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意味のないバッドエンド

前回嘘が下手な人に物語は書けないにて、
リアリストに面白い物語は書けないということを述べた。

別にバッドエンドを否定するような記事ではない。分岐ありのエロゲにはバッドエンドがあって良いし、それが醍醐味の作品だってある。

実際バッドエンドの方が印象に残りやすいというのはあり、
脚本的にもこう言われている。

意味のないバッドエンド ←最低
意味のないハッピーエンド
意味のあるハッピーエンド
意味のあるバッドエンド ←最高

という風に、意味のあるバッドエンドが書ければそれ以上のことはない。

しかし意味のないバッドエンドはクソだ。それだけは声を大きくして言いたい。

ではどうすれば意味がある、になるのか?

それは納得できるオチが用意されているかどうかだと思う。

今回の議題は「テーマの大切さ」について。

意味のないバッドエンド

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「ヒロインが難病を患っている」という物語の結末を予想すると、
助かるか、助からないかの二択しかない。俺たちの戦いはこれからだENDは論外だ。

主人公は頑張っている。ヒロインも病気に立ち向かっている。
この構図であるならば当然プレイヤーはヒロインを救うハッピーエンドを期待する。

ここで逆張りしてただヒロインが助からないを選ぶ作者は何もわかっていない。

それはなんのひねりもないオチだからだ。

皮肉も効いてない、報われない、
今までプレイしてきた時間はなんだったのか。

リアルで起こったことを題材にしたドラマならともかく、
エンタメであるエロゲで病気の恐ろしさを訴えかけられても反応に困る。

そこにあるテーマは病気にはどうすることもできないという無力さだけだ。

意味のあるバッドエンドを書くのが難しいのは、
主人公がなぜ目標を達成できなかったのかという作者の技量部分が浮き出てしまうからだ。

どうしようもないではプレイヤーは納得しない。

つまり良質なバッドエンドの前提条件は
「ああ、主人公はそういう選択をしたのか。それでもダメだったのなら仕方がない」とプレイヤーを納得させることである。

悪いバッドエンドとは=悪い主人公だといってもいい。

バッドエンドで絶対に失敗したくない方法としては極論プレイヤーには主人公への感情移入を諦めさせることだろう。

意味のあるバッドエンド

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・ある視点から見てバッドエンドでも、ある視点からは別の解釈が出来る
・テーマに沿っていて最終的にオチた結果のバッドエンド

この2点が意味のあるバッドエンド作品を作る上での有力な要素だ。

ダークヒーローモノなんかは基本的に最後主人公が死ぬか、あるいは報いを受ける。

それは「世界に悪者がいてはいけない」というテーマの元オチた結果だ。

これは主人公視点で見ているプレイヤーにとってはバッドエンドかもしれないが、その結末に悪役である主人公は納得して死ぬかもしれないし、世界はそれに対して歓喜の雄たけびをあげるかもしれない。

その中で悪役である主人公を唯一理解していたものは涙するかもしれない。

意味のあるバッドエンドがハッピーエンドを超えるというのは、色んな視点の解釈ができるからだと思う。

最後に迫る2択

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「難病を患っているヒロイン」を助けようとしていた主人公が最終的には助けられなかったというのはオチとして最悪だ。

現実的すぎてそこに物語的なテーマがない。

だったら、難病で身体が思うように動かなくなった、激痛が走るようになった。もう死にたいと嘆くヒロインに対して主人公は「安楽死をさせてあげる」or「諦めないでと励まし続ける」の2択を迫るほうがいい。

この2択は「諦めたほうがいい」or「諦めないほうがいい」という選択をテーマにオチを作ることができる。

よく小説教本なんかでテーマを作れと言われるが、バッドエンドにこそそれは必要で、最後に主人公に究極の二択をぶつけ、どう決断するかでオチなんて決まるものだ。

この2択は映画「ミスト」で用いられたテーマで、この強烈なオチがなければミストは作品としてB級映画どころかクソの烙印を押されていた。
(このオチがあり得ないという人もいるが)

※ミストのネタバレがあるので注意

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ミストはパニック映画もので、実験で発生した霧の中、危険生物が町中に解き放たれる。それらから逃げて逃げて、最終的に主人公らは逃げきれないと悟り、車の中で「化け物に殺されるぐらいなら」と拳銃で自害。
しかしその後次第に霧が晴れていき、救助隊がぞろぞろとやってきてエンド。

諦めずにもう少しだけ生きることに必死であれば助かったというオチ
(しかも主人公らを罵倒していた人たちは救助され生き残っている皮肉)

この映画は「主人公たちは主人公ではなくモブだった」という解釈をされている。

何も得るものがないというのは主人公が受け身で、展開に流され、最終的に何も決断しない作品に圧倒的に多い。

何もせずオチ無しで終わる、それこそが最悪のバッドエンドだ。

主人公、あるいはヒロインに対して究極の2択を迫り、
そして決断させる。

それによってようやくバッドエンドには意味が出る。

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