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シリコンバレー派遣まで残り1ヶ月を切って考えること

【100日後にスタートアップ起業日記その31】


明けましておめでとうございます。
しまゆずです。
現在、医療×AIテクノロジーのスタートアップ起業準備を行なっています。
今日も起業日記を訪問していただきありがとうございます。

前回記事はこちら。

なぜこの連載記事を書くのか?

「始動」の目的は、Thinker to Doer - つまり、考えるだけの人から、実際に行動を起こす人を育てること。

私自身、これまで「いつか起業したい」と思いながらも、結局行動に移せなかった経験があります。きっと、この記事を読んでいるあなたも同じような経験をお持ちではないでしょうか?

  • 「どの分野で起業すべきか分からない」

  • 「失敗が怖くて一歩を踏み出せない」

  • 「アイデアはあるけど、実現可能性に自信が持てない」

起業や独立の意思に関わらず、行動してみたい人向けの連載記事です。


はじめに

12月14日にシリコンバレー選抜の話をいただき、早20日。気づけばシリコンバレー派遣まで残り約1ヶ月をきりました。1月末に羽田を出発するため、あっという間ですね。現在、最も時間を費やしているのがピッチ資料の英語化です。これが想像を超える大きな壁となっています。

渡航中にもピッチ披露の場面が何回かあるのですが、これらは日本語で大丈夫とのこと。
しかし、現地の人に見てもらう機会があった場合、やはり英語の資料もあったほうがいいとのことで書き直しを始めました。

ピッチ資料、まさかの全面書き直しに...

「日本語のピッチ資料をChatGPTに入れて英訳すれば良いや」

...そう思っていたら、大間違い。

実際に取り組んでみると、単なる翻訳では全く通用しないことに気づきました。プレゼンテーションの基本的な構造から見直す必要がありました。

シリコンバレーのピッチで重視されるのは、まず冒頭でWhy me?を明確に示すこと。なぜ自分たちがこの問題を解決できるのか、そしてなぜ今なのか。この部分は日本語のピッチ以上に深く掘り下げる必要があります。

その上で市場規模とマネタイズの方法を具体的に示していきます。ここで求められるのは、単なる市場の大きさではなく、具体的な成長戦略です。

数値の単位もすべて米国基準に変更しています。日本の医療市場規模を「○○兆円」と表現していた部分も、「$○○ billion」という形に。為替レートの変動も考慮しながら、現地の投資家が直感的に理解できる数字に整理していきます。

競合分析も大きく書き直さないといけません。現在はEpic SystemsやCernerといった米国の主要プレイヤーを中心とした分析を始めました。

さらに、InsightRxやForward Healthのような新興のAIヘルステック企業も視野に入れた、より包括的な競合マップを作成することにしました。

スライドデザインも「米国風」への変更が必要でした。日本のピッチでよく見る情報過多なスライドは避け、1スライドあたりの情報量を大幅に削減。この辺りは今回のピッチで取り組んでいたところだったので、比較的やりやすかったです。

その代わり、より強力なビジュアルとインパクトのある数字を組み合わせる形に変更しました。これは見た目の問題だけでなく、メッセージの伝え方そのものの違いを反映しています。

最も苦労したのは、日本の医療システム特有の文脈を、いかにシリコンバレーの聴衆に伝えるかという点です。

例えば、日本の電子カルテシステムについて説明する際、単に「Electronic Health Record (EHR)」と訳すだけでは不十分です。日本の電子カルテには保険診療の請求機能が統合されているという特徴がありますが、これはアメリカの医療システムでは一般的ではありません。

また、医師の働き方改革による残業時間の上限規制という背景一つ取っても、なぜそれが今、日本の医療現場で重要な課題なのか、システム全体の文脈から説明する必要があります。

この過程で、私たちのプロダクトの「本質的な価値」が、より鮮明に見えてきました。医療システムの違いを超えて、医療文書作成の負担軽減という普遍的な課題に、AIでどうアプローチするのか。

その部分をクリアに説明できれば、言語や制度の違いを超えて共感を得られるはずです。そして、なぜ私たちがこの問題を解決できるのか、その理由も明確になってきました。

シリコンバレーの医療Tech企業から見える本質的な課題

現地の医療Tech企業を研究する中で、一つの重要な事実が見えてきました。それは、医療×テクノロジーの領域の難しさです。

過去10年間、医療文書作成支援からデジタルヘルスケア、AIによる診断支援まで、数多くの企業がチャレンジしてきました。しかし、多くの企業が期待通りの成果を出せずにいます。上場後の株価低迷や事業縮小を余儀なくされるケースも少なくありません。

その背景には、医療特有の複雑な要因があります。プロダクトの有効性を示すエビデンスの構築、医療機関特有の意思決定プロセス、そして何より医療という人命に関わる領域ならではの慎重さ。これらが、一般的なテクノロジー企業の成長モデルを単純に適用することを難しくしているのです。

特に興味深いのは、「技術的に優れている」だけでは必ずしも成功に結びつかないという事実です。むしろ、医療現場の複雑な業務フローや、既存システムとの統合、そして現場スタッフの受容性など、技術以外の要素がより重要な成功要因となっているケースが多いようです。

アメリカの医療現場、データが語る現実

一方で、医療現場の課題は年々深刻化しています。Mayo Clinicの最新レポートによると、米国の医師は1日平均4.5時間をEHR(電子カルテ)関連の作業に費やしているとのこと。

さらに驚くべきは、若手医師の87%が「過度な文書作業が患者ケアの質を低下させている」と回答していることです。

Cleveland Clinicの調査では、医師の34%が「テクノロジーの導入が新たな負担を生んでいる」と感じています。皮肉なことに、業務効率化を目指して導入されたテクノロジーが、新たな負担を生み出しているという現実があるのです。

この状況は、医療×テクノロジーの難しさを如実に物語っています。しかし同時に、本当に現場に寄り添ったソリューションの必要性も示唆しています。

「あと1ヶ月」をどう使うか

医療Techの難しさを痛感する中で、残された1ヶ月をどう使うべきか。その答えを必死で探っています。

現在、最も重要だと考えているのが現地医療機関へのアプローチです。しかし正直なところ、まだ具体的なアポイントメントは取れていません。コネクションのない私にとって、医療機関への直接のコンタクトは、想像以上に難しい道のりです。

一方で、この1ヶ月で必ずやっておきたいことははっきりしています。それは現地の医療現場が、なぜこれまでの医療Techの導入に苦心してきたのか、その本質的な理由を理解すること。

そのために、現在はシリコンバレー在住の知人を通じて、現地の医師や医療機関関係者とのコネクションを探っているところです。小規模なミートアップやカンファレンスの情報も集めています。

また、医療系アクセラレータへのアプローチも検討中です。彼らが過去の投資先から学んだ教訓は、きっと私たちにも大きな示唆を与えてくれるはずです。

また、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)の医療テックラボへの訪問も調整中です。彼らが持つ、最新の医療技術導入に関する知見は、私たちの戦略に大きな示唆を与えてくれるはずです。

最後に

シリコンバレーでの10日間は、間違いなく濃密な時間となります。その時間を最大限活かすために、いまできる準備を一つずつ、着実に進めていきたいと思います。

医療×AIというドメインで、世界最高峰のエコシステムと向き合う。その機会をものにするために、残り1ヶ月、全力で準備を進めていきます。


フォローとフィードバックのお願い

というわけで、31回目、いかがでしたでしょうか?

このペースではおそらく最後はシリコンバレーで更新することになりそうです。お楽しみに。

連載となりますので、ぜひフォローいただき、通知をONにしていただけると嬉しいです。

そして、コメント欄やX(旧Twitter)などでご意見ご感想もいただけると飛び上がって喜びます。

それではまた!

過去回(数がかさんできたのでまとめました。)

https://shine-arrow-e51.notion.site/note-151b2209c729800db0eaf49c3627b7ff

著者プロフィール

医療×テクノロジーのスタートアップを目指すDoer。2023年3月からChatGPTに出会い、AIにのめり込み、そのAIを活かした事業アイデアが採択され、経産省主催「始動」10期生として活動、100名の起業家の中から選抜された20名のシリコンバレー派遣メンバーの一人。この記事は、実際に起業を目指す中で学んだ知見を、同じ志を持つ仲間と共有したいという思いで書いています。

🎉 (ご報告)始動10期シリコンバレー派遣メンバーに選出!

先日、経産省主催の始動Next Innovator 2024において、100名の起業家の中から20名のシリコンバレー派遣メンバーに選ばれました。

始動10期同期、始動アルムナイの方々、そして講師を務めていただいた方々、運営の皆様、壁打ちにお付き合いいただいたメンターの方々、IKIGAI lab.をはじめとするコミュニティの皆様、応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。この場を借りて感謝申し上げます。

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