曜の朝にやってほしい。

 亡念のザムドを思い出しました。

 ロボものってわけじゃないですけど。なんでこう思ったのかなぁ。

 とにかく少年が主人公というのも「成長」にかかる描写を大きく期待できる設定というのも活きた気がします。

「書き出し」で「誰のために、どんな話を、どんな楽しみを」という面で、完璧に満たした書き出しだと思っています。

 第二会場において、ジャンルとしての強みはないんですけど。順当に安定して、票を集める類の作品だと思います。

 面白かったです。忖度のない意見だなんて。何も心配する必要がない作品です。多分、ケチつけるのが難しいタイプの完成度の書き出しです。

 モリモリと続きをかいて、大々的に連載をお願いします。

 感想は以上です。



2-06 勇者でしかなかった女は、孤独な魔王と結ばれない(感想依頼あり)

タイトル感想

 宣言しちゃうんですか。だいたいどんな作品もそうですけど。勇者と魔王くっついちゃうのが現代のトレンドですよ。タイトルの意味を回収できる要素を期待しています。

あらすじ感想

 魔王と勇者というゲームライクな舞台設定の中で、ループものの悲恋をミックスしたんですね。あらすじの中で作品上の「読者に楽しんでもらおうとする部分」が明確です。要素を融合するのって、エンタメで大事な力です。彼女たちはどうして結ばれないのでしょうね。

本文感想(81/99)

主人公   :勇者(女)
主人公の能力:不明
世界観   :勇者や魔王とあるので、RPGライクな世界観。
異変・事件 :魔王と出会ったこと
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明(あらすじで、時を戻すことを示唆している)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):タイトルとあらすじでラブロマンスのジャンルであることを約束しつつも、そのラブロマンスは「悲劇」としてのテイストを持っている。ハッピーエンドに関しての約束はないので「悲劇」として割り切って楽しむタイプの話。

 ちょっと意外な読後感の作品でしたね。てっきりループものについての確定的な部分でのナラティブまでを示すと思っていた作品だったので、ここまで重々しいムードで押し込んでくるとは思っていませんでした。

 ハッピーエンドじゃないんでしょうね。

 勇者と魔王の視点を交互にする。そして、二人の両思いについての情報を提示しつつもうまくいかない。

 といった「ラブロマンス上の障壁」を設定することを優先した書き出しでした。

 おそらく、ヒロインが変わることになるんでしょうかね。彼女の環境やバックボーン自体への振る舞いが変わることが、ラブロマンス的な変化になるとか?

 とにかく、次の視点で「ループを繰り返してもうまくいかない理由」の情報開示になるんでしょうかね。

 興味深い書き出しでした。

 感想は以上です。

 感想依頼を受け付けたので、次の通り感想を追記します。

悩んでいたのですが追加の感想依頼することにしました
よろしくお願いします
第二会場 2-06 勇者でしかなかった女は(略)

依頼文より

 悩んでいらしたんですか。私は16回と20回に参加しましたが、見つけた感想依頼の受付分には全力で飛び込んでいました。どうにかして、多くの人からのフィードバックを得たいと思ったからです。とは、申していますが。いつもタイムラインに張り付くことができるわけでもありませんから。涙を飲んだこと一度や二度ではありません。

 ええ。よろしくお願いされました。

 感想について、質問や要望等がないので。好きに感想を書いていこうと思います。

 面白かったです。面白かったですが「ええ、ああ。そう切り込む?」という驚きもありました。

 魔王と勇者という「ロール」によって、物語が展開されることについて考えてみましょう。

 WEB上に存在するハイファンタジー世界が「ゲームライクRPG」を土台にして、展開されるようになったのも。コンテンツを楽しむ人達にとって「ファンタジー」という世界に触れる時は、ゲームコンテンツのそれの方が馴染みが深いというのがありそうです。

 そして、今回の「魔王」と「勇者」という「ドラクエRPGライク」な役割を根底にしつつ、ハイファンタジー世界が構築されることは。一つの「テンプレ」的要素として期待されています。

 勇者、武闘家の少女、僧侶の青年、戦士の男、旅の魔法使い(魔王)

 ドラクエRPGライクと思えば、メンバーは一人多いですが。仲間は多ければ多いほど良いんですよ。

 キャラクターの設置や設定からして「皆が共有できる文化的経験値」を舞台にしている作品です。

 その舞台を元に、悲恋を展開していく。あらすじを見るに「ループ」を繰り返して、悲恋を重ねていく。といった展開を「梗概的」な力で約束している向きのある作品でした。

 こういった「エンタメ」コンテンツとして提供していく時。どこを一番に「アピール」していくのか。といった時に、演出の優先度が決まっていくのだろう。と思っています。

 一回目の感想でもそうだったんですが。

 繰り返すループの中でも、どうあがいても結ばれない。結ばれない方が「世界は救われる」という無力感や、無情感を表現して、そこを引きにすると思っていました。

 読んでみたら「ヒーローとヒロイン」の視点を交互に展開する。という「女性向けラブロマンス」の演出方法で、序盤を構成していました。

「エンタメコンテンツに馴染みのある舞台設定で、悲恋のロミオとジュリエットやります! しかも、ループさせます!」

 上のような意味の作品なんですよね。ナラティブは三つ。

一つ目は、舞台設定
二つ目は、ロミオとジュリエット的悲恋
三つ目は、ループ

 本文では明確に示した情報は、舞台設定と悲恋の話題です。ループに関する情報は「ほんの少し」出ていました。

 だから世界を救った褒美に願った。

 時を戻し、再び魔王と向かい合いたい──。

 そうして何度も繰り返すうちに女は気づく。
 魔王の手を取っても取らなくても、自分たちは決して結ばれないのだと。

あらすじより

 あらすじには、時を戻すこと。何度も繰り返した。という言葉からループにかかる情報を提示しています。

 本文にそれがあるか? というと、ちょこっとだけあります。

 爪と剣、それが交わった瞬間、戦いが始まった。
 数えるのも嫌になるほど繰り返してきた、世界で最も激しく虚しい戦いが。

 ──今回もきっと、世界だけは救われる。

本文より

 このシーンって「何度目」なんでしょうね。中点で「世界だけは」と強調表現までされていました。ループの要素をそこに込めています。

 勇者と魔王、決して結ばれない二人の、一度目の決別の瞬間だった。

本文より

 ここもループの要素込みです。

 鵜の目鷹の目で文章を読めば「ループネタ」について、触れてるし、期待感も煽ろうとしていることは十分に分かる配慮があるんですが、読み飛ばす人は普通に読み飛ばします。気づかなくても困ることはないんですがね。

 私はこういった「ループもの」って、繰り返すことで試行錯誤の末に運命の改変を目指していく。といった「粘り強さ」が求められる物語構成だと思っています。

 おそらく「勇者」が繰り返したループの中でPDCAサイクル的なムーブをみせていくのが「ループもの」としての楽しみ方だと捉えていました。何度も繰り返して「失敗し続けました」というのが、冒頭にある所から。

「もしかして、勇者は不器用なのでは?」

 と不安にもなったりします。

 ループによって、どんな物語上の強みがあるのか。どのような解決の道を示すのか? というポジティブな情報ではないんですよね。

 ロミオとジュリエット的な「悲恋」を繰り返し続ける話なのです。

 この不器用な勇者が「ループを繰り返す中でどんな変化を示したのか?」という「物語が動き出す」シーンを読んでみたいなぁ。とは思った書き出しの情報量でした。

 しかし、上記の「智子が読みたい」と思う要素は「物語の構成としての嗜好の話」なので。ロミジュリの空気を大事にするというのであれば、この演出がベストなのだろうとは思います。

 他の作品の書き出しでもそうなんですが。

「セットアップにとどまっている」作品って結構多いです。物語が動き出す(物語の主役がそのスタンスを変えたり、成長のために変化する兆し)まで、描かれていれば。もっと強い引きとして作品の展開がされていくんじゃないか。と期待しました。

 とは。いろいろ書いていますが。

 この作品の根底にあるのは「ロミオとジュリエット」的な悲恋の話なので、書き出しのラストのシーンまでに「テンションが上がる」タイプの情報開示しちゃうと、ムードは損なう可能性も拭えません。

 そういった懸念もあって、この読み味の作品に落ち着いたんだろうかなぁ。と考えてもいます。

 ロミジュリとしての悲劇を好む人達には十分届く情報量であるし、そのために組まれた演出であることは汲み取れる書き出しでした。

 ターゲットに届いたと思います。こういう「届くべきターゲットに届いた作品」が、安定して票を集める。とは感じています。

 第二会場の全感想もありがとうございました
 たいへん参考になりました

依頼文より

 全感想へのコメントありがとうございます。100本組手でした。稽古です。勉強になる時間でした。

 参考になりましたか? なるかなぁ。ここらへんは「読者に与えたいムード」の比重の話です。

 私は「物語が動き出すところ」まで見たい読者ではあるんですが。「ロミジュリの空気で深呼吸したい」という読者ターゲットには十分届いた作品だと思います。

 個人的な願いとするならば。

 勇者のループに気づく聡明な魔王にマネジメントされて欲しいです。
 真っ赤な勇者に理路整然と道を示す魔王とのコンビが見たいです。

 さて。上記までは、依頼文のあった部分から回答していましたが。あとはフリーの部分で考えてみます。

 実はキャラクターが抱える似たようなテーマ性の作品が、同じ会場にあるんですよね。

2-13 島流しされた濡れ衣令嬢、絶海の孤島で赤竜と出会う。

 実はこの作品も「公爵令嬢であり王太子の婚約者」というロールからの開放を、成長の要素として見出す事ができる作品でした。

 御作については「勇者」が「勇者」というロールから脱却することが求められる「物語上の課題」なのではないか。と思っています。

 この物語って、頑なに「名前」が出てこないんですよ。

 名前って非常に重要なんですが。その名前を出さない。これって「舞台装置」としての「ドラクエライク」故のギミックとして機能している。と読者は「飲み込んでる」んですけど。

 もしもですよ。

 作中の時間が進んで「勇者」が「勇者」というロールから脱却した時に。

「名前」を呼ばれるシーンが出てくるとしたら、それは非常に象徴的なシーンになりそうだなぁ。と思っていました。

 ロールゆえに結ばれないなら、ロールを剥いでしまう。

「勇者」でなくなった「勇者」を魔王は何と呼ぶんでしょうね?

 ここの部分も「ラブロマンス」的にはエモーショナルな要素として活用できそうです。

 連載に向けて執筆お励みください。

 感想は以上です。


2-07 ヒロイン推しだったはずが、努力系悪役令嬢に一目惚れしてしまいました……

タイトル感想

 わからんですね。ヒロイン推しという言葉があることから。主人公が「作品が何かしらの作品世界」であるといったようなメタ的な視点を持っている可能性を感じました。ゲームライク作品でしょうか。悪役令嬢ってあるんですから、そういうことでしょうか。

あらすじ感想

 よくわからんかったですね。ヒロイン推しという考え方が「作中作。ゲームライク」なメタ的な視点だと捉えていたので、あらすじでどういう関係性のヒーローとヒロインが並んでいるのか。混乱しました。
 
 本文ではそこら辺が整理されてくるのでしょうか。

本文感想(82/99)

主人公   :僕(レイソル)
主人公の能力:乙女ゲーとしての記憶を持っていること
世界観   :乙女ゲーライク異世界転生
異変・事件 :悪役令嬢へ一目惚れ
問題・課題 :悪役令嬢はゲームのヒーローに一目惚れ
決意・覚悟 :不明(落とせよ! 攻めろよ! レイソル! どういう関わり方をしていくのかはまだわからないです)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):好きな女の子の恋を手助けしちゃう? とまあ、まだ方向性はわからないですけど。ラブロマンスの空気を感じました。

 とらドラじゃん。とらドラじゃないけど。とらドラじゃん。

 主人公のスタンスがまだわからないんですよね。

 女の子のためにヒーロー(ゲーム中の)と結びつける役目を買って出るとか。で、その活動の最中にヒロインが僕のこと好きになっちゃうとか?

 もう、そういうのでお願いします。

 知識を活用して、ヒロインを全力で助けるけど、報われない思いをし続ける作品になるんでしょうか。

 ナラティブがまだ見えてこない領域なので、非常に気になる舞台設定の作品でした。

 感想は以上です。


2-08 キジン師匠の裏祓い+α

タイトル感想

 わからん。わからんが。祓いとあるので、オカルティックな作品でしょうか。

あらすじ感想

 作品のムードや展開へのイメージはつきました。つきましたが。書き出しが難しい作品のように思います。主人公の師匠(メンター、教え導くもの)が登場します。この二人の関係性(師匠は主人公に何を与える存在なのか)を丁寧にかつスピーディに書き出しで表現できるのか。注目したい作品です。

本文感想(83/99)

主人公   :俺 (識人)
主人公の能力:不明(修行中とのこと。チャンネルを変える訓練の最中)
世界観   :現代ファンタジー。
異変・事件 :不明(出会いが、主人公の変化のシーンであろうかとは予測する)
問題・課題 :不明(あらすじから予想するに、師匠に連れられて、課題と対峙し、成長を繰り返す)
決意・覚悟 :不明(過去、主人公が出会った時。師匠の弟子になるときにでも、その決意や覚悟に類する何かは存在したと予想します)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):師匠に連れられて、ボコボコにされて、異能や怪異と対峙していく。という「ルーティン」めいた動きやイベントを繰り返すタイプの作品と予想しました。

 現状はまだ、物語が動いていない段階なので、今後「僕」がどのような荒事に巻き込まれるのか。どうして、彼は弟子入りしているのか。といった部分はまだ明らかになっていません。

 俗にいう。キャラクターを抜くという技法なんでしょうね。

 師匠と出会って、弟子になる。という「物語が動いたあと」のシーンから、書き出しを始めているので。こういった読後感となるのだと思います。

 異能バトルものとしてのムードは十分伝わっているので、このジャンルを好む人は選好のラインに乗った作品だと思います。

 現代ファンタジーで、異能バトルものとして他にジャンルに被りがないなら一定数の得票があると予想しています。

 感想は以上です。


2-09 グリモワールの愛し子

タイトル感想

 わからん。横文字は知らん。愛し子とあるので、幼いキャラクターが登場するんでしょうか。多分、ファンタジーだと思いたいんですが。グリモワールという言葉自体が「純粋なファンタジー世界に馴染むのか?」というのは疑問です。だから、案外「現代もの」かもしれませんね。

あらすじ感想

 現代ものでしたね。予想通りでした。しかし、何かしら「ジャンル」までは未知数です。少年が「非日常」に巻き込まれるタイプの物語体験であることは分かるんですが。その物語の「ムード」がよくわからない領域でした。
 どんな目的が与えられるのか。本文でイメージが左右される作品になりそうです。

本文感想(84/99)

主人公   :晶太
主人公の能力:グリモワールに選ばれる(迷惑な能力だとは思いますがね)
世界観   :現代ファンタジー。異能バトルものの世界観。
異変・事件 :グリモワールを渡される
問題・課題 :グリモワールを巡って、いろんなものが襲ってくる
決意・覚悟 :呪いの解除を決意する
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):異能バトルもの。契約という文言もあるように主従に関するものだろうか?

 親の不在まで触れているので、このあとの展開としては。痩せぎすのヒーローは、家にいつくんでしょうかね。

 巻き込まれる形式の物語って、どうしても文字数がかさみますよね。

 主人公の晶太についてですが。

 なぜこの本を手放さなければいけないのか。
 なぜ、読んではいけないのか。
 この本は何があっても、手放してはいけない。
 この本を、読まなければいけない。

本文より

 この唐突とまで言える感情の発露について。あとの文章でそれをカバーする様子はなかったんですが。この時すでに「呪われてるんじゃなかろうか」と思わせるような伏線や挙動でしたね。

 このあとはどういう展開になるのか。セントラルクエスチョン(主人公はグリモワールの呪いに対抗できるのか。生還できるのか?)は適切に提示できたので、書き出しとしての情報は十分であろうかと思います。

 あらすじからは予想していない展開だったので、驚きながら読んでいました。

 感想は以上です。


2-10 幼馴染のはだか、見えちゃうんですけど

タイトル感想

 幼馴染が男性なのか。女性なのか。でずいぶんとターゲット層が変わりそうです。網膜に刻みつけなさい。

あらすじ感想

 はい。男性向け作品です。視力が良くなって、服が透けちゃう。どういう状況から幼馴染の女の子とひとつ屋根の下で、服が透けちゃう生活が始まるのか? はい。エンタメ空間はそれが許されるのです。
 
 あらすじでは「物語の起こり」でしかないので、幼馴染の裸と同居生活のあとの「承」に至る部分まで読みたいです。

本文感想(85/99)

主人公   :新之助
主人公の能力:性的な興奮を覚えると対象の裸が透けて見える
世界観   :現代ファンタジー。ラッキースケベ的な世界観。男性向け。小物(スマホ等)の表記がないため、全世代に通じる水準で学生観を描いている。
異変・事件 :勉強を競っているライバルの櫻子さんへの性的興奮を覚える。あわせて特殊能力に気づく。
問題・課題 :その目薬への対処法が見いだせないまま。幼馴染桃子との同棲が開始。
決意・覚悟 :不明(主人公自身が何かしらの方向性をもって、考えている節はない)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):コメディ作品としての楽しみ提案。セットアップにかかる話。今後の同棲生活やライバルとの関係性などを「男性向け」ラブコメ作品としての楽しみ方が予想されます。

 ラブコメのセットアップでした。
 ラブコメのセットアップとしてみると、かなり駆け足な感じがしました。それは、桃子(幼馴染)のキャラクター性故なのか。どうなんでしょうね。

「もしかして、しんちゃんの目、着ている服がすけちゃって、女子のはだかが見えちゃったりするの? 天才おじいちゃんの目薬が効きすぎて、視力が強力になっちゃったとか」

本文より

 洞察力高すぎでしょ。さては目薬以外にも今まで似たような事件や事案が存在したのではないか。と勘ぐる位の洞察力です。

 桃子はラブコメ作品に必須とも言える、主人公に好意を寄せるヒロインの存在です。

 彼女のガードが硬ければ硬いほど、ラブコメ作品としての障壁は高まりそうです。

 どうなんだろう。主人公がその能力を発現し、二人っきりで過ごすとき。どんな態度を取るんだろうなぁ。

 やるのだとしたら、全年齢でできる範囲で挑戦して欲しいと思います。

 感想は以上です。


2-11 鬼神と、その妻 ~滅びゆく王国に忠義を尽くす英雄とその愛妻が非業の死を遂げるまで

タイトル感想

 なんかもう。悲劇ですか。タイトルで結末まで示してるので。ファンタジージャンルとして期待を持てた人はいるんじゃないでしょうか。どうやって死ぬんでしょうね。どういうコンフリクトが存在するのか。書き出しでそこまで展開できるでしょうか。

あらすじ感想

 ええ。なんか、タイトルからは予想していなかった方向性のあらすじですね。ここまで違う所をフルスイングされると、それはそれで気になる話です。しかし、作品を読む中で「どんな感情を約束されるのか」という部分までは見えてこないあらすじでした。
 クラーラがヒロインとして、愛妻扱いされるんでしょうかね。

本文感想(86/99)

主人公   :私(クラーラ)
主人公の能力:不明(お針子職人)
世界観   :異世界恋愛の世界観
異変・事件 :新婦によって強権的にエルゼベトの身代わりをさせられる
問題・課題 :不明(クラーラの視点故に、情報や語りに制限がある)
決意・覚悟 :不明(巻き込まれ形式だから、まだ見えない段階です)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):のっけから。かわいそうなスタートなので、これから徐々に良くなっていく。素敵なヒーローの姿が見えてくる。もしくは、クラーラとの対峙によってヒーローが変化していく。などの「ラブロマンス」の基本形を期待しました。

 いやあ。エルゼベドは何か要所で戻ってきそうですね。最後の最後に主人公とまた入れ替わって、代わりに死ぬとか? いや、ヘイト役なんでしょうかね。

 にしては、ちょっと人情味がありそうな行動力です。

 ああいった露骨な伏線は引きにもなりますよね。あとはそうだな。弟子が戻ってこない。とかで、師匠が屋敷にやって来るとか。なんか、色々楽しそうなイベントが盛り沢山の作品になりそうです。

 タイトルを回収しないで欲しい。と切に願ってしまった作品ですね。

 感想は以上です。


2-12 ネフ・デ・フゥーの船頭(感想依頼あり)

タイトル感想

 わからん。川の話題なのか。人名からしてファンタジーっぽさがありますよね。

あらすじ感想

 精神的に疲弊したタイプの主人公の独白みたいになりそうですね。信用できない語り手としてのそれなのかも。

本文感想(87/99)

主人公   :僕
主人公の能力:狂人
世界観   :現代ファンタジー
異変・事件 :水が黒く見える様になる
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):水が流れるように展開しつづけるストーリーです。文芸からホラー、ホラーからコメディ、コメディからファンタジーとシーンの転調とともにジャンルが動きまくる作品でした。10万文字規模の長編小説としての物語ではない気がします。短編なのだろうか。

 不思議な読み味の作品でした。読み物として楽しむ分には十分です。エンタメ作品として連載を続けるもの。とは違うように感じます。

 でも、書き出しで見せた魅力を損なわず。飽きさせずに10万文字書き続けられるなら書いて欲しいし。私はそれを読んでみたいです。

 狂人として船に乗り込む。という「物語」が動き出すシーンまで行きました。特別な世界をどのように描いていくのか。彼がなにか「物語」の中に突入するのか。二話目以降でムードが確定しそうな作品です。

 多分ですけど。僕と船頭は同一人物じゃないですかね。違うのだろうか。

 感想は以上です。

 感想依頼を受け付けたので、次の通り感想を追記します。

 あい。よろしくお願いされました。

 特に質問や要望等もないので、適当に感想残していこうと思います。

「面白いと感じたなら、面白かった理由を。いまいちならいまいちだと思った理由を」考えてみます。再現性のある技術として、どのように智子なりに、習得できる技として言語化していきたいと思います。

 感想が難しい作品です。
 面白いのは面白いんですが。
「物語として今後どういう約束をしているのか?」という部分としては見えづらいので、不安になる作品です。
 不安になる作品のために「時間を投資」したくない人が世の中大勢ですから。もっと、明らかに読み続ける理由になる情報が欲しかったです。

 さて。面白かった理由について。

 二つの要素が噛み合った作品です。
 物語のセットアップが一つ。
 語り手としての文体が噛み合ったことが二つ。

 物語のセットアップについて

 構成だけ眺めると。

「トラックに跳ねられて異世界転生」と全く一緒です。

 日常の世界から特別の世界へ。
 という「当たり前の物語構成」としての安定感のあるセットアップを土台にして「一人称」としての「僕」による語り手で、物語の導入が始まりました。

 日常の世界で描かれるものというのは。色々あるんでしょうけど。

「特別の世界」への示唆に満ちたものであったり、主人公がこれから向き合うことになる課題であったりとか、日常に何かの不満があって、それらへの解決の糸口になるようなストレスであったりとか。

「エンタメ作品」の常道。基本となるセットアップの構成でありつつも、主人公の「僕」が直接的に抱えている課題「狂人」としてのそれに関するフックがありません。

 私が捉えている「狂人」のイメージが「生得的な性質のそれ」として思っていたんですが。「僕」は別に、日常生活において何かしらの不足や不満を感じている様子ではなくて。
 どっちかというと。物語に「巻き込まれている」形式の「受動的なキャラクター」です。

「何かに絡まれて、精神的な不調をきたし、投身自殺を図る。そして、メインの物語舞台(ネフ・デ・フゥーの船頭)にやってくる」

 紛れもなく被害者じゃないですか。不憫ではありますな。

 物語の可能性の話をします。

 どんな物語も「筆が入る前」は傑作の可能性があります。
 白紙の原稿用紙は無限の可能性がありますよ。
 だって、何も書かれていませんから。
 ベストセラーになる一文かもしれません。

 コンテンツの作成のために、何かの手を付けること。決定することは。「無限の可能性を有限の可能性に縮小していく」という作業の繰り返しです。

 御作はまだ「特別の世界」に足を踏み入れた段階で引きとしているので。

「どんな方向性の作品にもなり得る」という「可能性が広い」作品になっています。

 この間口の広さは「長所にも短所にも」なりうる要素です。

 書き出し祭りのような「企画」とか、レギュレーションがある中で並ぶと。

「このあと、どんなテーマを設定しているのか? 葛藤を呼び起こすのか? セントラルクエスチョンの不在(物語の目的等)はどういう意図があるのか?」

 という部分で、並べるといくらか見劣りをしてしまう印象はあります。

 しかし。投身自殺のホットスタートのシーンから書き出しが始まるというのも「エンタメ的」要素のある構成なので、「この作者は私達を楽しませようとしている」という意欲的な態度も感じるので。今後、面白くしてくれるんやろうなぁ。という信頼めいた期待があったりもするのです。

語り手としての文体が噛み合ったことについて

 基本的に文章の巧拙を気にするタイプではないんですが。おそらく、ここの部分も触れてみないと「面白み」の分解ができないと思うので。触れてみます。

 多分。わざとなんですけど。悪文めいた書き出しを始めてますよね。

テレビで見た、偉い学者が言っていた。ネフ・デ・フゥーを見たことがあるかと言っていた。あの泥舟を見たことがあるかと言っていた。

本文より

 確認しづらいので、改行します。

 テレビで見た、偉い学者が言っていた
 ネフ・デ・フゥーを見たことがあるかと言っていた
 あの泥舟を見たことがあるかと言っていた

 悪文も悪文。好ましくない表現。と言われる表現です。しかし、わざとこの表現で、色をつけてきました。注目しちゃうリズムがありますよね。

僕は狂った人間側なのだから。高度5mからの自由落下が終了しその位置エネルギーの威力を知る寸前、僕はそう考えてしまった考えてしまったのだ。 

本文より

 ここにもあった。

 このシーンはホットスタート形式であり、投身自殺に至るまでの興味を読者に与えるために描かれています。

 めっちゃエンタメ的な作りなので。ムードや狙いとして「おお。楽しませてくれるんだね! 楽しもう」という気持ちになりました。こういうの大事です。

 あわせて、緩急の話題として。船頭からの長広舌があります。

「んー。わるさがありあり。境界を越えたにもかかわらず、価値観を保持...我々の泥舟に乗船するに値するだけの価値観の異常性すなわち世界に対する真理の肯定方法及び神聖さが見られることに期待と喜びを見出すべきかそれとも否定と嫌悪を見せるべきか私にはわからない。現在の言動から察するに知能の発達自体も通常よりも遅れている気がするがこれは突然の異常事態の発生に対する防衛反応。平常状態と考えることは酷だろう。総じて!」

本文より

 彼が狂人たることを「船頭」に認められるまでの独り言のような文言です。口に出して読んで見れば分かるんですが。リズムがあって楽しいです。大事なのは一文を一息で読むように読み上げる。

 当たり前の話なのですが。
「僕」とは違うリズムと視点で言葉を発しているキャラクターなので、緩急があります。こういった細かい部分で読むのを楽しませてくれるネタがちょこちょこ挟み込まれています。

 日常に関しては文芸的であったり、特別な世界に迷い込んだあとはコミカルな表現やムードに転じてみたりと、読んで楽しい。文字の並びがあります。

 そして、それを許すのが「一人称」故の制限ある文体だから読めるというのもあります。

 セットアップの部分でも言及していた「僕」の「日常の中で感じている不満」等の描写はない。特別な世界への誘引から始まるストレスが続いている。よって、彼は「受動的な態度」のキャラクターである。何かしらのマイナスな要素を提示もしていないので、物語の方向性が見えてこない。

 これは「一人称」であるから、許容できるスタイルでもあると感じています。

 だって、一人称なのに、いろんなこと知っててペラペラ語ってると不自然ですもんね。

「セットアップ上の可能性の広さ」と「一人称ゆえの情報量の制限」の二つが絡んで「面白そう」と、感じる読後感の作品となりました。

 まとめますよ。

 御作のセットアップは序盤も序盤。異世界転生(特別な世界へ降り立って)して、誰かと挨拶した所で終わりです。面白みもなにも「どんな話にもなりうる」ので、読者が「こうあって欲しいなぁ」と予想する間口が広いです。その広さは一長一短であり、人によって評価が割れます。だって、どういう話になるのかわからないのに付き合えない。となるからです。
 この不安なセットアップに付き合う点で見た時。
 狂人と称される主人公の「僕」の語りによって、展開される物語であるため、一定の不便や、制限、言葉や節回しによって「狂人」としてのステータスやパラメーターを表していくことが期待された作品。

 この部分を「許容した」人が、次のページをめくり続けます。

 読み物としてはめちゃんこ面白いので、次のページあったら読むんですけどね。二話目、三話目までに「物語の型」が見えてこなかったら、読むのを辛くなる作品かもしれません。

 現状はまだ「起こり」しかない段階です。だけど、面白そうには見えます。

 連載されるのだとしたら、期待する要素としては「あらすじ」をもうちょっと情報量増やして、特別な世界に行き着いた際にどのような魅力的な物語があるのか。ジャンルをある程度固めておいて欲しいなぁ。と思います。

 受動的キャラクターだから、テーマが見えてこなかったとしても「許容」してしまうというムードはありますが。二話目、三話目になっても「テーマ」や「セントラルクエスチョン」が見えてこないままであったら、期待感を維持できない作品になりそうです。

 どうでしょうか。面白かった部分と。イマイチだった部分について触れてみました。

 感想は以上です。




2-13 島流しされた濡れ衣令嬢、絶海の孤島で赤竜と出会う。(感想依頼あり)

タイトル感想

 良いタイトルですね。情報量があります。ファンタジー作品であり、成り上がるんでしょうか。赤竜がどのような活躍をするのかはまだ未知数なので、それが分かるあらすじと本文なのかもですね。

あらすじ感想

 あまり復讐心を抱かないタイプの女性像です。女性向け作品に多いキャラクター像のように捉えています。女性向けのイメージです。赤竜のいる孤島での生活がどの様になるのか。そのムードまで示すのが本文になるんでしょうか。

本文感想(88/99)

主人公   :アミュレット・ノーズ
主人公の能力:魔法に長けている家系
世界観   :異世界ハイファンタジー。異世界恋愛のような世界観やセットアップに近い。新天地で、新しい生活基盤を持つといったスタイルから、少々男性向け作品のきらいがある。
異変・事件 :王家の秘術書の盗難未遂事件の容疑者として追放される。
問題・課題 :人が住み着いていない絶海の孤島は危険がいっぱい!
決意・覚悟 :追放を機に「自分らしく生きてみる」ことを目標とした。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):絶海の孤島で、生活を送る。スローライフ的なジャンルの楽しみ方を「あらすじ」からは予想しました。

 進行は遅いですが。着実な書き出しだとは思いました。

 ヒーローの思慮の浅さから、ヒロインは絶海の孤島へ追放処分となります。
 この動き自体は「異世界恋愛の婚約破棄」ものと似たような構成ではありますし。追放された先でも「自身の力で切り開く」という形ではなくて「強者の庇護を得る」というのも「女性向け読者」としての性質がありますよね。

 女性向け読者のヒロイン達は「自身に力を蓄え、発言力を持って、権力で相手をねじ伏せる」という形式ではなく。

「権威者を味方につけ、自分の発言力を高める」

 といった形をカタルシスとする物語形式が多い傾向にあります。

 構成だけを見るならば「赤竜」という圧倒的強者に、認められ、庇護を受ける。という部分は「女性向け」作品としてのそれに近いのでしょう。

「自分らしく生きる」というのがちょっとふわっとしてる感じがあるんですが。自分らしく生きた結果、どういう物語が展開される様になるんでしょうね。
 今後の「判断」をしていくうえで「自分らしさ」を見つけていく。というのであれば、絶海の孤島では「どのような自分らしさ」が発揮されていくのか。まだ、明確な示唆がない段階での引きとなったのは少々もったいなかったように感じました。

 どういう作品になるんでしょうね。

 感想は以上です。

 感想依頼を受け付けたので、次の通り感想を追記します。

 おお。依頼文がみっちり。上から順に考えてみますね。

第二会場の感想ありがとうございました!
2-13「島流しされた濡れ衣令嬢、絶海の孤島で赤竜と出会う。」の者です。
不躾ながら、本作についてぜひ掘り下げていただきたい部分がございまして、主人公であるアミュレットの人物像への理解や読者の共感性について筆者は強い好奇心があります。

依頼文より

 丁寧なお礼のコメントありがとうございます。

 読者がどの程度汲み取っているのか。というのは非常に気になる所ですよね。お気持ちわかります。私も前回の参加(第20回)のときには、積極的に感想依頼を出して、男性および女性読者の感触を入念にチェックしていました。

 指摘していただいた自分らしく生きるとは?にも通づるところがあるのですが、アミュレットの今後の成長に対しての期待感などを読者は感じられたのか?について興味があるわけです。
 複雑なキャラなのではないか、感情移入は難しいのではないか、という思いがありながら分かりやすくなるように描写したつもりではあり、その上で主人公アミュレットの見え方(そのキャラクター性)について、一方的に言語化がお上手な方だとお見受けする智子様に深掘りいただけますと幸いです。

依頼文より

 どうしたものか。一回目の感想では触れていなかった部分まで、触れてみましょうか。推測に推測の段階ではあるんですが。

 現状提示されている情報を元に、読者がどのように期待感を持てるのか。基本的な要素として考えてみましょうか。

 質問にもあるように。基本的にエンタメの物語は「何かしらの成長」を期待しながら、読んでいくものだったりします。成長というとすごくポジティブに聞こえてきますけど。学びであったり、気付きであったり、痛みの伴う教訓であったりと、ジャンルや与えたい読後感によって様々です。

 上から順番に考えてみましょう。

「アミュレットの今後の成長に対しての期待感などを読者は感じられたのか?」について

 方向性を感じることはできた。とは思います。

 思いますが。明確な具体性と関連性を持っては伝わっていないんじゃないかなぁ。

「自分らしく生きる」という「自身を開放すること」という、思考や行動原理のスイッチはできたんですが。その以前の生活に「抑圧的」な「ストレッサー」に関する描写だったり「抑圧的」な環境に対しての「疑問」なども持たないまま序盤が展開されています。

 この情報量だけを持ってみるならば「読者への誘導」は薄いです。

 しかし、これは「私」というアミュレットの一人称視点であるため。彼女が気づきを持てないものについては、描写ができません。そういう制約のある視点の語り口であるため。この作品が持たせようとしている「自分らしさ」というテーマや「成長要素」について「私」が切り込んでいくのは「不自然」になってしまうという視点ゆえの制限があります。

 一つ、客観視している。読者として「智子」が「私――アミュレット」について、言及してみましょう。あくまでも次の読みは「書き出しという序文には作中のテーマにつながることしか書いていない」という前提と信頼のもとに推測していくものです。

 全然的外れだったら、それはそれで、指さしてゲラゲラ笑っていてください。

「自分らしさ」という考え、御作での位置取りについて

 前提として、智子は「非常に保守的な思想を持つ人物」です。
 男らしさ。
 女らしさ。
 といったものについての恩恵や、不利益といったものを好んでいます。

 それはどういうことかというと、私達のご先祖が培ってきた「最適化された生き方のモデル」だからです。

 男が男らしく。女が女らしく。というのは「少ないカロリーで効率的に生きられる方法」だからです。
 不器用な人間がはびこっているのが世の中ですから。生き方のモデルがないと、どうやって生きるべきか。どう振る舞うべきか。
 どのような行動の基準を持つべきか。わからなくなってしまいます。

 お姉ちゃんなんだから。
 お兄ちゃんなんだから。
 男でしょ?
 女のくせに。

 こういった「価値基準」を私達は幼い頃から培ってきますし、その価値や判断の基準のなかに「性的な区分け」、ジェンダーの思考は切っても切り離せません。

 昨今はそういった「ジェンダー」の垣根を壊そうとしているようですが。出産にかかる男女の性差を是正できない限り、完全な解決はまだできない領域なので、ジェンダーに則ったほうがうまくいく部分が多かろうと思っております。

 しかし。昨今の社会情勢から分かるように。

「自分らしく生きる」という魔法の言葉を、現代人は浴びるように受け取っています。しかし、本当に「自分が望むままに自分が望むように生きてみた」時に、その思考や嗜好の中に「ジェンダー」を排除することは非常に難しいです。

 男性と女性が好む物語の形式の差から分かるように「男性と女性は同権であることに疑いはないが、同質ではない」ということは理解できると思います。

 物語上のセットアップを見てみましょう。

 彼女は「ユリウス王太子殿下の婚約者となる」というロールからすると、女性の望む結婚像です。権威者と結ばれる。これは女性向け読者の期待する展開です。しかし、その王太子(強者)から追放された彼女は次にどんな展開になるのか? 赤竜(さらなる強者)の庇護を得るのです。

 とっても「女性らしい」カタルシスの取得方法です。

 彼女は何か努力をして、手に入れたわけではありません。

 身を寄せる相手が変わっただけです。

 しかし、女性向け作品の「ヒーロー」達は常に「男性らしさ」と「女性たちの自立的な思想を尊重する」リベラルな態度を崩さない人たちが「現代の女性読者達」に求められています。

 基本的に「マジョリティの女性読者達が求めている思想」はバチバチの保守的な思想なんです。
 だけど「女性の能力を活用せよ」という社会的な要請を満たしつつも「女性としての幸せを獲得する」という「現代の女性らしさ」のためにキャラクター達が存在している節はあります。

 前置きが長くなりましたが。

「自分らしさ」という設定を「文字通り」解釈するならば次の通りです。

「私―アミュレット―は王太子の婚約者である公爵の貴族令嬢として求められるロールのすべてを拒否する」

 ということです。じゃあ、彼女は何の役割を与えられていましたか?

 公爵家の貴族令嬢アミュレット・ノーズは代々魔法に長けている家系に生まれ、その生涯を王太子に嫁ぐため捧げてきた。

あらすじの一文目

 継嗣相続を元にし、出生主義を基本とした貴族社会において。女性たちの「求められる役割」は子どもを産むことです。

 実は似たような期待感を、現代の女性たちは受けていますし、それと「一体感」(アイデンティフィケイション)を伴う設定のために、ハイソサエティな貴族令嬢かつ出生主義的世界観の作品が好まれていますね。

 これは外的に強く期待される要素であり、アミュレットはその「期待」に応えることに何の疑問も持っていません。

 愚かな王太子の勘違いによって、追放をされたとしても。彼女は恨み言の一つも言いません。

 これは信用を勝ち取れなかった私の落ち度。私はこの運命を受け入れている。身の潔白を主張することで一度は公の場で私を疑った王太子殿下の顔に泥を塗ってしまうのであれば、私はこのまま身を委ねることを選ぶ。問題はない。王太子殿下であれば必ず真相に辿り着くだろうし、いずれ王太子殿下があの処刑は誤りであったとお気付きになったときに少しでも私のことを思ってくだされば、それで。
 この地に辿り着いた時点で、アミュレット・ノーズの役割は終わったのだ。

本文より

 ここです。彼女は恨みの一つもこぼしていない。そして、彼女は「自覚」しています。役割と書いているんです。

 彼女はあくまでも「公爵家の貴族令嬢であり、王太子の婚約者」という「ロール」を念頭に過ごしています。

 そのロールに徹した結果。彼女は「愚かな判断」をしたであろう「ざまぁ」対象の王子への配慮を無くさないままです。

 彼女がロールに徹するため、彼女は怒りや、失望を封じ込めています。

 物語の今後の話ですが。
 彼女は「公爵の貴族令嬢および婚約者」というロールを捨てた結果。

「怒りや失望を含めた感情の発露」を手に入れるという成長を予想しています。

 彼女の感情の多くはロールによって、制御されていた。そのロールを剥ぎ取ったあとの「彼女」が今後の生活の中で、表現されていくことになるのではないでしょうか?

「複雑なキャラなのではないか、感情移入は難しいのではないか」という懸念について

 お見込みの通り。難しいと思います。それは「アミュレット」の一人称視点ゆえに「自分の判断基準、ロールへの自嘲的な表現」がそぐわないからです。

 だって、自分で「自覚的」にロールからの開放と、怒りや失望、感情を抑制する必要がないことを「説明」すると、小説や物語としての演出上は好ましくないからです。

 もしも、もうちょっと「テーマ」について踏み込むのであれば、その「ロールに徹した公爵令嬢」を批判する王子様の視線や態度とかあれば、また良いかもですね。

 実際ね。個人的にはここのシーンは結構意味深だったかもなぁ。とは思っています。

「アミュレット。君の愛は本物だと信じていた。なのに君の見ていたものは、僕ではなく王家に伝わる秘術書だったとはね」
「……私の愛は本物でございます。殿下」
「いいや、信じられない」

本文より

 アミュレットの言葉を信じられない王太子とのやり取りですが。二人の間に「信頼関係」が存在しないということを逆説的にあらわしているんですよね。
 本当に、アミュレットは、心の底から王太子への信頼と愛情を持っていたのだとしても。王太子はそれを「確信」できない関係だったのでしょう。
 多少なりとも、情が通っている。信頼関係が成り立っているならば、王子はここまで強く断罪できるものではありません。

 アミュレットはどうして、王子の信頼を勝ち取ることができなかったんでしょうね?

 アミュレットが何かの問題を抱えていたようにも捉えています。それは、彼女が「王太子個人」ではなく「公爵令嬢であり、王太子の婚約者」というロールで、婚約者と接してこれなかった。
 ということの裏返しであるとも読んでいました。

まとめおよび今後の展開への期待、懸念

 アミュレットは「役割」があって初めて、アイデンティティを保っていた少女であり、そのロールから開放された状況。
 まさに「生まれ変わった」シーンであります。

 生まれ変わった時に「公爵令嬢」として判断するのではなくて「生存本能」に従った「新たな価値基準」を手に入れようとすること自体が成長としてのモデルになります。

 さらには、今後の展開についての期待としては。庇護者が「赤竜」という強者であるため「女性読者のためのカタルシス」としての期待は裏切らない必要があります。異類婚姻譚としての側面があるスローライフ的な物語が期待されるのかもしれません。

 追放ものとして期待されるシーンは、あとから王太子が迎えに来ることになると思います。しかし、彼女はすでに「ロール」を剥ぎ取り「自分らしさ」(まだ、作中で彼女はそれを見つけていませんが)の発揮(怒りとか失望とかかなぁ)によって、王太子への対立や批難をぶつけるなど。変化を期待しています。

 懸念について

「自分らしさ」というテーマを描いていく時に「社会」の中に身を投じていないと「自分らしさ」というのを見つけていくことは困難です。

 絶海の孤島において、社会から隔絶された状態で「自分らしさ」をどのように見つけていくのか。それは想像し辛いセットアップでした。それをどのように打破するのか。は興味深い部分です。

可能であれば、で構いません。 ご迷惑をおかけします。何卒よろしくお願いします🙇

依頼文より

 どうでしょうか。可能な限り、考えて出力してみました。

 実際。この「自分らしさ」というものを「本当のリベラル的な結論」に寄せる必要はありません。

「マジョリティの女性読者の皆さんが望む思想」に寄せていくことが「エンタメ作品」としては大事です。

 女性向け作品のヒーロー達は「ヒロインが女だから惚れている」という表現は絶対にしません。「彼女が能力が高く、魅力的である」という「社会が望む現代女性のスタイル」に寄せながら、ヒーロー達の嗜好は定まります。

 そして「自分らしさ」を追求した結果「女性らしさ」から脱却することは「現代フェミニズム」の価値観ですが。読者達はそんなことを望んでいません。女性としての幸せも体現しつつ、彼女の能力によって、幸せが切り開かれる(強者による庇護を得る)ことを望んでいます。

 このバランス感覚を大事にしながら、書いていけば概ね作品の期待からは外れないと思います。

 感想は以上です。執筆お励みください。



2-14 虐げられた王の生まれ変わりと白銀の騎士(感想依頼あり)

タイトル感想

 転生ものでしょうか。異世界内転生ってやつかも。

あらすじ感想

 わからんですね。本文が始まったまま。と言われても違和感がないあらすじです。まだ、目的が不在なので。ジャンルは不明の作品です。ターゲットも見えてこない。描き方の情報量が「ハイファン」としてのそれっぽさがありました。

本文感想(89/99)

 これは誰を主人公とするのか。ちょっと難しいですが。鈴木ユウタを主人公と見てみます。

主人公   :鈴木ユウタ
主人公の能力:不明
世界観   :異世界転生(国王→日本男児)から異世界転移
異変・事件 :異世界からタリダス登場
問題・課題 :タリダスによって拉致されて、異世界へ
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):主人公が異世界で、望まれない王として立っていく話? になりそうですが。まだよくわかんないですね。不穏さが先立っている。

 面白そうでした。私は「主人公の課題が優先的に描かれている」という書き出しが好きなので、好みの問題です。

 タリダスねぇ。タリダスが厄介だと思うんですよね。多分、王になることを「彼だけ」が望んでいて、主人公ですらも「現状」から見ると「王になることを望んでいる」かどうかも不明。

 前途多難。主人公がどのように決意するのか。も見どころであろうし。タリダスがもうすでにいない「王」への「高すぎる期待」と「哀れな14歳の少年」とのギャップにどう悩むのかも期待。

 あらすじでもっと「帰還後」の展開に触れていたら、安心感がありそうです。現状はまだ「作品の展開」が全く読めない領域だからです。

 感想は以上です。

 感想依頼を受け付けたので、次の通り感想を追記します。

 まだ間に合うんですよね。感想依頼が来なくなって、暇を持て余した智子は書き出し祭りの作者あての記事を作り始めようという位には余裕があります。

 感想の内容について、特に質問や要望等もないので。適当感想を追加してみようと思います。

 ざっくり言います。

 書き出し祭りにはジンクスがあります。智子なりのジンクスです。

「智子好みの作品は書き出し祭りで余り評価を得られない」という悲しいジンクスがあります。

 あなたの作品はおそらくですが、書き出し祭りで爆発的に評価を得ることはないと思います。

 いくつか理由があるんですが。その最たる要因の一つとして。次があります。

 智子好みの作品だから……

 私好みの展開やセットアップに「近い」作品であるからです。

 智子は「内的な課題重視偏重のエンタメ作品」が好きです。

 読んでて楽しいのは「外的な課題と内的な課題が両輪として回っているエンタメ作品」ではあるんですが。好みとしては「内的な課題多め」の作品だったりはします。

 ジャンルのターゲット層によってはこれらの「比重」に傾向があるものと思っています。

 それでは、あなたの作品のジャンルやターゲットはどこなのか?

 異世界転移のエンタメ読者です。

 日常の世界に不満や、不安を持っている主人公が、メンターの導きにより新しい世界へ身を投じる。
 身を投じたあとの冒険や、それに伴う試練や課題の突破によって、主人公は成長し、力を得る。
 その力は「日常の世界」において、抱いていたストレスを解消しうるもの。としての関連性が期待されます。

 似たような構成であれば。他の会場でもありました。

3-13 【略名は本王女で】本当の貴方は王女様ですと言われたので、別の世界に行ってきます!

 ご覧になったか。わかりませんが。この作品も「日常の世界」においての「何者でもない自分」ということへのストレスを開放する存在として「特別の世界」という舞台設定があります。

 異世界というのは基本的に「主人公の課題」のために存在しているむきがあって、そこで待ち受ける試練等が「物語」となっていきます。

 御作も「舞台装置」としての異世界という面でみたら、全く同じ構成で。本質的にジャンルとしての「読者層」は似通っています。
 対象読者が女性向けと嗜好されてるかどうかの違いはありますが。

「異世界転移を楽しめる」という読者層です。
 異世界転移を読むのだ。という読者であれば、楽しめるものであります。

 物語のメインの舞台となる「異世界転移」を楽しむ人達が好む「テンション」ではないよな。とは思います。

 智子のように「内的な課題」大好き。ドロドロのファンタジー期待。としている読者には届いておりますがね。

 次にもう一点、ネックとなりそうな部分を述べます。

 タイトルとあらすじから本文に導入したあとに、ジャンルのスイッチがある

「書き出し本文の中盤まで」読んだら、作品のジャンルが確定した。という話なのです。

 タイトルとあらすじを見てみましょう。

2-14 虐げられた王の生まれ変わりと白銀の騎士
十四年前、国王アルローはその死に際に、「私を探せ」と言い残す。
国一丸となり、王の生まれ変わりを探すが見つからず、月日は過ぎていく。
王アルローの子の治世は穏やかで、人々はアルローの生まれ変わりを探す事を諦めようとしていた。
ただ一人を除いては……。

依頼文より

 もう、この文言を読んで。

「現代日本において、ネグレクト状態の少年が異世界人からの介入によって救われるないし、異世界に連れていかれる話」

 とは思わんじゃないですか。

 どっちかというと。ハイファンタジー世界観で、ハイファンタジーの世界の中で完結する物語。忠節のある誰かが王を探すための物語と期待していました。

 この期待をしていたら、どんな読み手がやってくるか?

「重厚なハイファンタジー世界での権力闘争を見せてくれるんだな!」

 とウキウキしてやってきて、いきなり異世界転移してご覧なさい。

「ああ、そっちのジャンルでしたか。ごめんなさい」

 となる読者もいくらかいるんだろうな。とは予想しました。

 重厚なファンタジーだよぉ。と見せておいて「実はみんなが大好きな異世界転移だぞ! 主人公はやんごとなき身分の王様の生まれ変わりだったんだぞ!」ってなるんです。

 重厚なハイファンタジーを読みたい。という「小さな間口」から「大きな間口」へと急に切り替わっているので、そもそもタイトルとあらすじで興味を持った人達の中で「絞り」をいれた作品でした。

 あらすじでばつっと「これは異世界転移でございます! 主人公はタリダスとユウタ! 主従ものだぞ! みんな楽しんでくれよ!」と堂々と宣言してしまっていい作品だとは思います。

 だって、あなたの作品には「ハイファンタジー世界やそこで起きるであろう葛藤や伏線」についての描写を仕込む巧みさもありますし、日常の世界でストレスに苛まれている主人公の現況を描写する力もあります。

 あらすじにセットアップにかかる情報を恐れずに仕込んで、先の展開にかかる「課題」まで含めてアピールしたとしても、作品の魅力や引きを損なうことにはならなかったんじゃないかなぁ。

 とは思っています。

 さて。別のこと考えてみましょうか。

 御作の設定する内的な課題について

 生まれ変わった王様。ユウタに迫っていた「危機」を見てみましょう。複数ありましたね。

 物心ついた時から、彼は両親やその親戚から嫌われていた。周りと違う容姿、黒髪と黒目の周りに比べ自身は金色の髪に緑色の瞳の容姿だった。そんな中、優しくしてくれたおじさんやおばさんがいて、可愛いねとお菓子をくれたりした。しかし、数日後、彼は絶望を味わうことになった。
 髪を触られ、体を触られ、キスを強要されたり。
 怖くなって叫んだら殴られた。そして他の親戚に言ったら殺すと脅された。

本文より引用

 いつだって性的な被害というのは「抗うことが困難な人たち」を相手に発生するものです。今回のユウタもそれと同じ構成ですよね。こういった「性的な被害」によるストレスを彼は感じています。

 大人に対して不信感を持ち、距離を持つようになったことも逆に彼を守ったかもしれない。

本文より引用

 こういったストレス環境にあるなか。彼は「大人に対して不信感を持つ」という習性を持ちました。この性質自体は、今後「タリダス」というメンターヒーローとの交流の中で、ユウタを怯えさせることになるかもしれませんね。

「どれどれ」

 男がユウタのズボンに触れ、脱がせようとした。
 
「やめて!嫌だ!」

 十四歳の彼は十分な栄養が足りていないせいか、まだ声変わりもしていない。
 ユウタの甲高い悲鳴は、男の嗜虐心を刺激したようだ。おかしそうに笑いながら、ズボンの留め金に手をかけ、かちりと外して一気に引き下ろした。

本文より

 タリダスが主人公に介入してくる前のシーンですが。主人公に与えられている「ストレス」に関連する「性的虐待」のシーンですね。そして、それに介入するタリダスがこのあと描かれます。

 甲冑の兜が動く。ユウタは睨まれた気がして、小さな悲鳴をあげた。

「貴様は!我が主になんてことを!」

 甲冑が発した言葉の意味を、ユウタも男も理解できなかった。

本文より引用

 この激昂に関して、どのように捉えるか。どのように見てみるか。という部分で人によるとは思うんですが。

 こういったイベントというのは「タリダス」自身にも相似の経験があり、人並み以上に敏感な性質があるのではないか。と予想しています。

 タリダスに関して気になる情報がありました。

 十四歳で騎士団に入団したタリダスは、当初騎士団副団長の小姓をしていたが、ある日副団長に怪我を負わせた。理由は語られず、その後行き先を失った彼がアルローの小姓に命じられる。

本文より

 かなり序盤に描写されてる。この事件自体が「ユウタ」とのストレスとの「共通点」として得られる形になるんじゃないでしょうかね。

「性的な虐待。性的なハラスメントを受けていた若きタリダスを救ったのは王」であった。

「生まれ変わった王が虐げられている。そして、騎士団長として力のあるタリダスが今度は生まれ変わった王の回復(大人たちへの不信感、性的なハラスメントを起因とするストレス)のためにタリダスが尽力する」

 といった。ストーリ上の示唆が見受けられる。と予感していました。

 これって非常に重いテーマなんですけど。書き出しの「イベント」のなかに、今後の展開(精神的な課題)に関しての情報が混じっていることは「めちゃんこ智子好み」の作品でした。

 だけど。

 ファストな展開を望むエンタメ読者が世の中は大勢なので、余り受け入れられない構成演出だとは思っています。

 どうでしょうか。特別に質問や要望がなかったので。好きに感想を書きました。

 御作の演出や構成は智子大好きです。だけど「エンタメ」として多くのターゲットに届ける工夫次第で、もっと高い話題性と期待を整理できたのではないか。とも思っています。

 感想は以上です。



2-15 仙女の愛し子は嗤う(感想依頼あり)

タイトル感想

 愛し子タイトル被りましたね。仙女とあるので、中華風ファンタジーでしょうか。武侠だったりしたら嬉しいですね。嗤うという感じが何かしら不穏さがあるので、結構ハードな作品かもしれません。

あらすじ感想

 ハードでしたね。仙女の不穏な情報をもとに展開していく作品なのでしょうか。焼かれた村の話。といえば、テンプレっちゃテンプレなんですが。私含めて皆さん「激しい動機」が発生するイベントは好きです。

本文感想(90/99)

主人公   :茗李鴦(めい・りおう)
主人公の能力:〈仙女の愛し子〉
世界観   :中華風のハイファンタジー
異変・事件 :地元の村が焼かれる
問題・課題 :不明(村焼きから生き残ってしまうので、狙われ続ける?)
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):主人公達が何かしらの決意や方向性を持って、物語を誘導していないので。まだわからない。わからないけど。出てくる設定等を眺める限り。ヒーローの棗琉鴛(そう・りゅうえん)が守り手として王家の血筋であり、〈仙女の愛し子〉たる茗李鴦(めい・りおう)とのカップリングを示唆している。復讐を元に立ち上がる作品になるんでしょうかね。

 主人公の茗李鴦(めい・りおう)が、あんまり執着していないキャラクター的な整理がありました。焼かれた村から逃げ出したあとの心境こそが、物語の方向性を決めてくれるとは思うんですが。それを描くまでの文字数が足らなかった。という感じがします。

 二人のバックボーンや設定にかかるものを開示することで「このあと二人は正当な王を主張しますよ」というぼんやりとした誘導で終わりました。

 概ね、予想としては間違っていないと思います。これらの雰囲気を十分汲み取れる作品だったので、届くべき人には届く作品だったと思います。

 茗李鴦(めい・りおう)の描かれ方も「女性向け作品」としての期待がありそうなヘイト管理でもありました。中華風ハイファンタジーといった要素も相まって、選好に影響があると思います。

 感想は以上です。

 感想依頼を受け付けたので、次の通り感想を追記します。

21−2-15「仙女の愛し子は◯う」の作者です。 ついに第二会場まできてくださって嬉しいです。全感想お疲れ様でした。

依頼文より

 訓練のためにしている。とはいえ、こういった労いのお言葉痛み入ります。全作読破し、感想を残したあとの「やりきった感」は素晴らしいですね。お待ちかねだったようで、うれしうございます。

感想依頼をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。

依頼文より

 もちろんです。智子は感想依頼を受け付けていますが。第二会場は御作からしかきておりません。書き出し祭りも後半ともなれば、感想依頼の募集自体が珍しく、第二会場の皆さんに届いていないのかもしれません。余裕です。余裕のよっちゃんです。

キャラクターの魅せ方はどうだったか、伏線(設定)を詰め込みすぎていなかったか、良かった点や改善点などがあれば教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。

依頼文より

 なんか、色々質問が並んでいます。順番に考えてみましょうか。

 キャラクターの魅せ方について

 私は他の感想でも触れてはいるんですが。基本的に文章の巧拙は気にしないタイプです。ストーリーの筋さえわかりゃいいのだ。位の気持ちで読んでいます。

 基本的な技術をもって、描かれた作品であるなぁ。とは思いました。

 キャラクターの魅力を「自分で語る」キャラクターっていなくて、キャラクターを「表現する」のは、周囲からの評価や称賛といったものによって整理されていきます。

 これは、私達が「社会的動物」っていう所以ですよね。

 人間は一人で完結しないので、他者からの評価によって「アイデンティティ」が形成されます。

 ジョハリの窓的な能力が、小説のキャラクターにもあって。

 私も他人も知っている私。
 私は知らずに他人が知っている私。
 私も他人も知らない私。
 私は知っているが、他人も知らない私。

 この4つが組み合わさって「一つのキャラクターの評価」像が見えてきます。あくまでも、エンタメ作品としてのキャラクターを描く時に、そのキャラクター性はどこに当たるんだろうか。というのは、描写には出さずとも考えていると、便利だったりはします。

 私達読者は「キャラクター」にとって、他人でありつつも、内心も読めてしまう(あくまでも書き手の視座次第ですが)。という万能な観測者でもあります。これらの部分からキャラクターを描写したり、あえて「情報を秘匿」したりして、読者として興味を掻き立てていくことが演出だったりします。

 その点で、御作の「キャラクターの演出」とかを考えていくとしたら「結構自由な視点から書く人なのだな」という驚きは最初ありました。

 しかし見送りに駆り出された村人たちの顔は、なぜか完全に白けきっていた。今この時、村長一家以外の皆の心はひとつだった。

 なにをいけしゃあしゃあと……お前は偽者だろうが。

本文より

 書き出しの冒頭で見てみるならば「伝聞形式」で玉蘭のことを描写していたりしたので「ああ、あくまでも第三者としての視座を徹底するんや」という文体としてのムードを捉えたあとに「村人たちの内心」を描写し、内心を「断定」していたので。ムードの修正をしました。

「この作品は小説作品としての視点や、視座にこだわらずに描く文体なのだな」と。

 この視点の取り方って。コミカルな展開を期待できます。現代、小説の視点の揺れや視座のスタンスの変更とかも、そんなに厳しいご時世でもないし、なにより「読みやすい」というのはあります。

「この文体でやります」

 というアピールが序盤にされたので、キャラクターに関しての「設定」等を魅せていく流れはについては「そういう文体なんだよね」とは受け入れる土壌は序盤に仕上がった気はします。

 少々説明的なきらいはあるんですが。それもこの文体故だな。と飲み込むことは容易でした。

 メインキャラクターとなる二人(しかも、このあと生き残るのお二人だけなんでしょ……)についての関係性を「地の文」で説明したあと、登場人物のパーソナリティを、他の人々から表現するといった形も順当なエンタメコンテツとしてのそれでしたよね。

「ど、どうしてそんな」
「どうしてって、あたしらみんな李鴦ちゃんのおかげで今日まで生きてこられたんじゃないか!」
「今度はあたしらがあんたを生かす番だよ! ほら、ちゃんと隠れなさい!」

 思わぬ返答に絶句した。……そんなことのために。

「それにあんたを死なせたらあたしらが琉鴛に殺されちまうしね!」
「考えただけで怖いねえ……あの綺麗な顔で凄まれたら一発で息の根が止まるよ」

 こんな時までご婦人たちはにぎやかだ。だがその時、後方で黒煙が上がるのが見えた。

本文より引用

 御婦人達による「ヒーローとしての琉鴛」の外見的評価や「琉鴛がヒロインの李鴦に執着を見せている」といった精神的な態度の評価を示しています。
 これはジョハリの窓で分類できる。「他人が知っている私」像です。今回の場合は「ヒーローの好意や執着がダダ漏れである」という「たくましい御婦人達」の視点からの話です。

 描写の細かい部分で見えてくる設定もありましたよね。

 父二人は黙って剣を握り直した。かつての朋輩を散々斬り殺して、すでに剣よりも体のほうが軋んできている自覚がある。それでも、あと少しだけ。

本文より引用

 二人はもともと。軍属だったか何かなんでしょうね。説明的ではない描写ではありますが。こういった「視点」の制限が取っ払われた感じの描写ゆえに、キャラクターの「設定」にノータイムで触れていくスタイルの作品です。こういった「キャラクターにまつわる情報」がぽんぽん出てくることを許す文体なので、これは強みだなぁ。とも思いながら読んでいました。

 結論として申し上げると。

 キャラクターの魅せ方や、情報の開示については。特別問題があるようには思いませんでした。ともいうのも「それを許す文体」を採用しているので、見せたい情報や設定について、ポンポン提示していくことで「今後のログライン」への期待に資する効果があったように見受けます。

 伏線の詰め込みについて

 大体、上のキャラクターの魅せ方で述べているように。
 本文を見る限りですが。
 御作の語りは「語り手として、自由に情報を開示するための文体」のように感じています。
「そういう作品でそういう文体なんだよね」と飲み込みつつ、コミカルな自由な視点から読んでいるため、そこまで気になることはなかったように思います。

 良かった点について

 良かった点ですかぁ。

 基本的に「テンプレ」的な始まりではありますよね。理不尽な村焼きによって、物語が始まる。といった「ショッキング」なシーンから展開される冒頭になります。
 こういった作品って基本的に「何がなんだかわからないままに、村が焼きだされて、悲しみと怒りに包まれて、復讐を誓う」みたいな物語の動機が発生するまでが「予想される復讐譚としての序章」じゃないですか。

 そういった時って「状況を理解する」までのフェーズとかがあるんですが。文体の語りの制限をゆるくすることで「どうして、彼らが村を焼いているのか。襲っているのか。村人たちの表現」などを詳細に描写することが可能としていました。

「村を焼く」

 という序盤のシーンに「感情」をもたせるためには「読者に村に愛着を持ってもらう」必要があります。そのためにも、適切に効果を狙った文体や表現になったんじゃないか。とは思っています。演出上の妙味がかみあった冒頭でした。

 改善点について

 ええ。改善点ですかぁ。何か思いつくかなぁ。と思いながら、鵜の目鷹の目で眺めていました。

 タイトルとあらすじから連想していた「作品ジャンルや主人公」の設定の部分で「予想と期待」の部分で、相違点がある読者もいらっしゃるとは思います。

 仙女伝説が語り継がれている仙迦王国。その辺境の村に、〈仙女の愛し子〉と呼ばれる救国の乙女が現れた。名は玉蘭。災いを未然に防ぐ彼女の噂はあっという間に国中で評判となり、国王が彼女を娶るという話もすぐに民に受け入れられた。
 しかし玉蘭が村を出たあと、そこでは大虐殺が起きていた。火が放たれ、家屋は破壊され、村人たちは一人残らず殺されていく。一方、故郷で起きた惨劇も知らずに後宮入りした玉蘭の周りでも、なぜか良くないことが次々と起こりはじめ……。

あらすじの一部引用

 この文言だけみたら。「主人公は玉蘭なんだな」中華風後宮ものを見れるんだ! ひゃっほう! と飛びついた読者の気持ちで序盤の本文を読んでみましょう。

 玉蘭について触れてるんです。

『救国に繋がる先見の明。災いを防ぐ優れた助言。それこそが〈仙女の愛し子〉の証である』

 そんな伝承が今も残る仙迦センカ王国。その辺境の小さな村に、王都からの使者が朝から大勢訪れていた。その脇では、村長の孫娘である玉蘭ギョクランが出立を前に家族との別れを惜しんでいる。

本文より

 この始まりを見ちゃうと。「やっぱり、玉蘭が主人公なんだね」と期待して、読んじゃう人はいると思います。

 実際のところ。玉蘭は「主人公級」の役割と格を持っているとは思います。このあと、後宮に行き、不穏さに気づき、後宮の中で生き残っていく。という試練を考えたら、十分な役割をもったキャラクターです。

 しかし、書き出しの1話でみると。ヘイトを持ったキャラクターであり「中華後宮もの」として見た時に「ざまあ」される子なんだなぁ。とか、最初の先入観を持って「予測して読んでいく」ので、その予測を修正し続ける構成であることは。いくらかの読者を逃しているんじゃないかな。とは思いました。

 あらすじの時点でも「これは一般的な復讐譚ですよ」というのを、もっと明確に示している方が無難だったんじゃなかろうか。とは思いました。

 あらすじで「ちょっと不穏な後宮もの」くらいに捉えていた読者にとっては、馴染まなかったかもしれません。

 書き出し祭りをいくらか読んでいて、智子なりに「学んだ」ことがありまして。

 タイトルとあらすじで期待させた、ないし予想させたジャンルの満足感を本文で与えることが大事。と思っています。

 その点で見れば、御作は「タイトルとあらすじ」の時点で、ジャンルのミスリードになるかもしれない情報。をあらすじの前半に持ってきている。さらには本文でも「主人公」を錯覚させる書きぶりのキャラクターのシーンから始まっている。

 この部分で悪い効果を発揮している可能性も感じ取りました。

追伸:人名が難読で困惑させてしまいすみません。読者に寄り添わない名付けは良くないなと気付かされました。 今回の「鴛」と「鴦」にはちょっとした意味があるのですが、読者を置いてきぼりにしては本末転倒ですものね。今後は気をつけようと思います。

依頼分より

 あんま気にしなくていいと思います。漢字って表意文字でもあるので、そういった方向性のギミックの活用はどんどんしてよろしいと思います。ただ、私が「音とキャラクター」がまだ馴染んでいない段階で、物語が展開していることにカロリーが消費されたというだけです。

 これを解決する簡単な方法があります。

「ふりがな」つけちゃえば良いんですよ。

 今回は書き出し祭りのレギュレーション上、文字数が圧迫してルビをふることにいくらかの制限がかかったのだと予想しています。連載とかだったら、全然困ることないし、漢字に含まれる。鳥の名前。オシドリに関連するというのであれば、修正する必要はありません。

 ルビ盛り盛りで、漢字ゴリゴリなのが、中華風ファンタジーには「ムード」もあってくるので、躊躇いなく、書き続けて欲しいと思っています。

 どうでしょうか。質問にそって感想を述べました。続き書いてくれるものと期待しております。

 感想は以上です。




2-16 【運営都合により削除】

タイトル感想

 わからんですね。どういうジャンルかわからんです。シンデレラストーリーのカウンターでしょうか。

あらすじ感想

 幼い夫の年齢次第で、智子の気持ちが動くでしょう。おねショタものが大好きな智子に予想外なアプローチが来て、楽しみな作品です。
 
 復讐を動機とする作品。明確で強みがあります。その復讐に溺れるヒロインを救い出すのは幼い夫なのかもしれません。
 
 ああ。おねショタ。

2-17 灰燼の胡人舞(トレパーク)

タイトル感想

 ふりがなをふっても、わからんです。踊るんですかね?

あらすじ感想

 人物を追う。というより、街に襲いかかったイベント自体に焦点を当てた作品のようです。オアシスかぁ。ムスリム的な空気があれば個人的には嬉しいです。

本文感想(91/99)

 ”轟焔”のラハヴを主人公とすることもできるんでしょうかね。任務遂行にあたって、何かしらの精神的課題を有しているようなので、彼女が主人公であると見立てて、ファースト10をいれてみます。

主人公   :”轟焔”のラハヴ
主人公の能力:二つ名の通り。
世界観   :現代ファンタジー。あらすじから察するに「ダークファンタジー」となっている。
異変・事件 :不明(この項目の異変や事件というのは「主人公の変化」を兆しとするもの)
問題・課題 :不明(物語の全体像が見えないのでまだわからない)
決意・覚悟 :不明(同上)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):二つ名の存在や。異能バトルに関する要素。少年たちからの投擲など。対立を予想させる設定を開示して「異能バトルもののダークファンタジー」としてのジャンルを提示した。

 Twitterのコメントでも残したのですが。作品の全体像や目的が見えない段階で、村焼きや襲撃のシーンとなっているので。「どういうつもりで読むのか」という事前情報が少ない本文なので、飲み込むのが難しい冒頭でした。

 どういう感情を約束してくれる作品なんでしょうね。

 ”轟焔”のラハヴに寄せるならば、自己評価と周囲の評価のギャップに悩む自尊心高めのキャラクターが、課題と見つめ合って、真摯な成長を求める。といった作品にもできそうですし。

 ”轟焔”のラハヴに投擲している少年たちの視点に立ち上れば、復讐譚としてのそれになることも可能です。

 どういう作品なのか。どういう目的の書き出しなのか。というストーリー上の魅力で誘引しようとしているのではなく。ダークファンタジーとしての描写や、二つ名持ちのキャラクター同士の関係性などを引きとしている作品なのだと予想しています。

 感想は以上です。


2-18 翼を忘れないで

タイトル感想

 希望に溢れた感じのタイトルです。ともすると、逆説的に考えるならば。傷ついた人。やさぐれた人が主人公なのでしょうか。

あらすじ感想

 普通に背中に翼が生えた人との交流でした。二人が影響を受けていくとあるのですが。どう影響を受けていくのか。二人はそれぞれどんな課題を持っていたのか。といったように「変化の前後」を描くことが大事なストーリーラインだと思うので、書くとしたら、難しい書き出しになりそうです。
 どんな課題があるんでしょうか。

本文感想(92/99)

主人公   :僕(畠中正志)
主人公の能力:不明
世界観   :現代ファンタジー
異変・事件 :白井さんに羽が生える
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明(あらすじを見るに、羽の有効活用をする?)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):羽の生えたヒロインと、何かしらの活躍をする話。二人の出会いのシーンや。イベントに関するものであり、全体像は見えてこない作品です。しかし「10年」と区切りをつけていることから、過去の回想であることは情報として理解できました。

 導入だけ見るならば、男性向けライトノベルのお決まりの流れみたいなものですが。
 ヒロインの白井さんが謎過ぎて、ジャンルの方向性がまだ見えてこないです。
 ヒーローものよろしく、困っている人たちを助けるような話になるんでしょうかね。

 主人公は一つの壁を超えてみせました。それと同じような決断や判断を求められるイベントが繰り返されていくことになるんでしょうか。

 10年。羽が生えてくるという現代ファンタジーですから。どのようにも舵取りができる。故に、ジャンルは早めに確定して欲しい書き出しでした。

 感想は以上です。


2-19 自称カミサマと往くVRMMO終末紀行

タイトル感想

 仮想空間のゲームもの。自称カミサマがどの程度の描写になるんでしょうね。宗教的な要素とゲーミングが絡み合ったテーマを提示できるでしょうか。

あらすじ感想

 カミサマはユーザーだったのですね。人間が神様を模倣して、低次元の存在に対しての干渉の話題なのだと思います。仮想空間の人々が設計、開発に大して影響力を持たないように。私達もまた世界を設計した上位者へ関与できるものではありません。
 
 それをぶち壊す存在として、『アイ』が登場するんでしょうが。どのような役割を持って、アントンを導くのか。本文のセットアップの中で「テーマ」を示す事ができるかどうか。そこで、差別化される作品ではないでしょうか。

本文感想(93/99)

主人公   :僕 (アントン)
主人公の能力:自我を持った装置
世界観   :サービス終了間近のVRMMOの世界
異変・事件 :僕が自我を持ち始める
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :神様に修正されないためにカミサマに付き従う
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):新規性の強い作品であるため、想像がおよびづらいですが。NPCが自我を持つ。という設定から「世界」へのメタ的な視点を楽しむ作品になりそうです。

 うーん。実はこの作品については「タイトルとあらすじ」時点で作者予想をしていた作品でした。

 わけわかめさんじゃない気がしてきた……

 さて。そこはおいといて。

 自称カミサマの「アイ」ってAIのもじりだと思っていたので、イメージングナンバーの「i」であるのだと知って、それも驚きました。

 作品のセットアップや、旅の同行をする。という目的まで示されました。

『アイ』の旅についていく。神様に処理されないように。という、ちょっと消極的な要素から物語は始まっています。

 今後の旅の中で「どのように目的を再設定するか?」という部分で、テーマやメッセージが変わりそうな作品です。

 面白そうな書き出しでした。

 感想は以上です。


2-20 ミーミル、歯を食いしばって

タイトル感想

 絶対殴るでしょ。殴りますよ宣言じゃないですか。私はこの言葉を言われた時は全力で距離を置くタイプの子どもでしたよ。今どきの子どもたちは「殴られる前の合図」としての「歯を食いしばれ」の命令を知っているでしょうか?

あらすじ感想

 やっぱり殴るんですね。
 
 さて、セットアップのあらすじであって「どんな物語が始まるのか?」という部分では見えてこないあらすじです。大きな物語の始まり。としてではなくて、日常ものとしての提案の作品なのでしょうか。

本文感想(94/99)

主人公   :私 (ノルン・フェルバーン)
主人公の能力:魔術・兵術・武術の技術に秀でている。それぞれの技能のスペシャリストではなくてジェネラリスト的な能力なのだと思う。故に内調の任務に耐えうる人材。
世界観   :ナーロッパ世界にありがちな便利グッズの魔法等を研究している「研究所」を舞台としたコメディ作品
異変・事件 :王立魔導技術研究所 内部調査委員会への辞令
問題・課題 :研究所内のモラルハザードに対峙していく
決意・覚悟 :無事に任務を達成し、愛しの団長の元へ戻る
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):小生意気なショタっ子研究者のミーミルと、団長に一途でまっすぐな「私」によるおねショタバディもの。ナーロッパ世界に馴染みがある「便利な魔法道具」の研究にまつわる諸々の人物達と繰り広げるコメディ。

 面白かったです。丁寧に要素が説明されていて、ナラティブもわかりやすい。コメディ作品を求める読者にとっては良いバランスの作品でした。

 この作品をコメディへの比重を高めてくれたのは。「私」が団長へ思いを寄せている。といった設定自体が。バディとして登場するミーミルとの「ラブロマンス的要素」を排除した効果が出てきたと思います。

 男女バディ(おねショタ)もの。

 良いじゃないですか。多分、票数集めそうです。

 コメディのセットアップゆえに「内的な課題」不在であっても、読み味に不安点がおぼえないのは良いですね。

 感想は以上です。



2-21 人工魔女(感想依頼あり)

タイトル感想

 わからんですね。ファンタジーっぽさはあるんですが。機械っぽさもありそうです。

あらすじ感想

 魔女とはなにか。そうすけは男性であるが、魔女である。もうそういう世界観なんでしょうね。
 セットアップからヘラルド(依頼を持ってくる魔女の少女)。といったシンプルなあらすじです。
 
 どういう「楽しみ」を提案してくれるのか。
 
 バディもの的なものを提示しようとしているのかもしれません。そういう風に捉えました。

本文感想(95/99)

 主人公   :僕 (志賀真白)
主人公の能力:ヒトであるのに魔法が使える
世界観   :未来世界のファンタジー
異変・事件 :荻野颯介が持ち込んだ依頼(協会絡み)
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):志賀真白のキャラクターの「抜き」(彼女が人工魔女であることを示唆するような文言)によって、読者の興味を誘引しつつ、それらの葛藤を楽しむ物語。おそらく、視点が交互するタイプの作品ではないでしょうか。

 序盤にどうして「世界観設定」をぶち込んだのだろうか。と思いながら読んでいたんですが。おそらく主人公の設定に寄せるためだったようです。

 次の展開としては「助手」の視点で、依頼にあたっていくとか。素性を調べていく中で「真白」の素性にもぶち当たるといった感じでしょうか。

 世界観やキャラクターに興味を持った読者は、続きを求めるタイプの作品だと思います。

 感想は以上です。

 感想依頼を受け付けたので、次の通り感想を追記します。

 今からでも遅くないかですって? なんでもっと早く送らないのぉ。

 とは申しておりますが。ゲスパーが発揮しています。

 実はこの感想依頼は。第二会場の作者予想を上げたあとにやってきています。

 さては記事を読んでからこられたなぁ?

 特別感想の内容について、質問や要望とうはなかったので。面白いと思った部分だったり、イマイチだとおもったりした部分についてピックアップしながら考えてみます。

 読者によるんでしょうけど。

「エンタメ小説を読む」

 という娯楽は。読者にとって「能動的な」読み込みを必要とする行為です。

 それらの「読書体験」のときに「エンタメコンテンツとしての小説」を読もうとする読者の多くは「物語」を読みたいのであって「説明」を読みたがる人は少数派です。

 物語を展開するための設定を御作は「Q&A形式」で表現しています。


Q.魔女とヒトってどう違うの?
(中略)
――『魔女とヒト』エリザベス・K・マリン(2204年初版発行)

Q.魔法ってなに?
(中略)
――『Magical細胞生物学 原書第2版』ベイク・P・テート(2212年初版発行)

Q.魔女とヒトは今後どうなるの?
(中略)
――種族間協定(2145年1月締結)

(中略)
――『人工魔女への警告』チョー・R・アース(2215年7月3日)

本文より引用

 これってあれなんですよね。年表の意味合いだったり、魔女たちのバックボーンにかかる部分を説明するためのターンとして作られています。

 この時点で「一人称視点」の「僕」による「ホームズ役の志賀真白」の語りという作品として見たときに、ムードがガラッと変わってしまいますよね。

 物語を楽しむために「事前情報が必要」という書き方をされると、それだけで「興味を失う」読者達は相当数いると思います。

 この作品の魅力は「僕」という「人工魔女(ですよね? 多分)」というバックボーンを持った主人公が、物語に介入していく。という面白みの話です。

 ここで、ぱつっと視点が変わるのか。終始「僕」でいくのかもよくわからんですが。
 主人公の語りについては、読んでいくことは非常に楽しい文章です。であるからこそ「前段」の説明と年表。バックボーンを示すためのそれとなるんでしょうがね。

 これをどうにか、演出や動作で表現できないか。というのを考えたほうがいいと思います。

 小説ではないんですけど。一つのアニメを紹介します。

 ご覧になれるなら。ご覧になってほしいんですけど。

 一話目の90秒だけで。私達視聴者に対しての情報の提示だけで「世界観」や「ムード」が伝わっています。

 銃器が登場すること。超法規的な存在としての「リコリス」という暗殺者がいること。町には電波塔という「テロ被害」の象徴が存在すること。情報統制下にある日本を皮肉するようなOPであること。

 本当にいろんな情報が乗っています。

 御作がこのように「演出」という力で、人工魔女の世界観を見せていくことができたとしたら。もっと多くの人の興味と期待感を引き付ける事が可能だと思います。

 現状最後まで読んだら。「ああ。三人組で、それぞれのバックボーンが絡む物語」が進むんだね。

 というのは十分に分かる。いい情報量と期待値があります。

 だけど、それを「読者に忍耐を必要とするターン」が存在していると、それだけで勝負するのが難しくなろうかと思います。

 といった部分で「魅力」としての「一長」の部分が「一短」にもなりうる構成になっています。

 といった部分が感想でしょうか。

 刺さる人には刺さると思います。私は面白そうだなぁ。とは思いましたし、「僕」の語りについても随分興味深く読んでいました。

 しかし、今後「語り手」が変わる可能性があるとかいうのも予想できちゃう引きだったので、その部分では不安も残りましたかね。

 どうでしょうか。

 感想は以上です。


2-22 父の遺書が異世界転移ライトノベルだった件

タイトル感想

 お父さんはとんでもないものを残していきましたね。現代ファンタジーでしょうかね。どういう「ナラティブ」を示せるのか。タイトルではわかりません。

あらすじ感想

 なんかよくわからんあらすじでしたね。作品のジャンルがまだ見えてこない情報量でした。
 父が小説に秘めた事実。謎を提示して、その謎の興味で読者を引きつけようという作戦であろうかと思います。
 私はこの方法が「あまりうまくいかない」と思っているので、結果をじっとりと眺めてみたい作品です。

 謎を提示するより、プロセスを約束する作品の方があらすじとして好まれる傾向があると予想しています。

本文感想(96/99)

主人公   :俺 (藤川有平)
主人公の能力:不明
世界観   :現代(多分、ファンタジー? 確定できなかった)
異変・事件 :父、小峯浩平の遺品整理
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):父の残した遺書を読み続けることで、父の足跡をたどる物語。

 どういう作品になるんでしょうか。想像がし辛い理由は多分。

「父がいなかった」という事自体に、俺(藤川有平)が強い悪感情を持っている素振りもないため。良くも悪くも「他人」のことであるといった。距離感があります。

 物語の中で「名指し」の遺書がある。ということから、主人公にとって「他人」ではなくなる過程を楽しむ物語であろうかとは思うんですが。

 いかんせん、これも推測に推測を重ねたものにはなるので。よくわからんですね。

 智子的には父親が異世界転移でもしてました。みたいなネタを考えていました。違うのかなぁ。

 感想は以上です。


2-23 鉄錆のモビーディック

タイトル感想

 わからん。ハードボイルドな感じはします。

あらすじ感想

 ハードでした。ボイルドではない気がしますが。
 それぞれのキャラクターに、目的を設置していて、それぞれの目的のためにそばにいる。みたいなものになりそうです。
 近未来SFみたいなものでしょうか。環境問題等のように「舞台装置自体」に魅力をもたせようとするタイプの作品のように予想しています。

本文感想(97/99)

主人公   :私(イシュー)
主人公の能力:生物学者
世界観   :砂に埋れた未来の地球
異変・事件 :エイルの手配書を見つける(このことが、イシューが旅に出るきっかけとなっている。地の文で軽く触れている程度)
問題・課題 :指名手配されていること。実利も定かでない討伐を掲げていること。など志のみで動いていること。
決意・覚悟 :原初の鯨に奪われたものを取り返したい。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):新規性のある世界観。白鯨をモチーフとした物語。砂海をめぐる冒険譚。


 良い書き出しでした。どうして、良い書き出しなのかを考えたいところですが。

 詳しい解説を付すまでもなく。外的な課題と内的な課題が明確な作品であって。主人公が「奪われたものを取り返す」とありますが。取り返せるはずのものではないんですね。そして、そのことを主人公自身も十分にわかっています。

 劇的な物語は何もない。
 砂海を渡る鳥車が螺子魚に襲われた。
 乗客は皆殺しにされて、その犠牲者リストの中に今から私も混じる。

本文より引用

 どういう世界観なのか。を端的にあらわしてくれた地の文でした。


 砂海に覆われた世界において、夢半ばで散ることは珍しくもないし。集落がクジラの気まぐれで破壊されることも珍しくはないんでしょう。
 その珍しくはない現象を「受け入れることができた」のがイシューであって、その復讐に心を囚われた「親友の妹」を引き上げるために、イシューは命を賭してでも合流したんです。

 戦いの中で、折り合いをつけていくことが作品のテーマになるのだろうな。とおぼろげながらに予感できた情報量の書き出しでした。

 本文では「エイル」が強い行動力と、決断力を兼ね備えた魅力的なリーダーのように描かれているのですが。あらすじにもある「復讐」という単語などからも分かるように彼女も「課題」をもった存在です。

 ドラマを感じさせてくれる情報が満載の書き出しでした。

 感想は以上です。



2-24 ガール・ミーツ・ミート

タイトル感想

 多分。グルメもの。タンパク質の補給著しいそれだと期待しています。

あらすじ感想

 絶対おもしろいわ。面白そうです。主人公の「社会勉強のために」といって、精肉店へのアルバイトを斡旋する両親。存在が百点満点でしょ。
 
 肉磨きという言葉を存じ上げませんが。もう、そのワードがたまらん響きがあります。
 
 読んでみたい。第一会場から順繰りにあらすじ読んでみましたけど、49作品中暫定一位で「早く読んでみたい」という気持ちになりました。
 
「主人公に欠点がある」というキャラクター設定が、智子は好みなんでしょうね。

本文感想(98/99)

主人公   :美紅
主人公の能力:不明(あのシンプルで素直な所は彼女の長所ですよね)
世界観   :現代もの
異変・事件 :社会勉強と称して、アルバイトを斡旋される
問題・課題 :世間知らずのお嬢様ゆえに発生する軋轢
決意・覚悟 :自分磨きをする!
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):愛すべき欠点を有しているヒロインの成長を楽しむ物語。

 面白かったです。

 基本的にキャラクターの課題や紹介程度にとどまっていて、今後の「精肉店」を舞台に繰り広げられる「ストーリー」に関しての誘導はなかったですが。

 ヒロインの対立軸に存在するであろう「ヒーロー」との不穏な対峙。彼の能力を称賛する素直さ。など「ヒロイン」の能力を示した書き出しでした。

 新規に店をオープンという所も、今後の物語の展開に絡んでくる要素であろうし、それらの出店や出資にヒロインの父も絡んでいたりとか。色々と見えてない部分で、物語の伏線はありそうです。

 ヒロインとヒーローの対峙の物語と平行して、精肉店にかかる「メインストーリー」を期待しています。

 感想は以上です。


2-25 前世、愛を伝えられなかった私たちは

タイトル感想

 ラブロマンスの作品でしょうか。前世ともあるので、転生もの。記憶があるみたいな? じゃないでしょうかね。
 軽々しく愛は叫んでおくべきだと思っています。

あらすじ感想

 異世界内転生もの。でしょうか。
 かつての結婚生活等の記憶をたどることを目的としています。
 
 ちょっと消極的な「行動の目的」ではあります。なにか「過去を変える!」みたいなものではないので、読者としては「どういった展開を期待できるのか」の部分があらすじでは見えてこなかったです。本編のなかで、明らかになっていくのでしょうか。

本文感想(99/99)

主人公   :私 (大商人の娘エリカ)
主人公の能力:男爵令嬢エリーシャだった前世の記憶
世界観   :異世界内転生
異変・事件 :記憶の復活
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):まだわからない段階。どの程度の時制が進んでいるのかもわからない。なにか、そこを伏せているのは理由がありそうです。

 物語の起こりの段階です。その少年と出会ってからが、本当の物語の始まりであったり、エリカが何かしらの決意をすることになるはずです。

 現在はまだ消極的な理由から過去(どの程度過去なのかも情報の提示がない)の情報を追っている段階なので、物語のジャンルを「おおよそ」の方向性でしか予想できなかったです。

 少年はなにものなんでしょうかね。忘れ形見なのかね。

 記憶の欠落がいくらかあるようですし、もしかしたら「子どもがいた」ということすらも記憶がないのかもしれません。

 それか、幼馴染との関係を疑われていたとか? 幼馴染の性別は明言されていなかったし。

 それっぽい伏線は撒かれていたように思うので、興味をもった読者は「引き」としての要素に期待しながらページをめくる作品だと思いました。

 感想は以上です。

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