学校と自治体が連携した地域エネルギー会社の取り組み-大阪府能勢町-
こんにちは。
合同会社andstepの中井健太です。
今回は、2024年3月20日に大阪府能勢町に視察に行きましたので、その様子をインパクトラボ・エネシフ湖北のnoteで紹介します。
滋賀県守山北高等学校コーディネーターを担当されている一般社団法人インパクトラボの上田 隼也さんと成安造形大学の田口 真太郎さん、さらにエネシフ湖北の桐畑 孝佑さんの4名で視察に行きました。
1.大阪府豊中高等学校能勢分校
まず、地元のまちと連携した独自の授業を展開している大阪府立豊中高等学校能勢分校(以下、能勢分校)を訪問しました。能勢分校では、准校長の菅原 亮先生にお話を聞きました。
改めて、分校と言われても馴染みがない方も多いと思います。
能勢分校は、従来の大阪府立能勢高等学校を2018年に改編する形で、大阪府立豊中高等学校の分校として、能勢分校が設置されました。
現在、教員15名生徒80名程度の小規模の学校です。
菅原先生から能勢分校の特長について教えていただいました。
能勢分校の3つの特徴は、①課題探究、②多様性、③少人数教育の3つです。
①課題探究〜グローカル・スタディ〜
能勢分校では、”地域に開かれた課題探究”をテーマに探究活動を行っております。例えば、能勢分校への通学に伴う交通課題から、乗合タクシーやE-bikeの利用についての探究を行うチームやドローンを活用した地域農業への貢献などを探究するチームなどがありました。
地域のコラボ先を1つは見つけるということがミッションでもあるそうで、取り組みを通して様々な地域の方と関わることが多くなるそうです。そして、最後には、課題探究発表会で1年間の取り組みを発表します。
その時には、関わってくださった地域の方や町長、大学の先生など様々な方が発表会に来てくださるそうです。来年は、来場者数が増えすぎて、500人ほどのホールで行う予定だそうです。地域に愛された取り組みが広がっているとお話しされていました。
②生徒の多様性
能勢分校では、毎年世界各国から留学生が訪れています。また、里山留学制度があり能勢町内の民家に下宿しながら通学することができます。
そのため、令和3年度1年生は能勢町内出身の学生が51.9%、町外出身が48.1%と約半分は町外からの学生になります。そのため、海外留学生や町外の学生などが集い、ユニークな学び舎となっています。
海外留学生は世界各地から訪れ、エージェントを介して噂が噂を読んで来ている場合もあれば、直接問い合わせもあるそうです。
また、留学生受けれのためのホストファミリーは能勢分校の卒業生のご家庭に相談することもあり、地域で受け入れていく形ができてるそうです。
③少人数教育
能勢分校では”超”少人数で授業を受けることができます。授業あたりの生徒数は平均5.3人とかなり少ないです。そのため生徒と先生の距離が近く、発言や質問しやすい授業づくりが行われています。
また、選択授業の数も多く、それぞれの学びたいに合った授業選択ができることも魅力の1つだそうです。
2年生からは4つのコース選択となり
探究コース / 食農流通コース / 対人支援コース / 里山起業コース
に分かれていきます。
菅原先生は、
お話を聞いてて能勢分校の生徒たちには自己選択ができる機会が多いように感じました。選択授業の数や修学旅行でさえも、自分たちで1から考えるそうです。また、学校のインスタグラムの発信も生徒からのアイデアだそうで、生徒と先生たちが一緒に取り組む環境が整っていると感じました。
能勢分校を視察して、先生も学校も、そして地域も生徒1人ひとりの学びに寄り添うからこそ、能勢分校に行きたくなる生徒がいることがわかりました。
世界が教科書。教室は、町ぜんぶ学校の魅力がこれからも全国の生徒たちにより伝わっていくと思います。
2.能勢町役場・能勢豊能まちづくり会社
午後から訪問したのは、能勢町役場です。そこでは、能勢町役場の矢立 智也さんと井上 良介さんそして、株式会社能勢・豊能まちづくりの榎原 友樹さんにお話を聞きました。
能勢町は、2021年にSDGs未来都市に選定されており、能勢豊能のエネルギーを軸にしたまちづくりの取り組みを紹介します。能勢町とお隣の豊能町の人口と面積は以下の通りです。
能勢町・豊能町のまちづくりについて教えてくださったのは、株式会社能勢・豊能まちづくりの榎原さんです。榎原さんは、地域エネルギー会社である株式会社能勢・豊能まちづくりを2020年に設立しました。
地域エネルギーの現状について、榎原さんから説明してもらいました。
能勢町は、毎年8億円・豊能町は毎年14億円ものエネルギー代が流出しているそうです。また、日本全体で見ても、化石燃料輸入額は20兆円近くあり、これは、日本の2022年度の消費税額と同じ程度あり、エネルギー代に多額の費用を使っていることがわかります。
榎原さんは、このようなエネルギーの課題に着目し、2020年株式会社能勢・豊能まちづくり設立し、電気の小売業から事業を始めました。
他にも、まちづくりの視点で、能勢町と豊能町の公共施設のエネルギー診断を行なっています。
まず、町内の学校施設の遮熱対策を行いました。小学校では熱中症の問題から前向きに取り組んでくださったそうです。
次の取り組みは、薪の買い取りと販売です。能勢町は森林が多く、森林を伐採時に出た、薪の買い取りを行い販売を行っています。
森林整備を行いながら、資源を無駄にしないエネルギーの活用を行っているそうです。また、住民の声を拾い上げるための自然エネルギーに関するワークショップを行いました。約60名程度が参加してくださり、多様な住民の皆さんの意見と再生可能エネルギーの理解を得ることができたそうです。
また、初期費用ゼロ円でソーラーパネルを役場に設置したり、実証実験としてリユースEVを2台ずつ能勢町と豊能町に導入するなど様々な取り組みを自治体だけでなく企業と連携して行ってきました。
株式会社能勢・豊能まちづくりは地域活動をエネルギーで応援できないかと、電力を通じて地域活動を応援できる仕組みも作っています。
具体的には、株式会社能勢・豊能まちづくりの売り上げの2%を地域の活動団体に資金分配する仕組みです。また電力契約を行っている契約者に好きな活動をいいね!で応援していただいて、今では4団体の地域活動をエネルギーの仕組みで応援しているそうです。
先ほど紹介した能勢分校ともE-bikeプロジェクトも実装しました。電車のない能勢町で、交通課題のある能勢分校で24台e-bikeを用いて理想的な通学と公共交通の課題を連携した取り組みも行っております。
詳細は、こちらに掲載されていますので、ぜひご覧ください。
株式会社能勢・豊能まちづくりのコンセプトでもある「エネルギーを変える。まちが変わる」この言葉のように能勢町・豊能町はエネルギーの観点からまちづくりや地域づくりまでを考えた様々な取り組みが行われていました。次は、大阪府吹田市江坂でプロジェクトが動き出しているので、今後も能勢分校、能勢町、株式会社能勢・豊能まちづくりの動きは楽しみにしております。
最後に
私たちも滋賀県で実施している守山北高等学校の新学科「みらい共創科」の新設やエネシフ湖北が中心となっている長浜市のゼロカーボンシティプロジェクトにも今回の視察での学びを活かしていきたいと思います。