第19回書き出し祭り:企画便乗のRTタグ読書の感想置き場
表題の通りです。
書き出し祭りの第四会場がPVに伸び悩んでいるとのことだったので、RTタグとの併用で、書き出し祭りの外の人たちに情報が伝播し、あわよくば投票まで繋がってもらおうという企画です。
該当の投稿はこちら。
感想は順次作成し、公開していきます。
感想依頼受付:対応済
作品の感想を記事に残します。
受付1:『= or ≠ (三十と一夜の短篇第54回』exa(疋田あたる)様
クリックして確認をしました。
おお、こいつは短編なんだな。と、てっきり長編の冒頭かなにか。と思っていましたが。短編であるというのであれば、それらで整理してみようと思います。
まずは周辺情報を捉えてみます。
『三十と一夜の短篇』とは?
何かしらの短編企画であるのか? と思い、そこもチェックしました。
わからん!
わからんぞ!
だけど、何か大事な情報のように考えてしまい、調べました。
こういう時は検索エンジンです。調べました。
検索トップにきました。
わからん! わからんぞ!
この秘密結社の一員であるexaさんが、この企画に乗り出してくれたようです。
しかし、この企画の内容は秘匿されているようです。
創作互助会というもののようです。
一つのテーマを与えられて、そのテーマで短編を作り、持ち寄る。
しかし、参加者達のみで共有される秘密があり、それは明かされないもののようです。
ここまで、読んで理解しました。
その企画作品の一つとして、exaさんは参加しているようです。
じゃあ、更に大事なのは「第54回」のテーマはなんだろうかと、調べ回りました。
主催者の錫 蒔隆さんの活動報告から確認できました。
作品のテーマも事前に把握しました。
双子にまつわる作品テーマであるようです。
以下、感想です。
面白かったです。とは申しても、短編の面白さと長編の面白さというのは、性質が違うものではあるんですが。どうして面白かったのか。という部分を整理してみます。
ほら! いつもの奴です。
主人公 :カストル(俺という一人称)
主人公の能力:不明(何かしらの事故か病気か。ボディの換装を必要としている人間)
世界観 :SF世界(ポルックス及びカストルは16歳ないし17歳であることが明示)
異変・事件 :不明
問題・課題 :ボディの換装に伴う、身体性の喪失、アイデンティティの上書き
決意・覚悟 :不明
短編として見るとき。許容される結末があります。
「問題提起」で終わる作品であることです。
そして、この作品は「問題提起」で終わっています。しかし、それらの「問題提起」のみであったとしても、余韻を必要とする要素として「内的な課題」が作中で示されていることは読後感の印象を良くしました。
驚くことにこの作品の文字数は2300文字です。この短さでこの情報量を与える事ができるというのも、十分な筆致が許す書きぶりだと思います。
作中では触れていないんですが、トランスヒューマニズムという思想が存在します。私たちが住む現実世界においてです。
本作はその「トランスヒューマニズム」に関連する「アイデンティティ」の同一性をテーマとして整理しました。
そのテーマを示すだけでなく、主人公が抱えている「人の輪」から彼が外れてしまった。そういった「群れからの疎外感」といったものを課題として捉えています。
外的な課題となり得るであろう「双子の弟(アンドロイド)」のポルックスの態度自体が、主人公を依存させることを願っているし、支配的なそれを隠す素振りもありません。
主人公のカストルが持ち合わせている課題(ボディの換装による人の輪からはみ出た存在)としての寂しさや孤独に寄り添う形で、弟は存在します。しかし、弟の指向する方向性の「兄さんはこうだった」というカスタマイズによる支配との対立を今後予想できる程度には、情報を撒いて、短編として終了させていること。
この部分で、読後感として「問題提起」に終わるが、面白かった。といった部分に落ち着きました。
基本的に私は「文章が上手」とか、そういった部分での評価は避けているんですが。
一人称小説としての描写や、課題の提示、十六個の換装パーツの明言から推測される「主人公(カストル)の情報」が拡大し、補足されていく様子は見事なものでした。
完結しているものになにかしら、申し上げるのも無粋ではあると思うんですが。このテーマ性で切り込んでいくことができたら、注目を集める類の作品ではあろうかと思います。
不自由な兄。容姿端麗な弟による溺愛。といったように、ある程度のジャンルとしての「類似性」の強みもあるので、長編に向いた作品ではあるように感じた短編でした。
面白かったです。
exaさんってこういう作品書くんですね。驚きでした。面白かったです。
受付2:『あさり転生-愛しきあのヒトに逢えるまで、何度だって死んでやる!-』鹿熊織座らむ男爵様
リプライでもお返事していたんですが。SNSにURL付きで投稿すると、Twitterカード(今は、エックスカードっていうんですかね)が表示されるんですが。その、表示されてる文章でもうジャンルがわかるのってすごいですよね。
タイトルにもあらすじにも突飛な情報なんですけど。この「私、あさり!」っていう、挨拶が少女漫画のそれなんですよ……
少女漫画の主流である恋愛ものとしての「様式美」に近いんです。もう、食パン咥えて、通学路を走ってるイメージが浮かびますもん。
面白かったです。あくまでも「書き出し祭り」の延長であるから、一応レギュレーションの4000文字以内ので感想を残そうと思っていたんですが。
無理でした。
最後まで読みました。文字数も一万文字以内ということもあるんですが、このリーダビリティにも一定の理由があるだろうと思うので、勉強もかねて感想を残してみようと思います。
冒頭の一話で物語の「型」を決めたこと。情報の提示が「読者」への親切さがある作品でした。
タイトルとあらすじで「ムードわかったわ」ってなったんですけど、それらを補完して、有り余る誘引がありました。
一話から全話通して読めばわかるんですが、基本的には一話と同じ展開(デスループものとしての様式美)や、ちょっとした変化球を交えながら各食器や調理器具達との情報交換がされます。
タイトルとあらすじにはジャンルが示されています。
・異形転生もの
・ラブロマンスもの(少女向けに近いそれ)
・デスループもの
ジャンルとしての様式美や、強さがある作品を3つミックスしています。そして、それらの要素を交えながら、食材として調理される自分だったり、各話ごとに違う料理(グルメものとしてのジャンルが付与)になっている。そして、その時々に展開される調理器具達との会話で、しゃもじが置かれている現況の情報が提示されていきます。
そして、話数を重ねるたびに「しゃもじ頑張れ! あさり頑張れ!」といったように、読者が二人を応援したくなる。そんなテイストで作品が展開されていきます。
上手でしたね。この作品は「〇〇を楽しむ作品です」といったように、明らかなメッセージとその方向に誘導する力がありました。
そして、一番の驚きはラストです。
これは、実際にラストを読んでみてもほしいと思います。そのラストによって、作品のジャンルがもう一段追加されました。
物語の基本的な構成というので「日常の世界から特別な世界」へ向かうというのがあります。異形転生ものについて、あまり深くは存じ上げないのですが。最終的に「人間に転生」するというのは、異形転生としての一つの『特別な世界』への到達の方法なのだと感じました。
そして、物語には決め台詞があります。このお約束をもたせる力や、決め台詞を私もエンタメ作品を書く上で習得したい力です。
面白かったです。ぜひとも皆さん読んでみてほしい作品でした。
受付3:『クズな君を愛してあげる』猫じゃらし 様
タイトルは短めですが、情報が多いですね。
作品情報は次の通り
まだ、本文未読時点ですが。てっきり、グズリフがクズなのだと思っていました。
ヤンデレ令息とあるので、ヤンデレを示すのはヒーローのほうなんですね。文字数も5000文字とあるので、最後まで読んでみようと思います。
以下、本文の感想です。
面白かったです。あらすじにもある程度の関係性や、収束される結末も理解していたので、どういった心情や動きの中で展開された情報を畳んでいくのか、そこに興味を持ちながら読んでいました。
ヤンデレという言葉について、ちょっと考えてみます。考えてくれた人がいるので、引用です。
基本的には「男性向け萌え文化」の中で発展したもの。というのが念頭にあったので、女性向け作品での「ヤンデレヒーロー」の様式美をまだ存じ上げないところはあります。それを考えてみたい作品です。
ピーマンでも食わせんのか?(『3-09 ヤンデレ監禁エンドから始める極楽だらだライフ』) という風に思いながら読んでいました。
女性向けで「ヤンデレ」をアピールした作品は上記の投稿にもあるように、第19回書き出し祭りでも存在しました。
ヤンデレの加虐的な愛情をミックスさせつつ、ざまぁを並べる。
ざまぁを並べる理由は「ヒロイン」のヘイトを高めて、主人公の愛情表現に正当性をもたせるものであること。
そして、その「愛するヒーロー」のバックボーンも必要になります。
女性向け作品のヒーロー像と男性向け作品のヒーロー像には違いがあることは、皆さんご承知おきかとは思いますが。私の復習もかねて考え直してみます。
この件を深く追求していくと、私たち現代社会における男性が女性に求める要素と、女性が男性に求める要素が露骨に浮き彫りになるので、社会活動家の皆さんに智子が火炙りにされかねない要素ではあるんですが。
(マジョリティ向けの)女性向け作品のヒーロー像に求めてくる要素は「社会的な信用、人々からの信頼、金銭的な成功、男性としてのフィジカル」などの「社会的な強者」とされるヒーロー像が好まれます。一夫一婦制が当たり前の性規範で育った女性たちにとって「弱者とされる男性」というのはストレスでしかありません。
「社会的な信用も持たず、人々から疎まれ、いつも金銭に困窮し、貧弱な餓鬼」の男性を魅力的に感じる人はなかなかいません。
もしいたら、教えてください。智子がお婿に参ります!
娯楽作品でくらい、魅力全開のトッピング全部載せでいきたいんです。
「優しいのび太さんだけじゃ嫌なんだよ! のび太とジャイアンとスネ夫と出来杉を混ぜて、ウイスキーで割ってこい!」
私の姉はこんな怒号を叫んでいました。そんな姉が蒐集した少女漫画を読んで育った子どもでした。
この姉の発言って実は的を射ているのだ。と思っています。
魅力的な男性像とされる要素をそれぞれのキャラクターに分配しているのです。
優しさをのび太に。男性としてのフィジカルをジャイアンに。金銭的な成功をスネ夫に。知的であり、決断力としての能力を出来杉に。
さて、その点で考えてみた時。このヤンデレヒーローのグズリフ(クズじゃないよ!)には女性向けヒーローとしての求められる力の多くが存在します。
彼は貴族の中でも下に見られる家格であり、その関係性をそのまま認識していた「ヒロイン」の態度が表れていますね。
「将来に用意された権力を無尽蔵に引き出せると、子どもの頃に勘違いしてはいけない」
と、彼女に誰かが諫言でもしてくれたら、結末はちょっと違ったのかもしれませんが。
この作品のヒーローは「社会的な信用を得て、貴族社会の人々からの信頼を得て、金銭的な成功を得た」存在です。フィジカルはわかんない。ゴリゴリマッチョではないですよ。線の細い美少年みたいなイメージです。ヤンデレだもんね! すまねえ、ジャイアン!
ヒロインがざまぁを受けるためのヘイト管理がされ、主人公が「女性読者が求めるヒーロー像」を提案しつつ、タイトルとあらすじにも示されていた「ヤンデレ」としての一途な愛情を作中の要素として提示しました。
ジャンルとしての「お約束」としての要素をポンポンと提示できていたので、スピード感があって面白かったです。
その中で、他の作品にもあるんですが。
「一番のクライマックス」から物語を始めるのは非常に有効です。もう、婚姻のシーンから始まるわけです。そして、そのシーンに至るまでを「読者の興味をもたせつつ、情報を出していく」といった形で5000文字を一気に読ませた作品です。
続きあるなら、読んでみたいですね。
こういった作品で、完結であるのはわかるんですが。
次なる主人公は「ヒロイン」になる筈なんですよね。一途な愛情に絡め取られた彼女が今後どのように「変化」していくのか。「変化」できないのか。
ヒーローの能力と献身的な態度から、彼女は「夫」に敬意をもてるようになるのだろうか。
そこも、一つの成長としての、物語段階として興味をもてる作品でした。
その物語を描こうとしている作品が書き出し祭りにあります。
『3-03 あたしは悪女よ?……いいえ、反省して幸せになれるようです。』
異世界恋愛もの。も奥が深いなぁ。と思いながら読んでいました。
面白かったです。
受付4:『屑石は金剛石を抱く』悠井すみれ 様
書き出し祭りのために用意していた智子アカウントがサーチバンを食らったので、仕方なしに本垢で諸々回答をしています。していますが、通知欄からじっとりと皆さんの動向を眺めるアカウントが私です。
悠井すみれさんが、RTをした後のコメントまで読んでしまうじっとりしたユーザーが私です。
なにかしらの改稿して、運命コンに出す予定とのこと。
改稿するべき点があると、自覚している作品なのでしょうか。
作品を確認してみます。
第六回こむら川小説大賞なんだこの企画は!
読むだけで楽しそうな自主企画ですね。
短編企画で3000文字以上10000文字以内。
逆境がテーマ。
さらに、規約を精読するに。興味のある一文が付されています。
完結ボタンを押すだけでは満たさない。もしも、投げっぱなしジャーマンのような「俺たちの戦いはこれからだ!」といったように文章を締めたりしようものならば、鉄球でタコ殴りされるか、ふわふわな綿でタコ殴りされそうなシビアな規約です。
読む上で、この点も注意しながら読むべきでしょうか。
であれば、この読解の方針としては「短編として完結している作品、そしてそれらの要素から感じ取れる方向性で改稿を検討している作品」とのこと。
さあ、改稿の方針を整理する必要があるのでしょうが。私はね。ほらじっとりとした人間ですから、運命コンという単語を拾っています。それらもチェックしてみましょう。
中編小説のコンテストのようです。
わかりやすい規約であり、女性向けのラブロマンスを必須とした作品であり、ダイナミックな設定を求めているようです。
「世界を変える」ってんですからね。
更に興味深い規約としては「中編」小説であることです。作品の中で求められるであろう「キャラクターの目的の達成」や「世界を変える」とあるストーリーの達成などを目的として、作成するとおそらく文字数が足りなくなるので「作品の魅力が伝わる」要素まで書き添えることが求められているようです。
こういう規約を読んでいると、書籍化に伴うリライトも含めて「完成品」を求めているのではなくて「ジャンルとしての組み合わせの魅力」の部分からの拾い上げを意識しているように見受けます。
よっしゃ、それでは。本文を読んでみます。
一話時点。作中の世界観や、玉胎晶精達の情報が展開され、主人公のバックボーンや、彼女たちが生み出す宝石の目的が示されました。その際に「敵対者」として期待される存在の描写もありました。
連続性のある話題から、チャクルが周囲にどう評価されているのか。カランクラルからの態度などを示し、チャクル自身の目標や考えが描写されます。そして、最後の引きに「敵対者」としての名前があがる災厄(フェラケト)が登場します。
敵対者として認識していた「災厄」は敵対者じゃないようですね。むしろ、ヒロインを保護する「ローグ」的な性質のあるヒーロー像かもしれません。さらには同族という文言から、読者にも「ヒーロー」のバックボーンに関する情報を与えてくれました。
災厄は金剛石なのか。であれば、タイトルの通りヒーローであるのか。
あらごとのシーンです。チャクルが反旗を翻す決断をします。その決断自体が「物語を動かす」判断の一つでしたね。
ヒロインの危機を救う、ヒーローの献身的な態度。そして「外」という新たな舞台の提示で終了です。
自主企画の規約として見た時「物語が完結していること」という側面で見ると、ちょっと怪しい作品かもしれませんね。
物語はどこを切り取るか。
主人公が「決意し、変化」した時というのは十分な「物語」ではありますけどね。
しかし、この作品は「短編」というよりかは「長編」としての主人公の旅立ちにかかるような作品であると感じ取りました。
もしかして、この作品の初稿の時点で「長編」化を視野に入れてたんじゃないのかなぁ。という風にも感じ取りました。
というのが、この作品の「キャラクター」に付与している「内的な課題」がよく絡んでいる要素があったので「おお、こいつは長編でガッツリ書くための課題提示だぞ」といったように感じています。
主人公が熱望していることは「愛されること」であり、それらを期待していたヒーローとしての男性が「敵対者」として転じるシーンがあります。
この作品は全体的に「なんかえっちぃ」んですよね。
そして、キャラクターに配置されている役割という部分や、この世界の「独自設定」としての「玉胎晶精」が現実世界の女性たちに求められる『出生主義的期待」に近しい世界観を提示しています。擬似的なセックスや出生主義に近い要素の独自世界を提案しています。
戦前の日本における「良妻賢母」思想の亜流のような思想です。「愛されたくて仕方がない」女性たちを支配する存在としてカランクルムは存在しています。出生主義的な「女性を支配する思想」の体現者です。
その思想と決別し、逃避をするヒロインは「新たな思想や自我」を習得し、新しい旅路。までを描いています。
ここまで、うがった目で読んだ人達はいないとは思うんですが。この出生主義的な観点を「好む」女性読者も一定数いるし、そういった要素もあって「ヤンデレ」だったり、女性向けの官能小説だったり、と結構幅が広いジャンルだとは思います。
これらの「出生主義的な思想から引っ張り上げた」ヒーローとのラブロマンスとしての期待感で、この作品の魅力として整理しているようです。
一万文字の短編から上記のように、読み取りました。一万文字ぴったしってすごいですね。めっちゃ削ったりなんだりしたんでしょうね。
今後、中長編として展開していくとしたら。
二人の恋路や旅路を邪魔する存在として、カランクルムの今後の執着や「魅力的なラブロマンスの相手」としてシャドウの力を持たせたいですよね。だとしたら、カランクルムのヘイト管理を前半で「もうひとりの魅力的なヒーロー像」として調整する方がいいかもしれません。
そういったテコ入れを入れると「ヒロインが自発的に裏切った」シーン自体に「能動的な態度」を描写すると、逃避行の中でのカランクルムをヒーロー化計画に支障があるので、難しい修正だとは思いますが。
ラブロマンスですからね! ヒロインの前に現れる「魅力的な、誘引をしてくれるヒーロー」の登場を期待しています。
その時はヒロインのチャクルに新しい課題があるでしょう。
愛されたくて仕方がないチャクルは「愛してくれるなら誰でもいいのか?」といったような課題を与えることができますね。
初めての外の世界は、チャクルにとって刺激的であり、その刺激的な世界の道先案内人として「指導者としてのエルマシュ」がそばにいるでしょう。そして「初めて会う他の魔神」達にチャクルはどのような感情を抱くでしょうか。
いろんな描き方で、チャクルの「ラブロマンス」としての道筋は色々あるとは思うのですが。
問題は「中編」としての「世界を変える運命の恋」中編コンテストであることを忘れてはいけません。
読者に理解しやすく!
私は汲み取ることができましたし、主人公がスポイルされている。思想的に支配されていた様子は十分に理解できました。この点は問題ないと思いましたが、短編的な性質のため「主人公の変化」が能動的過ぎました。少々強引にヒーローに連れ去られてしまい、徐々にヒーローの魅力を理解していくような演出に改稿するのが無難かとは思います。
恋愛とそれ以外の要素が絡む!
ちょっと、欲張りさんですよね。どのニュアンスを求めているのか不明なので、ちょっと応募規約にある紹介作品を触れてみました。
バッチバチの恋愛もの。前世のラブロマンスを基調としています。これ、恋愛ものじゃない?
試し読みをちょっと読んでみました。この作品はラブロマンス主体というものではなくて、お仕事にかかる部分の相談からはじまるそれといった形式のものです。試し読みの部分では主人公の「恋愛」に関するテーマは汲み取るような情報量ではなかったですが、タイトルから「愛」をしらないという部分もあるので、根底に据えたテーマなんでしょうね。これくらいのニュアンスでも十分構わないということなのでしょう。
この作品も試し読みの部分だけですが。目を通してみました。
三作品に共通するキャラクターの要素があります。「能動的」なキャラクターであることです。
問題の解決や、自己の欲望や決意にたいし、果敢に攻めて、知恵と決断で危機を回避する。ヒーロー的な性質をもったヒロイン達が登場し、活躍する物語です。
この特徴を思えば、『屑石は金剛石を抱く』のチャクルもその性質をもたせようとしたキャラクター造形だったのかもしれませんね。
カテゴリーに添わせていくのであれば、主人公が「能動的」な決断力を示し、彼女がチャクルが今後の旅において「目標」を設定する向きの改稿が必要かもしれません。
現在、主人公は「自らの意思」で反旗を翻しましたが、そこに至るまでの描写を増やし、反旗を翻すための説得力としての前段階の描写を増していくないし。同僚たちの冷やかし(ドアマット的な性質なのだとは思います)に大して「攻撃的な」姿勢を見せたりするとかでしょうか。
でも、私ね。このチャクルの魅力っていうのは「愛に耽溺して、力を失っていた」ヒロインが力を取り戻し、活力を発揮する。という要素だとは思うので「能動的に反抗する」という一つの変化や、主人公の決断はもっと後半にとどめておくのが「現在のチャクルの魅力」を引き立てる方法だとは感じます。だけど、その手法は「編集部が求める女性キャラクター」像とは離れているかもしれません。
属性、性格、境遇など、ヒロインとヒーローのキャラクター設定およびその組み合わせが魅力的である
文句なしですよ。受動的なヒロインに、能動的なヒーロー。素敵なバランスであろうかと思いますし。ヒロインがヒーローに惹かれる要素の一つとして「カランクルム」の魔力故ではないか。という問題提起もラブロマンスに一波乱ありそうで、良い設定だと思っています。
そして、規約に求められている。
ラブロマンスと絡みあうように「世界に影響を及ぼす」ほどのダイナミックな設定をもたせる必要があります。
編集部求めすぎでしょ。
世界にというレベルまで押し上げると、世界観やその世界が抱えている課題の性質に、ラブロマンスで立ち向かうみたいな。ものにしないといけないんでしょうね。それがもっとも「困難」が伴う形で。
女性向けラブロマンスで、他の課題と合わせるとなると。
ヒロインに危機が迫り、その危機をヒーローが救い出す。大団円。もう好き!! みたいな感じが基本的な構成なんですが。
こういった「個人」のスケールでたたむ物語を求めていないんですよね。
なので、彼女と彼が宿している宝石自体が何かしらの「世界をざわつかせる」ほどの力とギミックが明かされる。そして、その世界への献身を求められることになるのでしょうが。ヒロインとヒーローが「その世界をすくいたい」とまで思うような『魅力的な』イベントを重ねる必要がありますし、それらを予感させるようなヒューマンドラマを二万から六万か。
ただ一人のカランクルムに愛され、献身的に捧げることを至上の喜びとしていたヒロインです。その彼女が世界の為に「身を捧げる」ことに理解できる。納得できる。説得力のある二人の旅路が描かれることを期待します。
コンテスト頑張ってください。感想の部分でなにかしらの「ここの部分が良くわからんかった」とかいうのがあれば、お訊ねください。いろいろこねくりまわしながら考えてみましょう。
感想は以上です。
受付5:『童貞税』阿下潮 様
とんでもないタイトルがやってきましたね。
『童貞税』ですか。
砦を落とせぬ兵士に税金を加算するとは恐ろしい社会です。
こちらもまたとんでもない企画があるようです。セクシュアルな話題ですね。
性癖の塊みたいな企画じゃないですか。規約の文面もそれとなく先程の『第六回こむら川小説大賞』のそれに似ていて、ここにも闇の評議員がいるのだ。と驚いています。
もしかして、私のように名前を載せて感想を作成する書き手はあんまりいないのか。闇の評議員とはいいつつもどこかにクレジットがあるんでしょうか。
規約がもう。すごいですね。ある程度、ストーリーラインにレギュレーションとして指定があるんですよね。
智子はこの作品を読む上でズボンを脱いではいけないということです。というのであれば、あくまでも主人公の抱える「童貞」という属性に対するアプローチの作品を求めている。というわけです。
小説媒体らしい、レギュレーションですね。
年上のお姉さんに股間が暴れん坊将軍の作品を求めていると勘違いしたら怒られるわけです。
芳しい童貞小説を確認しましょう。
以下、本文の感想です。
しょっぱなからアクセル全開じゃないですか。この制度って実は「リベラル」的な配慮から言うと抜群ではあるんですよね。性的な接触に関する項目で、男性と女性では性的なリスク(妊娠や出産の身体的な不自由な期間)が女性の方に偏ります。それらの部分も勘案して、男性のみに課税する。という方針をすることで、積極的優遇政策の亜種として機能している側面がありそうです。この冒頭の文面から「政治的な話題のアプローチを展開する作品」としての期待も高まりました。この税制による、童貞達の集団強姦事件に発展するなどの、ならずもの的な童貞集団の叫びや怒号という作品の展開も予想しました。
空耳アワーからの引用です。童貞文学を著するにあたり、必須とされるであろう教養の一つであろうかと存じます。
もう、発想が童貞で清々しいですよね。
世の女性達。男たち全体を一般化するような言説はいましむべきである。と考えている智子(西向く侍)ではありますが、あなたの息子もあなたの夫も、可愛い甥っ子もだいたいがこんな感じです。
あなたが読む女性向け作品の異世界恋愛に出てくる「ヒーロー」達も若く滾るほどのリビドーが狂わせていた時期があるのです。
温かい目で見ろとはいいません。どうぞ、冷ややかな目で見てやってください。
おまわりさんこっちです。妙齢の男女が二人並んだらすぐさままぐわいが発生すると考え違いをしている。それが童貞なんです。許してください。
章分けの中で視点の変更がありました。
直前に該当する人物の描写を「俺」から行い、章を分けた後「私」に変化しています。この点は、最近読んだ中での「物語の連続性」の話題に通じる要素ですね。
多分、慣れた書き手の皆さんは当たり前のように使いこなす力なのでしょうが。私もその力を習得するためにわざわざ触れてみます。
連続性について、興味がある方は玄武先生の投稿を確認してみてください。
ここで、作品のジャンルがガラッと変わりましたね。
物語には「対立する価値観」を必要とする要素があって、「俺」が「童貞」であることに懊悩している。そして、自身の性別の違和と戸籍上の違いなどに関しての、トランスジェンダーを置いてけぼりにした制度に強い怒りを持っている「私」が怒りと共に窓口で喉が張り裂けんばかりに抗議しています。
さあ、この「私」のバックボーンと主人公がどのように絡むのか。そっちの方で期待の修正が入りました。ズボンはちゃんと履いています。
2章読み終わりました。
あれ? パパ童貞やったん。予想してたわけじゃないですけど、こういう風に作品を読んでいると、刺激を受けて、ペロッとつぶやくことがあります。
こういう時に類似性を感じると、驚きますね。
パパ童貞やったんね。あの申請書類の描写はそういったことでもあったんだろうな。
おいおい。まて。また章が変わったぞ。
パパは女性でした。物語の連続性であり「私」の視点で「赤い幕」というのも、劇場の描写作法のようにも見えて、オムニバス形式なのだな。と理解しました。
そして、次の4から11に至るまでのそれぞれの「童貞」達の視点で短文形式で展開されました。
進化心理学の表面的な部分を、根拠としての補強につかう「童貞蔑視」の方々の意見を表しています。
この表現も非常に「ゲイ文化のステレオタイプ」な表現方法ではありますので、もしも出版時には修正や注意書きを求められそうですが。ゲイコミュニティにおいての「ミソジニー文化」の定着はすごいものがあります。それを表現している文章だとは感じます。
泡風呂のお姉さん大好きです。オドオドした青年よ、熊本で時限的に恋する。という方法もあるらしいぞ?
ミソジニー的な価値観を有している「強者男性」としてのコメントです。実際のところ、将来的にはこの方法が一般化されるだろうなぁ。とは思いますが、現在はまだ「マイノリティ」でしょうね。
出エジプト記、モーゼからもコメントを頂きました。
私は信心深いものではありませんが。十戒に施すほどには「性交渉」に関する問題が彼らには存在していたんでしょうね。
童貞に関する問題や認識というのは「一夫一婦制」から生じた概念でありましょうから、この引用も意味深いものではあります。
冒頭にも示していたように、この強姦事件や事案に類する該当者達のコメントですね。冒頭にあったムードの通り、政治的なメッセージを伴う作品であることが示されていましたね。
使えるようになったら、教えてね!
多分ですが、この作品の趣旨というのをいろいろ汲み取った結果この最後のメッセージに届くんですよね。
「選挙いけよ」
ってね。
さあて、一通り読み終えた段階ですが。
自主規約上求められていた「童貞文学」としての「主人公の内的な課題」にかかる成長要素や、成長点への到達などが示されはしませんでした。あくまでも「問題提起」にとどまり、読者に「童貞の多様性と選挙への無関心が産むディストピア世界」を描写した作品でした。
前半の文章に関して「童貞故の思考ルーチン」だったりの描写を丁寧に書いていたからこそ、それを回収しなかった。という部分では正直不満が残る作品でしょうか。
課題点を描くならば、その課題に対する価値観や、考えを変化させる物語を期待しながら読んでいたので、途中からオムニバス形式に切り替わった(これを確定したのが、2から3への移行時です)ときに、物語の「俺」が抱える「童貞性」や「処女性」などに対する課題的思考を期待していた分、ちょっと読み込む中で、読者側のムードを切り替えるのに苦労しました。
面白くはあったんですが。物語の連続性(描写の部分での担保)はされましたが。「肥大した童貞性質の爆発や不満」といったジャンルの期待から「出生主義に伴うマイノリティ排除」への批判的な政治小説に切り替わった時に「僕が求める童貞小説とジャンルが切り替わった」と諦めた人もいるんじゃないかな。
最後まで読みましたが。課題の提案のみにとどまり、解決まで示さない。今後の政治活動でその是非が問われる。無関心だった人たちが、興味を示してくれる。そうなることを期待した引きでした。
前半からもっと政治的なムードを漂わせることって無理なんですよね。「俺」が政治に興味を持たない。という若者にありがちな特徴を付与させているので「童貞税」に憤慨している。というアプローチが限界ですし、そして童貞にありがちな「夢見てる」感のある描写自体も「童貞文学」として外せない魅力です。
そして、その魅力が「マジョリティ側」の童貞達から更に「マイノリティ」な童貞達へと視点が縮小していく。そういう作品なんですよね。
視点の変更前から、それらを読者に無理なく着地できる誘導があれば、また読後感が変わった作品かもしれません。
とにかくですが。皆さん、選挙いきましょうね。
みんなのための選挙とか。政策に投じる必要はありませんよ?
「誰に票入れたら、自分に利益があるか?」位の考え方で選べばいいんですよ。
独身に給付金バラマキます! とかいう政党が存在したら、私は鉄砲玉となってその政党に所属してやりましょう。
皆さん「自分のため」だけに、物事を考えてほしいですね。
感想は以上です。
受付6:『天槍銀海~戦う美岬~』紙山華久(Sai_kk) 様
まずは作品の事前情報から確認です。
現代ファンタジー
残酷描写有り 暴力描写有り
三人称 女主人公 バトル 対モンスター 美男美女 恋愛要素
女性の主人公で、モンスターと戦うバトルもの。登場キャラクターの容姿は美男美女であり、恋愛要素も期待できる作品。そして、そのバトルに関しては注意を付す程度には描写が激しい作品である。
大枠としてイメージは付きました。次はあらすじを確認します。
あらすじでの情報は「主人公の動機」にかかる部分に焦点をあてた作品のようです。このあらすじを読んで期待した読者は「主人公が物語に対しての態度やその心根」に係る部分を注目しながら読むことになりそうです。
なんのために立つのか。
ヒロイックファンタジーの中で、重要な要素として存在します。
本文でその期待を満たしてくれるものでしょうか。確認してみます。
以下、本文の感想
ああ。こういう切り口でしたか。
面白かったです。リライトの最中とあるので、公開していない第n稿においてはまた違った書き出しにはなるのかもしれませんが。
この切り口は良い方法だと思いました。
こういうのを考える時に便利な方法があります。いつもの奴!
主人公 :古洞美岬
主人公の能力:決断力、行動力(しかし、これは身を顧みない自暴自棄ともとれます。欠点にもなりうる要素です)。外的な課題の解決能力は不明(あらすじから見るに当千を使いこなすには未熟か適正無)
世界観 :現代ファンタジー(異怪とされる敵対者への対応等において「組織レベル」で行われている)
異変・事件 :朱高団地事件(この捉え方は「主人公にとっての変化の起点」となるもの)
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :当千使いになる
あらすじまで含めて読んで、期待感は高まる作品でした。人によっては「あらすじ読まない」人もいらっしゃるらしいので、あらすじ読まない人は逃すかも知れない作品ですね。
物語はどこから始めるか? といった時に「変化のあるシーン」から始めよう。というのはあります。
その変化のあるシーンはどのような効果があるのか。次の4つが該当します。
(1)については私は「内的な課題」と捉えています。異怪に襲われる。という物語のイベントは「外的な課題」です。そして、主人公が抱える今後の「内的な課題」とされるものは「当千使い」として満たない能力であることを指すと予想しています。
(2)上記の(1)に連動するイベントを序盤に設置すること。今作の場合は主人公がその憧れを手にとって、実感した「朱高団地事件」です。
(3)カテゴリーエラーを起こさせないことです。あらすじやタグ付けにおいて示したジャンルを裏切らないこと。
現代ファンタジー
残酷描写有り 暴力描写有り
三人称 女主人公 バトル 対モンスター 美男美女 恋愛要素
この部分ですよね。ここに無い要素を序盤から叩き込んだりすると、読者は離れます。書籍とかだったら、表紙の絵だったり、推薦文だったり、挿絵も見てから買う人いるでしょうし。期待したジャンルのルールを示すこと。そして、その力をこの作品は持っています。
(4)の部分は(1)を達成したならば、自然に埋まる項目ではあります。当千使いとして未熟であり、夢を成すには足りない自身の能力と。求められる外的な課題との対峙。周囲の無理解などが物語上の障壁として、あらすじには示されていますし、それらの環境に対してヒロインは自身の能力を示していくことを「読者は予想し、期待」しました。そして、その「読書中の期待」はジャンルを裏切らないレベルで「読者に驚きという裏切り」を与え続けてくれることを願っています。
この部分からもわかっていただけるように。この作品は「変化」から始まり「主人公の決意」をしめすこと。そして、その決意は「簡単には達成できない」ということを本文中でも示しています。
物語の大枠がわかり、作中に対峙する敵対者もわかり、主人公が何を目的とするのかが十分にわかりました。
あとこの作品の描写のアプローチとして見た時、異怪との戦闘は勿論のことなんでしょうが。
事後処理にかかる人々の態度や「コミュニティの保全」に対する「信頼」といったものは今後の作品展開に大きく関わりがあるシーンなのだろう。とは感じ取りました。
この部分にあるんですよね。異怪駆逐を仕事とする上で「非常に危険」を伴うものであるのだけど。他人事感がある世間と。当事者。といった温度感や、使命感とも違うのか。そのギャップの部分で何かしらサブテーマを展開しようとしているようにも感じました。
続きがあれば、興味を持った方々は読み続ける作品だと思いました。
スタートダッシュとして最適な情報のある書き出しでした。面白い冒頭でした。
受付7:『固定ダメージで挽き殺します!』わけわかめ 様
物騒なタイトルですね。
Twitterがサーチバンであるとか、ざわついている中、口にするとアカウントがセンシティブになりそうな作品です。
40万字は読まないよ。ゴメンな。時間がねえ。
書き出し祭りのレギュレーションにそって、冒頭のみで留めておきましょう。
あらすじ確認してみましょう。
主人公のバックボーンやこれから展開されるゲーム世界の情報が示されているので、ジャンルも示されたいいあらすじだと思います。おそらく、作品の楽しみ方といったものは本文の中で提示されるのでしょう。
タグを確認してみます。
回転鋸ってなんすか。ギーザの車輪ですか。
RTAに関するジャンルって実は良くわかってないんですよね。前回だったか、前々回だったかでも「RTA」リアルタイムアタックというジャンルは存在していました。やはり、なろうのVRものにおいても「正道ではない手法によって効率的なないしスピード感のある攻略」を作中で表現するという攻略を約束しているのかもしれません。
ニュアンスは掴めてきました。主人公は前作のゲームを相当にやり込んでいる。発売日当日にプレイして遊ぶ。
ああ、智子も同じような気持ちでプレイしたゲームはいくらかあるので、状況は飲み込めました。
いまでもモンハンでモンスターを狩り続けてる智子を誰も罵らないでください。そういう、いつまでもやってしまうゲームってのがあるんです。
さて、本文を読みます。
タイトルからして、最速っていうのがRTA感ありますよね。ワールドランクって意味なのかな。であれば、あらすじのWLは誤字なのか。どっちなのか。
刃牙じゃん。配信ものってこういうコミュニケーション取るんですよね。そして、そこのコミュニケーションのやり取りの中に、主人公のバックボーンが提示されています。
そうですよね。配信って、視聴者とコミュニケーションとりながらやってますもんね。
配信ものの魅力や強みが理解できてきた感じがあります。主人公の能力や賞賛をリスナーがしてくれるんですね。現状、彼女にかけられるコメントや、彼女の対応によりキャラクターが浮かんできていますね。
読みました。
面白かったです。面白かった理由を整理していきたいんですが。あまり触れたことがないジャンルですが、技術としての面白さがあったようには思いました。
どう考えるか。自分の力にできるだろうか。
物語の魅力とキャラクターの魅力について、様々論争があるものですが。どっちも大事だよね。とは、基本的に皆さん感じ取っているんですが。実際どっちで魅力を出していこうか。ということを考えた時に「エンタメ作品」としては「キャラクター小説」を打ち出していきたい。という市場の希望はあるでしょう。
魅力的なキャラクターが存在するだけで、ページをめくる理由になるのです。
魅力的なキャラクターというのが単体で存在するものではなくて、世界観の中に立体感を伴って存在するキャラクターに私達は魅力を感じます。
その分で申し上げた時にこの作品の魅力については「キャラクター」にステータスの数値を全載せしたような作品です。
今回の書き出し祭りでも「顔を赤くさせろ」というようなコメントを残したことがあります。
感情表現を作中に見せると、それだけでぐっと読者との距離感が近くなると捉えています。
配信者としてのスタイル(チャートを徹底した)と、プレイヤーとしてのスタイル(超重量武器が好き)という情報の対比的な設定を提示しました。
超重量武器が配信者としてのスタイルにはそぐわない。しかし、違法スレスレのシステムスキャンにより、超重量武器を好むプレイヤーの性癖が暴き出されたということでしょう。
物語の『難易度』を上げたんですよね。タグには「RTA」とあるのに、それにそぐわないユニーク武器が主人公に与えられてしまった。
その超重量武器を前に「おそらく年頃の女性がするのは憚られるような雄叫び」を上げている絵面が誕生しました。
キャラクターとしての提案と、物語上の困難を生み出す設定の並びが秀逸でした。
さらには、昨今話題になっている「配信もの」としての力がある作品です。
実際のところ「回転鋸」がどういう力を持っているのか。それはまだ未知数です。ただ、RTAにはそぐわないだろう。というハードルです。
固定ダメージとあるし、ヒットにかかるレートが速いと、爆発的なダメージは期待できそうですね。このある程度、先を予想させることができる情報量であるのもいい点だったと思います。
読む前までは「どういう楽しみ方するんやろ」という風にとらえていたんですが「こう書くのか」という驚きがありました。
配信もの。主人公を賞賛し、力を称えるという上では理にかなった方法ですね。
物語というよりかは、キャラクターの魅力と彼女の周囲に展開されるであろうイベントに期待する作品ですね。
勉強になりました。私の知らないタイプの面白みが展開されました。新鮮でした。面白かったです。
受付8:『仮面ライダーアモン』XX 様(二話はグロ指定な作品なので、未成年は注意!)
さあ、智子のRT企画。なんでもこい。勉強じゃあ。とやってきましたが、二次創作がきました。初めてです。
さて。二次創作を楽しむ人達の読者ターゲットに寄せるために、該当の作品の事前情報を仕入れてきます。
まずは『真・女神転生』について
なにかしら、作品世界で共有されるべき情報があればwiki等からも補完します。
仮面ライダーに関する知識も全くないので、ここもwikiに頼ります。
あらすじから確認します
わからん単語が多いので、ちょっと調べました。
筆者はメガテニストである。
何か、東京が大変な事になっているのは理解しました。
メシア教やらガイア教も良くわかっていませんが。必要になったら仕入れていきます。
この企画は書き出し祭りのレギュレーションで読むようにしているので、冒頭4000文字程度で受け取った情報で、作品の読後感を考えていきます。
#1 俺たちの日常 (1,366文字)
主人公達のバックボーンにかかる描写がある。内容としては、あらすじにある通りの「東京大破壊」後の世界ではなかろうか。と読み取りました。
主人公さん。空手道の習得者は立派なマッチョ的な性質だと思います。しかし、主人公は「妻に見合った男ではない」と自身の内面に恐れを抱いているようです。
#2 私たちの仕事 (3,705文字)+2,339文字
妻の視点に切り替わりました。お互いの来歴に関する部分をそれぞれの視点から描く。旦那さんはそんなに心配するこたないんじゃないの。
出てくる敵対者の名称とイメージがまだくっつかない。おそらくメガテニストであれば、共通の教養として持っているキャラクターであろうかと推測します。
ボディコニアン
おお。セクシー
Gの表記はあれですね。ボディコニアンの頭爆散ということでの注意書きだったんですね。
戦闘シーン等を展開し、彼女たちがどのような力を持っているのかを描写しました。
#3 クーデターが起きたときのこと (4,806文字)+1,101文字
クーデターの話題が展開。おそらく、この人か。
おおう。セクシー……
クーデターのゴタゴタの際に、二人がどのように動いていたのか。というシーンの展開。
レギュレーションの冒頭4000文字程度を読了したので、ここまでとします。
以下、感想です。
冒頭において、二人の主要登場人物が描写されました。
佐上忍:今作のヒーローとして設定されているようです。妻に対して劣等感を抱いているキャラクターでしょうか。その劣等感の部分はどこからきているのか。というと、やはり彼自身の「大破壊後」においての、自身の有用性に疑問を持っているようです。情けない。なんて言っちゃってる位ですし。自分の空手の力やフィジカルのたくましさが貢献できない世界観であるということなのかもしれませんね。
佐上真月:今作のヒロインでしょうか。夫に大して深い信頼を寄せていることが二話の視点変更で描写されています。彼自身が妻に対して引け目を感じていることもいくらか自覚しているようです。
この二人の関係性を描くことによって、作中を通して「坂上忍」というヒーローが、何かしらの力を得て、自信を取り戻していくというヒーロー像としての提案の作品ではあろうかと思います。
それは汲み取れました。さらには、作中で妻が展開している能力に関しても、単語を拾ってみれば、真・女神転生の世界観の中で提供される武装やギミックのようです。
対象読者としている「メガテニスト」達への共有できる世界観やギミックの話題ですね。
読んでいて、ちょっと気になったのは「仮面ライダー」の要素が冒頭では見受けられなかった部分でしょうか。
メガテニストと特撮ヒーローのターゲット層がどれほど、集合で被っているのかはわかりませんが。特撮ヒーローものとして、期待して読みに来た読者は冒頭の情報でのがしている可能性はあります。
おそらくですが。この仮面ライダーとしての力を手に入れるのはヒーローでしょうか。すでに妻は力を持っていて、今、自信を失っているヒーローが何かしらの力を習得する。という形式であるならば、ゆくゆく夫の忍が、仮面ライダーとしての力を手に入れる。とは予想が付きました。
ある程度の「物語の方向性」は二人の関係と、夫の忍が抱えている劣等感の描写から、推測が可能な文量ではありました。
この夫が抱えている「劣等感」の性質を「力を得る」のみで回復した時に、物語のカタルシスがそこで止まってしまう可能性はあるかもなぁ。とは思う情報量です。
夫が抱えている劣等感を「もっと深掘り」していくことが、今後の物語の展開になるのか。
それとも、一つの力を手に入れたあとは別の人物達のカップルに焦点を当て直すような作品になるでしょうか。
案外、後者の作品なのかも。敵のカップリング等の話題もあったので、ラブロマンスを基調としたストーリーラインだと期待はされる文章でした。
もしもですが。
「この作品はバトルやラブロマンス以外の要素で、魅力を作ろうとしていたんだ!」
というのであれば、私はその情報を汲み取ることはできなかった。
予想と違う読後感であったかどうか。という部分で、この感想が参考になれば。と思っています。
感想は以上です。
受付9:『Haphazard Fantasy』加藤大樹 様
英語がきました。智子は他の方の感想でも申し上げていますように。英語が苦手です。皆さんすごいです。英語を使いこなしています。
単語で「……ファンタジーって書いてる?」という微妙な読解ができました。
しかし、私には心強い味方がいます。Google君です。彼はたまにとんでもない嘘つきになることがありますが。言語の分野では強い子です。そんな彼が参考になるサイトを教えてくれました。
ハプニングの形容詞なのかな。
これらの情報ではどんな意味をもたせたファンタジー作品であるのか。予想がし辛いですね。
タグを確認してみましょう。
ファンタジーとありましたが。舞台は異世界。残酷描写等の記載があるってことは、ハードな描写がある作品であることを記載しています。
性描写があるんですね。カクヨムって性描写有りなんですね。これはミッドナイトの住人である智子も、参入の余地があるのかもしれません。
どれほどのえっちぃ描写があるのでしょうか。青少年の性癖を崩さない程度にはお願いしたい。
さて、本文を確認します。書き出し祭りのレギュレーションに従い、4000文字程度の読後感で考えてみます。
220文字
神と「私」という名称があります。少年を導く存在としての「私」がアピールされた文言でしょうか。
スラッシュは文字数を埋めるためのものかも。
+598文字(818文字)
キャラクター三人称視点のエイルの母親の心情を描くためか。
少年の周囲の人物としての母の視点から描写がある。
主人公がどの世界に過ごしているのかはまだわからないが、家族には恵まれている。
+842文字(1,660文字)
ちらほら視点がぶれているのが気になりますが。気にする人は少数だとは思います。昨今の書籍化されるライトノベルや文芸関連の作品ですらも文章作法をさほどうるさくはいいませんし、こういう文体なのでしょうね。文体については、ここで認識をスイッチしました。
三人称キャラクター一元視点に固定されない描写のスタイル。どちらかと言えば、漫画作品のように内心の吹き出しが複数のキャラクターから頻出する表現方法。
彼には父がいるようです。そして、彼が大きくなるまでの家族との距離感や。最近産まれた妹によって、愛情の偏りに不安を思っている。
余談ですが。
智子は三人姉兄弟の末っ子であり、家族から全ての愛情が私に注がれているタイプの子どもでしたが。エイル少年と同じ心根で長女である私の姉は似たような心境に陥っていたようです。姉に至っては弟を殺害する計画をたてるほどだったのを覚えています。
私は姉の気まぐれと寛大さで生き延びています。
エイル少年はできたお兄さんですね。
+1427文字(3,087文字)
時制が冒頭に戻って、土を払い、家に戻る。家族との「愛」の話題についての提案がある。近々にこの「愛」についての問題提起があるのだろうか。それくらいには描写が重ねられた。
父の帰りについての話題から、入り口からの物音。
ええ。智子は知ってるんですよ。村焼かれるんですよね?
+680文字(3,767文字)
村は焼かれませんでした……智子の酷い発想をお許しください。
父が家に戻る。エイル少年に何かしらの贈り物で引き。
+970文字(4,737文字)
11才の誕生日に。と、腕のいい鍛冶屋からの剣を贈り物として受け取る。
書き出しのレギュレーションの4000文字を越えたのでここの時点で読後感を整理します。
面白くはなりそうですが、まだ期待していた面白さに届いていない。
といった情報量でしょうか。
私は事前情報は読まずに第一章から順に読んでいました。
そして、得られた作品情報はエイル少年を取り巻く家族の環境の描写。に終始して、物語が始まっていません。
智子が第19回書き出し祭りで、感想を残す際に参考にしていたファースト10という考え方があります。
上記の部分に更に付け加えて『主人公の能力』まであるとなお効果的だと考えています。
現在文字数4000文字の段階で、つかみポイントまでは終えていないように感じます。
それでは、本作の冒頭の4000文字でそれらの情報が展開されるか。を見ていきます。
主人公 :エイル・ノルデン
主人公の能力:不明(父のような騎士になるために、稽古の最中)
世界観 :異世界ファンタジー、騎士が存在する。
異変・事件 :不明
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
冒頭のスピード感を犠牲にして、何を描こうとしているのか。この文字数では、私は測りきれませんでしたが。予想は付きます。
現状描かれている世界は「エイル少年」を取り巻く「日常の世界」の描写を大切に重ねています。エイル少年が持ち合わせている「両親からの愛情への不安」等の描写は読者との一体感を生み出すためには必要な描写であり、その手法として取り入れたことでしょう。
漫画のふきだしのように、縦横無尽にキャラクターの心情を同一シーンの中で描写をするのも、エイル少年がどれほど周囲に愛情を注がれているか。を表現する効果的な方法です。
どうして、ここまで大事に描かれるのか。
「ああ、この日常をぶち壊すために書いてんだろうな」
というのは、読んでいて予想が付きました。そして、この予想がついた読者は続きを読んで「この幸せな家族がどんな可哀想な目に遭うのか見てみたい」といった、酷く暗い欲望を持ちながら読んでいくことになるでしょう。
もう、なんかそういう特殊なアダルト方向の描写に入ったのかと勘違いするほどのそれでありましたし、
タグにも注意があったように、おそらくの家族の女性キャラクターの凌辱にかかるようなシーンを想定しての「予示」的な意味合いの描写でもあるんだろう。とは汲み取っています。まったく違う意図しないものであれば、智子の108個の煩悩が消えることを願って、年末まで大人しくします。
とまあ、この作品はおそらくですが。主人公の決意に至るまでのシーンこそが物語の「カタルシス」として設定しているからこそ、日常の描写を固めて行こうとしている。のだとは感じました。
スタートダッシュでファンを増やしていく作品ではないでしょう。続きのページがあると分かったならば、読んでみようか。
読者は「幸せなシーンを描かれたならば破られることを期待して」読んでいます。みんながみんなそうとは思いませんが。少年の成長を描こうという時、正反対の性質や価値観にふれることを望まれる向きはあります。
幸せいっぱいならば不幸に突き落とす。
不幸ならば幸せに引き上げる。
といったように「変化」を読むために楽しむ節はあります。
この作品もその「基本」にそって、描こうとしていることは汲み取りました。やはり、物語がまだ始まっていないという部分では読者をいくらかのがした部分はあるでしょう。
タグにも期待されていた。シリアス、ダークの要素も序盤のプロローグのみにしか描写がないというのもネックです。幸せな日常が壊れるのを見たい! という、読者の欲望でページをめくらせる作戦として考えたら成功です。
実際の所、私は「どういう方向性の物語なのか?」という下世話な心も浮かびつつ、先のものをちょろっと確認しました。
実際どこまで触ったのか。
ここまでで一万文字弱。として、全体の10%の文字数です。ここまでで、ファースト10を見るのだ。としたら、主人公の能力は示されましたし。物語に巻き込まれているシーンまで描けています。
公募とかで考えるならば、十分なスピード感には感じる作品です。見開き10ページ程度ってあっという間ですもんね。
だけど、web作品としてみたならば、まだ演出の面からギュッと圧縮しつつ、タグやジャンルに期待される要素を散りばめる事が可能な作品のようにも思えます。
村焼かれるんですかね?
感想は以上です。
受付10:『ベネディツィオーネ・インビジビレ ~見えざる”もの”に祝福を~』猫耳猫助 様
はじめまして。
私が感想をご用意するのが遅く、しばらくおまたせしております。
タイトルやあらすじ、タグを確認していきます。
タイトル:『ベネディツィオーネ・インビジビレ ~見えざる”もの”に祝福を~』
ちょっとよくわからんです。智子は英語も苦手ですが、かと言って英語をカタカナにしてもらってもよくわからんです。もう、横文字も英語も読めない奴がおると、作者の方においては諦めて頂きたい。
サブタイトルもありますが、ジャンルとしてなにかを期待できるようなものでもありません。祝福とあるので、ファンタジー的な世界観でしょうか。
あらすじ
あ、群像劇なんすか。
あらすじの内容はどちらかというと、ストーリーラインというよりかは「世界観設定」の補完情報みたいなものでしょうかね。
書き出し祭り関連に限らず「あらすじ読まない勢」も読者の中には存在するので、あらすじを読まなかったとしても、作品を飲み込めるようなものなのか。そこで読者の間口が決まる作品のような感じがしています。
こういった独自な世界観を打ち出した作品である時、魅力的な世界観の説明に終止せず、作品の魅力となるであろう。大きな変化の兆しから始まるストーリーであることが望まれるところですが。どういう作品になっているのでしょうか。
以下、本文を確認します。冒頭4000文字(話をまたぐ場合は、話の最後まで読む)でファースト10としての要素があるかも確認してみます。
1.再び 2,039文字
どうして異界を繋ごうとしているのか。の描写は全くないですが。映像的な描写をつなげ、地球と繋がるシーンを描き出しています。
やはり、あらすじを読んだ人向けの冒頭になっているかもしれません。
冒頭のシーンからの連続性を考えるに、異世界での行いが、地球でのそれに関連しているということでしょうか。
2.終わりと始まり +3,455文字(5,494文字)
2100年から2113年として、13年の時間が過ぎている。文字単語だけでの情報なので、一度目が滑った。次の描写に映ると、時制の変化が表現された。
視点として描写していた人物が死亡の引きで終了しました
以下、感想です。
あああ。こういう作品なんですね。ムードは伝わりました。全然舞台もなにもかも違うんですが。
テラフォーマーズ的な物語ですね。
火星の移住のためという目的にそって、宇宙船にのってすったもんだ。
火星に到着してもすったもんだ。
何か争いに負けて地球に帰ってきてすったもんだ。
地球という日常の世界から火星という特別な世界へ「目的」を持って飛び出す。
というところでしょうか。
読んだ二話までの雰囲気ですが。捉えたのはテラフォーマーズ的な要素であり、特別な世界へこれから乗り出すぞ! といったところ。乗り出したはいいけど、スリルがお出迎え。という作品でした。
この作品の難しい所は、群像劇であるというところです。
視点のそれぞれが「成長するべき課題」を持ち合わせた主人公としての要素を孕ませつつも、キャラクターとしての相性や絡みを描く必要があります。ダイナミックな作品構成を売りとする時は、大人数のキャラクターを用意し、有機的な配置で物語の葛藤を産ませる必要があります。
基本的には私は「群像劇」は書かないし、読まないタイプの読者ですが。それは決して「好まない」というわけではなく、作品としてのコストが高く「エンタメ小説」ではあまり向かない。というのを感じているからです。
そして、その難点を作者の方は理解しているようで、描写の比重を「世界観」よりかは、キャラクターの描写量を増やし、これらのキャラクター間の相性等を整理しながら、作品を展開しようという態度は冒頭から発揮していました。
2023年9月末現在において、創作界隈では「キャラクター」は重要か? というような話題が席巻していたらしいですが。ここでもその話題が出てくるとは思いませんでした。
当たり前の話ではあるんですが。キャラクターを描くには「キャラクターが生きている世界観」も非常に重要です。
現在、その点からこの作品は「序盤に展開する世界観」をいくらか抑えてるようには感じています。
ファースト10でチェックしてみましょう。
主人公 :掛間空宙(11人の群像劇の1人とは思うんですが、現状は彼が主人公としての語り部の力があります)
主人公の能力:不明
世界観 :異世界と現代が繋がった空想科学世界SF
異変・事件 :不明
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
主人公はなんのために異世界に行くのか。
それは金のためなのか? 異世界への憧れなのか?
13年も先遣隊はいなかったのか?
初めての任務だとしたら、どのようなリスクとリターンがあるのか?
任務に安全性は約束されているのか?
そういった「物語の動機」とされる要素が見えない中で展開されています。
実はこれは序盤のシーン全体に見られる傾向であり『1.再び』のシーンにおいても、どうして地球と繋ごうとしているのか? 異世界にはどのような問題が迫っているのか? まったくその情報が描かれないで「映像的な描写」を重ねるだけで、展開をしています。
あらすじを読めば理解はできます。なんかしら「魔族」との敵対者と戦ってる異世界人が地球に助けを求めにきました。っていうことでしょう。
スケールが大きい作品であり、地球を含めた「現実の組織周り」が存在する作品を描く時は「細部に渡る納得感」が序盤に求められる要素です。
そういった部分の描写がないまま、物語が展開するためどういう方向性の物語なのか汲み取るのに少々意識を割きました。
もしもこの作品が「漫画原作」などを意識して、映像的な描写とキャラクターの感情表現、背景に迫る情景描写(SFの世界観にある作品独自設定のエレマ体のビジュアル面からの切込み等)が期待できますが。この作品はあくまでも「小説」であるため、もう少し読者を意識的に誘導してほしいとは感じる作品でした。
キャラクターを大事にするならば、視点を解説する主人公としての掛間空宙のバックボーンを描写し、読者との「一体感」をほしい部分でした。
2113年の大学生の平凡を我々は知らぬ! おそらく特段の描写がないということは「読者」との一体感を求めて、設置したキャラクターだとは思います。
主人公の視点から確認し、認識できる水準で世界は描写されていきます。そして、彼は隊員達の名前や特徴に知悉し、その特徴をことこまかに描写できます。
それはとても「特徴」としてもてるキャラクターではあるし、そのことを「能力」とみてもいいとはおもうんですが。さほど意識していない要素でしょうか。
異世界が登場して、その世界に飛び込むこと。それらの危険性や利益や、隊員達のモチベーション等があまり見えてこない。勿論、それに類する要素はあるんですが。どちらかというと、キャラクター性や、彼らが支給されている装備の話題だったりです。
11人の群像劇ではあるので、それぞれのバックボーンにかかるエピソードのための描写は序盤に見せることはできません。今後の困難の中で明かされる要素でしょう。
私が見たかったのは「異世界という旅路へのスリルや隊員達の期待される報酬」等の提示によって、キャラクター達の納得感が欲しかった。それらの描写の整理こそが、この作品の魅力を更に高める要素ではないでしょうか。
現状は「どうして異世界に行くのか? 詳しい任務の内容は? 何を求められているのか?」が曖昧なのでまだ、世界観に没入できていない段階で異世界に突入し、主人公がいきなり死んでいます……
改めて、感想を残していて思いますが、群像劇って難しいですね。書き出しという分野で見た時に、非常に難易度の高いストーリー形式であると感じました。
書き出しとしての感想は以上です。
受付11:『そそっかしい令嬢のミッションが、一筋縄でいくわけない ~社交界に潜む『正義の組織』の、不遇な令嬢を救うための工作~』 野菜ばたけ@『黒幕令嬢』発売中✨ 様
カードでタイトルが認識できないほどの情報量。
webの海で勝負する!
『これがweb小説だ』
とでもおっしゃらんばかりの長文タイトルです。
タイトルから情報量がありますよね。主人公は令嬢であることが予測されます。属性としては「そそっかしい」というキャラクターとしての愛着が示されています。一筋縄ではいかない。トラブル等を予想させます。
社交界とあるので、貴族令嬢等の社交界を基本とするコミュニティ内での「不遇な令嬢」を救うということを作中の目的とする要素でしょうか。
次はあらすじを確認します
長い! カクヨムってこんなにあらすじ書けるんですね!
おおよそ作品の概要等は見えてきました。そして、そんな「そそっかしい主人公」を補佐するキャラクター達も存在する。といった様子。キャラクターの会話文なども挿入されています。
そして、そんな「そそっかしい少女」を導く指示書がこの作品中のギミックとして、示しているようです。
ここまで、あらすじで書いて4000文字で期待を捉えることができるんでしょうかね。
次はタグを確認します。
なんか、よくわからないタグが多いですね。ここまで自由にタグ遊びできるんですね。
エスピオナージ系というほどには固いものではない、緩やかなスパイもの的な要素でしょうか。
あらすじを確認する限りでは、ムードもある程度掴み取ってはいるので。この「高まった期待感」を満たしてくれるかどうか。が4000文字の勝負ではあろうかと思いますし、そもそも「あらすじ読まない」人たちも読者の中には存在します。
この両者を網でさらえるような書き出しを期待しています。
本文を読みます。4000文字のためにカウントをはさみながら読んでいきます。
1,692文字
義賊的な要素のある組織なんですね。
1,692文字で十分な情報量がありましたね。
ちょっと速いですが、この時点でファースト10のチェックをしてみましょう。
主人公 :エリー・クレメント(エージェント・シオ)
主人公の能力:不明(物語の開く上での指示書の存在は明示)
世界観 :貴族社会等が存在する異世界ファンタジー
異変・事件 :不明
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不遇な令嬢を救う
本文の文字数だけで、ある程度の物語の大目標は示されています。
この時点で、タイトルあらすじに興味を持っていた読者の期待は満たしたと思います。
タラップを転げ落ちそうになる。
両目をかっぴろげて手元の紙とにらめっこ。
など、ヒロインの任務に対しての誠実な態度など、キャラクター性を上手に表現しています。
+2,384文字(4,076文字)
文字数でみれば、ちょうど4000文字です。ここまでで、物語の枠を示せるでしょうか。
本文を確認します。
読みました。ここで、引きかぁ。まあでも、上手な塩梅のそれだったと思います。
かつての自分に照らし合わせながら、描写を重ねるスタイルは主人公がこれから乗り越えていくべき「心のかさぶた」のようなものであり、それらを「イベントに向き合う」中で十分な予感として伴いました。
それじゃ、この時点でのファースト10を確認してみましょう。
主人公 :エリー・クレメント(エージェント・シオ)
主人公の能力:不明(物語の開く上での指示書の存在は明示)
世界観 :貴族社会等が存在する異世界ファンタジー
異変・事件 :不遇な扱いを受けているメリナ夫人の様子
問題・課題 :貴族社会におけるハラスメント?(おそらく、DVとかドアマット系に近い要素)
決意・覚悟 :不遇な令嬢を救う
これらの部分が追加で情報を汲み取れました。
むしろ、私が汲み取った情報以外で問題の提示をしているのだとしたら、導きに何かしらの誤りがあることを感じ取ります。多分、違わないんじゃないかな。
全体の感想について
4000文字で「智子好み」の作品には仕上がっています。
しかし、それが「エンタメを好む」読者層の好みに仕上がっているか。というと、ちょっと怪しいかもしれませんね。
不遇な令嬢(どう不遇なのか良くわからないメリナ夫人)を救うために乗り込む。という明確な目的が示されたのは二話以降でした。このときにあらすじにあった「なんかめっちゃんこ楽しいドタバタでそそっかしいキャラクター達で楽しむ!」みたいなイメージから。
「おいおいおい。重いぞ! がっつり! ドアマット!」
という物語のムードを示されたので、困惑したというのが正直なところです。
不遇な令嬢を救い出す。そして、その救い出す主人公が「女性」であるという部分から、シスターフッド的とまでは言いませんが、女性たちの連帯にかかる作品であり、そういったメッセージにかかる要素を「二話」の時点で出したことは「キャラクター」としての物語に興味を持っている「智子」のような読者には刺さるんですが。
主人公がどんな活躍をして、どのように不遇な女性を救い出すのか?
という部分を期待していた人々を序盤の4000文字でのがしたかも知れません。
主人公が「ドアマット的境遇にあった」ヒロイン像であり、力を取り戻し、構成員として活躍する話です。
そして、不遇な令嬢が現れる。であれば「誰を殴り飛ばせばいいんだい!?」といったように、ドアマットのキャラクターに関する情報を素早く提示し、一度目の波乱に関しての力を示す所から始める方がよろしかったかもしれませんね。
内的な課題偏重ゆえに生じているスピード感のようには捉えています。
あと、この世界の「課題」みたいなものがまだちょっと見えてこないのも感じています。不遇な令嬢を救う。とあるので、貴族社会全体に「女性蔑視」的価値観がまん延している。とか、それらと抗うために存在している機関であるとか。
ミクロ的なイベントにとどまらずに、マクロ的(世界観から入り、女性たちが置かれている境遇)についてのイベントや補足、主人公がそれをどう感じているか。みたいな、読者達に「予示」(フォーシャドウィング)を与える必要があろうかと思います。
現状、序盤の本文においての描写からは。女性に限るもの。のような描き方もされていないんですよね。
性別がわからないのです。そして、その「お困り」の種類がもっとライトなもののようにも感じ取っていました。
あらすじが徹底して、キャラクター小説をアピールしたそれだったので、本文との落差とスタイリッシュさに乖離が生じているように感じています。
この主人公は。おそらくですよ。冒頭の部分だけ見ると。
「使命感に燃えて、困っている人を助けるのに労力を厭わない!」
かっこいい! キャラクターなんですよ。決断力と知力にあふれて、不遇な令嬢の前にあらわれて、彼女たちを助け出す! 義賊!
クール!
そういうイメージの作品です。冒頭の本文だけを読めばですね。
あらすじにあったような、ムード事態は一話で引き上げて、二話は「ドアマット!」という転調が入ったので、不安に思った読者が存在しているかも。
リライトを検討している。とのこと。
であるため、もう少し踏み込むためには作品の続きを読んでみました。
+2,545文字(6,621文字)
ここで、イメージの修正がありました。やはり、彼女は一話のムードの頃のような少女を取り戻しました。指示書に従い、演じる彼女とプレッシャーから放たれた彼女のちょっとした対比的な要素が存在しています。
まだ、これは予想なんですが。いつか、彼女が対峙するべき課題は「指示書」が存在しないレベルの判断が求められることがあるのかもしれませんね。
2,083文字(8,704文字)
二話の時点でも情報提示がある。主人公と夫人の間の境遇に対して、自身と重ね合わせるように描写をしています。内的な課題や、主人公のバックボーンへの描写を大事にしていますね。ドアマットの夫人が「助けてくれ」という強い願いが引き金となるようです。
1,380文字(10,084文字)
この話は夫人を助けるためのムーブとともに、かつて救われた彼女を描写するためのイベントでもあるのだ。と、描写の意図や演出の狙いを理解しました。
2,462文字(12,546)文字
敵対者としての存在が、この作品のテイストを決めていますね。トロフィーワイフといった奴です。
この作品の問題点がわかりました。問題点というか、あらすじにアピールするべき存在でしょうか。
この作品は「シスターフッド」の発展形に関する作品であると理解しました。不遇な力関係にあり、悩める令嬢達を救い出す義賊です!
この作品の見どころは「支配的な男をギタギタに叩きのめす!」みたいな楽しみ方があるので、そこの部分をあらすじや、タイトルの雰囲気にも表すことができるんじゃないでしょうか。
タイトルとあらすじにあった「ムード」から考えると、扱うテーマや問題の性質が「生々しい」きらいがあります。
タイトルとあらすじからイメージしていたのは「もっと年齢層を抑えた児童向け」にも整理できそうな義賊ものとしてのイメージでした。タイトルとあらすじから与えた印象のギャップがある作品です。本文のムードに添わせるために「あらすじの中で誰が敵対者なのか。打倒する思想はなにか?」といったものをアピールしておくことで、読者の期待感が適切に誘導できるように感じました。
タイトルとあらすじの先入観なしに読みすすめていくと、グイグイ楽しめる作品ではあるので、本文に課題というよりかは。「タイトルとあらすじ」のアピール次第で「適切なターゲット」に届く作品ではなかろうか。と感じた作品でした。
感想は以上です。
受付12:『美醜逆転!不細工第二王子が精霊召喚!やってきたのは神獣と一般人でした』黒薔薇王子 様
面白かった作品を二つもあげていただいて、ありがとうございます。
感想のお返事が遅れてしまい、申し訳ありません。
おまたせしていました。
もろもろ確認してみますね。
まずはタイトルから
美醜逆転!不細工第二王子が精霊召喚!やってきたのは神獣と一般人でした
はい! タイトルからして良くわからん! おそらく、異世界転移? 精霊とは言いますが。一般人という言葉もあるので、召還されるのでしょうかね。だけど、人なんでしょ? 異世界転移っぽいのはわかりました。
次はあらすじ
美醜逆転。そういうジャンルがあるんですかね。美醜に関する作品は見かけたことはあるんですが。ジャンルとしての存在は知らないかも。独自性のそれなんでしょうね。
美女である。と形容される容姿が肌の色が濃く、豊満な肥満体型であること。これを美醜逆転としているのでしょうね。
誰が主人公になるのか。この情報ではまだ良くわからない部分です。
次はタグを確認します。
おおん? 男が主人公なんですか。ルキウスが主人公なのか? それとも、平凡男か。
事前情報の時点で「どう楽しませようとしているのか?」がまだ見えてこない作品ですね。
それらの「作品の楽しみ方」に類するような物語的誘導があるかどうか。
書き出し祭りのレギュレーションに従い、4000文字程度で考えてみます。
精霊召喚 2,151文字
不遇な扱いを受けている第二王子の召喚から始まるもの。てっきり原色デブのヒロインが拝めるかも。と思って、ワクワクしていたのは内緒です。ここにもルッキズムの波が!
異世界転移とあり、精霊召喚とあるから、何かしらの主従としての束縛や力が存在するってことなんでしょうかね。と思えば、タグにも主従というのがありました。
不釣り合い 2,543文字(4,694文字)
不遇な主人公にとっての「全幅の味方」としての態度やスタイルを示した存在が描写されました。
そして、兄の儀式が行われ、弟に見劣りする(個人的には蛇っていうのもかっこよくて好きですよ?)精霊召喚が終わりました。
4000文字を過ぎた段階で、物語自体は始まってはいません。始まってはいませんが、内面的な変化のシーンは適切に描けた作品ではあるな。と受け取りました。
例のファースト10で考えてみましょう。
主人公 :ルキウス
主人公の能力:不明(強力な人型の精霊を使役すること?)
世界観 :異世界ファンタジー。異世界転移ものとしてのそれ。
異変・事件 :不細工なルキウスが、上位の精霊を召還したこと。
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :不明
このファースト10の捉え方で見るべき所というのは「主人公」は誰であるのか? というところです。
私はタイトルとあらすじを読んだ時点で「主人公って誰なん?」という疑問をもって読んでいました。作品の中で「成長を期待できる存在」が大体主人公としてみるべき存在ではあります。
読者のターゲットも違うのでしょうが。異世界転移のライトノベルと言えば『ゼロの使い魔』はイメージにあがります。
あの作品はどちらかというと、召還された男性が主人公像として描かれつつも、ヒロインとのバディ的要素のある異世界ラブコメ作品でした。
今回のように召還主主体の男主人公というのに、馴染みはなかったので、新鮮な気持ちで読んでいました。
召還されたであろう人型の精霊とされる人たちが「キャラ」が濃ゆいタイプですよね。
後ろ向きなルキウスを押し上げてくれるような。そういう力のある人たちが主人公のそばに表れました。
主人公に課題があること。主人公のバックボーンがみえること。主人公にどんな「敵対者」が存在しているのか。
といったように、キャラクターにまつわる多くの要素が作中で「展開」はされたのですが。未だ「どのような危険が迫っているのか」までは見えてないので、物語の全体像が見えてこない情報量でした。
で、気になったので、ちょっと続きを読んでみました。
時は満ち足り、世界の修正の時 1,604文字(6,298文字)
視点が変わり、何かしらの思惑がある人物からの描写が続きました。案外この人物は第一王子ではないか? なんて思ってたんですが、そうでもないのかも。いやでも、絡みつく精霊。って蛇では? とか思っちゃいました。
第3話まで読めば、作品の「方向性」が見えてきました。次のお茶会とかで召還された精霊達の能力が示されるのでしょうか。
良い書き出しだとは思います。それは「物語」を描こうとする側面でみたときに悪くない方法ではあるんですが。エンタメとしての「スピード感」をもたせた作品として考えたとき、ルキウスのバックボーンにかかる描写が多かったです。どうして、こんなに描写が重いのか。とおもえば、三話で「思惑のある」影なる支援者がいた。ということの説得力をもたせるための描写だったのだと推察します。
タイトルとあらすじからは「キャラクターの不遇なる内心」に焦点を当てた物語であることはアピールされていなかったです。
そして、もう一つの「物語を強力に推し進める」であろう強烈なキャラクター性を宿しているであろう美女と平凡男の描写が冒頭ではまだ薄いことも、タイトルとあらすじからの期待感から一定外したようにも思いました。
いっそのこと、思い切って、あらすじにもルキウスの不遇な環境に関するサクセスストーリーであることを示したりするのも良い方法かもしれませんね。
書き出しとしての感想は以上です。
受付13:『ノイシュとミネアと魂(アニマ)~戦乱の中で育ち、戦いと愛に身を投じる若者達~』たんとん 様
RT企画の感想行脚も残すところ二作となりました。
ご紹介頂いている作品について、忌憚のない感想とありますが。こういう感想というのは「ターゲット」ではないものからの感想はあんまり参考にならないことがあることも十分にご承知おきいただければと思います。
さて。
タイトル、あらすじ、タグ の設定を整理してみましょう。
作品のタイトルに作中の登場人物達の名前を持ってくる形式の作品ですね。タイトルから情報があるかというと、世界観を決定できるほどの情報量はないですが。戦いと愛とあるので大きなスケールのテーマですから、それを4000文字でどれほど約束できるものなのか。そこが肝になる作品ではないでしょうか。
情報量が多い!
マクロ的視点からミクロ的視点に至るまでの流れで主人公達のバックボーンまではたどり着きました。
主人公は彼らなんですね。
戦いと愛と示すので。作中で「愛」が定義され、それらの葛藤に関する要素が4000文字で示されるか。作品の型を序盤にあるものなのか。前段の世界観設定とうは、世界が争っている理由程度にとらえておきます。
タグ
悲恋と古典恋愛とあるので、現実世界の何かしらの古典文学のモチーフでもあるのかと思うんですが。キーワードには設定されていませんね。
小説家になろうヘルプセンターより引用です
異世界を舞台とした作品であるならば、古典恋愛よりヒストリカルのほうが読者ターゲットに寄り添うかもしれませんね。
さて、冒頭4000文字で作者の狙いとしている。
【激しい戦い】
【純粋な愛】
【胸を抉る葛藤】
に関しての期待値を満たすことができるか? という部分で見ていきます。
作品の見所を適切なスピード感で描けるか。それが、現代に求められている小説のスタイルであると考えるからです。
本文4000文字を確認してみます。
第1話 ~一人の従軍司祭の死~ 3,017文字
何かしらの戦端のシーンから開始。主人公達の父親であるようです。従軍司祭だったんですね。義父との設定もあったので、妹さんは何かしらの養子なのかも。それについては、つぎの第2話にて明かされることでしょうか。
第2話 ~ずっと、一緒に暮らしてきたのに~ 1,982文字(4,999文字)
父親の死に伴って、友人たちを養護院に送るみたいなシーンですかね。
特段妹の設定に触れることはなかったですね。
4000文字は過ぎたので、この時点での読後感を整理してみましょう。
【激しい戦い】について
作品のタグでも設定し戦記物としての期待感や、ダークファンタジーとしてのそれは十分に満たしたものであろうかと思います。私が昔読んだ戦記物っていったらこいつですよ。
どちらかというと、あの作品男性向けライトノベルとしての描写のそれもあったんですが。このテイストとは違う向きのそれでした。
今後、主人公達は父が身を投じていたような戦いに参加することになるのだろう。という予示は感じ取れました。
【純粋な愛】について
ちょっと良くわかんなかったです。というか、この「愛」の項目を描くのって文字数がどうしてもいるんですよね。この世界観がまだ汲み取れていない段階で、この世界の登場人物達の「恋愛観」とか「生殖が絡む夫婦関係」についての「モラル」が現代人の私達と「一緒かどうか」という一体感を馴染んでからでないと、恋愛とか「愛情」とされるものについての測りが取れなくて。
15歳と14歳っていう情報も二話の後半に出てきたくらいで、まだ良くわかんないラインで読んでたというのはあります。
実際、あんな物騒な世界ですから。15歳と14歳ってもう成人でしょ。ほとんど。という認識だったので「くっついちゃいなよ。君たち」っていうおせっかいおじさんが顔を出しました。
【胸を抉る葛藤】
わからんかったです。葛藤っていうのが、ラブロマンスって大事なんですもんね。例えばですよ? この作品ではないですが。禁断の愛とか。許されない感情! とか。そういった部分のラブロマンス的葛藤も描けるでしょうけど。
この作品で「二人がくっついちゃいけない理由」がまだ情報が明示されていないので。「なんで、二人はくっつかないんやろうな」という程度の引きで二話を読み終えてしまいました。
他にも葛藤の要素を用意しているのだとしたら、序盤の4000文字では汲み取れなかった描写です。
ファースト10で冒頭を整理してみます。
主人公 :ノイシュ
主人公の能力:不明(術師としての素養があるらしい)
世界観 :異世界ファンタジー。戦が多いとのことなので、戦記ものとしてのムードがある。
異変・事件 :従軍司祭である父親の死
問題・課題 :不明
決意・覚悟 :術師学院へ向かい、戦場に出る
二話時点での提示された情報で見るんですが。二話の時点で三年の月日が流れた。とあるので、舞台の時制はまた移る。という部分もあり。
「何を楽しむ作品なのか?」
という部分では少々迷子です。
悲壮感を漂わせるには、その悲壮感に至るバックボーンが必要なわけで、ちょっと情報が足りない中「映像的」に悲哀的な描写が重ねられているようには感じました。
読者が感じるであろう「疑問点」を無視しながら、描写が進んでいます。
この指摘ってあんまり、意味ない所はあるんじゃないかなぁ。とは思っていて、そういうのも解した上でコメントを残していきます。
臨場感を伴った描写を意識している文体ですよね。そのキャラクターが認知していて、意識しないと注視しないようなものとか。読者に注意を払ってほしいものに限って描写を意識しているようにも捉えています。それは第一話の戦場の描写にあらわれていますし、キャラクターのセリフに彼らのバックボーンだったりと、情報をもたせようとしていることは十分に伝わりました。
さらにいうと、あらすじを読んでなくても「なんか、戦ってんだなぁ」という程度の「政治的な理由」とか知らなくても飲み込める程度の描写量を一話で感じました。
しかし、第二話になった途端に。
おそらく、ノイシュの視点に寄せて、エモーショナルな展開に持っていこうとしているんですが。そもそも、ノイシュとミネアの具体的なイメージがないまま、そのシーンを重ねているので、読んでいる側としては追いつくのに必死で「どうした? 従軍司祭のパパが死んだからって全員養護院送り?」とか、読み込むのにカロリーが必要とする描写が重なっています。
そして、家族である「義妹」が「捨てないでくれ」とすがるくらいにはノイシュという少年は「信用されていない」ようにも見受けられるキャラクターになってしまっています。
あの態度はお互いがこれから克服していくべきものなんでしょうが。
展開が「映像」だけで流れて行くイメージなので、お互いが抱えている問題とかも見えないなか文字数がかさんでしまった印象です。
映像的な切り取りのみで、キャラクターの課題点を引き出そうとしているのじゃなかろうか。とは思いながら読んでいます。
バッチバチの異世界ファンタジーでハイファン作品なので、その文化とか教育レベルとか、そのレベルのところからある程度描き出さないと読者は混乱するタイプのジャンルの作品です。
共有できるシェアワールド的なライトなファンタジーじゃないものと思って、読んでいたので。ここの部分で、いくらかの説明を端折った部分が個人的には読み込みにいくらか影響が有りました。
世界観の中で「大きなスケールの話をしようとしている」というのは汲み取れたんですが。まだ、時制だったり、キャラクターそれぞれの「目的や決意」が揺らいでいる印象で冒頭の4000文字は終了しました。
続きを読む中で「どんな感情」や「どんな価値観の対立」や「葛藤」が約束されているのかはわからない作品でした。もうちょっと情報が欲しかったようには思います。
しかし、全体のムードとして戦場の話からはじめたことは「戦記物」を約束する展開だったし「戦記」を好んで読む、読者ターゲットの方たちは「硬派」な読み手も多いと思うので「ファスト」な展開を意識したネット小説との相性をあまり気にしなくて良いジャンルだとは思います。
作者の方がお考えの通り、筆致に気をつけながら作品を「引っ張り続ける」ことが求められる力だとは思います。
書き出し祭りとか、書き出しの情報量、という部分で勝負がし辛いのが戦記ものではないか。と考えています。
良く考えてみたら、書き出し祭りに戦記ものってあまり見当たらないんですよね。
勉強も兼ねて、今回のRT企画を始めましたが。自作も「戦記もの」やってみてえなぁ。とは思う刺激に溢れた作品でした。
感想は以上です。
受付14:『ロックバンド『春芝居』より、大切なお知らせ』田面類/海鮮焼きそば 様
最後の作品です。読み込んでいきましょう。
タイトルを確認します。
音楽ものとしてのイメージの作品でしょうか。大切なお知らせとあるのですから、何かしらの広報の文章か。青春とロックバンドていったら、恋愛の内輪もめで空中爆散みたいなイメージですが。そういうのじゃないんですか。
なんだ。このキーワード。と思って、色々調べました。
なかなかえげつない短編の募集ですね。
ぐちゃぐちゃというキーワードを元に、短編を用意する。777字以上のもの。
昔良くやってた。即興小説の日数またぐ奴みたいな感じですね。
あらすじを確認します。
あ、やっぱり。そういう、解散的な奴ですか。
文字数をみるに、完結している短編ということでしょうか。
挑戦的とあるので、何かしらのギミックありなのか。
以下、本文の感想です。
ああ、なるほど。挑戦しましたね。
この書き方でも「物語」は成立するんだなぁ。とは感じました。
しかしながら、この作品は「行間」を読む力が求められる要素がありますね。
人気のある「春芝居」なるバンドが解散の宣言をする。運営等のかしこまった挨拶から続き、それぞれの三人のメンバーからのコメントを引用して解散宣言の広報をあげているわけです。
なので、登場人物としては運営側。メンバー3人とあり、4つの視点から解散について言及している作品です。
最後のコメントを残している正木直哉という方が色々と要点をつまみながら、人間関係の破綻からの解散である。とぶっちゃけています。
そもそも、こんなことを言うやつだから「揉め事多かったんやろうな」とは思います。
なんというか。三人のコメントだけで「人格」が類推できてしまう。コメントに人格が表れるというのも不思議な話で。そういった部分に挑戦した作品なのだろう。とは予想しています。
物語の描き方としては面白いアプローチの作品ではあると思いました。
学生時代の一時に過ごした友情を継続できるものか? というと、それは人によるんでしょうが。大人になれば、共有できる時間も違うものがあるので。たまに会えば仲良くできるもんですが。四六時中一緒にいればそりゃ揉め事も起きるもんですよ。
この人が好きでたまらない! ああ、一生一緒だよ! といって、結婚した夫婦も離婚する世の中です。
物語のいろんな力があるんですが。この物語は「悲劇」を楽しむための物語であって、どんなに仲がよろしい。金銭的に利得がある。としても、繋ぎ止められない思い出、人間関係といった諸々の「問題提起」としての作品です。
もしもですが。「長編作品」でこの問題提起されたら「おいおいおい。結末まで書いてくれよ」となるでしょうが。「短編作品」ということであれば、一つの提案される問題提起の物語として受け入れることはできますね。
これは「悲劇」を楽しむための物語だからです。
悲劇を通して「自分たちもこうなるかもしれない」といった、自身に照らし合わせる楽しさ。もう一人の自分。といったように楽しむ作品ではありますし、そういう物語がある。といったことを飲み込めた読者は「作品の狙い」として受け止められる作品だったかなぁ。とは思います。
書き出しというよりかは、短編としてのそれだったので、こんな感じの感想になります。
感想は以上です。