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【健康しが】第14回トライアスロン・パラトライアスロン研究会にて、発表を行いました。
こんにちは。
Tabiwa Nextの滋賀大学大学院データサイエンス研究科の戸簾です。
今回は東京に設置されております、ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)で開催された「第14回トライアスロン・パラトライアスロン研究会」にて研究発表を実施しました。
トライアスロン・パラトライアスロン研究会とは?
トライアスロン・パラトライアスロンに関する研究成果発表の場として、競技力向上から普及促進、アンチドーピングなど様々なテーマのもとに開催をいたします。競技者のパフォーマンスを支える最新の知見や実践的な内容が発表されました。
会議開始・基調講演
特別講演[1]「世界で戦うニナー賢治選手のトレーニング」
はじめに行われた講演では、村上晃史(オリンピック・ナショナルチーム ナショナルコーチ)先生より、日本国内の選手育成の歴史や、世界で活躍するニナー賢治選手のトレーニングについて詳しいお話がありました。
ニナー賢治選手がどのように代表選手へと成長したのか、様々なセンサや分析結果などの客観的な指標に基づく練習計画があったことが印象的でした。オリンピックレベルの選手となると、単なる定量的なパフォーマンス向上だけでなく、故障を防ぐ取り組みや稼働域を広げる重要性など、「強くなるだけでなく怪我をしない体づくり」が大切だということも強調されていました。
また、初めてうかがった内容として、新しい競技スタイルとして世界的にも注目度を高めている「アリーナゲーム(Arena Games)」の話題も上がりました。オンラインプラットフォーム(Zwiftなど)を活用することで、ファンからの視点はもちろん、選手やコーチにとっては練習内容やレースパフォーマンスを客観的に振り返る手段としても活用できそうだと感じました。
さらに、データサイエンティストとして気になった点として、欧米を中心に多くの選手やコーチが使用している分析ソフト「TrainingPeaks」も言及されました。海外トップアスリートの約90%が利用していると言われるほど普及しており、練習内容やレースデータを一元管理・分析する上で非常に便利。ニナー賢治選手や国内トップ層の選手も導入し、トレーニングの可視化や戦略的なフィードバックに役立てているとのことでした。
特別講演[2] 「トライアスロンのパフォーマンス向上の生理学」
続いては、藤井直人(筑波大学)先生より、「トライアスロンのパフォーマンス向上の生理学」についての講演がありました。
持久力を支える主要な指標には、最大酸素摂取量や乳酸閾値、ランニングの効率性(ランニングエコノミー)があるそうです。これらを高めるためのトレーニングや、暑さへの適応、ウォーミングアップの時間調整など、科学的な視点に基づく具体的な工夫が紹介されました。レース中の体温上昇をどうコントロールするかや、必要に応じてカフェインを利用するかといったトピックも興味深かったです。特に暑熱馴化という点が非常に興味深い現象であり、熱のコントロールがどのようにパフォーマンスに影響するかを知ることができました。
また、データをとことん分析する一方で、VO2maxや乳酸閾値などシンプルなモデルを軸に考えることが、現場でも非常に有効だという指摘もありました。
両講演の後にはクロストークセッションが行われ、特にランニングパフォーマンス向上に焦点が当てられました。オリンピック・ナショナルチームのコーチと大学の研究者がそれぞれの立場から意見を交わす中でも、藤井先生の講演で触れられていた暑熱馴化について、トップ選手ほど夏場のトレーニングをあえて高温の環境で行い、少しずつ進めているという話が印象的でした。今回の会議でも語られた内容は、プロはもちろん、トライアスロンを始めたばかりの方にも参考になることが多く含まれていました。
口頭発表
学会での口頭発表では、トライアスロンやパラトライアスロンという共通する競技領域を扱っている一方で、実際に展開された研究テーマやアプローチは思いのほか幅広く、単なる技術的な分析だけにとどまらず、指導者育成、障害予防、競技力向上のためのトレーニング理論、さらに大会運営に関する調査や社会的視点まで、多角的に議論されていました。
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私からは「中距離トライアスロン大会の持続的発展に向けた参加者体験分析:LAKE BIWA TRIATHLON 2024を例に」という題目で発表を実施しました。その中でも、データサイエンティストとして、調査結果の報告だけでなく、生成AIを活用した大会フィードバックの作成手法について、紹介しました。こちらについては、発表内容をさらに発展させたものを後日、論文として報告する予定です。
さいごに
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回はビワイチに直接関係する話題ではありませんが、琵琶湖を舞台としたトライアスロン大会における、これからの持続的な発展に向けた研究について、より良い議論を行う事ができました。
それだけでなく様々なトライアスロン関係者の方々と話す中、生理学やトレーニングに関する研究など、トライアスロンに関する様々な研究活動について、学ぶことができました。
今後も、当該補助金に関する活動、及び当団体に関連する活動について、下記noteマガジンでお届けしますので、是非チェックしてください!
Tabiwa Nextとは?
Tabiwa Nextは滋賀大学と立命館大学の学生らによって、2022年に組成され、「ビワイチ」をモデルとした新しい観光のあり方の企画・検証を実施している団体です。
団体メンバーの特徴として、データ分析、政策提案、ウェルビーイングの分析、社会実装など、多様な専門性を持つ大学生・大学院生・社会人が集まり、それぞれの得意な分野で滋賀県の観光を考える取組みを進めています。
本活動の一部は、令和6年度「健康しが」活動創出支援事業費補助金の支援を受けております。