第二十一回 書き出し祭り 第三会場の感想
こんにちは。智子です。
書き出し祭りの感想は「会場ごと」にご用意します。一つの記事の文量が多くなると、色々と弊害(Twitterカードの読み込みができないなど)があるな。と感じたので記事を分けます。
記事について
表題の通りです。感想を別に分けています。別の会場についてはノート記事を添付しておきます。
感想の作成方法について
今回はちょっとやり方を変えます。読みと書きをスムーズに行いたいので、感想依頼は「読み終えて、感想を書き終えた」段階で募集するつもりです。
感想がいつも長尺となるので、要点をまとめたものを感想として残していきたいという目標があります。長いと記事が重くなりますからね。うまいことやっていきます。
感想依頼
上記のマシュマロで、会場名と作品名を明記したうえで感想依頼を投げてください。
一応、全感想として下記に感想は残しています。感想依頼があれば追記する形で感想を残していきます。
何かしら、感想に要望等あればコメントも付してみてください。気になる部分あればそこも合わせて、感想を残します。
会場へのリンク
3-01 モリアーティの系譜
タイトル感想
モリアーティ? ミステリーで有名な人でしたっけ。よう知らんです。だけど、分かる方には分かるんじゃないでしょうか。
あらすじ感想
やっぱりミステリーでしたね。ミステリーを作ってきて。という依頼。変わり種で面白そうですね。
キャラクターが三人もいると、バックボーンまで掘り下げるのは難しいですが。物語の動機までであれば、賑やかにあらすじに表現できるものなんですね。
本文感想(25/99)
ツイートにも書いたんですが。謎解きゲーム制作。と聞いても「なんだ? PCゲームの製作会社なのかな?」とか思ったくらいでした。
読みながら、ちょっと「あれ、違うかも」と気付いて、調べてみました。
何かしらのアトラクションとか。企画ものに関しての制作会社ということなのかと思います。ですよね? そうですよね?
主人公 :孫和人
主人公の能力:不明(雑用一般などの生活力が高い?)
世界観 :ミステリーな世界観でしょうか。
異変・事件 :妙に高い報酬の仕事依頼
問題・課題 :不明(ミステリーって個人の成長を尊ぶタイプのジャンルじゃないですよね。多分。代表の仕事を渋るなどの嗅覚の良さや、仕事を持ち込んだ人との因縁などは課題となりうる要素にも見えます)
決意・覚悟 :不明(引きで終了しているので、まだ主人公の決意にまで至っていない)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):正直わからんです。ミステリーが書き出し祭りで難しいとされるのも。謎解きに関する能力などの見せ場を作ると。それだけで4000文字に達してしまう。であれば、セットアップとして登場キャラクター達の説明に終始する。というのも一つの手になりますが、物語のログラインとなる部分を示せずに、キャラクター達の掛け合いや関係性で叙述が終わってしまう。この部分で、見せ方に苦労した作品のようにも思えます。謎解きゲームに関する能力を示してほしかったようには思います。この作品の特徴は「謎解きゲーム」を作る側の能力を活用したミステリーであろうかと期待していたからです。
ナラティブの部分でもだいぶ言葉を尽くしたのですが。ミステリーを謳う作品は難しいです。物語の動機に関して「金銭的理由」を設置することは、一般的であり、馴染みやすいものです。
しかし、仕事に対しての嗅覚や危険に対しての反応が良すぎると、物語が進まない理由にもなりかねません。実際、そんなシーンが後半に差し込まれます。
そして、それを留めるように。
「死体は用意した」
という引きで終了です。
まだこの作品が「死体が登場するような逼迫したミステリー」なのか。「バカミス」と呼ばれる類のミステリーなのか。ジャンルもちょっとあやふやなままなので、どういう期待感で作品を読めるのか。よくわからない文章量でした。
感想は以上です。
3-02 神の庭に住むこどもたち
タイトル感想
宗教的な理由で申し上げるならば、私たち人類は「神の庭」に住んでいるのは当たり前の話なんですが。そこを話題にしても仕方ないでしょう。ファンタジーでしょうかね。
あらすじ感想
なかなか物騒な話でしたね。神隠し。成長が止まる。爆弾人間。さらには、問題となるのは「爆弾人間」と目される人物の視点であることでしょうか。ジャンルとしてのお約束というよりかは、提示された不穏な情報が物語を予測させてくれています。良いあらすじだと思いました。
小学生の視点なのかぁ。だとしたら、文体に一定の制限が入るので難しい書き出しになりそうです。
本文感想(24/99)
主人公は中学生を目前とした、少女でした。小学生のふわふわした文体とは違って、かっちりしっかりした語り口でした。
良い書き出しでした。序盤から「学校にいかない」宣言から始まり、物語が動き出した所から始まっています。
主人公 :私(青柳由麻)
主人公の能力:不明
世界観 :神隠しのある世界観。ローファンなのかどうかも不明な領域です。爆弾人間ってんだから、ローファンなのか。
異変・事件 :病院に行くことを母に促す
問題・課題 :昨今の不穏さに抗うこと。爆弾人間。物騒ですね。家族の平穏のために病院に向かう。自己犠牲的でヒロイックなシーンです。
決意・覚悟 :弟のしめす。合言葉を必要とする場所を探す。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):終始不穏さが漂よう作品でした。それらの不穏さを楽しむ。スリルのある作品です。主人公の不安がそのまま、周囲の大人たちに現れるような作品でした。その不穏さに乗っかって、作品を楽しむことを求められています。
主人公の思惑をぶち飛ばすように、弟の助言が最高にしびれますね。
子どもたちの物語『2-20 僕とママと世間の不健全な関係〜死んだはずのママを探しにいきます〜』を、書き出し祭りで書いたことがあります(私は何度だって、自作をこすります!)。こういう風に私も書きたかったです。
ちなみに、まだその作品は書き終えていないので。盛り盛りと刺激を受けさせてもらいます。
医者や看護師の不穏な感じよ。
子どもの頃の智子は賢しいガキでしたからね。病院の医者達はだいたい敵にしか見えてませんでした。それは賢しいのか馬鹿なのか。今となってはわかりませんな。
続き読んでみたい作品です。どういう話になるんでしょうか。要素自体が「一見繋がらない設定」が散逸しているので、どういう風にたたむのか興味深い作品でした。
感想は以上です。
感想依頼を受け付けたので、感想を追記します。
上から順に回答してみようと思います。
私もそういう願望があります。そういう力を私も欲しいです。めっちゃ欲しいです。
私にそれをお訊ねになりますか。智子を何者だと思っているんですか。ただ、感想を書き散らしているだけの人物です。とは申しますが、私にお訊ねになるのは正解でしょう。
私がもりもりと感想を書いている理由は「エンタメ作品において、読者を引き付ける力」を得て、作家として大成功を収めようとしているからです。
ちなみに、習得した技術やメソッドについては軽々しく口にするタイプですから。お訊ねいただければ、あれこれ考えてみます。
工夫については、御作についてなにかできることがあるか? という意味合いで考えてみます。
あらかじめ。申し添えておきたいことは。こういった「何かしらの提案」というのはプロットをすべて確認し、ある程度の聞き取りのあとに行ったりはしています。
書き出しの文量ではまだ「全体像」も見えてないし、物語上のギミックも不明なので。手探りで考えてみます。
キャッチーについて
人目を引く要素。位の意味合いで捉えています。
実際。目を引いたタイトルとあらすじではありました。キャッチーさで言うならば、ずいぶん尖った作品だったと思います。
問題は話題性じゃないかな。
話題性について
話題性って「人の話題にのぼる」ってことなんでしょうけど。その点で申し上げるならば『3-02 神の庭に住むこどもたち』は話題性はない。というより「話題にできない」というのが正しいでしょうか。
感想依頼以前の感想にも述べてはいますが。
読者に約束する楽しさ。の部分で、明快さがないっていうのはあります。
友人に「この作品のプレゼンをして」と言われた時に「〇〇な話だよ。こんな気持になれるよ」という説明ができる作品でないと話題にできないんですよね。
このあと、主人公がどんな能力で、課題を解決していくのか。それはまったく不明な段階です。
御作は面白そうな材料はたくさんあって、面白くなる想像が尽きない。ポテンシャルの高い作品。だとは思うんですが。
話題性を高めるには「このあとはどんな物語が予想できるか?」という読者への「導き」の余裕がある作品の方が、話題にはしやすいです。
これはもうちょっと、別のたとえで申し上げると。
飲食店の話題に近いんですよね。
まず。前提として申し上げます。あなたの小説は面白いです。これは何も心配しなくていいでしょう。みんな認めるところでしょうから。
キャラクターのバックボーン。決意に至るまでの情報だったり、迫真に迫った情報が見事に噛み合っています。
基本的に私は「文章の巧拙」は評価しない読み手ですが。
読みながら「ああ、書いてきた人なんだなぁ」とは理解できました。
書き出し祭りで票を得られるとしたら、その「丹念な描写力」なども評価軸に取り入れられるタイプの作品です。
でも。一番の問題は。「この面白い小説に分類するラベルが貼られていない」ということです。
ラーメンを食べたい人はラーメンを食べるためにラーメン屋さんに入ります。
おうどんを食べたい人はおうどんを食べるためにおうどん屋さんに入ります。
異世界恋愛の小説を読みたい人は、異世界恋愛を読むために、異世界恋愛のジャンルのランキング作品を読み漁ります。
この小説にはまだ「のれん」がないんです。
私はわかりますよ。似たような「訳ありの子どもたち」が活躍する小説やプロットを考えていますし、今もそれをいじくっています。
だけど。分からせるべきは。書き手じゃなくて「読み手」の人たちにです。その人達が「物語を飲み込むうえでの予想を許す」作品であって欲しいです。
りんごとおもって食べたら、りんごそっくりに切られたじゃがいもだったらつらいでしょ? そういうアンマッチを防ぐための努力をすると、また違った読後感の作品になりそうです。
今回のキャッチーさにもあるように。
神隠し。爆弾人形。身体の成長が止まる。家族との別離。要素は満載。楽しくなりそう。
だけど、どんな葛藤や、戦いが「約束」されているのかわからない。わからないので「人に紹介しようがない」という部分で、御作は現在「話題性」は薄い作品になります。
小説が上手っていうこともあって、キャラクターのバックボーンに関する描写を書いてる部分が、書き出しには多くありました。
彼女が「大事にしている家族」の描写をすることで、病院へ向かう悲壮感を際立たせる。演出として高い効果があります。
ありますが。ばっさりと削って、物語の全体像を予測できる領域まで話を進めて、読者を誘導すれば。話題性にはなったのかなぁ。とも思います。
どうでしょうか。書き出し祭りを全部読んで、感想をかいて、自分の血肉にしようともがき苦しんでいる書き手の智子が回答しました。
でも、この回答も「WEBで連載する」とか「読者を引き止め続ける」という観点で書いています。
単著で読んでたら「買ったし、最後まで読むか」となるような作品ではあります。
実際に公募とかなら、あんまり心配しなくていいんじゃないかな。とも思っています。
感想は以上です。
3-03 月は七色、剣と踊れ
タイトル感想
月は七色じゃありません。というと、やはりファンタジー世界の話題なのでしょうか。それともセーラームーン的な?
あらすじ感想
ファンタジーでしょうか。過去のバックボーンに傷があるタイプの物語のようです。これからどんな回想を起こそうとしているのか。といった世界観は十分に伝わったんですが。「楽しい話なのか。悲しい話なのか」といったテンションのラインはよくわからない作品でした。
回想が暗い。なら、祭りは明るいんでしょうかね。
回想という過去のシーンと現代のシーンが行き来するんだろうか。どのような演出がされるのか期待です。
本文感想(23/99)
絵で見るならば、美しいシーンが続くし、意識があやふやな主人公というのも、彼が大きな問題を抱えていることは十分に理解できる演出の作品でした。
主人公 :空真(クーシン)
主人公の能力:卓越した剣士。高い倫理感を持ち合わせている。
世界観 :アジア系の文化のハイファン作品
異変・事件 :避けていた彩竜市に誤ってやってきてしまう
問題・課題 :不明(何かしら避けている。本文では明示を避けている節がありました)
決意・覚悟 :不明(彼が何を願っているのか。それも不明であるため)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):不明です。そこまで切り込んで描写はできていない作品です。
描写も巧みで、演出も上手。だけど「ナラティブ」の部分が弱いようにも感じた書き出しでした。
「読者がページをめくる理由」としての「どんな楽しみを約束してくれるのか」がよくわからない作品でした。おそらく、二話目以降に本筋となるようなテーマが見えてくる構成の作品なのじゃなかろうか。とも思いながら読んでいました。
主人公は何を抱えているんでしょうね。それが見えてくれば、物語の方向性もそれとなく予想もつくのですが。現在はまだ見えてこない段階なので、読者の票も「小説として、演出としての巧みさ」で票を投じる方が多い作品じゃないでしょうか。
書き出し祭りで「票を集める」ないし「続きが読みたい」と思わせる作品の特徴は。「誰か友達に紹介するときに言語化しやすい作品」だと思っています。
この作品は「魅力を言語化しづらい。共有しづらい」要素のある作品だと思います。
公募向けなのかな。まとまった形でガツンと読みたい作品でした。
感想は以上です。
3-04 イケメン王子がヒロインを溺愛するために必要なたった一つのこと
タイトル感想
ラブロマンスですね。女性向け作品としての要素がありそうなんですが。「たった一つのこと」の要素次第で、女性読者をヘイトをかいかねませんよね。どんな言葉が入るんだろうか。
あらすじ感想
男性ヒーローが、ゲーム内のヒーロー役として知悉している。という役どころですね。相手のヒロインも実は。みたいなものを期待しています。
溺愛かぁ。溺愛する側だったかぁ。
本文感想(22/99)
主人公 :オレ(ファリス王子)
主人公の能力:ゲーム内転生による。ゲーム内設定を知悉しているからこその能力など。
世界観 :乙女ゲー内転生。
異変・事件 :ヒロインからの婚約破棄提案
問題・課題 :ヒロインを操る転生者との対峙(これって逆説的には主人公自身の存在も否定する行いなんですよね。主人公は本当のファリス王子ではないのですから)
決意・覚悟 :ヒロインを取り戻す!
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):転生者同士の知恵比べ。といったような対立を楽しむものでしょうか。具体的に「どんな戦いが起きるのか」というところまでは見えてこない書き出しでした。
ヒロインに乗り移った転生者は。誰が推しなんでしょうね。実はファリス王子が推しであって、誰かよくわからん相手が乗り移ったファリス王子を憎く思ってるとかだったら。救いようがないですよね。
いやあ、結構予想以上に苦しいかもしれないセットアップで驚きでした。
概ね、タイトルとあらすじで見る限り読後感に不一致はなかったので、順当に票が集まる作品だと思います。
感想は以上です。
3-05 その竜は、人間を知りたいと思った(感想依頼あり)
タイトル感想
人の味を知りたいと思わない竜であることを期待します。
ファンタジー作品であり、竜の視点なのかもしれません。
あらすじ感想
あらすじで「誰が何をする」物語なのかが明白なのが良かったあらすじです。
読者に提供する「ナラティブ」という部分がどういうものを提示するかで、作品のムードが決まりそうですね。俺つええっていうものになりそうです。そういうのを期待できるあらすじでした。
本文感想(21/99)
面白かったです。今後、この凸凹な主人公とヒロインがどのような旅路をするのか。がっちりと興味を掴まれました。最後に主人公は復活するんでしょうね。セシルと感動の再会! みたいな結末を予想しています。
安定感のある走り出しでよかったです。安心して読める作品ですね。
主人公 :竜
主人公の能力:人とは比べもんにならない力
世界観 :ハイファンタジー。勇者という概念もあるので、RPGライクな設定がありそうです。
異変・事件 :リュートに成り代わる
問題・課題 :不明(予想ですが。人の世を知る。物見遊山の旅の中で、竜が一肌脱ぐ。みたいな珍道中を繰り返してくれると思っています)
決意・覚悟 :魔王を倒す
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):強くて頼もしい、だけど世間知らずな竜の主人公の挙動を楽しむ物語でしょう。竜ゆえの倫理観等で、魔王討伐の旅をしてくれると期待しています。
竜にとって、勇者に成り代わるというのは。冒険の始まりではあるんですよね。孤独な彼が人里に降りて、色々と経験するっていうのは紛れもなく「刺激を受ける」旅になるはずです。
突飛な設定に見えますが。彼が旅に出る時。彼の力を試すように。彼に絡んでくるチンピラ達の存在は、旅をテーマとする物語では当たり前のように存在します。安心感があります。噛ませ犬です。
そんな彼が「初めての障壁」をどのように打破するのか。その打破の仕方で「作品のムード」が決まります。そんな彼を掣肘するのが、ヒロインのセシルです。
いいバランスの作品になりそうです。是非とも、連載頑張ってほしいと思います。
感想は以上です。
追記です。
感想依頼がありましたので。突っ込んだ感想ですか。
じゃあ、ちょっと気持ち悪くなるかもしれませんが。突っ込んだ感想をしてみましょうか。
小説に限らず。物語の始まり。書き出しというのは「物語全体の縮図」であると考えています。物語の結末に悩むならば、物語の始まりにヒントがあったりします。
もしも作品の書き出しが復讐譚であるなら、結末は復讐を終えた時に迎えます。
そして、この作品が「結末を迎える時」は竜は何を手に入れているのか。
この点を考えてみた時に。ちょっと想像がしづらいキャラクター構成です。
竜に欠点がないんです。もしも、欠点があれば「その欠点に対して物語」が展開すると期待できるんですが。そこは数千年単位で生きている竜ですから。人間では及びもつかない感覚で生きているでしょう。さらには、人間たちとの差異にも「心配り」ができる程度には「バランスのとれたヒーロー」として存在しています。
こういった「欠点を持たない。成長要素のないヒーロー」は「カタリスト(触媒)・ヒーロー」としての期待感が持たれます。
周りに成長を促すヒーロー像です。悩みを持つ人に、助言や助力をし、成長を促すのです。
しかし、そういった期待で見たとしても「どちらかというと騒動を起こしてるタイプのヒーロー」だなぁ。と、期待感も修正をする要素はありました。
この作品が結末を迎えるとき。
竜は何を手に入れているのか。
彼は人々に何を与えているか。
ここの部分を決めて、竜自身にも成長点を整理(人に興味を持った理由はなにか?)してみると、魅力の幅が広がるようには思いました。
とは申してもですね。このとぼけた竜に振り回される相方。サクッと魔王を倒して、ヒーローが復活して、セシルが喜ぶ姿。といったように「人の尺度で図れぬ」といったような、奇想天外さを楽しむ作品なのだとしたら、私が上記で伝えた感想も蛇足でしかありません。
セシルにはリュートの復活。という強い目的があります。
竜はその器や、大度の問題もあって「目的への切迫感」が薄いので、そこのアンマッチもあって独特なムードの作品にもなってるんですよね。だから、良し悪しっちゃ良し悪しな気もします。
神話の法則の部分で見れば、酒場で絡まれるのは「第一関門の突破」とされる部分であり、彼自身の力を試されました。次のステップとすれば「試練、仲間、敵対者」といったものとの対峙や融和なのでしょうが。彼の「竜」としての規格外の能力で「全部なぎ倒してしまう」未来しか想像ができなかった。というのもあります。
力があるゆえのことではあるんでしょうが。
竜ですらも困難と捉える障壁の登場があれば、見ごたえにもなるんでしょうが。それはどういうものになるんでしょうか。
敵単体としての脅威ではなくて、群体としての脅威になるのかも。
彼が興味を持ったのは「謝罪をする勇者」というものでしたから。彼が興味を持てない人々も存在するでしょうし。
その時に竜が「どんな対応をする」のか。そして、セシルはそれをどのように制御できるのか。
ほのぼのとした物語であっても、さじ加減一つでスリルが伴う物語にもできます。とにかく「規格外な竜」故の物語を、期待しながら読者としてはページをめくっていくことでしょうか。
その中で竜である彼が「何を学んでいく」んでしょうね。それが書き出しの時点でも明示的にあれば、もっと魅力的になったんじゃないかな。と、智子は思っています。
ちょっと、深堀りした感想でした。
感想は以上です。
3-06 悪役令嬢は訳アリ王子を化粧沼に墜とすみたいです!
タイトル感想
どういう訳アリなんでしょうね。化粧に興味があるタイプの男性なのでしょうか。ファンタジー世界の化粧とそれに影響されていくとかいう話しなのか。
あらすじ感想
短いながらも、異世界転生モノとして十分な量のあらすじでした。おそらく「とある令嬢」というのが訳あり王子なのでしょうか。令嬢に「?」ってそういうことでしょ。
主人公の能力の発揮以上に、色のアリそうなキャラクターが登場しそうです。
化粧で成り上がるってどういう設計なんでしょうか。面白そうな設定です。
本文感想(20/99)
タイトルとあらすじで期待していた書き出しでした。届くべきターゲットに届く作品でした。
この王子が女性装を好むという嗜好の男性ということでしょうかね。
女性向け作品の「応報」としての特徴なんですが。
パートナーの格によって、ざまあを行う。みたいな所はありますよね。それらのお約束を踏襲できた書き出しでした。この点は女性読者達にぐっとくるポイントの一つでしょうね。
主人公 :ルージュ(七条愛美)
主人公の能力:化粧品メーカーに務める専門知識
世界観 :異世界転生からいきなりの婚約破棄。この二つを合わせますか。という驚きとともに読み進めてました。
異変・事件 :婚約破棄(もらい事故感は強いですが……)
問題・課題 :不明(転生か。いきなり記憶がすげ変わるみたいなものなので、彼女自身の課題とのリンクは見えない)
決意・覚悟 :婚約破棄に関しての報復としての決意
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):化粧等の技術を活用しての、逆転劇を約束しています。
転換となるイベント自体が「二つ」並んでいるため。インパクトが相殺しあった感はあります。
いきなりの異世界転生から、現状を飲み込む、そしてよくわからないままに婚約破棄の流れとなっているので、ジェットコースター並に情報が飛び込んできて、あれよあれよというまに、物語の目的まで到達しました。
この決意に至るまでが早いので、これを飲み下せる読者と。飲み下せない読者で分かれそうですね。もう少し、字数があれば丁寧にクッションを交えながら、書けたんじゃないかなぁ。と思ったりしています。
もしかしたら、このジャンルを読み慣れた方々であれば、さほど気になるようなものではないのかもしれませんがね。
化粧に興味ない女性の方が少ないであろうから。なかなかおもしろい着眼点の能力だとは思います。これらの能力でどんな風に困難を切り開いていくんでしょうかね。
想像もつかない領域でした。なろう系はいろいろありますね。
感想は以上です。
3-07 僻地コンビニの雇われ宇宙人店長はKawaii原生生物が好き(感想依頼あり)
タイトル感想
情報量多いですね。SFであることは十分伝わりました。宇宙人店長の身分が「宇宙人であることを隠しつつ」なのか。宇宙人が公然と受け入れられた世界なのか。
あらすじの情報次第でしょうか。現時点では世界観まで掴み取れなかったです。
あらすじ感想
前者のイメージでしたね。面白そうな作品です。しかし、その魅力を「書き出し」で約束できるか。とても興味深い作品です。kawaiiの定義をどのようにされるんでしょうね。いつかくる宇宙人との邂逅のための教則本になりそうです。
本文感想(19/99)
こいつは感想が難しい。基本的に感想は「面白いなら面白かった理由。いまいちならばいまいちだった理由」を述べるんですが。
どうして、面白いのか。言語化しづらい作品ってやっぱあるんですよね。
主人公 :私(宇宙人くん)
主人公の能力:不明
世界観 :ローファン。いや、SFなのか? ギャグの類です。宇宙人ジョーンズっぽさはありますよね。
異変・事件 :成熟しきっていないメスからの救援(いや、作中にメスってあるから書いてるだけです……)
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):宇宙人という視点から描く原生生物達の生態を面白おかしく叙述していく。
ファースト10って実は、埋まって無くても面白かったり、勢いがあったりはするんですよ。その代表例とも言える作品です。
宇宙人視点ということもあって、もっと壮大なテーマを噛ませつつ、このコメディ作品を作り込む事もできそうです。
現状はまだ「舞台設定等」の開示に努めていて「めちゃんこ面白そうなコンビニ」という舞台が出来上がり、何しても面白くなる。という極上の材料を揃えて、引きとなったところです。
あらすじの「僕ら」とルビが振っていた部分は気になりますよね。あれって誰の語りなんでしょうね。サオリさんが実はボクっ娘で「私」が宇宙人であることを「本当に看破」していて「私」が楽しく地球で生活できるように、それとなく援助してくれるのかもですね。
面白そうなセットアップでした。続き読んでみたいです。
全体としてのストーリーラインまで示される形であれば、もっと「期待感」が高まりそうではありました。
感想は以上です。
感想依頼があったので、次の通り感想を追記します。
たくさん。ツッコミどころがあるんですが。そもそも、あの作品を書いたのは宇宙人だと思っていたので。あなたが原生生物であることに驚きです。
踊っていただきましょう。
言語化するうえでも、見えてきた感はあるので。メモも込めて色々残していきます。
私がコメディの名手であることを見抜いた方はそうそういません。さてはあなた……「天才」ですね? 言及すると、かわいそうですから。そこは深くは触れませんが。ゲスパー智子のアンテナがビンビンです。
この作品が「満足感」を伴った読後感を得られる理由を含めて感想も用意してみましょう。
「一番笑える」とされる所をお訊ねでしたが。別にそこを強いて挙げることが面白みになるのか。というと、また別の話です。全体的な文脈としての面白さなので。選ぶのはちょっと難しいです。
このコメディ作品の優れている所はナラティブの優秀さです。
基本的にですが。私が「ファースト10」として参考にしている項目の多くを「抑えなくても、面白みが伝わる作品」の共通点というと。コメディジャンルはその強みがあるなぁ。と思っています。
今回の書き出し祭りでは言及していないんですが。
物語の形式で。
人の物語なのか。
物の物語なのか。
場所の物語なのか。
というのは読み取っていくうえで、指標になります。グルメものを通したヒューマンドラマ形式の作品のときは。小料理を提供するお店など「場所」が固定された中で展開される作品があったりします。
御作の作品もどちらかというと。「場所の物語」としての効果がある作品でした。
「ああ。コンビニという舞台で行われる原生生物の愚かな所すべてを含めてKawaii」を堪能する物語である。といった「作品の楽しみ方」が十分にアピールされていること。
作品のムードからコメディを基調としているので「人の成長であったり、人情に関するサブテーマ」等を有するよりも。
まず第一に「コメディとして面白い」ことが優先されます。もちろん、サブテーマに含めても良いんですけど。それはおいおい二話、三話といったように拡大していく情報の中で提示すればいいだけです。
実際のところ、未成熟なメスが飛び込む(ヘラルド的事件の予兆)ことによって、今後のサブテーマを提示する。という所までまとまってれば、コメディとしては十分な量であると思います。
この作品は「コメディ」であることを約束したムード。
「場所の物語」としてのセットアップを示したこと。
この二点によって、多少情報が不足(主人公の能力が未知数で、コンビニに降りかかる問題や課題が不明であったとしても)していたとしても、ナラティブが優秀なので面白いとなる作品でした。
似たような力がある作品は『3-16 引きこもり魔法少女の異世界放浪記』も同質の力があります。この作品もナラティブが優秀なので、主人公自身の課題の描写なしを差し引いても「ギャグコメディだし、面白いし、全力疾走してる」というだけで、票をかっさらう力がある作品です。
ジャンルとして「求められる」要素を優先的に抑えた結果「面白い」のだろうなぁ。と智子は思いました。
感想依頼がなければ、深くは考えなかった要素かもしれません。
コンビニという舞台も「意図してか、意図せざるか」わかりかねますが。
「社会的な階層において、特殊な労働環境」ではあるので。その部分も面白みや舞台設定への期待につながっていると思います。
『コンビニ人間』という作品でも昔、触れていたんですが。
社会的に見下されている。コンビニで働いている人たちですら自分たちを差別している。
といったような、労働者自身の視線にも切り込んだ作品だったんですが。コンビニっていろんなお客さん来るんですよね。裕福な人も。裕福じゃない人達も来るので。
コンビニという「現代においても特殊な環境」であるため、物語の引き出しがたくさんある作品です。
このセットアップが作れているのだから、コンビニにやってくる人々を元に「いろんなコメディで、kawaii」の切り口が作れる。良い書き出しだったと思います。
コンビニもの。一時期流行りましたよね。やり方次第で、短編連作として様々な作品が作れるでしょう。
さあ、どうでしょうか。感想は以上です。踊っておいてください。
3-08 翠玉の事件簿 〜魔導人形は見た! 欠けた遺体の真実〜
タイトル感想
ファンタジーでミステリーやるんですね。空気感伝わりました。
あらすじ感想
ファンタジーでミステリーをやる時は確かルールがあるんでしたよね。ファンタジー世界での「論理」を厳密に適用しての、推理ゲームであるならば存在しうる。みたいな感じでしたか。
ちょっと固有名詞が多いので、今の時点でも「ちょっとこんがらがってきたわぁ」と混乱している部分はあります。しかし、この作品が「ミステリー」であるのだ。と、腰を据えて読めば飲み込めそうです。
本文感想(18/99)
タイトルやあらすじから予想していた。
ミステリーというよりかは「家政婦は見た」的なサスペンス寄りのそれとはずいぶん違う印象の書き出しでした。
どこから書き出すか。というので、印象はずいぶん変わりますね。書き出しは難しいです。
主人公 :アキム
主人公の能力:不明
世界観 :独自性の強い世界観。ハイファンタジー世界。からくり人形なんかも存在し、貴族もいる。ミステリーというよりかは、アキムとミアのヒューマンドラマに寄せた作品なのかもしれません。
異変・事件 :密室殺人
問題・課題 :不明(密室殺人の解決に伴い、東奔西走。その時に「アキム」の隠している瞳の問題。能力などとの向き合いが予測されます)
決意・覚悟 :不明(主人公自身が何かの願いとしての描写はまだ見えていない)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):不穏な協力者、ミアの存在自体を楽しみ方として提案しています。
タイトルとあらすじで予想していた「楽しみ方」とは別のほうこうの書き出しでした。かなり意欲的なそれだと思います。作品の中で「一番の魅力」として考えているであろう「ヒロインの妖しさ」自体に焦点を当てた結果だと思います。
ハイファンでサスペンス見れる!
と思って、ウキウキワクワクしてやってきた読者は混乱してしまう書き出しだったと思います。
二話目以降あれば、アキムが抱える課題や。ミアの不穏さを含めて、情報が開示されていくことになるのでしょう。
あとは。そうですね。「あらすじ読まないで本文読む」という人たちもか少なからずいるので、あらすじ飛ばした人たちも混乱する導入だったように思います。
書き出しという制限ではなく、腰を据えた長編として、舞台設定やバックボーンに文字数を割いた形で、読んでみたい作品でした。
感想は以上です。
3-09 ちょっとお祈りメールに喧嘩売ってくる
タイトル感想
気持ちはわかります。就活関連の現代ものでしょうか。
あらすじ感想
主要なキャストが三人存在していて、不穏な脅迫事件をきっかけに絡み合うサスペンスでしょうか。苦学生の彼がどう絡むのか。巻き込まれるのか。もしかしたら、主犯なのか。
闇バイトとかも昨今は話題になりましたから「現代らしい」喜劇、悲劇交えたサスペンスを期待しています。
本文感想(17/99)
時制についてはわからないように書いているのだろうとは思っています。読者への「叙述的」な誘導もありそうです。
面白そうなんですが。安心感がちょっとないなぁ。と思ってしまった作品でした。
着地点が見えないというか。何かしら事件として立件できるものなんでしょうかね。
ペナルティの内容も見えてこないし、同じような見解を作中の警察官達もおっしゃっております。この物語って「まだ始まってない」んですよね。
なので「誰が主人公であるのか」という注目するべきキャラクターが見えてこないのです。
事件(まだ起きてないけど)解決に望むのは、低身長をコンプレックスに持つ愛らしい警察官と高身長のバディによるサスペンスを期待できるシーンもあれば。
吉國という、就活に疲れ切った男性によるクライムサスペンスとして期待できる描写もあります。
ヘイトを高める要素として小佐向和斗も序盤から登場しています。
この三者の軸を元に、脅迫(脅迫なのかな? 威力業務妨害にはギリギリまだ当たらない)事件が展開していくことは期待できました。
しかし、要素が多すぎて、ファースト10で並べるとしたら、ちょっと難しい感じはしますね。
視点変更に伴い、作品ジャンルが少し変わるんですよね。
主人公 :私(薗木彰子)
主人公の能力:警察官
世界観 :現代もの(捜査官のタッグによるバディもの)
異変・事件 :脅迫にも届かない段階の投書
問題・課題 :不明(薗木彰子自身が何かしらのコンプレックスを抱えていることは分かるが。彼女自身を導くメンターとしてバディは描かれていない)
決意・覚悟 :不明
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):二人の関係性だけでみるなら、バディ的要素の作品として期待できそう。
主人公 :俺(吉國明生)
主人公の能力:不明(特徴として見るならば、非常に切迫している……)
世界観 :犯人ないし、巻き込まれるタイプの犯罪者。クライムサスペンス的要素があるのかも。現状では「ジャンルを確定」できる情報が少ないので、読者の選好に悪い影響を与えてしまっていそう。
異変・事件 :SMSによる通知から何かの事件に巻き込まれるのか?
問題・課題 :人に必要とされない。といった、社会的な孤立との対峙。テーマのチョイス的に、そこに言及するものと期待したい。
決意・覚悟 :不明(まだ能動的な様子はない)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):巻き込まれ系のクライムサスペンスなのかもしれませんね。
上記の部分でも触れたんですが。
「まだ物語が始まってない」ので、「俺」の役割が見えてこない段階でした。見えてこないと「作品のジャンル」が不明瞭なので、クライムサスペンスと期待して読み進めると痛い目を見るのかもしれません。
こういった部分で、いくらか票はのがしてしまいそうです。
感想は以上です。
3-10 拝啓 義母様、私、代理の復讐に参りたいと思います
タイトル感想
拝啓から始まるタイトルが被りましたね。もしかしたら、何かしらの流行りがあるんでしょうか。
あらすじ感想
驚きです。『2-16 拝啓 義母様、温かい家庭は贅沢すぎました』と全く似たような構成の作品です。拝啓から始まるタイトルには何かしらテンプレがあるんでしょうか? 類例作品があるとか?
これまた幼い夫に嫁ぐ。というのですから、智子好みなんですが。ここまでかぶると。何かしら「テンプレ的なお約束」のあるジャンルじゃないか。と期待してしまいますよね。
幼い夫と年上の女房って刺さりますよね。テンプレとしてのはやりがあるなら観測したいです。
タイトルあらすじ感想追記
第二会場の作品とダブりがあるようで、こちらの作品が残されたようです。
本文感想(2/99)
もうちょっと続きを読みたい作品でしたね。だけどこの「村を焼くタイプ」の物語のセットアップって、どうしても字数がかさむし、演出上の工夫が必要になるものだと思います。
主人公 :イリス・ホロウ
主人公の能力:人殺しを厭わない兵器としての能力
世界観 :ナーロッパ的世界観。荒事が存在する。シリアス寄り。
異変・事件 :二つある。一つはイリスがセウロス一家への嫁入りによる「生活環境の変化」。二つ目は「セウロス一家の崩壊」。
問題・課題 :復讐譚。夫の望みか。
決意・覚悟 :夫の願いに応じるヒロイン。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):復讐に狂うショタと、それに追随するおね。本当はもっと「イリスの能力」を活用しての無双とかも、魅力要素に捉えることはできそうでした。
タイトルとあらすじで約束していた「おねショタ成分」はちゃんと補給できたので、概ね満足な読後感の作品でした。
難しい作品ですよね。構成上「セットアップ」を三つ書く必要(イリスの嫁入り前、嫁入り後、セウロス一家崩壊)があるので、そこの部分に注力した書き出しになりました。結果、イリスがどんな能力を持っていて、どんな力を発揮するのか。という部分までは見えてこない文量でした。
とは、まあ。こんなこと申していますが。私の前回の参加作品(3-19 オソガル少年の嫁取り物語 ~乳のデカい女をもとめて~)も「ええい、バトルはいい。掛け合いで飛ばすぞ!」と全力で癖を押し出して、書き出しとしたので。この指摘は承知の上だろうなぁ。とは思いながら読んでいました。
作品の感想としては二作目なのですが。一作目に読んだ『3-23 明日への扉 〜救世主は、10年後の『私』たち〜』とは対照的です。この作品は「外的な課題」重視の作品構成でした。
しかし『3-10 拝啓 義母様、私、代理の復讐に参りたいと思います』は「内的な課題」重視の作品構成となっています。
おそらくですが。
この作品の「魅力」となる部分は「イリス・ホロウ」という「おねのヒロイン」と「シャルル・セウロス」という「ショタのヒーロー」達の復讐譚を基軸としたうえで、今後の物語が展開していくもの。と、考えています。
作中にある「イリス」の呪いというものが、何を指しているのかわかりませんが。彼女が原因で不幸が起きるというのであれば、彼女の存在自体がそのうち「夫からの拒絶」につながるといったスリルも期待できる作品です。
そして、その拒絶に耐えられるか。耐えられないか。イリスは何を手に入れるのか。呪いを断ち切れるのか。
といった「精神的な課題」によって「テーマ」を提示して、読者への引きとしています。
しかし、作中で「イリスやセウロス」がどんな力を発揮して、復讐を成し遂げていくのか。という「明確な」アピールが薄かったです。
どんな活躍をしてくれるのか。どんな敵対者が存在するのか。まだ、全体的なログラインが見えてこない情報量の書き出しでした。
感想は以上です。
3-11 天王町の不思議現象、解決します!
タイトル感想
不思議と銘打つ場合は。ライト文芸畑の「妖怪等」を含めた現代ファンタジー感がありますよね。そういうものな気がします。
あらすじ感想
ライト文芸とされるタイプの「成人した女性向け」作品とは違う年齢層の作品でしたね。シンプルですけど、こういうあらすじも明快でいいですね。神様や妖怪との出会いが「どんな感情を引き起こす」作品なのか。が本文で明らかになることを期待しています。
本文感想(16/99)
主人公 :朽木奈子
主人公の能力:薙刀を扱う能力
世界観 :現代ファンタジー。ローファン。神社ともあるので、神道絡みかも。
異変・事件 :不思議な薙刀を授けられる
問題・課題 :不明(まだ主人公が抱える課題が見えてこない)
決意・覚悟 :不明(まだ状況が飲み込めていない形で受動的に進んでいる)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):あらすじにもあるように、様々な怪異と向き合っていくということを期待できる。本文ではまだ「はしりもはしり」といった情報量なので「今後のムード」まではよく分からなかった。
順当な作品です。児童文学を意識した年齢層や、語彙の作品は難しいですね。物語の動きとしてはスムーズでした。
主人公がどんな環境に置かれていて、それらを打破するために神社へ向かう。という動機は物語の導入として、馴染のあるものです。
更には「特別な力を持つ薙刀」を与えられる。というのも、神様からの祝福を前提とした「神話的」なそれと似通った象徴的なシーンです。
この「黒猫」に関する問題とは別に。作品全体を通して「主人公」が物語に没入していく理由。や、動機といったものが展開されるとまた「今後の引き」や「ムード」を示す情報量になったと思います。
一人称視点というのもあって「物語る」上で、多少の制限が出てくる作品なのが惜しいところですね。
黒猫ちゃん達を切り飛ばすよりかは、優しく小突く位でお願いします。
感想は以上です。
3-12 犬と香りとイノベーション!(感想依頼あり)
タイトル感想
わからん。イノベーションってなんでしたっけ。
犬とあるので、動物をテーマにしたものでしょうか。猫をテーマにしただろう作品もほかにありました。
あらすじ感想
テンション高めで良いですね。イノベーションってあれか。企業の商品開発とか、なんかそういう製品絡みの跳ねる用語でしたっけ。
セットアップという「舞台や主人公たちの背景」にかかるあらすじです。物語としては「何が起こる」のか。本文で主人公たちがどんな課題に立ち向かうのか。確認したい作品です。経済ファンタジー小説かぁ。ジャンルとして想像してなかったですね。
本文感想(15/99)
こういうテンポとセットアップで、物語を展開する力を私も欲しいです。主人公の朝の描写などを含めて「後半」の驚きまで展開できていました。
面白かったです。
主人公 :アルマ・ラウリーン
主人公の能力:においの何でも屋としての能力
世界観 :ハイファンタジー。他種族共生のエンタメ要素強めの世界観。
異変・事件 :体臭を気にするスズリ・アロイからの依頼
問題・課題 :不明(どちらかというと、アルマという主人公の成長要素ではなくて。カタリストヒーローとして、他の人々の成長や課題の手助けをする形式の作品)
決意・覚悟 :スズリ・アロイのちからとなること。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):特殊な舞台設定の作品であるので、それらの舞台設定自体も魅力の一つとして存在します。華麗に軽やかに「匂いの問題」を解決し続けるアルマ達を楽しむ作品ですね。
上手でした。何が上手って、演出が最高にうまい作品でしたね。
相方のカヴィルについては、そうそうにパーソナリティが明かされる形で描写があるのに、アルマは不明なまま展開してたんですもんね。手癖か忘れていたのか。そもそも描写するべきほどの特徴がないのか。といったように、色々よぎりながら読んでいました。
最後にそれも含めて、鮮やかに回収したのは読んでいて気持ちの良い展開でした。
匂いに関する問題をどのように解決するのか。日本の食品絡みで「香料」を含めて、いろんなものが物語に転用できそうです。どんな話が展開されるんでしょうね。連載で読めるのだとしたら、非常に楽しみな作品です。
でも、メディアミックスこみこみの企画として、見た時にも「ビジュアル」に起こすが難儀な企画にも見えます。絵で映えるように描くとしたら、どう提案していくのか。
なかなか難易度の高い作品です。
感想は以上です。
感想依頼がありましたので、次の通り追記します。
感想依頼に圧倒されますね。上から順番にお答えしてみます。
楽しんでもらえてるようでよございました。ご丁寧にありがとうございます。
感じたことなど。
現代ならでは。な舞台設定であるなぁ。とは思いました。多様性。共生。合わせて「配慮や優しさ」による物語の展開。といった部分は「センシティブ」な時代ゆえのチョイスな感覚もあるなぁ。と感じていました。
しかしながら、その「チョイス」に不似合いな性的な描写も一点ありました。これは「読者ターゲット」の問題ではあるので「いやいや、この作品は男性向け作品なので、女性読者からの嫌悪は考慮しない」というのであれば、全く構わない領域の話です。
しかし、作品で取り扱おうとしているテーマや、ナラティブを考えたときに。アルマに関する描写についても、センシティブな領域をもたせると「男性及び女性」読者どちらにもターゲッティングできる要素があります。
主人公の外見描写にかかる要素や、フェチズムの一つとして胸についての描写があるものなのだと思いますが。この描写の引き合いに関して「敏感」な女性読者は気づき、敬遠される可能性はありそうです。
ターゲットをどこに設定するかで、描写の配分を整理できそうですね。
ちなみに、ご存知だとは思いますが。智子はおっぱい大きいキャラクターのほうが好きです!
楽しく読めたか。
楽しく読んでました。智子は基本的に「バチバチの保守的な思想」を持ち合わせた人間です。
「毛深い獣人族が季節の抜け毛混入により他人種へのアレルギー発症を理由にパン屋を解雇させられてしまう」という身も蓋もない舞台設定の短編を書くような人間です。ですが、楽しめました。
ナラティブの問題です。楽しみ方が明快な作品はそれだけで印象が良いです。
文章のリズムについて
考えたことなかったですね。智子はあんまり文章の巧拙を気にするタイプの読者ではないので、この点でお力になれるか。わかりませんが。読み直してみましょう。
読み直しました。読み直しましたよぉ。
多分智子はお力になれませんよ。読むうえで、文章の連続性とか、前後のキャラクターからの文章的な誘導とかも。矛盾はなかったし、混乱する部分も見当たりませんでした。
やっぱり削ってはいるんですね。かなり絞り込んだ描写だとは思いました。その描写の中にもキャラクターの造形や、心情にかかる部分などに集約した形だったようにも感じています。
エンタメコンテンツは「会話文」から類推できるキャラクター性を重要視する方はお多いですよね。残っている地の文についても「キャラクター」の洞察、能力、感情表現、キャラクター自身の性格などについてのものが多かったです。相当頑張ったのだろうなぁ。とは思います。
意味がわからない文章はなかったですが。感想依頼に応じて、読み直してみて、揚げ足を取るような勢いで読めば。一つあります。
これはその人のセンスの問題や捉え方の問題だとは思いますね。
忘れてはならない。が強調している部分もあって、テンポの問題で見れば悪くは見えるんですが。
この言及も難しい所があります。
なぜなら、この作品自体が「地の文」が主人公のアルマに寄せて書いています。
彼女は「社長や経営者」という責任感のもと「こうあれかし」といった理想のためにそう振る舞う姿勢があります。しかし、前日の新聞をチェックしたりするような抜けたところもあります。
さらには収支はかつかつ。
こういった「よろずうけたまわり」を前提とした舞台設定等では「困窮している。儲けにこだわらない。人情派」といった設定は非常に好まれます。
こういった諸々の描写で「人物造形」にかかる直接的な描写を省きつつも、演繹的な表現を重ねて、キャラクターが浮かび上がるタイプの作品です。
その狙いの一端として見た時に。
「同じ表現を重ねる」
というのも、アルマの今後の姿勢(ちょっと抜けたところ。社長らしくと背伸びしちゃうところ)やイメージに添わせようとした結果なのかも。とは思いましたが。強いてあげるならば。というところでしょうか。
上記の点でもちょっと触れたんですが。
基本的に地の文の描写自体を「キャラクター」を表現することに比重を置いている点は全体的に良かったと思います。
キャラクターを「説明的に」描写するものとは違い、アクションによって、表現しているシーンを繰り返すこと。が良かったです。色々あるんですが。いくらか抜粋してみましょうか。
カヴィルという青年は、喜怒哀楽の感情表現を表に出さないタイプのキャラクターです。「古い男」像のキャラクターではありますよね。こういう風に感情が動作で表にでるタイプだという表現でした。鼻を鳴らすなど、それこそ獣人としての性質にかかる動作を示すなど。この世界観に期待される描写を重ねたように思います。
こういった細かい部分で、世界観の構築がうまく作品だと感じています。
決め台詞があるのも良い点ですね。よろずうけたまわり。のような「何でも屋」ですからね。短編連作のたびに「決め台詞」があると、場面の転換もしやすいです。水戸黄門の紋所を見せる決めシーンみたいなもんです。
どうでしょうか。依頼文を上から下まで舐め回すように読み漁り、あの手この手で作品について言及を重ねました。
読めば読むほど。推敲重ねたのだろうなぁ。と思いながら読んでいました。
最後に。書き出しのレギュレーションでは絶対に表現できない領域なんですが。この物語のラストってどうなるんでしょうね。
現在はナラティブによる「各キャラクターのエピソード」の一話を提示する。という形で、読者の期待に応えているわけなのですが。
この「香り」というテーマで「イノベーション」を起こす。とあります。
イノベーションって言葉は「かなり大きな」意味があります。
その業界の新機軸となりうる発明です。
それは、業界全体を刷新し、新しいムーブメントになるものです。
身近なもので言えば、スマホは新機軸の一つでした。我々の生活を一変させる。歴史を変える。そういった領域に至ったものが「イノベーション」です。
それと同じスケールを今後の展開で見せてくれるのか。各話のエピソードストーリーが繋がりあって、大きなストーリーにつながるような「香り」の物語を書き上げて欲しいです。非常に難易度の高い作品だと思いますが。応援しております。
感想は以上です。
3-13 【略名は本王女で】本当の貴方は王女様ですと言われたので、別の世界に行ってきます!(感想依頼あり)
タイトル感想
異世界転移ものでしょうか。王道なストーリーラインな気がしていて、清々しいタイトルですね。安定感があるタイトルは期待感も高まります。
あらすじ感想
転移じゃねえのかよ。ひざまずくイケメンは現代なのかよ。読むのが怖いけど、面白そうですね。
リアリスティックな人物描写をしているのに、異世界に飛ばない。といったものであれば、独自性として売り出せそうです。このまま現代で「お姫様」になるために、全力を尽くして欲しい作品です。異世界にはいかずに、地に足ついたお姫様にならんと全力疾走してほしい。
本文感想(14/99)
意外っちゃ意外でしたね。なろう系の異世界転生って「現実世界で抱える自身の課題」と「異世界にわたり、物語に没頭する理由」をリンクさせない。パターンが主流だと思っていたので。ここまでがっぷり四つで組み合う感じの作品とはイメージしていませんでした。
そういった背景もあって「異世界にはいかないシュール系のヒューマンドラマ」の可能性もよぎっていました。
タイトルに「行ってきます」とあるんですから、異世界転移ですよね。
主人公 :今野 唯
主人公の能力:不明(王族としての何かがあるのかもですね)
世界観 :異世界転移。困窮にある異世界を救うというヒロイックなストーリーを基本とした世界観。
異変・事件 :主人公が「特別感」を伴って、異世界に導かれること
問題・課題 :非常に危険な世界にとどまり「特別な人物になるための試練」
決意・覚悟 :困窮した世界を救う
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):異世界転移なので、困窮した世界を助ける過程。そして、その過程を導くであろう。「シャドウ(破滅をもたらす危険性のある)としてのメンター」であるルヴィンと「主人公を善なる方向に導くメンター」としてのグーシュとの板挟みなどを期待できる構造。
ちなみに申年の智子です!
上手な作品でした。「ドラマティック」です。
『外的な課題』(困窮した申の国)と『内的な課題』(特別な人になりたいという承認欲求)とが両立したいいドラマです。
そして、それらの「承認」を満たすことを後押ししようとするのが「ルヴィン」です。そして、それを危惧するのがグーシュという。
キャラクター同士の思惑や、設置自体が「物語のテーマ」を内包しています。
現在、読み始めて14作目ですが。「物語の構成」として見た時に、とっても丁寧にまとまっている構成の作品だと思いました。
ぜひ、最後まで「スリル」が伴う形で、彼女の「欲望」をくすぐり続けて、大きな成長を見せて欲しいです。
感想は以上です。
感想依頼があったので、感想を追記します。
上から順に書いていきます。
あい。こんばんは。慌てる必要はないです。今回の書き出し祭り(21回)では、感想依頼の受け付け方を新しい試みで対応しています。期間中受付自体は止めることなく、対応するつもりです。
ご丁寧にありがとうございます。お褒めというか。お褒めになるんですか。ああいったキャラ造形の配置を「意図して」できているならば。その技術は再現性のあるものとして、意識し続けて欲しいとは思いました。シャドウって大事ですよね。
「何者かになりたい」という願望ですか。変身願望とでもいうのか。厳密には「変身願望」ではなくて「成る」という部分に大事な要素はあります。
「成る」という願望について、設定の仕方が「お姫様」といったものだったので、メインターゲット女性という集合の中での「願望」としての枠組みだとは思います。男性をターゲットにできているか。というと、そこはできていないとは思います。
「お姫様になりたい」という要素が「フェミニン」な願望だからです。
でも、人間というのは基本的に「何かに成る」ことを求められます。
それは職人かもしれませんし、事務職かも。とにかく、ブルーカラー、ホワイトカラー問わず。何かに成ることを目的に、人々は教育を受けます。
その中の「ありすぎる進路」を前に、選び取る道がわからない人々がいます。そういった人々をターゲットとして設定しているのでしょうね。
ターゲットの見定め方がまだふわっとしているようには見えます。本来なら、逐次のやり取りをしながら、キャラクターの意図や造形について意見を伺ったあとに、答える領域です。
示された情報をもとに、推論に推論を重ねての回答であるので。話半分で聞いといてください。
想定ターゲット層について
女性読者を対象としています。さらには「お姫様」になるのだ。という幼い頃からの願望の話題があります。この「願望」の捉え方を整理していきます。
主人公の「今野 唯」は、まるで出世魚のように。「女の子は大きくなったらお姫様になる」といったイメージで女という性別を幼い頃から捉えています。
フェミニストのお姉さんやお兄さん達が読んだりしたら、喧々と文句をいってきそうな認識です。
智子は「超保守的」な思想の人間なので、この認識は至極当然なものとして捉えているタイプです。
しかしながら、世の中は現在。女性たちの出世魚願望を認めません。女性たちも社会で活躍することを推奨します。さらに現実的な話題を触れると。家族間の配偶者同士の間で「一方的な扶養関係」を前提とした時。片方の負担が大きいし、イニシアティブを取られる危険性(経済的DV)も十分にありえます。
昔の仕事ですが。DV案件を対応したことあります。なかなか厄介です。男性からのDV認定も。女性からのDV認定も。同等に厄介でした。本人たちの執着なども相まって、疲弊する案件の多いこと。神経をすり減らしていたのを思い出します。
現代の人権感覚は、女性たちに「働け、自立せよ、男たちに依存するな」と尻をひっぱたくわけです。
ひっぱたかれた女性たちは「お姫様が約束されていたのにその認識を変えざるを得ない」というストレスがあります。
じゃあ、ここまで申し上げると。お察しがつくと思うのですが。
「お姫様」って現代の女性たちが置かれている現状の中で何を指してるんでしょうね?
「お姫様」というのは「戦前、戦後あたりから存在している専業主婦」という概念の比喩です。
社会的に求められる女性の役割を「高度経済成長期を含めた家庭を取り仕切る専業主婦」という部分を「お姫様」(女の子が出世魚のようにつく役割像)と捉えています。
さて、ここまでつないではじめて。ターゲットの需要を整理できると思います。
私の中で基本的な捉え方ですが。「現代のマジョリティの女性向け作品の多くがお姫様願望(女性としての性別による特権)を内包しつつ、社会から要請される活躍(女性活躍、能力の活用等)を満たした女性像」を求めています。
翻って。その「お姫様願望を内包した人々」をターゲットとした作品になっているか? という部分を見るべきでしょう。
じゃあ、そういった「お姫様願望を内包しつつ、女性の活躍を望んでいる人たち」はどんな作品を望むんでしょうね。
もちろん。お姫様扱いしてくれることは重要でしょう。
さらには、お姫様扱いしてくれる男性たちも「魅力あふれる」男性である必要があります。
じゃあ、女性たちにとって「魅力あふれる男性」とはなにか?
深く考えるまでもなく。浮かぶ所ではありますが。悲しくなりながらも言語化していきます。
身分が高く。
地位があり。
権力もあり。
財力もあり。
人々が羨む容姿の持ち主。といったものです。スパダリって奴ですな。
女性たちの「嗜好」の傾向の話ですが。パートナーの格によって、自身の格を高められる。といった「グループ内部」でのヒエラルキーへの選好が強く働きます。これは多かれ少なかれ男性向け作品にも似たような描写はありますから。男性が女性化している。という風に見てもいいかもしれませんね。
それの充足感を表すシーンは序盤にも示されていました。
周囲に称賛されるタイプの容姿。というのは、連れ歩くだけで「女性」の格を高める要素として受け入れられます。
そういった需要を理解したうえでの人物描写ですね。
こういった部分からも「女性読者に向けた人物像」は整理できている。とは思いました。
更に考えたいのは。「現代日本人の結婚観」は基本的に「一夫一妻」であり、二人で一組のつがいを前提としています。
故に「結婚をする」という前提でものを見た時「女性たち」はパートナーを選ぶことにひどく苦労をします。
昔の「家父長制」の日本であれば「娘に合う人物は誰か」といった部分で、父親ないし父親代わりの家督の責任者が結婚相手を見繕ってくるのが当たり前でした。
その際に、嫁入りしてきた女性に対してむげな対応をしたとしたならば「嫁の親父」が怒鳴り込んででも、しばき回すといった女性保護の一面もあります。
これは「女性を管理する責任」という一長一短の役割がありました。
故に女性たちの「パートナーを見つける」という第一段階で「恋愛」を排除することは「女性たちを管理し、安全に配偶者をあてがう」という仕組みでもありました。
でも、現代はその仕組みは崩壊しました。個人主義が前提となる思想や人権がありますからなぁ。
女性たちは「自由恋愛という戦国時代」に「自分に害をなさない。危険を及ぼさない男性」を独力で見つけなくはなりません。
「この男は、結婚相手としてふさわしいのか?」
「この男は仕事を辞めずに働き続けるか?」
「この男は健康であるか?」
「この男は私が働けない間ないし働かない間も養う甲斐性はあるか?」
「この男は誠実であるか?」
「ストレスから家庭内のDVをしないか?」
「私が属している女性同士のコミュニティにおいて、称賛され、自慢できる男であるか?」←かなり珍しいと思われますが、この比重が大きい女性が射たりもして驚いたことがあります。
とにかく、大なり小なりいろんな要素を加味しながら、結婚適齢期の女性たちはパートナーを見つけるのにストレスを抱えています。
そのストレスと疑似的な体験をできるのが。
ルヴィン(不穏な悪のメンター)とグーシュ(粗野であるが、善なるメンター)としての二人がヒロインの前に並び立っています。
その二人を始めとして「お姫様(専業主婦)」として、どちらを選ぶか? といった部分が主題となった書き出しの構成でした。
この点を汲み取れた女性読者達(結婚適齢期で伴侶を選ぶことにストレスを抱えている方達)は、ターゲットの選好として「比喩的に」受け止めた可能性は十分にあります。
もしも、この作品が「女性の自立」を含めた能力の活用の話題まで「期待値」を展開するならば、情報は足りなかったとは思います。
というのも。
「王女様がどんな能力で、どんな活躍するのかわからん」
というのはあります。何かしらの、能力で人々に称賛を得られ、その能力によって「評価される」喜びは男性も女性も持ち合わせています。
その需要を広く満たしたか。というと、満たしていない書き出しでした。
どうでしょうか。智子なりにあれこれ考えて見ました。もしも、もっと広く「女性の活躍」も前提とした作品に仕上げるのならば、リライトは必要かもしれません。
さらには、出版社が求めている「女性向け作品」の像として見た時に「無力なお姫様」像は避けたがる傾向があるようです。
レギュレーションでも「自立的な女性像」を求めているコンテストも散見されます。
私のような「超保守的な」読者には深々と刺さります。が「主人公とは違い、進路を定め、キャリアを積み始めた女性たち」にはまだ届かない可能性を感じています。
でもね。この作品の良いところってキャラクターの役割だと思うんですよね。
ルヴィンという男性はどちらかというと。「保守的」な男性像なんですよね。女性への期待というのを「役割」でみている。王女であるから傅いているのです。
翻って、グーシュはどうでしょう? 「革新的」な男性像です。やってきたヒロインに対して「偶像的な王女像」としての役割ではなく、彼女自身の能力や、フェアではない取引に対して怒りや不満をあらわにしています。
こういった二つの思想の対立を予想できる形で提示していることは、女性読者達も察しているんです。
「私が女だから求められるのか?」
「私が私だから求められるのか?」
みんな大好きな、人物論について切り込んでいける作品にもなります。
あとはもう。純粋に「智子はこういう内的な課題重視」の作品が好きということです。
だけど、本当に申し訳ない話ですが。「智子が絶賛するタイプの話」は書き出し祭りで受けません。あんまり、票は伸びないんじゃないかなぁ。と思っています。
いかがでしょうか? 参考になりそうなところをつまみ食いしてみてください。
感想は以上です。
3-14 いつかの春へ、ドアが続くなら。
タイトル感想
おしゃれなものを見ると怯える生き物。それが智子です。
ファンタジーっぽさはないんですよね。どちらかというと「アオハル」とされるジャンルの香りがしたタイトルです。
あらすじ感想
小学五年生の智子は今日の給食と明日の給食の献立のことしか頭にない子どもでした。
アオハルというほどの年齢ではないようです。何かしら、ヒロインが「思い悩んでいる」ということは分かるのですが。作品上の「課題」は本文で示される情報量ですね。どんな作品なのか。ファンタジーなのでしょうか。春につながる扉。安直に考えるなら「2ヶ月先の春にワープする扉」くらいに思っています。
本文感想(13/99)
さて。タイトルとあらすじでも予想していた通り「本文」によって、主人公が抱える課題や困難が示された作品でした。
ツイートでも触れたんですが。長編作品の一話目としてよりかは、短編的性質の強い作品でした。
主人公 :古谷 蝶子
主人公の能力:過去の父に会うことができる扉へのアクセス
世界観 :現代ファンタジーです。ローファンとしての作品。視点自体が、少女視点であるので。児童文学に寄せていこうとしている。
異変・事件 :扉にアクセスする。幼い父と会う。
問題・課題 :主人公が抱えているいじめ問題に対してのスタンス
決意・覚悟 :不明(方向性は見えたんですけど、意地悪なことをいってくるいじめっ子への対峙を予想するアオリはなかった)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):今後も幼い父とのやり取りを約束するような、引きではなかった。もしもその方向性ならば「幼い父にいじめっ子との対処等をコンサルしてもらう」みたいな楽しみ方になりそうでしたか。
基本的に「情景や置かれている環境」に関して、心情(いじめっことの軋轢)などをリンクさせようとしている書き出し作品です。
タイトルとあらすじ時点では「彼女がなにか問題を抱えている」という部分は明示的なのですが。その問題が明らかになるのは「書き出し後半」であるので、いくらかムードを掴みそこねた読者は序盤で脱落した可能性はあります。
演出って難しいですね。
感想は以上です。
3-15 剱舞五重奏~妖魔退治にこの身を捧げるつもりはありません!
タイトル感想
これ不思議な話しなんですけど。
「身を捧げる」という文言が出るだけで「女性的」なイメージが付随しているのは私だけでしょうか。
妖魔退治という技能職についている少女ないし妙齢な女性たちの物語でしょうか。
あらすじ感想
人物紹介形式のあらすじは、過去にも何度かみたことあります。やはり、キャラクターを主体としたエンタメ作品のとき、こういった形式のあらすじもけっこう馴染むんですよね。
妖魔とあれば。陰陽師かぁ。私はタイトルでは陰陽師関連はぴんときてなかったですが。一般的にはそういう類推できたかもですね。
どんなムードの作品になるのか。本文を待ちたい作品です。少女視点の作品に成りそうです。タイトルのイメージも相まってですが。
本文感想(12/99)
一般的な「アクションや事件」によって展開されるタイプの書き出しでした。
そして、それらの事件に関する予示(フォーシャドウイング。事件やイベントの予感。今回の場合は最近起きている物騒な事件の話)を描きつつ、迫りくる危険との対峙。そして、それに介入するヒーロー。という順当な書き出しですね。
主人公 :鶴木美耶子
主人公の能力:不明(あらすじ見る限りそれっぽい想像はつくんですがね)
世界観 :陰陽師や妖魔との対峙が期待できるローファンタジー作品
異変・事件 :ヒーローからの介入。(ヒロインに迫る蜘蛛からの攻撃)
問題・課題 :不明(まだ、彼女が抱えている問題が見えてこない)
決意・覚悟 :不明(彼女が何かを決意するシーンまでは書かれていない)
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):陰陽師を基調とした、異能バトルもの。主人公が持っている「血筋」に関する要素から。「興奮すると血がたぎる」という部分から。ラブロマンス的な要素との懊悩も、楽しみ方の一つとして提案していそうです。
書き出しで「届けるべきターゲット」には届く文量としての作品だったと思います。
物騒な情報を書き出し序盤から始めているのも「物語を動かす」という意欲的な態度が見えたのもよかったです。
作品情報や世界観の確定に寄与してくれる「おしゃべりな同級生、友人」というのはこういった「学園異能バトルもの」として重要な要素であることを理解した書き出しでしたね。
あらすじについても「意図した」形での提供だったのだと、読み終えて理解しました。
本文の情報だけでは、キャラクターのバックボーンを含めた、作品のテーマを表現するに不足であるからこそ。キャラクター紹介形式に収めたのだと思います。
読み始めて、12作目ですが。ジャンルの被りが無い限り、陰陽師や妖魔などの異能バトルものとして、タイトルあらすじから期待した読者は満足できたんじゃないでしょうか。
感想は以上です。
3-16 引きこもり魔法少女の異世界放浪記
タイトル感想
引きこもってるのにどうやって放浪するんだよ。
こういう明らかな「相反する設定」をぶら下げられると突っ込んでしまいます。興味がわきますね。
あらすじ感想
おいおい。もう魔法少女だった子が異世界に行くんですね。いや、タイトルでは確かにそうだったんですけど。改めてあらすじ読むとぶっ飛んでますね。魔法少女と異世界をかけ合わせるとこうなるのか。
本文が気になる作品です。引きこもり要素ってどこらへんになるんでしょうかね。陰キャ高校生ってところなのかな。ガチの引きこもりではないのか。学校に行ってるんだから立派ですよ。ええ。
本文感想(11/99)
面白かったですね。ムードが明らかな作品なので。そういうものだと割り切って、サクサクと読める力強い作品でした。
ファースト10で考えてみます。
主人公 :細谷千咲
主人公の能力:魔法少女!
世界観 :魔法少女×異世界もの爆誕!
異変・事件 :異世界転移!
問題・課題 :不明(おそらくですが。主人公の人格等が完成されているので、該当するものがない)
決意・覚悟 :現実世界への帰還。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):あらすじにある通りの異世界×魔法少女のバトルコメディーを楽しむもの。
基本的に「物語」をドラマにする要素は「主人公が何かしらの成長要素を持っていること」であったりするんですが。それを前面に押し出すと「ちょっと重くなったり」したりします。
この作品のように、そこはぶっ飛ばして、設定の強みと、キャラクター同士のコメディラインのやり取りで読者をグイグイ引っ張っていく作品もあります。
こればっかりは「コメディセンス」の領域ではあるので「物語」としての発見や「課題との対峙によるキャラクターの成長」といったものとは違うんです。
だけど「物語の誘導」自体はコメディのラインを崩さずに展開し続けているので、サクサクと読めちゃうんですよね。
主人公は「英雄的」行いによって、兎人族を助ける。といった「コミュニティの外からやってくる英雄像」として登場します。
非常に「テンプレ的」ではあるので、その力も相まって安定感のある書き出しでした。
他にも何作か。この方の作品を読んでみたいと思える作品でした。
感想は以上です。
3-17 これから僕が一生かけて、君を殺す物語。
タイトル感想
なんなんでしょうね。まだテーマもジャンルも見えないですが。ファンタジー的なギミックによる物語なのか。でも、ラブロマンス的な空気感や期待もありそうなんですが。どうなんでしょうね。
あらすじ感想
わからんですね。やっぱりわからん。どういう展開を約束するのか。あらすじにあるような「長いスパン」の物語をどのように書き出しで「約束できるか」というのは演出上の技量が必要な作品だと思います。
どういう作品なんでしょうね。現時点ではジャンルは不明なので、評判次第で話題になりそうです。
本文感想(10/99)
この作品で99作品のうち10作品目まで読みました。
うーん。もしかしたら、最近の作品の傾向としてのことなのかもしれませんが。
Twitter漫画的な「セットアップにとどまる作品」が増えたように思います。
これは「書き出し」という技術が広く研究された結果のことなのかもですね。
この作品を考える時に。ファースト10自体は2人分考える方が馴染みそうです。
主人公 :ウェルシュミナ・リリアリス
主人公の能力:始祖の吸血鬼
世界観 :吸血鬼が存在するローファンタジー。ギャグとシリアスが混在している作品。
異変・事件 :ヒーロー。三途川渉との出会い。及び吸血に関する約束。
問題・課題 :不明(おそらく希死念慮にかかる思想との対峙)
決意・覚悟 :嫌いな血を飲むことでも、死への欲求への決意
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):ヒロインとヒーローの思想の対立。
主人公 :三途川渉
主人公の能力:吸血鬼を殺すための血液
世界観 :吸血鬼が存在するローファンタジー。ギャグとシリアスが混在している作品。
異変・事件 :ヒロイン。ウェルシュミナ・リリアリスとの出会い。吸血に関する提案。
問題・課題 :不明(ヒロインの希死念慮との思想の対立)
決意・覚悟 :長いこと血液を提供し続けるという決意。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):ヒロインとヒーローの思想の対立。
実はこの「セットアップにとどまる」という方法は私も前回の参加作品『3-19 オソガル少年の嫁取り物語 ~乳のデカい女をもとめて~』(私は何度だって自分の作品をこすりますよ!)で行いました。そして、その方法は結構効果があるんですよね。
エンタメ小説として求められる比重が「属性とそれに伴う定型化されたキャラクー像」多めの作品だったりします。
今回の場合は「吸血鬼の始祖」でありながらも、血を吸うのが嫌い。というアンビバレンツな思想を持ったヒロイン像です。
死にたいヒロイン。と死にたくないヒーロー。という「相容れない思想」の二人が並ぶだけで「コンフリクト」(物語上の思想の対立)を予想できる関係性を提示するだけで「物語」としての「読者が予想する」という誘導が存在します。
そういった力を願って、繰り出された書き出しです。
だけど、実際に二人の第一印象において、何かしらの「対立」を予想できる情報は本文には存在しませんでした。
だけど、その情報を「約束しようとしている」部分はあらすじでしょうかね。
正直、智子は「あらすじの内容をすぐに忘れるタイプ」の読者なので、読み終えてから。
「ああ、ああ。そういうことね。学園ラブコメ的なことを今後約束しているんだね。そのための二人の第一印象とセットアップに注力した書き出しなのだな」
と理解しました。
吸血鬼ネタとしてジャンル被りがなければ、票を奪い合うこともなさそうですが。
さらには「タイトルとあらすじ」時点では「吸血鬼もの」だったり「冒頭のシリアス」という魅力を展開していません。
「本編を読んだら、作品の魅力やログラインが理解できる」
という状態なので「吸血鬼ものが読みたい!」という読者を捕捉できない可能性はありそうですね。
感想は以上です。
3-18 知らないはずの君にまた恋をする
タイトル感想
皆さん恋好きですね。私も好きですよ。同じ人に初恋を繰り返していたタイプの智子は理解があります。「2回告白する度胸は認める」とよく褒められました。
知らないはず。とあるので、ファンタジー的な忘却のギミックを期待しています。
あらすじ感想
おお。タイムリープもの。生き直し。みたいなものでしたか。ドラマでも取り上げられはじめたネタではあるので、再生産みたいな感じではあるんですが。「妻」の昔の顔が違いすぎる。という「起こり」が示されています。ここで、差別化ができているのがあらすじとしての戦略にも見えます。
書き出しで、その片鱗は見えるんだろうか。見えないだろうけど、気になる作品ですね。
本文感想(9/99)
楽しみ方が分かる情報量でした。
時間軸とか、ループという設定とは違うんですが。この作品を連想しました。
予想なんですけど。最後の最後に主人公はループから開放されて、初夜の翌朝に戻されるんだと思います。そして「違う世界線のヒロインの話をしよう」といって、現実世界の妻への理解を更に深める。といったような「行きて来たりし物語」としての効果を発揮しそう。というか、そういった感動な何かを想像しちゃいました。
だけど、それをするなら。初夜に至る前に「現実の妻」との不和を描写しているはずなので、それは無いんだろうな。とも思っています。
主人公 :黒木勇斗
主人公の能力:ループするまでの10年間の蓄積
世界観 :ループのあるローファンタジーの世界観。容姿や性格に違いがあるとのことなので、SF的な世界観(多元宇宙とか、世界線の解釈とか)の可能性もあり。
異変・事件 :ループする。
問題・課題 :不明(ループする前の主人公が何かの不満や悩みを持っていないので、おそらくだけど。ヒロイン自体に成長要素があるのかも)
決意・覚悟 :ヒロインともう一度恋をする!
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):タイトルの通り。もう一度ヒロインと恋をする。
いい作品です。セットアップも十分。なんですけど。もうちょっと欲しかったなぁ。と思っている作品でした。
演出上「物語が始まったシーンから描く」というのは動きがあることは、読者を退屈させない要素として大事だというのは存じておりますし、その効果を狙った作品であることは十分承知しています。
そして、主人公が「ループ前の世界に対して不満を持っていない。むしろ、幸せの絶頂」という部分から「後悔していた過去を改変する」という「ループもの」としてのテンプレではない形で面白みを提供しようとしています。
ループ前の世界と。ループ後の世界で。課題がリンクしていない感があります。おそらく二話目まで読んだら、主人公の「決意や方向性」もしくは「ヒロインが抱える課題」などに言及できるのでしょう。
二話目までみて「内的な課題」としての性質を確認していきたい作品にはなっています。
あまりお見かけしない独自性のある構成だと思ったので、気になる作品でした。
感想は以上です。
3-19 ヴァンパイアは絶滅しました。
タイトル感想
吸血鬼をテーマとしていますね。絶滅とありますが。どういう物語なんでしょうね。読み進めて「ヴァンパイア絶滅してません」とかなったら、私は猛抗議しますよ。
ファンタジー的な読みものを想像しています。
あらすじ感想
ヴァンパイアはまだ全滅してないじゃないですか。百合ですか。百合ですよね。私がそこに挟まれると恨みを買うタイプの百合ですよね。
タイトルからは「百合」属性のある作品だとは予想していませんでした。驚きです。
本文読んで「百合ラブコメ」じゃなかったら、それはそれで驚きです。
タイトルで「読者ターゲット」には届いていない作品なので、本文掲載ではPVが伸び悩むかもしれませんね。
本文感想(8/99)
ギャグラブコメディ作品です。勢いですね。主人公の「死ぬ間際で色々言うたれ」という勢いで、ヒロインの温情を得ています。
私もこれくらいの勢いで欲望を吐露してみたら、楽しい思い出がたくさん作れたかもしれない。ニコニコしています。
ヒロインがどうして温情を与えているのか。どういう理屈でいるのか。は正直全くわかりませんが。そういった周辺情報は後回しにする演出なのでしょう。
主人公 :黒川 夜舟
主人公の能力:世界最後の吸血鬼(弱いらしい)
世界観 :ローファンタジー。ラブコメ要素のあるもの。
異変・事件 :ヴァンパイアハンター(ヒロイン:白雲 愛海)にとどめをさされそうになる。
問題・課題 :不明(おそらく、精神的な成長要素自体はヒロインにありそう)
決意・覚悟 :生存のために努力する。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):美少女ヒロイン(生殺与奪の権利を握っている)との、見た目は甘々なラブコメディ作品。基本的には主人公の舌先三寸と勢い(しかもかわいそうな感じの)で、どうにかしていくタイプの話。
ああして、読んでみると思うんですが。人畜無害な吸血鬼(血を吸ってこなかった)っていうのが、見るからにかわいそうな貧弱な陰キャの主人公になるのだな。と感心しました。
基本的にこういった「ラブコメ」作品の男性主人公というのは「屈強」とは程遠く、情けないタイプのそれであるんですが。
説得力と共に設定を打ち出しているのは見事でした。
ただ一つ「ヒロインはどうして懇願を聞いたのか」という部分は強い興味を持っています。そこを類推できるような外見描写等があれば、また、一層の興味を掻き立てられたように思います。
二話以降でお互いのバックボーンを掘り下げて、ドラマティック(外的な課題及び内的な課題)を約束してくれそうです。
だって、血を吸ってないヴァンパイアって絶対ポリシーがありますからね。それで、見逃すとか。何かしらの理屈にもなってきそうです。
一話目で「作品の楽しみ方」が約束された書き出しでした。ラブコメジャンルの被りがないなら、相当数の票が集まる作品だと思います。
感想は以上です。
3-20 時待町の交差点(感想依頼あり)
タイトル感想
わからん。交差点の話題でしょうか。キャラクターの掘り下げじゃない作品のような気がしています。
あらすじ感想
予想通りですね。世界観や舞台装置上で、展開するキャラクター達を用意しているようです。
群像劇的なものになるんでしょうか。全体のモデルとなるようなケースを書き出しで示すことが求められる作品になりそうです。
本文感想(7/99)
タイトルとあらすじの情報にもあったように「群像劇。ヒューマンドラマ」としての性質があることは示されていたので、飲み込むことが容易な作品でした。
主人公 :カケル
主人公の能力:未来の宇宙飛行士
世界観 :SFの舞台設定。ファンタジー寄りではありますが。
異変・事件 :見つからない恋人。
問題・課題 :不明(本文末の引きによる展開に期待)
決意・覚悟 :恋人に会う!
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):時を待つという独自設定と、物語を導いてくれる案内人が主要な登場人物としてあり、彼を起点に複数のキャラクター達による「群像劇」としての楽しみ方を予想します。
独自設定等の作品なので、セットアップにかかる情報が多めでした。群像劇としての性質上、カケルというキャラクターのみに注力することが難しい作品でもあろうかと思います。
もう、ずるい。ずるいよ。気になるじゃん。
どういう展開になるのか。方向性まで見えたら、一話として完璧だったかもしれませんね。
クロノスっておそらくですが。「人間による被造物」であるので、人間とは違う感性でものを見ている。のではないかな。と思っています。複数の群像劇のエピソード上で見るならば、彼自身も「気づき」を得ていくタイプのヒーロー像だと予想しています。
となれば、彼の予想を裏切る反応をカケルが示すのかも。
60年は長いからなぁ。恋人も誰か素敵な人見つけて、新しい家族設けてますよ。そして、それを快く祝福するカケル。それに困惑するクロノスとか?
予想が「割れる」ことが「良い方向に巡る」こともあれば、巡らないこともあります。
この作品はまだ「どんな感情を約束する作品なのか?」というところはわからない作品です。
この部分で、いくらか票を逃してしまいそうな気がしています。
悲しくなるのか。嬉しくなるのか。それを明らかにしてくれるだけで、反応はもっと良くなる情報量だったと思いました。
感想は以上です。
感想依頼があったので、次の通り追記します。
可能な範囲とおっしゃるので、可能な範囲で考えてみます。
上から順に答えていきます。
これまた難しいことをお訊ねになりますね。
感じ方は人によるとは思いますし、私以外の方にも積極的にお訊ねになってみるのも大事だとはおもいます。
考えるために、要点等をメモにしていきます。
話の展開のテンポについてのメモ
テンポを考えるうえで、もう一度最初から読み直しました。要点をまとめつつ。シーンに求められる役割を整理します。
1:カケルが駅に降り立つ。彼のバックボーン。彼が会うことを望む恋人の存在を示唆。
物語には目的が必要です。カケルという人物の行動の動機を示すシーンでした。物語を読む理由につながる要素です。
2:カケルが恋人に会うという目的達成のために、同僚から示された時待町へ向かう。
物語には導きが必要です。今回の場合は同僚からのメモということで、物語が展開しています。
3:時待町の概略及び案内人クロノスが抱える葛藤の開示。
あらすじにも示されていた「時待町」を舞台に繰り広げる「群像劇」であることを約束するシーンでした。そして、すべての群像劇に「水先案内人」として登場するメインキャラクターであるクロノスにも課題があることを示唆するシーンでした。
4:カケルの目的とする恋人との邂逅への引き
書き出し祭りを意識しましたね! 10年。60年。といった不穏な年数の響きから、読者が予想する展開へのあからさまな引きでした。
世界観の飲みこみやすさについて
この項目については、上記で示した。
時待町についての概略等がシーン3の中にありましたね。
世界観について、ずいぶんと描写を重めにしているから、飲み込むことは容易でした。あらすじにも「時間」に関する物語であることは示唆されていたので、迷子になるようなことはありませんでした。
上記の2点を踏まえたうえで次の通り。
テンポについては、少々描写過多の傾向はあるかと思います。だけど、描写が重くなる理由というのは舞台設定自体が特殊なので、そこの部分に「説明を割こう」という意識が現れたように感じます。
その意識の延長もあって、世界観についての描写も丹念でした。理解は容易になりました。
カケルの話についても。群像劇全体についても。ですね。
智子は以前から「小説」に限らず「物語体験」というものは「感情を約束する行為」みたいなものだと捉えています。
「心動かされるために物語を読む」
ということは裏返せば。
「どんな感情を約束するのか予想がつかない作品」はページをめくる理由が減衰していく。のです。
タイトルとあらすじで「なるほど、この作品は時間が混在するタイプの群像劇であるのだなぁ」と読者たちは期待しています。
であれば。その期待した読者たちの「感情を約束」するための本文が求められます。
そして、その約束は概ね達成できた作品です。
舞台となる独自設定の時待町は「時間が混在する舞台」という舞台設定を提示していますし、そこで「案内人」の登場。群像劇としての「セットアップ」は完了しました。
セットアップまでは完了した。その舞台で「何が起きてるのか。起きようとしているのか?」という所までは描かれていないです。
おそらく意図的に描いていない所はあるんじゃなかろうか。と思っています。カケルという人物像についても。「恋人に会いたい」としか書いていないのですよね。
「恋人に会って、◯◯がしたい」といったような。欲望や願望めいたものを「意図的に書かない」ようにしているのも、何かしらのギミックの一つだとは思うんですが。
こういったのも悪く作用した気がします。
この部分を持ってして「感情を約束できていない」と表現しました。
この項目を簡単に見分ける方法があります。
レビューやプレゼンです。
一文でその面白さを紹介できるか。というのは重要ですよね。
誰かに紹介しようとした時。
智子「この作品は時間にまつわる群像劇です」
となります。だけど、誰かがこんな風に訊くんです。
誰か「どんな群像劇なの? 泣ける? 笑える? 感動できる?」
これを訊かれると、説明に窮する作品は「書き出し」のナラティブ(読者に約束する楽しみ方)が不足していると感じます。
そして、御作もその節はある作品です。ふわっとしたムードは伝わっています。多分、ハートフルな物語になるんじゃなかろうか。とは思ってはいるんですが。それもいかんせん。あらすじに煽り文からのイメージであるし、カケルに続く、エピソードキャラクター達の情報からの類推でしかありません。
もしも。私ならば。カケルとリンを会わせる。ないし、カケルがリンに対してどのようなアクションを行うのか。予想できる情報を撒く。まではしたように思います。
この部分は感想依頼前半にあった。テンポや世界観についての質問にも絡む要素だと思います。
究極。極論ですが。
世界観や説明に関する描写自体はざっくり省いたとしても、問題はなかったようには思います。これは。私が「書き出し祭りの感想を書く」という活動をし始めてから気づいた考え方ではあるんですが。
「読者の知性を信じる」
という要素です。
あなたが想定した読者は説明をしなくても十分にあなたの意図を読み込み、汲み取り、文章を理解してくれる。という信頼を持つ必要があります。
もちろん。語っていないことを勝手に汲み取ってくれる。じゃないんですよ。読者はエスパーじゃないです。
説明ではなく。アクションで。アクションに汲み取られた状況や、設定を読者が汲み取るといった信頼です。
お手本になるような書き出しはこの祭りにもたくさん存在していますが。今回は第三会場だけしか読んでいません。参考になりそうなものをいくらか抜粋しましょう。あと、智子の自作も紹介します。
見事な一文ですよね。学校には行かない。と宣言する「アクション」から始まる一文です。発言者のパーソナリティはわかりません。この情報量では学生であることは明らかですが。小学生か。中学生か。高校生か。あらすじ読めば分かるんですが。そこは些末な点です。とにかく学校に行かない。という宣言が「大きな決意と決断」によって、発せられていて、この時から物語が動き出すことを予感させてくれるシーンから始まりました。
この作品についても実は「楽しみ方」がまだわからない領域の作品ではあったんですが。書き出しの一文は見事な作品でした。彼自身が「物憂げ」になり、人々からの質問などに鈍くなる少年の「課題」や「課題によって巻き込まれる」といった物語上の誘導を約束した一文でした。
このあと、彼は「近づくまい」としていた都市にたどり着いてしまい、急ぎ都市から離れようとしたところで、書き出しは終了でしたが。彼自身が「課題を持ち合わせている」という、物語上の注目するべきシーンや属性から書き出しを始めているのも印象深いものでした。
3-19 オソガル少年の嫁取り物語 ~乳のデカい女をもとめて~(20回目の参加作品ですが:私は自分の作品が最高傑作だと思っているので、何度だってこすりますよ!)
いやあ。自分で申し上げるのもなんですが。見事な書き出しです。主人公がオソガル少年であることを端的にあらわしつつ、肉親の姉に対する評価や、驚きを表すセリフ。
そして、少年が「結婚」にまつわる願望を元に物語が展開していくことを示唆した一文です。もしかしたら、智子は小説の天才かもしれません。と自画自賛しています。
私の作品を読んでみたら分かるかとは思うんですが。基本的に「描写は削ぐべき」と思っているタイプの書き手です。
削って、削って、削りまくって。その文言によって含まれる感情や動作に行間を持ってもらおう。という考えです。
ここらへん「文章に対する考え方」が、皆さんがそれぞれ保有する「文体」としてのスタイルとなっていくものなので「自分が好きな文章」を大事にしていいとは思います。
さて。上記の参考にするかしないかはご自由ですが。それらの特徴としてあるのが。
「設定を説明しない」
ということを念頭に置かれた書き出しです。物語の魅力は「舞台設定」ではなくて「舞台設定の中で動き回るキャラクター達」です。
御作は「展開する物語。時間の物語のために、詳細な舞台設定やそれに至る描写」が多かったです。そのために「カケルとリン」の出会いまでを描くことができませんでした。そのシーンまで描けなかったことは「書き出し」という面でみた時にいくらかマイナスになった要素ではあると思いました。
この作品が。バスっと。短編連作です! 御覧ください! と出されたら、問題なく評価を得られる類の小説であることは間違いありません。
レギュレーション上の制限のある文字数で考えた時には、序盤はいくらか畳みつつ、群像劇の一つの結末まで示したほうがまとまりがありつつ、次のエピソードキャラクターへの引きにつながったと思いました。
どうでしょう。可能な限りで書いてみました。感想としては冗長であったため、いくらか結論をまとめます。あくまでも「書き出し祭りという制限のあるレギュレーションで考えた時」に智子はこう思います。といったものです。
まとめ
序盤を凝縮(カケルが宇宙飛行士であること、恋人と再会を望んでいることなど重要な要素は残しながら)しながら、群像劇の一エピソードとしてまとめると、作品の楽しみ方自体がわかりやすくなると思いました。
書き出し祭りで群像劇とミステリーは難しいと感じています。独自設定。舞台装置。意欲作でした。独自設定であるからこそ「ナラティブ」が強めに出る作品である方が印象に残りそうです。
感想は以上です。
3-21 DOSUKOI! ~安政四年の黒船力士~
タイトル感想
なんでも。英語にしたらかっこよくなるみたいな考えでしょうか。概ね賛成します。歴史ジャンルの作品でしょう。ペリー出てきますか?
あらすじ感想
絶対おもしろいわ。なにが良いって「勝負の付け方が明快」であることはわかりやすさで大事ですよね。
「おう。相撲で決着つけようぜ」
最高じゃないですか。そして、その挑戦者をなぎ倒す古のスモウレスラー達が乱舞するんでしょ。絶対おもしろいですよ。
本文感想(3/99)
面白かったです。どうしたものかな。多分ですが。私が感想のときに参考としている「ファースト10」はあんまり馴染まないタイプの作品かもですが。一応、はめ込んでみます。
おそらく、この作品に主人公は二人いるんじゃないかなぁ。一人目は挑戦者。もう一人は受けて立つ力士の存在。熱烈なバトルものになるはずなので、盛り上げのためにも「戦う二人」に焦点を当てている書き出しです。
今回は挑戦者としてのターンなのでしょう。
私は歴史ものに関して、実在の人物かどうかなどは気にせずに読むタイプなので、結構さらさらと読んでいます。
主人公 :ジョージ・マックイーン
主人公の能力:恵まれた体格から繰り出されるレスリング技術
世界観 :歴史もの。文体からして、コメディ調の作品。ボケに対してのツッコミを地の文で行うスタイル。
異変・事件 :不明(ジョージに対して変化を促すイベントは不在)。
問題・課題 :不明。本文中末尾の引きがそれに当たりそう。
決意・覚悟 :合衆国海軍の最強を示す!
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):地の文を含めた。歴史ものを基調としつつ、国技、相撲による「開国」にまつわる諸々を面白く語ること。
ファースト10すごいですね。うまく馴染みますね。作品の特徴を丁寧に説明してくれます。
あらすじにもあったように。
開国とか。そこら辺の歴史的経緯を背景に、思惑が巡るんですが。最終的に「OK 相撲で決めようや」という「最後の決着」に至るまでの「前座」が繰り返す作品の書き出しなのだと思っています。
そして、ジョージ以外にも登場する人物達は多くいて、それぞれのバックボーンや思惑を開示するための「セットアップ」自体が重要な作品となるでしょう。
おそらく二話目以降も「セットアップ」につながるんです。そして、キャラクターは「群像劇」的に整理されていく。全ての問題やあれやこれやが絡まり合って「OK 相撲で決めようや」と終点に向かうのです。
皆、交渉しすぎて疲れてたんでしょうね……
続きを読みたい。と考える読者は「このムード」を約束したまま続きが読みたいとなるので。
次のターンでは「てんやわんやになっている幕府の役人」達を見てみたいです。そこで、最強のスモウレスラー登場ですよ。めっちゃ盛り上がる。
面白い書き出しでした。続き頑張って書いてください。
感想は以上です。
3-22 箱の中の二人、或いは不確定未来のカサンドラ
タイトル感想
わからん。かわいそうな猫を人間にしたバージョンですか。毒ガスいれるのは賛成できかねますね。
ここまで触れるのですから。量子力学の話題を絡めた作品であることを期待しています。
あらすじ感想
ループもの多いですねぇ。映像作品でループものとかっていうのはだいたい「制作コスト」のために、採用される要素はありますよね。「制限があるゆえに面白みがでてきた」というタイプの制作方法だったりしますが。
ループでミステリー。しかも、舞台はエレベーターの中だけなんですよ。どんな広がりを見せてくれるんでしょうか。意欲作の香りがします。
本文感想(6/99)
不思議な話です。ミステリですからね。どういう切り口で見てみますか。
私はあんまりミステリを触れません。興味ないわけじゃないんですが。あれば読む位かなぁ。
おそらくですが。この作品は私の知ってる「ミステリ」とは違うように感じています。
前提となる部分に「ループ」する。という超常的な現象を設置しています。
そのルールの中で、謎解きを行っていくという代物です。
主人公 :俺(長者原)
主人公の能力:ループ時の記憶を保つ(文末で見るにはじめてのことかも)
世界観 :ループを起点としたミステリ世界観
異変・事件 :カサンドラとのエレベーターの密室空間からの挨拶
問題・課題 :不明(現状主人公に何かの課題や成長点は見えない)
決意・覚悟 :ループから抜け出すこと。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):提示される情報を通してのミステリとしての謎解き要素。
書けるものですね。作品の楽しみ方はわかりました。
提示されている情報でループからの脱出を図るということです。
主人公自体が「一人称視点」である為、カサンドラが「乱数調整的」要素のために嘘をついたりすることは十分にありそうです。そこも踏まえながら見ていくとかになるのでしょうか。
・カサンドラはループをしている(という自己申告)。
・俺はカサンドラに射殺されてループした(記憶を伴っているので初めてのループ)。
最後の「記憶を保ったままのループ」という時点で「いつもと違う状況」となっている。次のシーンでは「俺自身もループしている」という手札を隠しつつ、新たな進展を重ねていく。といった作品であるように思います。
面白かったですね。ただ、私が「ミステリ」をまじまじと考えないタイプなので、続きがあれば「次の進展」のために読もうという所でしょうか。
あと、わからない横文字についてはそのままにするタイプの怠惰な読者なので、そこも調べながら読解すればまた違うのかもしれません。
ここらへんは謎解きが好きな方にお任せしたいところです。
ミステリ書きの方々も感想配信を予定しているとのことなので、ぜひ感想依頼を出してみると良いかもしれません。謎を解いてくれそうです。
感想は以上です。
3-23 明日への扉 〜救世主は、10年後の『私』たち〜(感想依頼あり)
タイトル感想
ファンタジーっぽさがあります。現代なのか。異世界なのか。セットアップ次第でジャンルが分かれそうです。
あらすじ感想
設定がすんなり読めた。良いあらすじです。時間と未来と。そして、未来の助言者達(10年後の自分)から「今の時代で解決するべき課題がある」と物語の誘導を受ける。
これ、いい話ですよね。主人公には「努力次第で何にでもなれる」という強いポテンシャルを感じ取れます。
気になる作品です。素晴らしい着眼点の作品です。しれっと書籍化してたり、アニメ化しててもおかしくない作品企画だと思います。
一人の声優さんが複数のキャラクターを演じることにもなるし、作画の面でも差別化をするなど非常に面白い試みができそうです。
本文感想(1/99)
書き出しで大事なことって「タイトルとあらすじで期待した面白さを維持し続ける」ことなんですよね。
そして、その期待を十分に維持できた作品でした。
主人公 :ミリア(伯爵令嬢)
主人公の能力:時空や運命にかかる「保険」のような力。10年後の自分を召喚する。それが発生する時は「不幸が訪れる時」である。
世界観 :近世寄りのナーロッパ
異変・事件 :10年後の自分が度々助けに来る。
問題・課題 :家に「悪意を持って攻撃を仕掛ける何か」がある。
決意・覚悟 :明日への扉を、閉じる(家族にかかる悪意を取り払う)。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):10年後の自分達の助言により、物語を進めていく。という特殊なメンター形式の作品。
タイトルとあらすじでも予想していた通り。面白い書き出しでした。読了ツイートの順番からもわかるように一番に読みにきた作品でした。
基本的に「面白い書き出し」というと語弊があるんですよね。
面白いと感じるかどうかは、読者自身の感性の問題でもあるので「智子が面白い」と言ってるだけです。もちろん琴線に引っかからない方もいるんでしょうけど。
「面白い」と感じる理由を考えたい作品です。それらを考えていく上で、上記で示した「ファースト10+ナラティブ」を埋めることができた作品は「どんなジャンル」であれ、エンタメ作品としての「面白み」「今後のログラインへの約束」を満たしているように感じています。
しかし、私が「こうしたらもっと智子好みだなぁ」という蛇足的な部分ではあるんですが。
「ミリア」という主人公自体が抱える「物語上の欠点」とされる要素が見当たらんなぁ。というものもあります。
物語の「外的な課題」(家族に迫りくる悪意との戦い)は見事に示されたのですが。「外的な課題」と平行して「内的な課題」(ミリア自身が物語を通して解決するべき精神的な課題)が提示されていると、ドラマチックになるだろう。とも感じています。
現状は「外的な課題」に対する問題の対処やイベントのみに徹底しているので「メロドラマ的」な作品になっているようにも見えました。
あえて、深読みをするのだとしたら。
「ミリア自身が未来のミリアに依存してしまう」
というような構造があるのでしょうか。最終的には「10年後の自分」からの救援(ミリアの能力)を捨て去ることが目的なのです。
それじゃ、ミリアの能力は失われて、物語のあとに何も残らないのか?
といったことになりかねませんが。実はそうでもなくて。
「彼女は何にでもなれる」というポテンシャルの持ち主なのです。その自信を未来の自分達からもらい続ける。ポジティブな関係を築いていけるかもしれません。
幼いミリアに勇気と力を与えるかもしれません。
未来のミリアは逆にひどく傷ついている最中かもしれません。
この物語の舞台装置が非常に優秀です。やり方次第で、どんなドラマにもできる。
是非とも、最後まで書き上げて欲しいと思います。
作品の構成や「何にでもなれる」という能力のある女性像を描く形なので、現代の女性読者達への強い訴求力のある作品だと思っています。
面白かったです。
感想は以上です。
感想依頼があったので、追記します。
感想依頼ありがとうございます。
感想依頼きたらきたで、一番お答えしづらい方からの感想依頼であるなぁ。と思いました。
というのも、すでに、あらかた書いてしまったというのもあるので。どうしたものか。どう、突っ込んでいったものか。
良かったです。祭りの賑やかし。というのもあるんですが、皆さんの書き出しを読み、咀嚼し、智子の血肉とせん。という欲望含みですが。励みとなったならば。幸いです。
どうして、この作品が面白いのか。引きがいいのか。という部分を再確認。言語化するような感想にしてみましょうか。
この感想依頼を受けてる時点で、私は99作品中25作に目を通しています。第三会場すべてに目を通した段階です。
「ナラティブ(読者に約束する楽しみ方)」が明確な作品が印象に残っています。おそらく、次に上げるタイトルが第三会場で安定して、票を集めると予想しています。
上記の作品すべてに詳説を捕捉するのは控えますが。作品の特徴として「楽しみ方が分かる」作品は「人に紹介しやすい」というのがあります。
書き出しの一話目にして読者の皆は「なるほど。この作品の魅力は〇〇なのだな」と明快なのです。
御作『3-23 明日への扉 〜救世主は、10年後の『私』たち〜』もその力があるタイプの作品でした。
あとは能力が表す主人公のポテンシャルが「女性向け」作品であろうかと思います。このターゲットがある種明確なのも良かったです。
現実世界のわたしたちは「性差」による職業選択であったり、社会的に求められる役割に差が存在したりと、様々問題があるところです。そして、そういった背景の中「女性をエンパワメントしましょう」といったフェミニズム的な思考のもと。女性の社会進出等も叫ばれて久しいのが現代です。
そのような思考のもと「何にでもなれる」というパワフルな女性像が現代には求められていて、その思想を後押しするようなキャラクター達が社会的に求められています。
そういった要素もあって「何にでもなれる」というポテンシャルの女性キャラクターは「現代のエンタメ」に求められる力を存分に発揮したキャラクター設定でした。
ここの点が舌を巻く思いでした。無意識なのか。意識的なのか。わかりかねますが。これは受けるし、跳ねる設定のキャラクター像だと思います。
感想依頼を受ける前の感想でも述べてはいたんですが。
主人公に「内的な課題」が存在していない。というのは「ドラマティック」な要素に欠けるおそれはありますが。この点を気にする読者はさほどいないということを、智子は思い知らされております。よって、あんまり心配するこたないと思っております。
「内的な課題」を有している作品の方が「智子の好み」ではあるんですが。広く、一般に評価を得られる作品の特徴を満たしているのが。本作であると智子は感じました。
もしもですが。会場内で、評価が得られなかったとしたら。
「なんでぇ。智子のアンテナもろくなもんじゃねえな」と思っといてください。
突っ込んだ感想として、女性ターゲットに求められている「女性キャラクター像」としてのマッチしている部分について突っ込んでみました。
いやあ、あらかた語り尽くしたあとの作品だったので。あまり書くことがないのが残念ですが。もしも、作者公開後とかでも。「あれ訊きたい。これ訊きたい」とかあれば、いくらでもお訊ねください。
書き出し祭りはまだ始まったばかりです。私以外の方にもどんどん感想依頼を出して、いろんなサンプルを集めてみると参考にできる意見がどれか見つかると思います。楽しんでみてください。
感想は以上です。
3-24 最近うちに不法侵入しそのまま不法滞在している超絶美人縦セタ巨乳未亡人風お姉さん
タイトル感想
本当にお困りなら、智子までご連絡ください。引取に上がります。
お姉さんの存在が「物語の起こり」であるので「承」につながる描写を展開し、物語のジャンルを確定させてくれるのを期待しています。ラブコメなのかなぁ。
あらすじ感想
まってまって。ちょっと怖い。男性向けラブコメのキャッキャするやつだと思ってたら、ちょっとホラーじゃないですか。大丈夫ですか。静子さん。主人公にしか見えていないタイプのお姉さんじゃないですか? 信用していい語り手ですか?
読んだ時に「ジャンルが転向する作品」は票を割る可能性がありますからね。男性陣の夢を叶えつつ、ちょっぴり怖い程度でお願いします。
本文感想(5/99)
『起こり』から『承』(家にいついている不審者を追い出すためにバットを持ち出す)まではしてるっちゃしてるんですが。「アクションの方向性」(静子を追い出す)までしか読めないので、まだジャンル全体がふわっとしています。
主人公 :俺(家の住人。父と二人暮らし)
主人公の能力:不明。やけに度胸はある。
世界観 :ギャグの世界観であろうか。一応、警察に連絡しない理由を潰していないので、ギャグとは思う。ツッコミ役として迫が登場している。
異変・事件 :「最近うちに不法侵入しそのまま不法滞在している超絶美人縦セタ巨乳未亡人風お姉さん」の存在。
問題・課題 :不明(物語を通して主人公への課題になる要素が見えてこない)。
決意・覚悟 :平穏な夏休みのために追い出す。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):ギャグテイストであること。ヒロインと目される「属性モリモリの静子」を視覚的に楽しむフェチズムとしてのそれ。
令和の多様性の時代。女性達の魅力あふれる体つきを強調するような服装や、描写に対して非常に「センシティブ」な態度を示しつつも。引用をさせていただこうと思います。
ただの服装の一種をまるで、性的な何かのように捉える風潮自体は大変けしからんとお怒りの方々がいらっしゃるのも十分承知であります。
別に縦セタはエロいコンテンツじゃありません。未亡人(めぞん一刻が大好きです……)もそうです。
色々申しておりますが。この作品は「創作物における女性キャラクターに属性としての魅力を盛り盛りに持ったデカ盛り」を前面に出した作品です。
それに一本釣りされた読者が読みに来るでしょう。ええ、智子ですね。
ある程度「読者が不審に思う要素」の所として「主人公にしか見えていない類」のオカルティックな話題を否定するために友人が存在しています。
なので、ホラー(いや、まだ設定上ヒトコワホラーですが)とかより、ギャグ寄りのそれだとは思います。
静子さんというキャラクターが登場することで「俺」という環境が変わる。ないし、元の環境(静子さんがいない状態)に戻ろうとするストレス自体に物語が発生します。
そして、動いたシーンまで読みたい。というのが正直な所であり、退去を促す「俺」に対して「のらりくらりと交わす静子さん」というストレスとのせめぎあい。という「俺」のアクション(退去命令)に対しての「リアクション」(退去しない静子さん)まで見れば、作品の方向性が見えたんじゃないかなぁ。
現状としては「まだ動いていない」ので「どういう期待をできるのか」がまだ予想しづらい読後感でした。
縦セタ未亡人智子も好きですよ。おっしゃっていただければ、引取に上がります。
感想は以上です。
3-25 数の魔法使いは女神さまを振り向かせたい(感想依頼あり)
タイトル感想
数学はからっきしです。女神様に家庭教師をしてほしいくらいです。
魔法使いとか。女神様とあるのでファンタジーなのでしょうが。数に関する話題もあるので。完全にファンタジーというわけでもなさそうです。
あらすじ感想
異世界ものってもう「大喜利」みたいな所はあって、この作品も「数の魔法」っていう概念で異世界を大暴れしちゃおうぜ。という作品ですが。肝心の「数の魔法」がなんなのか。まだしっくりきません。
でも「女に好かれるために頑張る」という目的は多くの読者に馴染みます。
素敵なヒロイン(主人公が頑張るのも納得)の描写を期待しております。
本文感想(4/99)
そつない印象の作品です。主人公がどんな能力を持っていて、どんな世界にいるのか。どのような活躍を期待できるのか。
といった「読者の選好」にかかる部分の情報が提示された作品でした。
主人公 :フジヒロ
主人公の能力:数の魔法
世界観 :異世界転生。神が身近な世界観。神に恋するのも不思議じゃないくらい身近。
異変・事件 :作中描写は無いが。女神様に一目惚れの話。
問題・課題 :不明(ヒーローの恋慕に対しての課題は不明)
決意・覚悟 :女神様に恋人としての寵愛を望む
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方):主人公の能力による活躍及びヒロインへの恋愛感情等のラブロマンス的な性質を含めたもの。おそらくだけど、これだけを魅力としているつもりはなかったはず。今後、彼が出会う仲間たちを含めた輻輳的なストーリーをあらすじでは約束している。本文ではそこまで示せていないようには感じる。
本当に「連載の一話目!」みたいな感じの書き出しでしたね。
ナラティブ(読者に約束する楽しみ方)の部分でも示したんですが。基本手的な「神話の法則」のストーリーラインでもあるだろう。冒険を順当に行うタイプの作品だと思っています。
出会う仲間。試練。といったものを繰り返し、報酬となる女神の寵愛を受ける。
という古来からのテンプレ的展開のための一話です。
タイトルにもあらすじにも「ラブロマンス的」要素を示しているので「ラブロマンス」に関しての障壁を高く設定(人と神が恋愛関係になるようなことへの情報)しても良かったんじゃないかなぁ。とは思いました。
そのハードルが、主人公の行動原理や、危険に飛び込む上での「説得力」にもつながる描写になるでしょう。
とはいいながらも。このことを含めて、描写すると「やや説明的」になる可能性もあるし、テンポも悪くなりそうなんですよね。
フジヒロという主人公が「第一関門」として出会う「ロブ」というキャラクターは「主人公を値踏みする門番」としての役目があり、彼を暫定的に試すように質問を繰り返します。
彼の決意と物語へのハードルを示すシーンであり、彼に認められて次の冒険へのステップが始まります。
おそらく、あらすじに約束している通り「ロブ」にも何かしら抱えている事情があるもの。と期待していい塩梅の文章量でした。
こういう諸々を見ながら「そつない」作品やなぁ。と感じていました。
異世界転生絡みの被りがないなら、順当に票を集めそうな作品だと思っています。
感想は以上です。
感想依頼を受け付けたので、感想を追記します。
上から順に回答してみましょう。
ボツにしてから、短期間で仕上げたんですか。短期間でまとめることができるっていうと、地力があるんでしょうね。羨ましい限りです。
はあ。なるほど。「物足りない」とお思いなんですね。
智子はすごい奴ですから。
多分わかりますよ。どこに引っかかっているのか。
私に限らず「多くの人」に感想依頼を出して、サンプルを吸い上げていくのが大事です。
感想依頼を受けたので「強いて」上げるならば。といったところですが。
物語の最も根底に存在する。主人公の行動の動機と、課題が内的な理由付けで完成していることが物足りなさじゃないでしょうか。
考えてみましょう。
私は幼い頃から数限りない女性たちに初恋を捧げてきました。
それが実っていないことから、色々とお察しいただく必要はあるのですが。大事なのは勢いと誠実さです。
「機が熟したら(何か大きな仕事を成し遂げて)、自信を持てたら告白しよう」だなんていけません。
初恋を自覚したら急いで告白をしないといけません。
グズグズしていたら、別の小学校に転校しちゃったあの子。
告白してたら、OKしてくれたかなぁ……
閑話でした。
「物語の動機が内的な理由付けで完結している」というのは、イベント(告白)を挟まずに「物語の動機」を設定していることです。
ちょっと。あっさりしてますよね。
こうしてほしかった。という部分を次の通りに提案します。
主人公には序盤からガツンと告白して、ガツンと振られて「どうしたら、オレの女になってくれるんですかぁあああ!」とみっともなくすがりついて欲しいです。
告白というアクションのあとに、女神からのリアクションとして。
「何か大きな功績でも立ててくれたらね。考えてあげてもいいよ」
とかどうですか? もう、男は全力で頑張りますよ。
読者(智子の願望)と主人公の一体感(アイデンティフィケイション)が最高に高まる瞬間です。
『おお。大活躍したらこのヒロインは、主人公に惚れてくれるんや!!』
という、読者が物語を楽しむ「ナラティブ」の一つを提案できます。
意気揚々と成果を報告する主人公に対して、日々態度が軟化していくヒロイン(デレる)の姿とか見れたらもう。それだけでページをめくる理由のある作品になります。
1:主人公が活躍する。
2:主人公がそれを報告する。
3:ヒロインからお褒めの言葉を賜り、報酬(ヒロインとの親密度アップ)に近づく。
あとは1から3を繰り返すだけで、タイトルで約束しているナラティブを満たしました。
あとはあらすじにある「他の仲間たち」を含めたヒューマンドラマを挟みながら、頑張る主人公ですよ。
女神が自分自身を報酬の一つとして、主人公を釣り上げる。といったような「劇的な動機」を見せることで、タイトルに期待していた「ラブロマンス」要素をもっと押し出せたんじゃないでしょうかね。
珍しいタイプの感想依頼でしたが。どうでしょう。
これもたくさんあるうちの「一つの意見」程度です。私だけじゃなくて、他の方にも感想依頼出してみると、いろんなご意見引き出せると思います。
男なら潔く告白して、ガッツでしがみつく! カッコつけちゃ駄目です! 告白しない間に、女神様。他に恋人作っちゃうかも! 意識させましょう! あなたと恋人になりたいんです! といいながら、求愛を示す。これです。原始時代からこれです。これでいきましょう!
推敲時の何かしらの刺激になったなら幸いです。
感想は以上です。
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